仮面ライダーARTHUR 王の名を持つ仮面の騎士 作:名もなきA・弐
恋愛と女性の一人称視点の練習のようなものですので展開などについてはあまりツッコまないで頂けると幸いです。
それでは、どうぞ。
突然だが、門矢戒は半蔵学院と蛇女学園の教官を請け負っている…基本的には幼少時に琴音の道場で行っていた鍛錬(地獄のような)をやったり、缶けりや鬼ごっこなどの遊びを取り入れた訓練も行っている。
今回はそんな彼女たちの内の二人から見た彼のお話である。
――――清明の場合
授業が終わると、覚束ない足取りで私はある場所へと向かう…校舎から離れた場所である一本の木がそびえ立っているその場所は入学してから私が見つけた絶好のお昼寝スポットだ。
芝生で作られた天然の布団に、生い茂った葉っぱからの木漏れ日や穏やかな風が吹くそこでお昼寝をすると勉強や訓練での疲れが一気に吹き飛ぶ。
「…ふぁ」
いけない…その場所を思い出すだけで欠伸をして眠ってしまいそうだ、以前もそうやって廊下で寝ていたら制服が汚れたし土方にも怒られた。
湧き上がってくる眠気を堪えながら外に出て待ち焦がれたあの場所へと私は訪れることが出来たが、そこには『先客』がいた。
「……教官?」
思わず呟いたそこには私たちの教官…戒君がおり木の幹によっかかって規則正しい寝息を立てていた。
同年代でありながら戦闘の訓練を先輩たちと教えてくれる彼の…黒い手袋に覆われた手には文庫本があり、恐らくここで読書をしている内に寝落ちしてしまったのだろう。
…思わず周囲に誰もいないか確認をすると、私はそそくさと教官の隣まで移動しお互いの肩が触れ合うぐらいの距離まで来る。
(……温かい。それに、何だか落ち着く///)
抱き枕とは違う人肌の感触に私はほんの少しだけ頬を赤らめながらも、彼の身体に腕を回して力を込める。
華奢で抱き心地が良く、服越しからでも僅かに感じる筋肉は彼が男子なのだと意識してしまう。
すると…。
「…んぅ」
「っ!!?///」
教官がこちらを押し倒すように体勢を崩した。
思わず驚いて離れようとするが彼の力は強く離れることが出来ず、私は抱き合う形となってしまう。
「……ひゃっ!?///」
教官の回した手が私のお、お尻を掴んだ。
思わず変な声を出すが教官をそれに気づかないどころか気持ちよさそうに眠っている。
それにこの体勢となってしまったことで互いの顔も近く、彼の中性的な顔立ちが良く見えることで余計に心臓が早鐘を打つ。
……ふと、彼の少女のような唇が目に入った。
今まで気にしていなかったのに一度そこに目が行くと後から後から思考が流れ込んでくる。
「今ならやれる」という悪魔の声と、「健全な関係を最初に築くべきだ」という天使の声が聞こえる。
でも、このチャンスを逃すわけには……!!
そうだ、これはあれだ…マーキングのようなものだ、別に唇じゃなくても良いし頬にでも大丈夫だ。
(よ、良し…!!)
ゆっくりと私は顔を近づけようとした時……ふと感じた気配に横目を向ける。
…そこには琴音が笑顔を浮かべてこちらを見ていた。
「っ!?……えっと、これは」
「……」
私が何か言い訳を口にしようとするが琴音はただじっとこちらを見つめているだけであり笑顔を見せている。
…背後から圧倒的なまでのオーラが出ているが彼女は満面の笑みを浮かべている。
「……」
声すら出なくなっている私に笑顔を向けたまま、彼女は両手で「話は聞いてやるから、体育館裏に来い」と合図を送り拘束が緩くなっていた教官の腕から離れ、体育館裏へと脚を進めたのであった。
ちなみに怒られるかと思ったが、「カー君は意外と寝相悪いから気を付けなよ」と忠告されただったので今後は彼がいない時にあの場所を使おうと決めたのであった。
――――芭蕉
今日もこれと言ったトラブルがなく、一日が終わり私は久しぶりに学園にある大浴場を使うことにしました。
制服と下着を全て脱いで、バスタオルを身体に巻いた私はゆっくりと戸を引きます。
時間が時間なのか他の生徒の気配はなく、露天風呂のような浴場は実質貸切状態になっていることに少しだけ浮き足立ちながらもまずはシャワーで身体を洗ってから湯気の立つ湯船の中に足から身体へと浸かります。
「「はぁー……」」
身体の芯から温かくなる心地良さに息を長く吐いて肩まで浸かると、まるで今日の疲れが洗い流されるような錯覚さえ感じます。
本当に心地良い……ん?
今、誰かの声が聞こえたような……それにこの声は女子じゃなくて男子の…。
「えっ?」
「んぁっ?」
湯気が晴れて視界がはっきりと見えるようになり、恐る恐る右を向くと…そこには呆けた様子で同じようにこちらを向いた門矢教官でした。
「な、なななっ……!!///」
「きゃっ…///」
互いに顔を赤くする中、教官は混乱しており私も感情に任せて叫びをあげようとしますが自分の両手で慌てて口を封じます。
もし、このまま私が叫んだら教官にあらぬ疑いが掛かってしまいます…そ、それに。
「ごめんっ!お、俺出るから!!」
「まっ、待ってくださいっ!」
素早く腰にタオルを巻いた教官に、考えるよりも先に彼を制止させる。
「だ、だだ、大丈夫…ですから///」
「へっ?」
「わ、私は、教官がいても大丈夫です///」
……あれ?私は何を言っているんでしょう、焦って変なことを言ってしまいました!!
で、でで、でも教官がくつろいでいる時間を邪魔するわけにはいきませんし…急に言われたら教官だって。
「そ、そう?それなら、別に良いけど…」
あれ?もしかして教官も焦って思考が追いついていない?
ぎこちない動きで再び湯船に浸かるとしばらくは気まずい時間が流れ、それに焦った私は何を思ったのか彼に話しかけます。
「せ、背中を流しましょうか?」
「う、うん///」
私の言葉に教官は何の反応もせず、首を縦に振ります。
顔が真っ赤なのは熱い湯船のせいなのか、それとも私のように緊張しているのか分かりませんでしたが洗い場へと向かいました。
……きっと、この時の私は焦っていたのでしょうし上せていたのかも知れません。
何を思ったのか、私は自分の胸にボディソープをつけて泡立たせました。
(こ、これは私なりのお礼で教官の日頃の疲れを癒すための行為であって決してやましい行為ではありません!そ、そうです!)
茹った頭のまま、私はゆっくりと教官の背中に近づこうとした時でした。
「何やってるのかなー?」
「へっ?」
声のした方を向くと、そこにはバスタオルを身体に巻いた琴音さんと千歳さんが立っていました。
しかも琴音さんに至っては笑顔を浮かべていてかなり怖かったのを覚えています。
「千歳ちゃん」
彼女の声に気絶していた教官を千歳さんが運ぶと私はしばらく説教され、しばらくの間「脳内ピンク」なる渾名を付けられてしまいました。
……この事件を機に、大浴場を使うのは控えようと心に決めました。
そして、その数日後。
「カー君、あれ取って」
「ん」
昨夜の事件のことなど頭の中から綺麗さっぱりなくなっていた戒はいつも通り、事件のない暇な日々を過ごしていた。
どうやらあまりにも刺激が強すぎたのか、それとも千歳が何かしたのかは定かではないが記憶がなくなっており琴音と当事者である芭蕉たちはそれを封印したのだが関係ない話なのでここら辺で終わらせよう。
とにかく、自宅でゆっくり休日を過ごしていた時だったがスマートフォンから着信にしていたアニソンが鳴り響くとそれを手に取る。
「もしもし?どうしたんですか、佑斗さん」
『悪いっ!何も言わずに今から落ち合う場所を覚えてくれっ!!』
「えっ、ちょっと!?……切れちゃった」
叔母である美海の彼氏の佑斗からの電話だったが、全速力で走っているらしく何やら焦った声で落ち合う場所を戒に伝えると一方的に通話を切ってしまう。
その様子からしてただ事ではないことを悟った戒はすぐに身支度を終えると、佑斗が指定した場所へとドライグハートを走らせた。
Next Stage →COMBO29 逃走×追跡
この二人は見ていて本当に癒されるので彼女たちに焦点を当ててみました。PBSではどうしてこの二人が出なかったのだろうと今でも思っています。
次回は佑斗がメインのお話になります。ではでは。ノシ