仮面ライダーARTHUR 王の名を持つ仮面の騎士 作:名もなきA・弐
まだどういったキャラなのか分かっていない人もいると思うので、その掘り下げみたいなものです。
それでは、どうぞ。
某所……夜中の道端では、アタッシュケースを両手にスーツを着た男性が息を切らしながらも逃げ惑っていた。
ある存在から満足に動かない両脚で必死に走るが、とうとう彼は壁に追い詰められる。
彼を追い詰めているのは、上等な白い基本カラーに黒いパイプやら木製の面舵が剥き出しになった豪華客船をモチーフにした怪人『シップ・エラー』だ。
負の感情や絶望を秘めた人間が「ネオエラーカセット」と呼ばれるデバイスによって具現化させた魔力で融合変身したエラーは女神の像がある船頭を模したモノアイで男性を品定めするように見ていたが。
『消えろぉっ!!』
怒りを露にするようにシップが一歩踏み出した時だった。
……その時、壁を乗り越えてやってきた赤い仮面の騎士がシップを蹴り飛ばす。
不意打ちを受けたエラーは地面に転がり、蹴られた箇所を抑える。
『ぐっ、うう……?』
「そこまでだ、連続襲撃犯」
そう言いながら仮面の騎士…基本フォームのドラゴンリンクである仮面ライダーアーサーは男性の前に立つとそのままシップに向かって走り出す。
鞘に納めたグレンバーンによる抜刀術で追い詰めようとするが、負けじとシップを面舵を模したチャクラムで防御する。
『このっ、邪魔をするなっ!!』
『船長の邪魔をするんなら、ここで追放させてもらおうかぁっ!!』
ゲームコントローラーのような胸部ユニットを発行させながら、異なる二つの声で激昂したシップはチャクラムを捨てると片手剣サイズのアンカーを取り出して振り下ろすが、アーサーは納めたグレンバーンの鞘でそれを防ぐ。
『なっ…!?』
「遅いっ!!」
そのままシップを前蹴りで吹き飛ばすと、そのまま続けて回し蹴りで追撃する。
近くの公園にある滑り台の辺りまで追い込まれたシップは、自身の欲望や潜在能力から生み出された能力を発動する。
『出航準備!面舵一杯っ!!』
『アイアイサーッ!!』
「はっ?」
その言動にアーサーは小首を傾げるが、その間にもシップは身体に魔力を纏わせて『変形』させていく。
まるで某トランスフォーマーのように身体を変形させていくと、そこに現れたのは一回り小さい豪華客船……至る箇所から汽笛を鳴らしたシップはアーサー目掛けて突進を仕掛ける。
「危ねっ!?」
横に跳んでどうにか躱すが、船の形態へと変形したシップはすぐに方向転換をすると汽笛を鳴らして先ほどと変わらぬ勢いで迫ってきた。
「ぐあっ!!」
魔力によるエネルギー弾を少し被弾したことで怯んだアーサーにシップが激突する。
凄まじい衝撃とダメージを受けた彼は苦しげな悲鳴と共に公園にあった噴水へと叩きつけられる。
びしょ濡れになりながらも、慌てて立ち上がってシップがいた場所を見るが姿は見えない。
逃走を許してしまったことに「くそっ」と毒づきながらも、アーサーはドラゴンカセットを抜き取ってから変身を解除する。
『大丈夫か、戒?』
「何とかな…」
ウェルシュに声を掛けられた戒は適当に返事をしながらも、噴水から出ると予め呼んでいたドライグハートへと足を進める。
『戒、せめて身体を乾かしてからの方が』
「そんな時間ないって」
「面倒だし」と彼はヘルメットを被ってそのまま帰路へと自身の愛車を走らせるのであった。
「昨日で三件目、か……」
翌日、軍服のような黒い警官服を纏った女性…美海に渡された書類に目を走らせる。
それを歩きながら青年…潮田空良は考える仕草と共にここ最近になって世間を騒がせている襲撃事件について頭を回転させる。
狙われた者たちには悪質な当たり屋という共通点こそあるが、彼らを恨んでいる人間が多すぎるため容疑者の絞り込みに苦労している状態なのだ。
そこで空良と共にいた二人の女性が口を開く。
「しかし、ここまで恨みを買っている人間がいるとはな……」
「逆に尊敬するね、どんな人生を送ってきたんだか…」
呆れたように話すのはイケメン系女子の雅緋とオデコがチャームポイントのメガネ系女子忌夢。
今回の捜査に協力するように頼まれたため、こうして空良と行動を共にしているのだ。
「だが、エラーの姿は既に確認されている。門矢君と先生が最後の力を振り絞って遺してくれた証拠だ」
「別に死んでいないけどね」
悔しそうに、何処か誇らしげに取り出した写真を握り締める彼に対して忌夢は細目でツッコミを入れる。
ちなみに戒は昨日の戦闘で水浸しになったまま帰宅したため、風邪を引いてしまったのだ。
こうして行動不能になった彼の代わりに空良が、今まで集めた手掛かりから雅緋たちと共に今回の連続襲撃事件を調査しているのである。
「エラーは融合者の欲望や願望を魔力で象る」
「つまり、エラーの姿=その人間の特徴が表れているということか」
空良の言葉に「なるほど」と雅緋は納得したように続ける。
確かに今までのエラーはエラーカセットと融合した人間の感情がそのまま能力となっていた。
そうなるとシップの正体にも自ずと目星が付く。
「この中でそれに該当するのは、『こいつ』しか……っ!」
戒が今まで集めた手掛かりと自分たちが集めた情報から今回の事件の犯人であるエラーの正体に勘付き始めた途端、全身から湧き上がる嫌悪感と今の現代日本に相応しくない銃声に思わず振り向く。
そこにいたのは黒いスーツと黒頭巾で全身を隠し、首元に白いスカーフを巻いた男性で左手には四つの眼を持った白いパペット人形をはめている。
「お前かっ、吉良…!!」
『こっちとしても、てめぇらと会いたくなかったけどな。シップの邪魔はさせねぇ』
そこには紫色のボディに赤と緑の配線が散りばめられた拳銃型デバイス『チェンジレコーダーガン』を構えたデッドの人間態がおり、パペットのアライブが減らず口を叩く。
空良の射殺すような視線に気にすることなく、デッドは肩を竦める。
「せっかくだ。お色直しをしたお兄さんたちの姿を見せてあげるよぉ」
【DEAD&ALIVE!!】
心底楽しそうにデッドはパペットを装着した手で、自身のコアでもあるエラーカセットを器用に起動するとチェンジレコーダーガンの銃身に設けられた斜めのスロット装填すると、待機音声が鳴り響く。
「『憑鎧』」
【HEARLING UP! DEAD&ALIVE! BREAK YOUR BODY!!】
短く呟いた彼は銃口を己の頭部に向けて引き金を引いた途端、エレキギターの音声と共に不気味な電子音声が鳴り響く。
すると赤と緑のノイズに包まれると、その姿を変えていく。
そうして姿を見せたのは今までの姿とは違うデッド&アライブの怪人態……。
生物のような鈍い金色のスーツの上にはゾンビのような骸骨を思わせる装甲が覆い被さっている。
見たことのない姿にギアルは警戒を抱くが、一方の彼は気にすることなくレコーダーガンを回す。
『さて……前回のリベンジマッチをさせてもらおうかなぁっ!!』
赤く罅割れたモノアイを光らせた瞬間、『デッドアライブ・エラー 改造態』はチェンジレコーダーガンの銃口から禍々しい紫色の弾丸を数発発射する。
「くっ!変身!」
【RIDE UP! SOCIAL! 検索しながらFLY HIGH!!】
横転して弾丸を回避した彼は、その際に腹部へと巻きつけたギアルドライバーに起動したソーシャルカセットを装填してトランスギアを回す。
ギアルへと変身し、激しい銃撃戦を開始する。
『だったら、これでどうだよっ!!』
アライブがそう叫ぶや否や、雅緋や忌夢たちに向けてエネルギー弾をばら撒く。
「こんなものっ!!」
雅緋は迫りくる弾丸を全て弾くが、その間にもデッドアライブが突進する。
そのまま左腕で殴り飛ばそうとするのを瞬時に割り込んだ忌夢が棍棒で防ぐ。
「ぐぅっ!?」
しかし、その威力は強大で鍔迫り合いと共に後ずさりすると、彼女の身体は吹き飛ばされてしまう。
「忌夢っ」とギアルが叫ぶ間もなく、デッドアライブはチェンジレコーダーガンから魔力弾を放つ。
追撃を続けようとトリガーを引くよりも早くギアルの放ったギアルショットガンによる攻撃が命中する。
『やってくれるねぇ』
「ふっ!」
すぐに距離を詰めたギアルは蹴りを放つが、同時にデッドアライブの放った蹴りと激突する。
そのまま続けざまに二発・三発とキックの応酬が続く。
時には互いの武器から魔力による弾丸を放ちながらも、身体を逸らして躱して距離を取る。
『……ちっ』
これ以上は分が悪いと判断したアライブの舌打ちと共にその場で回転して周囲に弾幕をばら撒く。
銃弾による煙に視界を覆われたギアルはすぐさまギアルショットガンを構えるが煙が晴れたころにはデッドアライブの姿はなく、仮面ライダーと二人の忍だけであった。
To be continued……。
今回の怪人…シップ・エラーはエルミンさんからいただきました!エルミンさん、誠にありがとうございます!お待たせして本当に申し訳ありません!!(涙)