仮面ライダーARTHUR 王の名を持つ仮面の騎士   作:名もなきA・弐

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 今回と次回で応募エラーは終了となります。今回は意図せずしてフォーゼらしいお話になったかなーと思ってます。
 それでは、どうぞ。


COMBO32 フェスティバル×ミスターX

『うぅむ……』

 

門矢家の一室では、ウェルシュが困ったようにディスプレイを表情に映しながら妻である瞳に渡されたミラージュカセットの解析を進めていた。

その近くにはリアと愛娘の霞が真剣な表情で見つめており、そんな視線を感じながらも彼はスキャンをして解析を続けるが深く息を吸い込むと脱力するように息を吐く。

 

『駄目か…』

 

疲れ切った声でそう呟いたと同時に、戒が入室して来る。

「ノックをしてほしい」と一言言いたかったが疲労している彼は身体を入室者へと向ける。

 

「よっす。何か分かったか?」

『あぁ、一先ずはこれで変身出来るようになるまではロックを解除出来た…が、使うのは控えた方が良い』

「…どういうこと?お父さん」

 

ウェルシュからの言葉に小首を傾げる戒の代わりに、動向を見守っていた霞が問い掛ける。

 

『調べて分かったが、このミラージュカセットは変身者の魔力を爆発的に増幅させることが出来る。「変身者の負担を無視して」だ』

「つまり、変身する上でのデメリットがでかいと」

 

「参ったな」と戒は首を振る。

折角、幹部各エラーたちにも対抗出来るかもしれない力を手に入れたかと思っていたがこれでは逆にミラージュカセットに身を滅ぼされるかもしれない……。

戒は解析を終えたミラージュカセットを手に取って懐に入れる。

その光景に驚いたのはウェルシュだ。

 

『待て待て待てっ!話を聞いていただろ!!君が使うには荷が重すぎるっ!』

「大丈夫だよ、ほんのちょっとだけだから、ほんの少しだけで良いから」

『その「ほんのちょっと」でもリスクが大きいんだぞっ!』

「大丈夫大丈夫、どうせ次の話になったら何事もなかったように動いているから」

『メタいっ!?ギャグ補正に頼る主人公など初めて見たぞっ!!』

 

しばらくはウェルシュと戒のコントが繰り広げられていたが、結局そのミラージュカセットは戒が所持することになり、『絶対に使わないことを』を条件にこの話は終了した。

 

「んじゃ、難しい話は終わりにして、おやつでも食べようぜ?二人とも小腹が空いたでしょ?」

「…はい」

「確か、冷蔵庫にジュースがありましたよね」

 

そんな話をしながら、三人とウェルシュが階段を下りてリビングへと到着した時、インターホンが鳴る。

「どうぞ」と軽い返事をすると、扉が開いてある少年が入ってくる。

その少年、柊介は陽気な表情でこの場にいるメンバーに挨拶をする。

 

「よっす、相変わらずだらけてんのか?」

「これがデフォだよ。お前こそどうした?出番が少ないから顔でも出しに来たか、ん?」

「何で喧嘩腰なんだよ、じゃなくて依頼だ依頼」

 

戒の言動にツッコミを入れながらも、来客用のソファに座った柊介は彼に自身の依頼を口にした。

 

 

 

 

 

その日、戒は半蔵学院の体育館に集まっていた。

もちろん、忍学科のではなく表の顔の体育館である……そこには多くの一般生徒たちが準備を進めており、全員が活気づいている状態だ。

その中で戒はパイプ椅子を指示された並びで手早くセットしていく。

 

「たくよー、何かと思えば文化祭擬きの手伝いって…」

「カー君!手が止まってるっ!!」

 

琴音の鋭い声に「へーい」と返して、作業を再開する。

やがて体育館の装飾とパイプ椅子の設置が無事に終了すると戒は腰を軽く叩いてから伸びをする。

柊介が手伝いをしてくれた戒たちに労いの言葉を掛ける。

 

「お疲れさん、助かったぜ」

「そりゃどうも。んで、何をやるんだよ?」

「『学院コンテスト』よ」

 

その問いに答えたのは柊介ではなく、勝気な印象のある女子生徒で長く伸ばした髪を耳に掛ける。

普通科にいたころのクラスメイト、『倉石美奈津』は数か月間のブランクを感じさせないほどのフランクさで戒に説明する。

 

「手品やダンス、歌やモデルで多彩なアピールを行って一番を競い合う…それが学院コンテストって奴よ」

「毎年の恒例行事だから、部活に入っている生徒たちはこぞって参加をするし中には目立たなかった生徒も参加したらしいよ」

 

彼女に続くように話に参加をしたのは学生服を着た男子『光仁輝明』は名前に違わない耀笑顔で説明をする。

彼も同じくクラスメイトであり、目立ちたがりなのがたまにキズだが持ち前の明るさとフレンドリーさから数日でクラスの男子と女子と打ち解けたこともあるほどだ。

彼女らの説明を聞いた琴音は「へー」と楽しそうに目を輝かせる。

彼らは、入学から少しして忍学科に編入したので半蔵学院の表向きの行事は体験したことがないのだ。

特に琴音はこういった祭りは好きなのである。

そんなことを思いながらも戒は装飾が施された体育館を見渡しながら、柊介ともう一人の男子生徒との会話に入る。

 

「でも、参加する生徒っているのか?」

「結構いるらしいぜ、優勝者は一週間分の食券が手に入るし一躍人気者だ」

「……でも、人気者になったらなったで大変そうだけどね」

 

もう一人の男子生徒…輝明の幼馴染で何処か大人しそうな雰囲気の『佐藤佳右』が苦笑いするように話す。

今まで忘れていた高校生らしい会話を楽しんでいると、一般生徒たちが次々に体育館から入ってくる。

「たまには年相応に楽しもうかな」と戒は一番後ろの余分な座席に琴音と座った。

 

 

 

 

 

「レディース&ジェントルメン!さぁ、やって参りました半蔵学院コンテスト!通称『H・Zコンテスト』!!司会はわたくし、『喋栗益雄』が致しますのでよろしくお願いします!」

『うおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!』

 

ステージから現れたサングラスに蝶ネクタイの玩具を首に取りつけた男子生徒がマイクを片手に饒舌なトークを進めると、生徒たちの叫びが聞こえる。

ちなみに、輝明や佳右はステージのスタッフをやっているらしく姿が見えない。

その盛り上がりに戒と琴音は驚くが司会はそれに喜ぶように進行する。

 

「おっしっ!!盛り上がってくれてこちらも嬉しいぜっ!それじゃあ、最初のメンバーはこいつだっ!本当はバラードの響き語りが大好きな軽音部…ペンネーム『MITSUO』だああああああああっっ!!」

 

司会の紹介と同時に、現れたのは見るからにパンクロックな服装をしている男子生徒だったが、いざギターを構えると見た目とは正反対の美声とギターの音色を奏でる。

そのあまりのギャップに全員が驚きながらも演奏が終わったころには拍手の喝采であり照れ臭そうにステージからはける。

その後も、可愛らしい衣装でダンスをする女子や二人組でコントをする男子生徒たちやボディビルダー部の机を使ったジャグリングなど目を奪われるようなアピールに観客や先生たちのボルテージも上がって行く。

そこで、突然司会が歓喜の声をあげる。

 

「おおっと!ここで乱入者の登場だっ!!小粋なチャレンジャーは……ミスター、X?」

 

そう名乗った瞬間、ステージのライトが突然消える。

観客や生徒たちがざわめく中、ステージに突然二つのライトが照らされた。

そこにいたのは一体の異形…紫と赤の光沢の有る派手な格好をした奇術師の衣装と、ピンスポ型のモノアイにピエロの様な仮面と赤いボールのような鼻。

突然の出来事に生徒や先生たちはもちろん、戒や琴音もしばらく間固まってしまう。

 

『ヒャハハハハッハ!!ミーはミスターXッ!またの名を「スポット・エラー」!レディー&ジェントル!以後お見知りおきを~』

 

おどけるように自身を紹介したスポット・エラーはモノアイから強烈な光と同時に光線を発射して体育館の上にある暗幕を焼く。

それを見た生徒たちは本物の怪物にパニックを起こす。

 

「ば、化け物だああああああああああああああっっ!!?」

『わあああああああああああああああっっ!!』

 

生徒の一人の叫びに木霊するように生徒たちは我先にと体育館から逃げようとするがパイプ椅子や人数のせいで思うように動けない。

 

「落ち着けみんなっ!先生の指示に従って列になって逃げろっ!!」

 

「先生!」と柊介は近くにいた先生に呼びかけて、生徒たちのほとんどが逃げたのを確認した戒はステージ上で派手に暴れているスポットを蹴り飛ばして怯ませる。

その隙に気絶をしていた司会を琴音がステージの上手まで引っ張り、戦闘の準備が整った。

 

【DRAGON!!】

「変身!」

【RIDE UP! DRAGON! 牙の連撃!RED KNIGHT!!】

 

変身を遂げたアーサーは、先制攻撃とばかりに跳び蹴りを仕掛けるがスポットはそれを躱して軽快なステップを踏む。

 

『おおっと、ユーはミーのステージにはノーサンキュー!ご退場願おうか?この世からもねっ!!』

 

甲高い声でそう告げたエラーカセットの人格に、答えるようにスポットは掌に備わっているスポットライトとモノアイから目くらましをする。

強烈な光にアーサーが顔を両腕でガードすると、その隙を狙うようにスポットは先端がフックとなった杖で殴り飛ばさそうとするが、彼はそれを防いで逆にカウンターをする。

 

【MAGICAL ARTS! BOWABOWA KACCHI-N!!】

「オラッ!」

『グヘッ!?ヒャッハハハハ……』

 

炎を纏った蹴り技を受けて怯みながらも、スポットは不気味に、それでいて楽しそうに笑う。

その様子にアーサーはグレンバーンを召喚して構える。

 

「何がおかしい」

『ヒャハ!やっぱり目立つのは楽しいって…そう思っただけさっ!!』

 

道化師のように笑いながらスポットが三つのライトから強烈な光をアーサーに浴びせた。

先ほど以上の光に顔を背けてしまう。

光が治まったころには、既にスポットはいなくなっており琴音とアーサー…そして気絶している司会だけが取り残された。

 

 

 

 

 

当然、怪人が出たことでコンテストは一時中断となり隣の空き教室で戒と琴音、そして柊介の三人が舞っていると、教室に斑鳩と葛城が入ってくる。

自分の姉が来たことに柊介は驚きの言葉を口にする。

 

「姉さん、どうして?」

「学院にエラーが現れましたからね、刑事に扮して葛城さんと共に調査する予定です」

「まぁ、アタイがこの中じゃ一番大人っぽいからな」

 

弟からの問いに斑鳩は微笑んで答える、見れば葛城の衣装も刑事らしいスーツ姿であり腕章もつけているので何処からどう見ても警察関係者に見えるだろう。

飛鳥や柳生、雲雀の三人は怪しい行動をしている生徒がいないか見張っているのだと言う。

しかし、きちんとスーツを着こなす斑鳩と違って葛城はシャツの胸元のボタンを開けているため嫌でも気になってしまう。

少し頬を赤らめている戒の視線に気づいたのだろう、葛城は楽しそうに彼に近づく。

 

「どうした?久しぶりにお姉さんのおっぱいが気になるのか、ん~っ?」

「ちょっ///」

「はいはい、やめよーね葛姉。カー君をからかうのは」

 

からかおうとする彼女を琴音が笑って制していると、今度は美海と佑斗、それに続くように霧夜が入ってくる。

 

「どうでした、美海姉さん」

「中止にすべきだって進言したけど、犯人に先手を打たれていたわ」

「校長の部屋にこんな手紙が置いてあった」

 

佑斗が袋に入っている脅迫状を彼に見せる。

ゴチャゴチャにデコレーションされたその文面は長々と書かれていたが要約すれば「中止にしたら校舎を破壊する」であり、その証拠を裏付けるように窓ガラスが光線で焼き切られた痕跡もあった。

 

「しばらくは、犯人の要求通りに進めるしかない。幸い、校長も忍学生と政宗警視たちの捜査を認めてくれた」

 

方針としては、コンテストを通常通り進めるしかなくステージには残りの参加者たちが待機している最中らしい。

「犯人の目的は一体」と霧夜は顎を手に当てて考える仕草をするがそれに対して口を開いたのが戒だ。

 

「恐らくですが、今回の犯人はステージにいた生徒たちだと思います。体育館にいた生徒たちだったら席から離れないといけないし、俺と琴音は後ろの座席にいました」

「そう思って参加者に話を聞きましたがチームやコンビだった生徒たちはシロと考えて良いと思います」

 

斑鳩のその言葉に断言するように戒も頷くと、今度は葛城が口を開く。

 

「念のため、ステージのスタッフ…お前のクラスメイトだっけ?二人にも聞いてみたぜ。定位置にいたらしいがあまりぱっとしていない。最後に避難したのもこの二人だ」

 

「ふむ」と戒は考える仕草を取る。

彼女たちの捜査能力は信用出来るし、かつてのクラスメイトを疑うのは心苦しいがこれ以上被害を拡大させないためにも頭を働かせようとした。

その時、柊介のスマホに着信が入り、「すいません」と一言謝ってから電話に出る。

 

「もしもし、どした倉石?……はぁっ!?ど、どういうことだよっ!!お、おいっ!」

 

電話の相手…学級委員でもある倉石だったため「説教か何かか?」と少し警戒していたが彼女の話している内容に顔を青ざめると慌てて問い詰める。

しかし、倉石は電話を切ってしまい通話が終了する。

 

「くそっ!」

「どうした柊介?」

「倉石が、怪物を…エラーを見たってっ!!」

 

その言葉に全員が驚きを露わにしており、戒が慌てて彼に詰め寄る。

 

「場所はっ!?」

「体育館の近くにある待機室だ!」

 

柊介から言葉を聞いた戒はアーサードライバーを装備して窓を開けてそこから飛び降りながら、起動したリズムカセットを装填してサイドグリップのトリガーを引いた。

 

「変身っ!」

【RIDE UP! RHYTHM! 音色と踊れ!GREEN BEAT!!】

 

軽やかに着地すると、体育館へと急いで向かった。

 

 

 

 

 

倉石美奈津は吹奏楽部の部員たちの避難を誘導しながら共に怪人…スポットから逃げていた。

友人を応援しようと彼女たちが待機している部屋に訪れて差し入れを持ってきたのだが、突如現れたスポットが部員を襲い掛かろうとしたのだ。

ペットボトルを投げて怯んだ隙に彼女たちを非常口から逃がして校舎の裏へと逃げるがスポットはしつこく追いかけてくる。

やがて、足元を見ていなかったのか倉石は転んでしまう。

 

「美奈津ちゃんっ!?」

「良いから逃げてっ!」

 

友人が自分に駆け寄ろうとするが、逃げるように促しスポットを強気な視線で睨む。

 

『ヒャッハハハハハハハハハハハッッ!!!吹奏楽部より先にミーのパフォーマンスを見せてあげるよんっ!!』

 

スポットの攻撃に倉石が目を強く瞑った時、緑色の矢が怪人胴体を射抜いた。

突然の攻撃に怯んだ隙を狙うように複数の矢が不規則な軌道でスポットを襲うと、煙と火花を上げながら地面を転がる。

 

「倉石っ!」

「猿飛君」

「良いから、早くっ!」

 

柊介が尻もちをついてる彼女の肩を持って遠くへ離れると、アーサーはピアノアローを構えて対峙する。

同時に、周囲の景色が一瞬だけ反転すると琴音たちが武器を構えて現れる。

忍結界の中でなら、いくら暴れても人に見つかることはないし器物が壊れることもない。

万全の準備を整え、戦力的に不利であるにも関わらずスポットはただただ笑うだけだ。

 

『ヒャッハハハハハハハハハハッッ!!ヒャハハハハハハハッ!』

 

スポットは黒いエラーカセットを投げて複数のポーントルーパーを召喚する。

まずは、忍転身をした斑鳩たちがポーントルーパーたちと激突する。

バトンやカラーボールを持ったポーントルーパーは思い切り投擲して斑鳩を攻撃するが、それを回避して飛燕で次々と切り伏せて行く。

 

「秘伝忍法…『凰火炎閃』っ!!」

 

魔力で具現化させた蒼い鳳凰を前方に飛ばし、群がっていたポーントルーパーを破壊する。

葛城も、バク点をしながらこちらへ近づいてくる個体を蹴り飛ばし、上空から攻撃を仕掛けようとする個体をサマーソルトで迎撃する。

 

「そらよっ!!」

 

彼女の秘伝忍法『トルネードシュピンデル』で中心に竜巻を発生させると、周囲を攻撃上空で襲ってきたポーントルーパーを撃破する。

琴音はハルバードで囲うように襲ってきたポーントルーパーを吹き飛ばし、距離を詰めてきた個体に膝蹴りを浴びせて怯ませてから武器で殴り飛ばす。

美海や佑斗も格闘術で相手の攻撃を絡め取りながら、着実に数を減らす。

その一方で、アーサーはスポットを相手に優勢だった。

 

「シュートッ!!」

『ぐっ!!ヒャハ、まだまだっ!』

 

ピアノアローの狙撃を受けながらも、スポットは武器である杖を振るってアーサーを攻撃しようとするが、彼は難なくそれを躱すとピアノアローの斬撃を浴びせる。

しかし、この戦いに乱入者が現れる。

 

『こらこらぁ、六対一は卑怯だろぉ。お兄さんは見過ごせないねぇ』

『ユグドラシルの借り、返させてもらうぜぇっ!!』

 

デッド・エラーとレッドゾーン・エラーは、アーサーに狙いを定めると其々武器を召喚して襲い掛かる。

突如現れた助っ人にスポットは楽しそうに笑う。

 

『ヒャッハハハハハハッ!!ナイスだよっ!それじゃ、こうしてあげようかなっ!!』

 

スポットは身体から光を発しながら光線をアーサーに放射する。

 

「ぐぁっ!」

 

ダメージを受けたアーサーを狙うようにレッドゾーンの大剣が直撃して吹き飛ばす。

「カー君!」とポーントルーパーを片付けた琴音はデッドに向かってハルバードを叩きつける。

確かな手応えと共にデッドは膝から崩れ落ちる。

しかし…。

 

『駄目だなぁ。そんな攻撃じゃお兄さんは倒れないよぉ』

 

攻撃を受けた箇所から紫色の魔力を零しながら、デッドは琴音のハルバードを掴んで地面に叩きつける。

それを助けるように斑鳩や葛城もデッドに攻撃を仕掛けるが攻撃を受けている本人は魔力を零すだけである。

 

『お兄さんを倒す気があるならぁ、ちゃんと攻撃をしなよぉっ!!』

 

やがて苛立ったように、デッドは彼女たちを振り払うと黒い剣でアーサーとの距離を詰めて切り裂いた。

 

「ぐああああああああああっっ!!」

 

思考が停止するほどの激痛と同時に地面を転がるアーサー。

二体の幹部各の力にどう対処をすべきか頭を回転させると、ある妙案が思い浮かぶ。

そして彼が取り出したのはウェルシュが解析していたミラージュカセット。

 

『待て、戒っ!?危険だっ!変身をしたらどうなるか分からないぞっ!!』

「でも、今はこれに賭けるしかないっ!!俺を信じてくれ、ウェルシュッ!」

『分かった、こちらでも出来る限りのことはするっ!!』

 

ウェルシュの許諾を得たアーサーは例のミラージュカセット……『シノビカセット』を構えてスイッチを押した。

 

【SHINOVI!!】

 

背中に刀剣を携えた紫色の忍者をデフォルメさせた絵柄のミラージュカセットを、リズムカセットを外したスロットに装填して、『あの掛け声』と同時にグリップのトリガーを引いた。

 

「忍、転身っ!!」

【旋風無双!HIGH SPEED CHAMBARA!!】

 

電子音声が鳴り響くと、アーサーを覆うように強烈な風の渦が吹き上がる。

今まで感じたことのない魔力量に美海はおろか、斑鳩たちも風の余波に気を付けて彼の方を見る。

やがて、風を振り払うように『新たな姿を得たアーサー』が腕を振るった。

 

「はぁ…はぁ…!ぐっ!!」

 

黒とアメジストカラーの和風の軽鎧に身を包み、マスクの下部にはクラッシャーに上部には金色のバイザーがはめ込まれている。

自身の内部で連鎖的に爆発する魔力に苦しげな息を荒げながら、水色の複眼で標的を睨む。

『仮面ライダーアーサー シノビリンク』はすぐにシノビカセットを必殺技のホルダーにセットして、バックルにある赤と緑のボタンを順番に押す。

 

【ATACK ARTS! DENKOUSEKKA!!】

【MAGICAL ARTS! BO-FU-NINJA!!】

「……ふっ!」

 

『超加速』と『突風操作』を発動した彼はドラゴンリンク以上の凄まじい速度でレッドゾーンに左足を繰り出した。

 

『があああああああああああああああああっっ!!!?』

 

あまりのスピードに目が追いつかなかった彼はなす術もなく、火花を上げながら地面を転がる結果となる。

「何っ!?」と焦りを見せたデッドを横目にアーサーは召喚したグレンバーンにシノビカセットをセットして、居合の構えを取る。

 

「我流秘伝忍法『乱閃』…!!」

『くっ?なっ、そんな…!?』

『ヒャハッ!?こ、こっちに…!』

 

爆発させた魔力から発せられるスピードでグレンバーンを抜刀すると、デッドとスポットに向かって無数の斬撃を浴びせる。

デッドたちが反撃する暇もないまま、彼らもレッドゾーンと同じく火花を上げながら地面へと吹き飛ばされる。

隙が出来たのを確認したアーサーは再度突風を起こすと、超加速で全員を抱き抱えてその場かた立ち去った。

To be continued……。




 今回の怪人…スポット・エラーはホワイト・ラムさんからいただきました!ホワイト・ラムさん、誠にありがとうございます!ピエロがモチーフでしたが独断でスポットライトなどの器具もモチーフに取り込みましたが如何でしたか?お気に召さなかったらすいません(汗)
 後編に続きます、ではでは。ノシ

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