仮面ライダーARTHUR 王の名を持つ仮面の騎士   作:名もなきA・弐

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 えー、今回はミルキーポップを登場させたのですが……マジで申し訳ありませんっ!!(土下座)、ネタが思いつかなかったので一話完結となってしまいました。
 アホみたいに多重連載をしていたことが祟ったのか本編の更新が遅くなってしまいました、そこにリアルがあるので遅くなった挙句、完成度の低い作品となってしまいました…ごめんよミルキーポップ(泣)
 ですので、今回は一話完結です。それでは、どうぞ。


COMBO31 アイドル×植物

ありきたりな構造となっている舞台は、この時ばかりは極めて幻想的な場所となっていた。

大き目なステージは色取り取りのスポットライトで照らされており、それにマッチした音楽と歌声が響き渡る。

ライブ会場となっているステージでは五人組の少女が踊り、笑顔で歌を歌っていた。

可愛らしくも豊満で健康的な彼女たち…『アイドルユニット Milky Pop』は自分たちのために集まってくれた観客たちに感謝の気持ちを伝えるように歌声を響かせる。

ギターやキーボードの音色がポップに奏でるミュージックをバックに、彼女たちは笑顔で歌い続ける中それを聞いている影があった。

その人物は彼女たちを照らしているスポットライトを吊り下げた上部に立っており、ステージへ釘づけとなっている観客たちはおろかMilky Popのメンバーやスタッフたちも気づかないだろう。

作業服を着てスタッフへと成り済ました『彼女』はポケットからエラーカセットを取り出して起動させた。

 

【LOADING…GAME START…】

『……耳障りだ』

 

緑と茶色を基本カラーにした植物ような身体に透明なケースを模した装甲で覆っている赤い花と黄色いモノアイを持った頭部の怪人『プラント・エラー』は右腕を園芸用のハサミのような刃へと変形させると、スポットライトを支えているチェーンとロープに切り込みを入れていく。

ゆっくりと力を入れる度に音を立てていくと、プラントは何のためらいもなくチェーンとロープを切り落とした。

 

 

 

 

 

支えを失ったスポットライトはそのまま重力に従って落下していく。

自由落下に任せたスポットライトは、ピンクと白のアイドル衣装を纏った黒髪の少女…グループの中心的存在でもある『舞』の頭部へと当たり、赤い花をステージ上に咲かせた。

……はずだった。

 

「危ないっ!」

 

そんな言葉と共に突進してきた少年によって舞の身体はステージの中央から大きく外れてしまう。

多くの人間が驚き憤る中、けたたましい音と共にスポットライトが落ちた。

突然の出来事に全員が困惑する中、少年…戒は周囲を確認する。

そして、自分が庇った少女に怪我がないことを確認すると安堵するように息を吐くが我に返った舞が呟いた。

 

「あ…血……」

 

彼女の呟きの通り、戒の右腕は袖が切られておりそこからうっすらと傷が見える。

恐らく先ほどの事故で掠ったのだろう、彼もそれに気づいたが人差し指を口の前に立てて「気にしないで」と彼女に伝えると、逃走しようとするプラントを追いかけ始めた。

その際、自身の生徒手帳を落としたのを気づかずに。

 

 

 

 

 

「待てっ!」

『ちぃっ!しつこい子どもだっ』

 

しばらくは追いかけっこが続いたが、周囲に誰もいないのも確認したプラントは女性の声で呟くと、振り向いて自然の多い公園で戒と対峙する。

一方の戒もアーサードライバーをセットして、ドラゴンカセットを起動させた。

 

【DRAGON!!】

「変身!」

【RIDE UP! DRAGON! 牙の連撃!RED KNIGHT!!】

 

アーサーへと変身すると、グレンバーンによる抜刀術で攻撃する。

しかし、プラントはそれを右腕で防ぐと切れ味の鋭いハサミでアーサーを斬り裂こうとする。

プラントの胴体を蹴り飛ばして怯ませると、グレンバーンの刀身と鞘を組み合わせた連続攻撃と足技でアーサーは追い詰めて行くがプラントはまるで予知でもしているかのように攻撃を躱し、防いでいく。

 

「くそっ!攻撃が当たらないっ!」

『無駄だっ!我々は常に自然と共にある、貴様らには負けんっ!!』

 

男性の声でそう叫んだプラントは左腕を蔓へと変形させてアーサーを拘束する。

力を込めて締め付けながらも、プラントは腕を引いてハサミの餌食にしようと近づけさせる。

「それなら」とアーサーは白いボタンを押した。

 

【MAGICAL ARTS! BOWABOWA KACCHI-N!!】

「オラァッ!!」

『があああああああああああああああああああああっっ!!?』

 

両脚に炎を纏ったアーサーは、助走を付けて軽く跳ぶと勢いのままにドロップキックをプラントの胴体に直撃させた。

全身が植物となっているプラントには大ダメージであり燃え盛るに苦しむように地面を転がる。

拘束から解放されたアーサーが左手をスナップしながら近づこうとした時だった。

 

『邪魔はさせないわ』

 

現れたのは緑色の装甲に、全身から植物を生やした狩人を思わせるようなエラー…ユグドラシル・エラーだ。

両腕に装備したボウガンを構えながらプラントを庇うように前に出ると、鎮火したプラントの男性の人格が喜びの声をあげる。

 

『おぉっ!世界樹様っ!まさかあなたが来て下さるとは…!!』

『あなたに力を与えたのは私だから。それだけよ』

 

短く会話を終えた、ユグドラシルは植物性の毒を持ったボウガンの矢を弾幕のように発射させるがアーサーはそれをグレンバーンで焼き払い、彼女との距離を詰める。

 

『…っ、まさか刀だけで。でも!』

「遅いっ!」

 

木の枝を模した槍を胴体から射出しようとするが、それよりも早くアーサーの居合がユグドラシルを切り裂いた。

火花を上げながら仰け反った彼女はプラントに支えられながらも、アーサーの方を見据える。

 

『ふぅ、嫌ね。子どもだと思って油断していたわ…退くわよ、プラント』

『御意っ!』

 

その言葉と共にユグドラシルとプラントは全身を植物に包み込ませると、そのまま姿を消した。

戦闘が一先ず終了したのを確認したアーサーは変身を解除してその場を後にした。

 

 

 

 

 

その日の翌日、教室で戒は死んだような表情をしていた…理由は簡単、昨日生徒手帳を落としたからである。

どうして落としたのかを自己嫌悪する戒に対して、琴音は呆れたように話しかける。

 

「もう、ポケットに入れっ放しにするのはカー君の悪い癖だよ」

「だから、忘れてたんだって」

「そんなこと言って、小さいころからずっとじゃん。ポケットのティッシュを入れっ放しにしておばさんに怒られてたのに」

 

普段からポケットに入れた物を中々出さない戒は時たまに、こういったアクシデントがある。

最近になってようやくカバンやらに入れるようになったのだが今回もその癖が出てしまったのだ。

今日何度目かのやり取りを琴音としながらも柳生が話題を変えるように口を開く。

 

「だが、意外だな。オレはアイドルに興味がないと思っていたが…」

「わたくしの弟に誘われたのです。ですが、事故が起きるとは思ってもいなかったようですが…」

 

戒の代わりに答えたのは斑鳩だ、何を隠そう戒がアイドルのライブに訪れたのは彼女の弟でもある柊介に誘われたからであった。

ライブに行くことなど初めてのことだったので、それに了承したのだが今回の事件に巻き込まれてしまったのだ。

ちなみに戒がプラントと交戦している間、柊介はパニックとなっていた観客たちをスタッフと共に落ち着かせていたらしい。

何処に失くしたかを戒が必死に思い出そうと頭を働かせている時だった。

 

「…もしもし?」

『兄様、依頼人が来ているのですが…』

「分かった」

 

短く言葉を終えると、戒は準備を整える。

琴音も当然、ついて行くが飛鳥と斑鳩も立ち上がる。

 

「戒君、今回は私たちも行くよ。一人よりも三人四人の方が良いでしょ?」

「わたくしも行きます。弟が夢中になっているアイドルにも興味がありますし」

「分かりました。えっと、残りの三人は」

「アタイはパス。霧夜先生から忍務を任されちまったから」

 

二人の提案に戒は快く了承する。

葛城は忍務で、柳生や雲雀も何やら別件があるらしく同行は無理とのこと……今回のメンバーを連れて戒は自宅へと直行した。

 

 

 

 

 

政宗探偵事務所へと戻った戒たちはリアに案内されるまま今回の依頼人であろうスーツを着た女性とマスクをつけたコート姿の女子と対面する。

 

「探偵の門矢です」

「マネージャーの『薬師寺』です。それと…」

「Milky Popの舞です。あの時は、助けてくれてありがとうございます」

 

そう言って、舞はマスクを外して戒たちに素顔を見せる。

当然今人気アイドルを生で見た飛鳥と琴音、リアは驚いているがあまりアイドルに関心のない戒は軽く頭を下げる。

そうして、薬師寺は依頼内容を口にした。

 

「『(スメラギ)植物園』でのライブの護衛…それが今回の依頼ですか?」

「えぇ。最初は悪戯だと思っていたのだけど…昨日の事件に、今日事務所にこんな物が」

 

戒の言葉に、頷いた女性…ミルキーポップのマネージャーは一枚の紙切れを見せる。

文字はかなり歪に書かれており、何とか読めるがその内容はかなり不気味なものであった。

「皇植物園でのライブを即刻中止しろ。さもなくば自然の代行者が裁きを下すであろう」といった不気味な文面であり数週間前にも似たような内容の文面が届いていたのだ。

そして昨日の事故が起きたのだ。

警察にも伝えたがどうしても対応が遅れるらしい、だが話を聞いていた女性の刑事…「美海が政宗探偵事務所に行けば良い」と教えてくれたのだ。

 

「あ、これ…生徒手帳」

「ありがとうございます。アイドルに落し物を返してもらえるなんて一生の物の思い出ですね」

「そ、そんな…///」

 

笑って感謝の言葉を口にした戒の笑顔に、舞は顔を赤くするがそれに気づいた琴音が薬師寺に尋ねる。

 

「それで、皇植物園ってどのような場所なんですか?」

「最近話題になっている植物園よ。マイナーだけど、珍しい植物も一杯あるの」

 

彼女の説明に琴音は「へぇ」と納得する。

皇植物園はあまり知名度がない植物園なのだがメジャーな木々や植物から図鑑やインターネットでしか見たことがないような花々が多く確認出来る知る人ぞ知るメジャースポットなのだ。

当初からその神秘的な場所でライブを行う予定であり、皇園長や助手兼職員である『月読御門』らも認めていたのだが一人だけ反対している人物がいた。

『佐野蔵一心』は職員の中でも若手の方だが、植物への愛着が強いこともあり「大音量でストレスを与えたらどうするつもりだ」と抗議したこともある。

実際のライブでは最低限の配慮はするのだが、納得しなかった職員でもあった。

その話を聞き、調べる必要があると判断した戒は依頼を受けることを伝える。

 

「それじゃ、よろしくお願いするわね」

「お願いします」

 

こうして、ミルキーポップの護衛が始まった。

 

 

 

 

 

 

「こちらA班、異常なし。どーぞ」

『B班、同じく異常なし。どーぞ』

 

皇植物園の事務所内で、戒たちは無線機を使いながら怪しい人影がないか見回りをする。

やはりと言うべきか、現時点で一番怪しいのが佐野蔵一心であり彼は挨拶こそしたがそれきり自分の作業場へと戻ってしまったのだ。

しかし、それだけで容疑者と捉えるほど戒はバカではない…職員全員に警戒しながらも戒たちは見回りを続ける。

戒と飛鳥、琴音と斑鳩、リアと千歳の二人組に分かれて探索をしているのだが…。

 

「こちらA班、異常なし。それと小腹が空いた、どーぞ」

『B班、こちらも異常なし。事件終わったら好きな物を食べなよ、どーぞ』

『こちらC班。私もお腹が空きました、ついでに異常がありません。どーぞ』

 

琴音とリアが軽くふざけたやり取りをしながらも、周囲を確認していると通りがかった白衣の男女…皇園長と月読の二人だ。

柔和な笑みを向けた彼らに対して戒と飛鳥は挨拶をする。

 

「こんにちは」

「こんにちは。お仕事頑張ってね」

 

どう考えても子ども扱いしているが、それを一々気にしていたら仕事など出来ない。

同じく笑顔で返した二人はその場から離れて調査を開始する。

三組に分かれて植物園に異常がないか確認をしていると佐野蔵が周囲を気にしながら、そそくさとある部屋へと入って行った。

 

「こちらA班、怪しい挙動の職員を発見。追跡する、どーぞ」

『C班了解。パインサラダを準備して待ってます、どーぞ』

『それただのフラグじゃん。どーぞ』

 

そんな余裕があるのか、ふざけているのか分からないがそんなやり取りをしてから飛鳥と共にゆっくりと佐野蔵の入った部屋を扉の隙間から覗き込む。

明るい部屋だったが彼の後ろ姿の白衣しか見えず、屈み込んで何やら物を取り出しているようにも見える。

怪しい動きに戒と飛鳥はゆっくりと近づく。

 

「何をしているんですか?」

 

彼の言葉に、佐野蔵はびくりと身体を震わして右手に持っていた物を握ったまま二人の方を振り向いた。

佐野蔵は「舞ちゃん命!」と書かれたうちわを所持しており他にもハッピやらサイリウムやらが両腕から零れ落ちる。

 

「あわわ…」

 

慌てて落ちた物を拾おうとしている彼に対して、飛鳥が呆然としている中で戒は呆れたような口調で質問する。

 

「何ですか、それ?」

「あ、あれだよ…サイン色紙とハッピ」

「えっと、どうしてそれを…」

 

忙しなく目線を泳がせながら答えた彼に対して、飛鳥は追いつかない頭で問いかけると佐野蔵は観念したように口を開いた。

 

「ぼ、僕…舞ちゃんの大ファンなんだっ!そりゃ、ここの植物のことを考えたら反対したけど…マネージャーさんの言葉を聞いて大丈夫だったから僕も楽しみにしてたんだ」

「ちなみにですけど、事務所に手紙を送ったりとかは…」

「無理無理無理!僕ファンレターを送ったことなんかないよっ!!」

 

慌てたようにまくし立てる彼を観て戒はため息を吐く。

嘘をついているようにも感じないし、考えられない…思考を切り替えた戒は素を見せた佐野蔵に対して質問をする。

 

「怪しい人はいませんでしたか?例えば、変な動作をしていたとか」

「べ、別に見なかったけど…でも、あんなに真面目な月読さんがあっさり頷いたのが珍しかったってのはあったけど」

「そうですか」

 

「ありがとうございます」と一先ずお辞儀をした戒は飛鳥と部屋に出ようとした時だった。

 

『こちらC班っ!兄様っ、プラントが襲撃しましたっ!!融合者は…』

「月読御門だろっ!場所は…!?」

『二階の舞さんたちが控室にしている空き部屋です!…このっ!』

 

電話の向こうから激しい物音が聞こえており、恐らく戦闘が開始されているのだろう。

廊下を蹴って目的の場所まで到達した戒の目に入ったのはポーントルーパーと交戦するリアたちと舞に向けてハサミを向けるプラント。

戒と飛鳥の行動は早かった。

飛鳥は残りのメンバー…如水・篝・珠姫・夕霧の四人を庇いながら戦っているリアたちの加勢に入るように二刀の小太刀で相手を斬り裂く。

怯んだ隙を狙って千歳は火縄銃で狙撃し、リアは召喚した剣を投擲して倒す。

それを見たプラントは左腕を振るって鞭のようにしならせた蔓でリアたちを一掃しようとするが、後から現れた斑鳩と琴音が飛燕とハルバードを振るって切断する。

リアたちがポーントルーパーを倒している一方、戒はプラントの胴体を蹴り飛ばして舞を庇うように立つ。

 

『自然を食い物にして、傷付け、泣かせる者に裁きを…』

『処刑執行。歴史の中で自然が味わった痛みを思い知れ!!』

『……完全に暴走したか』

「だったら、ここで止める!」

 

アーサードライバーを装備した戒はドラゴンカセットを起動させてスロットに装填すると、サイドグリップのトリガーを引いた。

 

「変身っ!」

【RIDE UP! DRAGON! 牙の連撃!RED KNIGHT!!】

『ふんっ!』

 

変身したアーサーは窓からプラントを蹴り落とそうとするがそれを抑え込むと、二人揃って外へと飛び出す。

グレンバーンを構えたアーサーは脚力強化をして高速移動で撹乱すると、炎を纏った斬撃をプラントにぶつけようとするが、不意を突かれたにも関わらず防御する。

 

「また攻撃を防がれた…!」

 

仮面の下で苦虫を噛み潰したような表情をするが、昨日のように攻撃を防いだプラントに対して焦りを覚えながらも冷静に考える。

プラントはどうやって攻撃を防いでいるのか、どうして防御されるのか、昨日のことを思い返す。

目でこちらの動きを観察している様子はないし、身体に何か細工されているわけでもない、それならばどうして…そんなことを考えながらも、ある考えが思い浮かぶ。

 

「一か八かだっ!」

【RHYTHM!!】

【RIDE UP! RHYTHM! 音色と踊れ!GREEN BEAT!!】

 

リズムリンクにチェンジしたアーサーはピアノアローで狙撃する。

プラントはそれを防ごうとするが、不規則な軌道と共に彼女の胴体に命中する。

 

『ぐっ、何っ!?』

「やっぱりな、心を読む能力だったら俺の攻撃も防げるはずだ…植物のモチーフから考えると…お前の能力は『周囲の植物の声を聴く』ことだ」

『分かったからどうした?我々はここに生きる自然のために戦うのだっ!木々を枯らし破壊する人間たちを間引く…』

『あのアイドルたちが良い例よ。自然のことを何とも思っていない最近の人間たちの歌なんて聴かせられると思うっ!!そうよっ、ワタシはシゼンのダイベンシャ…ジャマをするヤツらはここでハイジョするううううううううううううっっっ!!!!!』

 

途中からエラーカセットの声と混じり合ったような声を張り上げながら右腕のハサミで攻撃する。

アーサーはそれを紙一重で躱すが、ピアノアローが切断されてしまう。

その光景にぞっとしながらも新たなピアノアローを魔力で生成して構えた時だった。

 

「それは違いますっ!」

 

突如、マイクを通した声が響き渡る。

声の方を向くと設置されたステージにはミルキーポップが集まっており、舞が自前のマイクスタンドを持っている。

突然の出来事に呆然としている二人に対して、舞は言葉を伝える。

 

「私たちは、みんなに笑顔になってほしいから踊りと歌を続けています…でも、それはファンだけではありません」

『ナンですって?』

「私たちがこの植物園を選んだのは…ここにいる植物にも聴かせたいと思ったからです。園長さんや職員さんたちの手で育てているこの子たちにも、私たちの想いを伝えたかったから…ここを選びました」

 

訝しげに睨むプラントに、舞は自分の正直な想いを言葉に乗せる。

しかし、それに対してプラントは嘲笑う。

 

『バカなことをイわないで。そんなキベンをワタシがシンじるとオモっているの?』

「だからこそ、この場で証明します…行くよ、みんなっ!Milky Pop……」

『みんなの夢と舞い踊るっ!!』

 

五人でそう前口上を述べた彼女たちに合わせるように、いつの間にかステージにいた琴音たちがそれぞれ手に持った楽器を奏で始める。

彼女たちの歌…『Let's Try Together』は植物園に響き渡り、騒ぎを聞きつけてきた職員たちもその歌に聞き惚れる。

プラントは耳障りなライブを潰そうとするが、突如頭を抱えて動揺する。

 

『ど、どうして…?どうしてあなたタチはこんなウタをっ!?こんな、こんなふざけたことが…』

「あるんだよ、あの人たちの歌は……植物すらも笑顔に出来る。それが答えだ」

『ミトめない、こんなバカなことをミトめてたまるかああああああああああっっ!!』

 

植物たちにも裏切られたと思い、錯乱したプラントは歌っている彼女たちに飛び掛かるがピアノアローの狙撃で撃ち落とすとステージから離すように蹴り飛ばす。

 

「そんな物を使っているから聴き取りにくいんだ。お前の物語、ここで終わらせるっ!」

【MAGICAL ARTS! BEAT BEAT! RHYTHM DE BEAT!!】

 

ボタンを押すと、スピーカーから彼女たちの歌声が流れたのを確認したアーサーはステップを踏むとピアノアローを狙撃しながら軽快な動きでプラントを狙撃する。

特殊能力を使おうにも植物たちの心は彼女たちの方へと向けられており、むしろ「これ以上はやめよう」とプラントを止める声さえ聞こえてくる。

 

『ぐぅっ!ワ、ワタシはシゼンをケガすオロかモノをダンザイするためにっ!!』

「ラストコールだっ!」

【CRITICAL ARTS! COMBO STRIKE! RHYTHM!!】

 

ドライバーのスロットからピアノアローのスロットにリズムカセットをセットし、充分に音のエネルギーがチャージしたのを確認したアーサーはトリガーを引いた。

 

「いけええええええええええっっ!!!」

『あああああああああああああああああああああああっっ!!!!』

 

シューティングフィーバーがピアノアローとスピーカーからも放たれると、最後まで両腕を振るって抵抗しようとするプラントに命中すると、曲の終わりと共にプラント・エラーは爆発する。

 

「あぁ…本当に、良い曲…ね」

 

最後の最後で正気に戻った彼女は眠るようにその場から崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

事件が終わってからの二日後、戒たちは皇植物園に設置したステージの裏で待機していた。

マネージャーが事件の解決のお礼として『特等席』を用意してくれたのだ。

普段見ることが出来ない場所でのライブに、琴音や飛鳥たちがそわそわしている中で舞が戒たちの前に顔を出す。

 

「今回はありがとうね、門矢君。それに琴音ちゃんや飛鳥ちゃん、斑鳩ちゃんやリアちゃんも、みんな本当にありがとうっ!」

 

メンバーを代表してお礼の言葉を言うと、観客たちのボルテージが彼女たちを期待するように上がって行く。

マネージャーが合図を送ったの皮切りに、メンバーたちがステージに向かう中で舞は戒に何かを伝えようとするが…。

 

「ありがとう///」

 

最後にもう一度、それだけを伝えると彼女はステージの中央へと向かった。

 

「みんなー!今日は私たちのためにありがとー!!行くよ最初の一曲…『Love Wars』ッ!!」

 

彼女の元気の良い言葉と共に、ミルキーポップのメンバーは笑顔の歌を観客たちに響かせる。

ライブに来たファンや戒たち、それを見守る職員たちはおろかこの場にいる植物たちも喜んでいるように感じた。

その絆に呼応するように、ウェルシュが解析を続けているミラージュカセットが僅かに光った。

To be continued……。




 今回の怪人…プラント・エラーはエルミンさんからいただきました!エルミンさん、誠にありがとうございます!植物モチーフのエラーだったのですが、一話完結となってしまって申し訳ありません……。
 ミルキーポップは忍だったのか、ただのアイドルだったのか。それに関しては読者様の想像にお任せします。
 ではでは。ノシ

プラント・エラー CV河原木志穂・小山力也
エルミンさんからいただいたオリジナルエラー。モチーフは『植物園』・裏モチーフは『自然あふれる楽園』
植物を研究する化学者「月読御門」が自然を守りたいと言う欲望から融合変身した。基本カラーは緑と茶色だが透明なケースを模した装甲に覆われている。頭部は赤い花のようで黄色いモノアイが特徴。
左腕を蔓のように振るったり右腕を園芸用のハサミのように変形させるなど植物を自在に操る能力に加えて、周囲の植物の「声」を聞くことが出来る。これによって植物のある場所の周囲で何が起こっているか、どんな人物がいるかなどの様々な情報を得ることが可能となる。

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