仮面ライダーARTHUR 王の名を持つ仮面の騎士   作:名もなきA・弐

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 お待たせしました、今回は佑斗の視点でのお話となります。今回はVシネの仮面ライダーアクセルを少しイメージしています。
 そう言えば、今日の午後六時に生放送があるようですが諸事情で観るのは難しいかもしれません…おのれリアル。
 それでは、どうぞ。


COMBO29 逃走×追跡

「悪いっ!何も言わずに今から落ち合う場所を覚えてくれっ!!」

『えっ、ちょっと!?』

 

通話先の相手の言葉を聞かず、青年こと『片倉佑斗』は一方的に終えると自身のスマートフォンをポケットにねじ込み、両脚に力を込めた。

体力には自信のある彼だが終わりの見えないマラソンに身体は辟易とし始め、周囲への警戒も怠らないようにする。

佑斗の戦闘力ならばそこらのチンピラやポーントルーパーも倒せるが今回ばかりは事情が異なっていた。

 

「あ、あの……」

「大丈夫、絶対に助けるから!」

 

手を引きながら一緒に走っている『少女』が申し訳なさそうに声を掛けるが彼はそれを制して速度を速めた。

 

 

 

 

 

それは、遡ること数時間前になる。

 

「んー……とっ」

 

佑斗は久しぶりの休暇を満喫していた。

いつもの軍服を模した黒い仕事着とは違い、黒いズボンに白いパーカー…その上には黒いジャケットを羽織っておりその服装から彼が完全なプライベートであることが分かる。

本来ならば、上司兼恋人である美海も休暇を取りデートをする予定であったが何やら身内ごとで急用が入ったらしくキャンセルとなった。

しかし、自分が休日であることには変わりはない……一人の時間を満喫するべく佑斗は背伸びをしながらこれといった目的地を決めずに街を歩き始めた。

まずは図書館でゆっくり読書をした後、ゲームセンターで遊んでその後は喫茶店で食事でもしようかと足を進めた。

 

「……おやめなさいっ!」

 

ふと微かに聞こえた凛とした少女の声に、佑斗は思考を切り替えて声の聞こえた方まで足早に歩く。

声の方向…裏路地の方まで歩くとそこには一人の少女と三人の男性がおり、男たちの服装からお世辞にも真っ当な人物には見えないだろう。

対して少女の方は身なりの良い衣服にスタイルの良い身体を包んでいる。

少し広いオデコと三本のアホ毛が特徴の長く伸ばした薄い茶髪は軽く巻かれており、青みがかった瞳が特徴的な優雅さを持っている。

恐らく、彼女の美貌につられた連中が無理やり彼女とお近づきになろうとしているだろう、虚勢だと思っているのかニヤニヤと笑っているだけだ。

そんな状態に置かれてもなお、少女は凛とした表情で彼らの誘いを断ろうと口を開こうとした時だった。

 

「何をやってるんだ?」

 

低い声色と共に現れた佑斗に、全員がこちらを見るがそれよりも先に警察手帳(常に携帯している)を見せて男性たちに睨みを利かせる。

彼は何も言わなかったが、言わんとしていることは分かったのだろう…男性たちは舌打ちと共にすごすごと去っていくのを確認した佑斗は軽くため息を吐き、少女に話しかける。

 

「大丈夫だったか?」

「は、はい。ありがとうございます」

 

先ほどの連中よりも柔和な笑みを見せる彼に困惑しながらもお礼を言う彼女に「仕事だから」と軽く返した佑斗は自然な動作で彼女を裏路地からエスコートする。

 

「あの、すいません。差し出がましいのは分かっているのですが…その、食事の出来る場所は知りませんか?」

「近くにある、案内するよ」

 

笑顔で答えると、佑斗は付近にある喫茶店に進んだ。

 

 

 

 

 

……同時刻。

先ほどの少女にすり寄っていた男性たちは地面へと倒れていた。

微かだがまだ意識は残っておりリーダー格らしき一人はポーントルーパーに両脇を固定されている。

そして、丸いシルエットが特徴の怪人が思い切り彼を殴り、気を失わせると役目を終えたポーントルーパーは姿を消す。

 

『ふー…ふー……!!』

『…順調そうだな、おい』

 

ボイスチェンジャーで加工された声で息を荒くする怪人に対して、話しかけるのはアライブ・エラー。

後に続くようにデッド・エラーも現れ、二体は丸いシルエットの怪人と対峙する。

 

『随分と血の気が多いねぇ、君は。いや、むしろ彼らは運が良かった方かなぁ?』

「…何の用だ」

『冷たいなぁ、おい。お前がお熱になっている奴を見つけたってのによ』

 

飄々としているデッドに露骨な嫌悪感を示しながら怪人から融合を解いた青年は苛立たしげに声を出すが、アライブの挑発するように放たれた言葉に反応を示した。

 

「『胡蝶』たんが…胡蝶たんが見つかったのか!?あぁっ、行かなきゃ、会いに行かなきゃ、prprしなきゃっ!!」

 

薄気味悪いセリフを一息で喋ると、青年はデフォルメされた戦士の絵柄があるエラーカセットを起動させると、丸いシルエットの怪人はポーントルーパーを引き連れてその場を後にする。

それを見届けたデッドは腕に装着してあるエラーブレスからカセットを抜き取り、アライブの身体と一つになって元の姿へと戻る。

 

「完全に染まっているみたいだねぇ、あの様子だと」

『実の両親を消しときながら、素知らぬ顔で仕事してたんだ。絶望に染まったも同然さ』

 

完全に、エラーカセットに毒された怪人を話題にしながら一人と一体も後にするのだった。

 

 

 

 

 

喫茶店で昼食を済ました佑斗は先ほど助けた少女…『胡蝶』と談笑していた。

話を聞くに、彼女は有名なお嬢様学校『都立薄桜女学院』に所属する風紀委員長であり、束の間の休日を楽しそうと地域の防犯も兼ねて外の世界に足を運んだところ、チンピラたちに囲まれたらしい。

一応、護衛の運転手とメイドがいたのだが彼女の好奇心も相まって一人で行動している方が好きらしい。

まさかのお嬢様に佑斗も一瞬だけ面食らったが元々非常識な出来事は仕事や美海を通じて経験しているため特段驚くようなことはしなかった。

 

「だけど、すごいな。地域の防犯もしているなんて」

「そんなことありませんわ、私はただ自分のすべきことを行動しているだけですので」

 

慣れ親しんだ友人のように会話をする二人の表情には笑みが零れており、傍から見たら年の離れた兄妹にも見える微笑ましい光景だろう。

しかし、それを破壊するかのように突然、二人の後ろにある席の窓が割れると同時にある存在が飛び込んでくる。

 

「なっ…!?」

 

そこにいたのは今まで何度も見てきた異形…ポーントルーパーは突然の出来事で呆然としている人々を気にもせず、こちらに首を向ける。

 

「……くっ!!」

 

財布から代金分を出し、ポーントルーパーを店外に蹴り出すといった動作を僅か数分で終わらして、パニックになる前に彼女と共に外に出る。

彼女の手を取り、よろめきながら立ち上がったポーントルーパーを挑発しながら足を動かす。

先ほどの反応からして、あの雑兵の本体は恐らく自分か胡蝶を狙っている…理由は分からないがこのままでは危険だと判断した佑斗は器用にポケットから自身のスマートフォンを取り出し、専門家である弟分の彼に電話を掛けた。

 

 

 

 

 

そして、時間は再び冒頭へと戻る。

あれからポーントルーパーが数体登場し、自分たちへと襲い掛かってきたがその攻撃を躱してはカウンターを行い、廃工場の中へと突入する。

 

「うぉっ!?」

「きゃっ!?」

 

背後からの殺気に慌てて身を屈めてポーントルーパーの攻撃を避ける。

その攻撃が合図となったのか天井から、左右からぞろぞろと這い出てくるポーントルーパーたちに佑斗は舌打ちをする。

胡蝶は視線を彷徨わせ、何か行動に移そうとしていたが事情があるのかどうすべきか考えているようにも見える。

 

「っ!佑斗さんっ!」

「…ラァッ!!」

 

隙を狙って襲い掛かるポーントルーパーの胴体を後ろ蹴りで怯ませて佑斗は攻撃を仕掛ける。

足元に転がっていたペンキ缶を投げて気を反らし、大勢の敵を巻き込むように相手を掴んで投げ技を多用する。

ある程度を一掃したのを確認した佑斗は、再度腕を取って走り始める。

 

『っ!!』

「邪魔だっ!」

 

逃げ道を阻むようにポーントルーパーたちが立ち塞がるがスライディングでそれを対処し、高所から奇襲しようとした個体の攻撃を躱し、踏み台代わりにする。

通路にあった台車を蹴飛ばし、凄まじいスピードで滑ってくる台車にどうすることも出来ず激突する。

ポーントルーパーからの攻撃を捌いていく内に、やがて二人は廃工場から脱出するがその時、野球ボール大のエネルギー弾が地面に着弾した。

 

「っ!?伏せろっ!!」

「きゃっ!?」

 

胡蝶を庇うように地面に伏すと着弾した場所から大きな爆発が起こる…辛うじて致命傷は避けたが佑斗の脇腹にダメージが入る。

痛みに歯を食いしばりながらも攻撃が行われたであろう方向を見据える。

そこに現れたのは珍妙な丸いシルエットに手足が生えた異形…近づいてくるとその姿ははっきりと視認出来るようになり、ラメの入った水色のボディに頭部には黒いちょんまげのような装飾がある。

背後には数十体のポーントルーパーが隊列を組んでおり、規則的な動きで守るように武器を構えている。

スーパーボールと多くの人が思い描く殿様像を合わせたような異形『バウンド・エラー』を睨む。

 

「お前がっ、彼女を襲った犯人か!」

『その通り、麻呂たちの忠実な兵士たちを倒すとは見事』

 

佑斗の言葉を公家口調のエラーカセットが答えると、わざとらしい拍手をしながら彼らの元に近づく。

同時にポーントルーパーも列を崩さずに前進し、守りを完全に固めている状態だ。

 

『……やっと見つけたよぉ、胡蝶たん』

「な、なぜ私を…?」

 

バウンドがボイスチェンジャー越しでも分かる粘着質な声に胡蝶は嫌悪と恐怖を感じながらも真っ直ぐな眼差しで問いかける。

 

『答えは単純明快、お主が欲しいからでおじゃる』

 

そう喋ってから身体を反転させると、ピンク色へと変わり淡い光と共に黒い帯のような影で縛り付ける。

 

「やめろっ!!…ぐっ!」

 

佑斗は彼女を守ろうと動き出すがポーントルーパーがそれを許すはずもなく、そのまま嬲るように彼を殴り続ける。

それを鼻で笑い、バウンドがモノアイを光らせた時だった。

 

【CRITICAL ARTS! COMBO BREAK! DRAGON!!】

「オラアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」

『おじゃあああああああああああああっっ!!?』

 

電子音声と少年の掛け声と共に、炎と冷気を纏った急降下キックがバウンドを吹き飛ばした。

同時に、鎧のような装甲を纏った赤と銀色のカラーリングのバイク…ドライグハートが佑斗を襲っていたポーントルーパーたちを蹴散らし、胡蝶を拘束していた影も消滅する。

そこに現れたのはドラゴンと牙を彷彿させるような白いパーツが施された赤い騎士…腰にはゲームパッドを思わせるような赤いアーサードライバーが巻かれており、スロットにはデフォルメ化した赤いドラゴンが描かれたミラージュカセットが装填されている。

黒いスーツの上に赤い霊装を纏い、赤いマフラーを靡かせながらバウンドの方向を大きく赤い複眼で睨む。

強烈な一撃を不意打ちで受けたバウンドは忌々しげに仮面の騎士を睨みつけた。

 

『お前、何者だぁっ!!』

「騒ぎを聞きつけた、通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ……てな」

 

アーサーはそう返し、距離を詰めてバウンドの丸い身体を蹴り飛ばす。

もちろん、バウンドは自身能力で帯状の影を操って応戦するがグレンバーンで斬り捨てられ、逆に抜刀術を叩き込まれてしまう。

 

『ふんっ!』

「うわっとぉっ!?」

 

しかし、突如身体を反転させて元の水色のボディに戻るとアーサーの攻撃を防いで殴り飛ばそうとする。

紙一重でそれを躱すが先ほどとは明らかに違う威力に仮面の下で驚きを露わにする。

 

「気味悪い攻撃しやがって…」

【MAGICIAN!】

【RIDE UP! MAGICIAN! 魔法、錬成!WHITE FANTASY!!】

 

シルクハットを被った手品師がデフォルメされた絵柄のある白いマジシャンカセットを装填してマジシャンリンクに変身し、マジッグローブを装備した左腕でストレートを浴びせるがバウンドはそれを防ぐとアーサーと同じカウンターパンチで殴り飛ばす。

 

「うわぁっ!!?」

 

マジッグローブでどうにか直撃を避けるが衝撃を完全に殺すことが出来ず、数メートルまで吹き飛んでしまう。

 

『無駄だっ、ようやく解放されたこのバウンド様が…やられてたまるかぁっ!!』

『麻呂たちは絶対に倒せん…でおじゃる』

 

ボクシングスタイルで構えるアーサーに得意気な様子を見せる中、バウンドはピンク色に反転させてモノアイを光らす。

するとポーントルーパーは陣列を整え、武器を構える。

 

『麻呂たちは相手を絶対的に支配出来る、それは心ない兵士とて例外ではないでおじゃる』

 

自身の能力でポーントルーパーを意のままに操り、三人を追い詰め始めた時だった。

 

『ぎゃあああああああああああっっ!!!』

 

突如地面が爆発したかと思うと、バウンドはポーントルーパーらと共に爆風に呑まれる。

どうやら、ピンク色…所謂『支配態』は防御力が高くないのか先ほどまでのアーサーを追い詰めた屈強さはなく煙を上げながら地面を転がる。

見れば、少し離れた場所にはパトカーに乗った美海が窓から上半身を出しておりネックレスを変化させたバズーカを構えている。

 

「ナイス、美海姉さん」

『現場に直行する前に電話したのはこれだったのか』

 

ウェルシュの言葉通り、アーサーは佑斗に指示された場所に辿り着いたのだがそれよりも先にスマホで美海に連絡し…そして彼女は場所を調べ、バズーカを放ったのだ。

自慢の兵士たちも霧散したことで不利な状況となったバウンドは水色の『反発形態』へとなり、エネルギー弾を地面に着弾させて土煙を起こすとそれに紛れて姿を消してしまった。

エラーが完全に消えたのを確認したアーサーは変身を解いて、地面に腰を下ろしている佑斗に手を伸ばし、彼もそれを取って立ち上がる。

一方の美海も先ほどまで囚われていた胡蝶に駆け寄り、「大丈夫」と安否を確認し上着を彼女に被せる。

傷だらけとなった佑斗は戒の肩を借りながら彼女が無事だと判断すると、美海に視線を向ける。

 

「美海…」

「お互い、ちゃんとした休日を送れないわね」

 

大人びた笑みを浮かべる彼女だったがやがて眠そうな半目を鋭くさせ、彼の胸倉を掴んだ。

 

「それで、どうしてあなたは女子高の生徒と一緒にいるのかしら…!」

「えっ?」

 

その言葉に、佑斗は一瞬だけ面を食らう。

状況を考えれば、自分は襲われていた彼女を守るために共に行動をしていたはずだ…それは間違いない。

ならば、なぜ自分は怒られているのだろうか?

 

「佑斗さん、美海姉さんは他の女子と仲好さそうにしているのが気に入らな…ブベラッ!?」

 

少し顔を赤くして殴り飛ばした美海を見て、彼は苦笑いしながら少し不機嫌になっている彼女の頭を撫でるのであった。

To be continued……。




 今回の怪人…バウンド・エラーは麦蕎那支さんからいただきました!麦蕎那支さん、誠にありがとうございます!「バウンド」という名前と内に秘めた支配欲からスーパーボールと殿様をイメージしましたが如何でしたか?(汗)
 何だか終わっている雰囲気になっていますがバウンドはまだ生きています、果たして彼の正体とは……?
 そう言えば、エグゼイドが8月で終わるそうですが、自分としては変にグダグダになるよりは良いかなと思っているので次回作のビルドに専念したいです(小並感)
 ではでは。ノシ

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