仮面ライダーARTHUR 王の名を持つ仮面の騎士   作:名もなきA・弐

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 番外編です。EVのスピンオフ漫画『閃乱カグラ てやんでえ!』のある話をモデルにして書きました。
 つまりはギャグパートです、ちなみにある程度改変をしています。
 それでは、どうぞ。


ANOTHER COMBO4 ミレンジャー×解決

「突然俺たちを呼び出して何の用ですか、小百合様」

「今何時だと思っているのよ…」

「「……すぅー」」

 

ある日のことだった、小百合から早朝五時に呼び出された戒たちと忍学生たちは指示された場所に集まっていた。

戒と両備は目を擦りながら苛立ちを露わにし、紫と葛城に至っては立ったまま寝ている始末だったが、小百合はそれを物ともせずに飄々とした態度で集めた理由を語る。

 

「お前さんたちに集まってもらったのは他でもない。カグラ千年祭が未練を残して亡くなった忍たちのためじゃと言うのは説明したね」

 

一度区切ると、キセルを加えて煙を吐き出す…その際に華風流が咳き込んでいていたがそれを気にせず「そこで」と話を続ける。

 

「お前さんたちには、未練を持った忍たちを成仏させてもらうよっ!」

「何っ!?それはゾンビが出るということか!!」

「きゃう~ん、カー君怖いよ~っ!!」

「うぇっ!?///」

「そこっ、むやみに恐怖心を煽らない!」

「後、離れろバカ犬っ!!」

 

彼女の言った言葉に叢は目を輝かせるが両奈は戒に抱き着いて顔を赤くさせると琴音は叢に、両備は両奈にツッコミを入れる。

一しきり会話の応酬を終えたのを確認すると小百合は口を開く。

 

「それじゃ、自己紹介をしておくれ」

「はっ!」

 

彼女の言葉に応えるように現れたのは赤・青・黄・緑・桃色の忍装束を纏い、顔を隠した五人の男女であり、彼らはそれぞれの決めポーズを取る。

 

「ご紹介に預かりました!リーダー(生前の)…『レッドシノビ』!」

「副リーダー(生前の)…『ブルーシノビ』!」

「食欲全開(生前は)…『イエローシノビ』!」

「チームの参謀(生前は)…『グリーンシノビ』!」

「紅一点(生前だと)…『モモシノビ』!」

 

五人が一息でそう名乗り上げると赤い装束の忍、レッドシノビがポーズを変えると残りも揃って変える。

 

「我ら、五人揃って…」

「「「「「『亡霊戦隊 ミレンジャー』ッッ!!!」」」」」

 

五人全員で決めポーズを取った途端、なぜか五色の爆発が背後で起きた。

ポーズを解いて一度お辞儀をすると、レッドシノビが呆然としている飛鳥たちの元に一歩前に出る。

 

「……あれは、我々が亡くなる前日のことでした」

「えっ!?急に脈絡もなく始まるの、さっきのポーズと名乗りの意味はっ!?」

 

スーパー戦隊らしきテンションとは百八十度違う丁寧な口調で説明を始めた彼に対してツッコンだ琴音だったがレッドシノビは話を進めていく。

 

「我々…ブルーシノビとイエローシノビ、グリーンシノビ、そして私を含む四人はある計画を立てていました。そう……全員でアイドルのライブチケットを手に入れることに」

「ライブのチケットかいっ!」

「イエス、ミーたちはミッションの傍らアイドルグループ『ミルキーポップ』の追っかけをドゥしていたのでごわす」

「それ以前にお前は自分のキャラを固めて来いっ!口調ぶれっぶれじゃねぇかっ!!」

 

レッドシノビに続くように説明を交代したイエローシノビだが、ルー語と出身が不明過ぎる話し方に琴音が切れた口調で叫ぶ。

軽くショックを受けたイエローシノビと変わったのはブルーシノビ。

 

「しかし、チケットを買うアテが外れてしまい、危うく大ゲンカで死ぬところだったんだ」

「恐ろしい世界ですね」

「けど、何とか僕たちは和解したんだ。同じ仲間だし何よりおっぱ…じゃないアイドルを愛する者同士、争うべきではないと判断したんだ」

 

クールな口調で残念な内容を語るブルーシノビに雪泉はアイドルファンの執念深さに驚愕する中、グリーンシノビが説明を続ける。

 

「どうしても、明日のライブに行きたかった僕たちは…当日、人目を避けるために大凧を用いてライブ会場に向かったんだ」

『バカだーーーーーーーっっっ!!!!』

「何しょうもない目的で忍用具を使ってるのっ!本格的なバカかっ!!?」

 

グリーンシノビのライブ会場の出撃…大凧を使ってアイドルグループのライブに向かう方法に全員がシャウトし、琴音も続けて罵倒する。

 

「その時、突如突風が巻き起こり我々は揃って吹き飛ばされました」

 

レッドシノビの言葉に全員が顔色を変える。

その時に亡くなったのかと思い、一歩進んだブルーシノビが口を開いた。

 

「だが何とかバランスを整えることに成功したのさ」

「迫りくるブラストにボディを任せたのでごわす」

「あの時は本当に死ぬかと…」

「もったいぶらずに早よ死ねやっ!」

「どんだけ時間かけてるの!後ぶつ切りにして会話するのやめろ、微妙にイラッと来るんだよっ!!」

 

ブルーに続いてイエローシノビ、グリーンシノビと会話をするが中々亡くなった場面へと移らないことに業を煮やした両備が青筋を浮かべて怒鳴り琴音もウザったらしいメンバーに苛立ちを募らせる。

後ろで二人を宥めている両姫をしり目にレッドシノビが話を再開させる。

 

「誰も思いませんでした…まさか、開幕の打ち上げ花火で全員灰塵となってしまうとは…」

 

そう締め括ると、四人は顔を暗くさせた…飛鳥たちも何も言えなかったがアホらしさと気の毒さが混じった微妙な空気に何も言えずにいる。

雪泉が重くなった空気をどうにかしようとした時だった。

 

「え?アホやろ」

「良い年して恥ずかしくないんですか?」

 

空気を読まずに冷たいことを言い放った日影と戒の言葉にミレンジャーは吐血するも、夜桜がふと思い浮かんだことを尋ねる。

 

「あの…モモシノビさんが登場していないのですが」

「私は、彼らとは違う理由なんです」

 

言い辛そうにすると、モモシノビが語り始めた。

 

「実は、マニアで人気のあるショタアイドルグループに向かう途中…」

 

そこで少し間を置き、少ししてからゆっくりと話し出した。

最初の辺りにツッコミどころがあったがそれを堪えて先を聞く姿勢に入る。

 

「バナナの皮で足を滑らせて頭を打ちました」

「バカかっ!!」

 

古い漫画やアニメのようなありえない事象に琴音が耐え切れず叫んだが慌てて彼女は言い訳を述べる。

 

「嬉しくて周囲が見えなかったんです。だから、そんなバナナことが起こったんだと思います」

「上手くないのっ!何ちょっと面白いこと言ってごまかそうとしてんのっ!!」

 

琴音が一しきりツッコミを入れるがシノビレッドは必死な様子で戒たちに懇願する。

まだブレイクされた心が癒えていないのか若干半泣きである。

 

「アホな我々ですが、とにかくライブを見ないと死んでも死に切れません!」

「「「「「どうか、よろしくお願いしますっ!!」」」」」

 

五人揃って綺麗なお辞儀をしたミレンジャーに対して全員も「仕方ないか」みたいな空気になり、かくして『ミレンジャー成仏大作戦』がスタートした。

 

 

 

 

 

「んじゃ、まずはアタシからね」

 

一番手、四季が法衣を羽織ると小百合に頼んで出してもらった木魚を叩き始める。

そして全員が正座したのを確認するとある詠唱を始めた。

 

「觀自在菩薩行深般若波羅蜜多時…」

 

木魚を一定のリズムで叩きながら般若心経を唱える…確かにミレンジャーたち幽霊にとっては有効だが、五人のテンションはかなり低い。

それ以前に……。

 

「はぁっ、はぁぁぁんっ!き、気持ち良いぃん……!!」

(っ!両姫姉さん、色っぽい…!///)

((何デレデレしてんだっ!!))

 

お経で気持ちが高揚してしまった両姫が艶やかな表情で息を荒げているのを見た戒は頬を赤らめるが鼻の下を伸ばしているのに気付いた琴音と両備が彼の太ももをつねっていた。

般若心経を終えたがミレンジャーはげんなりした顔をすると両腕で✕を作る…まぁお経で成仏出来たら最初から彼女たちに頼まないであろう。

「どうするか」と考えている飛鳥と雪泉たちに、太ももと足にダメージが残ってる戒は倒れながらも自分の意見を告げる。

 

「アイドルのライブが未練になっているなら、ダンスや歌ならどうでしょうか?」

「それでしたら……」

 

その意見を聞いた雪泉は巻物を取り出して忍転身すると両手に持った扇子を広げる。

 

「日本舞踊に精通した私が」

「おおっ!」

「雪泉さんの日本舞踊……ちょっと待ってくださいスマホで映像を…ブベラッ!」

 

葛城は分かりやすく反応し、戒もそそくさとビデオ撮影しようとするが琴音に笑顔で蹴り飛ばされていた。

そこで目を輝かせたのはイエローシノビだ。

 

「ミー、日本舞踊はライクでごわす!アイラブジャパンでごわすっ!!」

「でも、私…日本舞踊はちょっと高尚過ぎて…」

「なら、歌をつけましょう」

 

ついでにモモシノビの未練も晴らそうと、戒は小百合に頼んでスピーカーとマイクを出してもらうと『いろは唄』をセットする…そして忍装束を着た雪泉と軽く打ち合わせをしてから前奏を流した。

曲に合わせて雪泉は華麗な舞を見せた後、戒が歌い始めた。

そして数分後……。

 

「サンキューでごわすぅー……!」

「ショタ顔のイケメンが私に潤んだ瞳で歌ってくれるなんて…幸せですぅー……」

 

無駄に上手だった戒の歌声と華麗に締めた雪泉の舞によってイエローシノビとモモシノビは暖かな光に包まれて昇天していった。

ちなみにメンバーの何人かは赤面していたが、気を取り直すように斑鳩と両備が選抜する。

 

「葛城さん、頼みましたよっ!」

「両奈っ!行きなさいっ!!」

「しゃっ!任せとけっ!」

「はいは~いっ!!」

 

快く了承すると葛城は派手なブレイクダンスを行い、両奈はフィギュアスケートの要領で滑ると華麗なスピンジャンプを決めた。

 

「…ふつくしい」

「カッコ良かった」

「素晴らしいですっ!」

 

異なる二つのダンスを見ることが出来たブルーシノビはそう呟くと光と共に成仏していった。

「一匹減った!」と喜ぶ両備だったが、残るは後二人…レッドシノビとグリーンシノビは先ほどのダンスに感激している様子だったが成仏する気配はない。

何かを考え込んでいた両姫だったが、何かを思いついたかのように両手をぽんと叩く。

 

「蓮華ちゃん。腹踊り、やってくれないかしら?」

「そっす!あれならいけるっす!」

「バ、バカ!あんなの、他人の前で出来るかっ!///」

 

彼女に続くように華毘が言うが蓮華は珍しく顔を赤くして反論する。

しかし、そこで目を光らせたのがあざと系末っ子少女…華風流は冷ややかな声で告げた。

 

「祭りなのに粋じゃない、らしくないよ蓮華お姉ちゃん」

「らしくないっす」

「私も…見たいです……」

「何か別のところから声が聞こえるんだけどっ!!?」

 

割って入ってきた紫にツッコミを入れるも戒やウェルシュが「ぶーぶー」とブーイングを飛ばすと残りのメンバーも連られて大ブーイングとなって蓮華を追い詰めていく。

そして……。

 

「あーもうっ!そこまで言うならやってやるよ、女は度胸でいっ!」

「流石蓮華お姉ちゃんっす!!」

 

即興で自分の腹部に人の顔を描くと、一呼吸する。

そしてやけくそ気味に腹踊りを始めた。

 

「ぽんぽこりん♪ぽんぽこりん♪お腹をぺろんとぽんぽこりん♪!!」

『ぶははははははははっっ!!!!』

 

あまりにも滑稽すぎる踊りに全員が大笑いを始めたが蓮華はその恥ずかしさを堪えて踊りを続ける。

何も起こることなく、踊りは終盤へと向かい最後に珍妙なポーズを取った。

飛鳥と斑鳩は堪えようとするが先ほどの腹踊りを思い出し笑いしてしまい腹を抱える。

おまけに二人のミレンジャーは成仏する気配はない。

流石の蓮華の心も傷ついたのか巫女装束を着替え直すと一言……。

 

「これで良かったのかな……?」

(あ~ん、両奈ちゃんもあんな辱め受けたかったなー…!!)

 

そんな彼女の状況に両奈は勝手に興奮していたが、二人も残っていることに全員は頭を抱える。

何が足りないのか、どんな踊りがあるのか……そんなことを考えていたがやがて琴音があることを思いついた。

 

「あの…」

「どうしました?琴音さん」

「ミレンジャーの人たちってアイドルのライブが見れなくて成仏出来ないんですよね……だったら歌って踊れば良いんじゃ……」

『あっ』

 

まさに目から鱗だった。

そうだ、アイドルのライブが未練なら自分たちで歌って踊れば良いではないか。

琴音の言葉に全員が納得すると戒がすぐさま準備の手筈を始める。

 

「小百合えもん!お願いします!!」

「某青ダヌキみたいに言うんじゃない、ほれ」

 

そう言って、用意したのは人数分のヘッドマイクと白のビキニ…しかし琴音の分はなく、当然彼女はそれに質問をする。

 

「あの、私の分は…」

「お前さんと戒はステージの演出をやってもらうぞ、頼めるか」

「「分かりました」」

 

小百合の言葉に敬礼した二人はすぐさま準備を手早く終える。

そして、衣装に着替えたメンバーも一通りのダンスリハーサルが完了すると持ち場に着く。

カメラマンの琴音がOKの合図を戒に送った。

 

「じゃあ、行きますよー!!よーい…アクションッ!」

 

彼の掛け声と共にスピーカーから『SUNSHINE FES』の伴奏が流れると若き忍たちはダンスを始めた。

笑顔を保ちながらダンスが出来るのは筋が良いからか、それとも体力があるからかは定かではなかったが激しい動きを一糸乱れぬチームワークで揃えており、特にボーカルを兼任することになった飛鳥と雪泉は可愛らしくも綺麗な歌声が響き渡った。

そして全員でポーズを決めたところで曲が終わった。

 

「夢を、ありがとうございます……」

「もう思い残すことはありませんー…」

 

素晴らしいダンスと歌をリアルタイムで見ることが出来た二人は涙を流して感動すると、今度こそ完全に昇天し『亡霊戦隊ミレンジャー』は安らかな眠りについた。

飛鳥たちも水を一口飲むと戒と琴音の元に駆け寄り労いの言葉を掛ける。

だが。

 

「カ、カー君んんんんんんんっっ!!?」

「きゅう……///」

 

先ほどのダンスを間近で見てしまった戒は顔を真っ赤にし、目をぐるぐる回して気を失っていたのだ。

刺激が強かったのだろう、琴音が慌てて呼びかけを行うが返事がない。

 

「きゅう…胸が上下に…うぅぅぅ///」

「~~~~~~~~っ!てめぇは何あんな脂肪の塊に翻弄されてんだあぁっ!?そんなにあれかっ?乳が良いのかっ!ホルスタインが良いのかあぁんっ!!?」

「落ち着いて琴音ちゃん!それ以上揺らされたら戒君危ないって!!」

 

思い切り戒の身体を掴んで揺らす琴音に流石にまずいと判断した飛鳥は慌てて羽交い絞めにするが背中からの感触に増々彼女の怒りに火を注ぐだけであった。

それから数分後、戒と、小百合の当て身をくらって気絶した琴音はホテルに運ばれて水分補給を取らされることになった。

ちなみに、ダンスの映像は小百合の編集でグラビア兼アイドルソングのPVみたいな感じに仕上がり、戒と琴音含む全員に配給された。

なお、完全な余談だが……。

 

「カー君」

「どした、琴音?」

「このキセル持ってる女性の人、誰?」

「本当だ…マジで誰だこの人、何処となく飛鳥さんと面影あるけど…」

 

謎の女性『ジャスミン』の存在がしばらく戒たちの間で七不思議になったことは言うまでもない。




 亡霊戦隊ミレンジャーってなんだよ(真顔)、本来は未練隊にする予定でしたがゴライダーに感化されてメンバーを五人に、色もカラフルにしました(活字だけど)。
 ちなみに最後に飛鳥たちが踊ったのはEVのOPで流れる『アレ』です、あの後小百合様が編集してあのような形になりました。こういう設定が出来るのも二次創作の良いところですね。
 本編の方もお楽しみに、ではでは。ノシ

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