仮面ライダーARTHUR 王の名を持つ仮面の騎士   作:名もなきA・弐

49 / 67
 何だかお久しぶりです。リアルの都合で少し不定期になるかもしれません、申し訳ない……。
 今回は、鎧武(トッキュウジャー)やドライブ(ニンニンジャー)で行われた春休み合体1時間スペシャルのノリでストーリーが進みます。
 それでは、どうぞ。


COMBO26 召喚×落書き

薄暗いマンションの一室には一人の人間…怪人がいた。

白い指揮者を彷彿させるスーツの上にモザイク風のカラフルな汚れが付着した白いエプロンを着用しており漫画の雲のような白く大きな特徴的なアフロを被っている。

まるで子どものように床に座り込んでいる怪人…『サモン・エラー』は床に散りばめられているクレヨンを手に取る。

 

『赤、青、黄色、緑…紫、群青色、こげ茶色……』

 

ぼそぼそと、しかし楽しそうに呟きながらクレヨンを自身の身体の中へと貯め込み今まで脱色したようなモノトーンのモノアイはカラフルなものへと変わっていく。

そして、最後のクレヨンを取ろうとするが目的のクレヨンが見つからずサモンの右手は床を這い回る。

 

『ママ、マジェンタが見つからないよ』

『大丈夫よ、僕ちゃん。さっ、お仕事に行きましょ』

 

優しく女性の声でそうサモンに語りかけたエラーカセットの言葉に頷くと、彼はゆっくりと立ち上がり部屋を後にした。

 

 

 

 

 

(……あーあ、どうしてこんなことに)

 

黄色いスカーフを首に巻いた少女『風魔』は商店街の至るところにある落書きをホースと雑巾を使って洗浄していた。

半蔵学院の学生服を着た彼女は普通の女子よりもスタイルが良く、短く切った茶髪とちょんまげのように纏めたヘアースタイルは飛鳥のように活発な印象を与える。

風魔は半蔵学院の忍学科に所属する一年生であり飛鳥たち選抜メンバーの候補生にあたる存在だ。

普段の成績とやや空気が読めないところがあり、補習の常習犯ではあるが潜在能力は一番と尊敬する先輩の飛鳥と霧夜から太鼓判を押されている。

今日は、通常科から忍学科へと渡り、瞬く間に選抜メンバーへと上り詰めた天才少年『門矢戒』が教官として自分たちのクラスに任命&稽古という予定だったのだが急きょ戒に依頼が入り落書き塗れの商店街へと駆り出されたのだ。

風魔としては憧れの先輩が一目置く少年に教えを乞うが出来ると内心喜んでいたがその彼とのファーストコンタクトが落書き掃除……。

「はぁ」とため息を吐いた途端、誰かに頭を軽く小突かれてしまい慌てて後ろを向くと学生服の上にエプロンを身に着けた戒が呆れた様子で口を開く。

 

「何、残念そうな顔をしているんだよ?まぁ、掃除に駆り出したのは悪かったとは思うけど…」

「いやっ、そうじゃなくて…教官君って何時もこんなことを?」

「まぁな。探偵らしくないかもしれないけど大体はこんな感じの仕事が大半だよ」

 

そう言って笑うと、ホースで地面に水をまきながらデッキブラシで赤と青でペイントされた落書きを洗い流す。

落書きは水を使えば簡単に洗い流せるので問題はないが、それでもセンスの欠片は感じられず色と色との相性すらもなっていないのが大半だ。

しばらくして、雑巾と水が入ったバケツを手に持っている依頼人の青年『夢見謙一』が申し訳なそうな表情で会話に入ってくる。

 

「悪いな戒君。こんな仕事を手伝ってもらっちゃって」

「いえっ、商店街の皆さんにはお世話になっていることも多いですしその恩返しだと思えば安いものですよ」

 

「ちょっと疲れますけどね」とおどけたように話す彼に夢見と風魔もつられて笑う。

しかし、こんな嫌がらせをしたのは誰なのか……戒は何か目撃したか彼に尋ねるが…。

 

「実は、俺もこの惨状を知ったのは今日の朝でさ…犯人の詳しい姿までは分からないんだ」

「そうですか」

 

再び頭を下げる彼に対して「気にしないでください」と返し、戒は落書きだらけの商店街を見渡す。

風魔の他にも四人の候補生が洗浄作業に参加しており彼女たちも真面目に…。

 

「『清明』、好い加減起きてくださいっ!!後『村正』っ!ホースを上に向けてはいけませんっ!!」

「…ZZZ……」

「ニャッ!」

 

透き通るような水色のショートにアホ毛を生やした少女…清明は、長く伸ばした茶髪を一本に纏めた凛々しい顔立ちの少女『土方』に担がれて眠っており、眠っている彼女に向かって注意する。

そしてホースを上に向けて虹を作ろうとしている候補生の中ではスレンダーなスタイルを持つ小柄な金髪の猫耳少女…村正に対しても注意をする。

最も、彼女自身は赤と紫のオッドアイを輝かせており土方の話など聞こえていないだろう。

この中では意外にも菖蒲が手際よく作業しておりおばちゃんたちと仲良く談笑しながら掃除をしている…時たま、「濡れて透け透けになったわたしと戒君、ぐへへ」と何やら呟いていたがスルーすることにした。

 

(しかし、何でまたこんな悪戯を……)

 

別の場所に行った夢見と別れ、手を動かしながらも戒は思考を働かせる。

ただの落書き事件ならば、また犯行を繰り返そうとした時に捕まえれば良い…しかしウェルシュが初めて落書きを目撃した時に魔力の反応をキャッチしたのだ。

エラーの仕業だとしたら一体何のために、どのような負の感情を抱えているのか……そんなことを考えながら止まっていた手を進めた時だった。

 

「……ん」

「起きましたか、清明。なら…」

「怪物は、何処……?」

 

周囲を寝ぼけ眼で見渡して清明のか細くもはっきりと聞こえる声に土方は首を傾げるが、その言葉に嫌な予感を覚えた戒は二人の前に立った。

同時に、上空から落下してきた存在の攻撃を召喚したグレンバーンで防ぐ。

落下してきた存在…サモン・エラーは絵筆のような長槍に力を込めるがそれよりも先に戒は胴体を蹴り飛ばすと身軽な動きで後ろ回し蹴りを叩き込んだ。

突然の怪物に周囲はパニックとなるが我に返った土方と菖蒲が避難誘導を行う中サモンは頭を抱えて唸り声をあげる。

 

『蹴り飛ばすなんて酷いじゃないかっ!!マジェンタ、マジェンタを寄こせっ!!!』

 

脈絡もない言葉を加工された声で話すサモンに対して戒は視線を逸らさずにアーサードライバーを腰に巻きつけると起動させたドラゴンカセットを起動させる。

 

【DRAGON!】

「変身っ!」

【RIDE UP! DRAGON! 牙の連撃!RED KNIGHT!!】

 

スロットに装填してアーサードライバーのサイドグリップを握り、トリガーを引いてドラゴンリンクに変身したアーサーは鞘に納めたグレンバーンで殴る。

顔面を殴られたサモンは「痛い」と蹲るがそのまま連続蹴りを叩き込まれる。

その戦闘スタイルに風魔と村正、寝ぼけ眼の清明は目を輝かせており土方と菖蒲は感嘆の表情を浮かべていた。

攻撃された箇所を抑えながらサモンは距離を取る。

 

『痛い、痛いよぉママ……』

『大丈夫よ。私が…いいえっ。私たちの能力を使う時よ』

 

まるで子どもを慰めるように優しくサモンを諭すと、自分の頭を両手で掴んで思い切り揺らす。

途端、サモンの白いアフロが淡い光に包まれる……そしてそこから二つの白い雲が分離するように現れると人の形へと変わった。

 

『オラオラ行くぜえええええええええっっっ!!!!』

『ヘイ、ホー。ヘイ、ホー』

「うぉっ!!?」

 

赤い甲羅を持ったサングラスの亀の怪物がハイテンションに叫び、頭と手足を引っ込めてスピンをかけた体当たりを仕掛ける。

黒い頭巾と黒い丸のような三つの穴の白い仮面をつけた兵隊がスイカの種のような弾丸を口から発射する。

アーサーはそれを紙一重で躱すがカーブをかけて亀の怪物は再び彼目掛けて突貫する。

しかし、黒い頭巾の兵隊がタイミングをずらして乱射した弾丸に攻撃を受けてしまい装甲が煙を上げる。

 

『凄い、カッコ良い、あはははははっ!!』

『もっと暴れなさい、私たちの子どもたちっ!』

 

サモンは上機嫌に、エラーカセットの人格は先ほどとは違う女王様然とした口調で二匹の怪物を応援するが土方が召喚したハンマーを思い切り叩きつけた。

 

『『がっ!?』』

 

強烈な一撃にのけ反るサモン…僅かに出来た隙を見た彼女は「教官!」とアーサーに声を掛けるとリズムリンクにチェンジし、ピアノアローで狙撃を行った。

その攻撃は吸い込まれるようにサモンに直撃し暴れていた二匹の怪物は白い雲へと戻りそのまま消滅する。

「分が悪い」と判断すると、長槍を振るいそこから溢れ出るカラフルな魔力の奔流に紛れるように姿を消した。

 

 

 

 

 

オーナーは一人、サモンとアーサーとの戦いをミケネから送られてくる映像を観戦していた。

ただただゲームの経過を観察する中、彼に近寄ってくる人物がいた。

 

「マーキムラ君♪」

「……随分と久しぶりじゃないか、『デッド』・『アライブ』」

『悪いな、挨拶が遅れちまった』

 

飄々と話してくる男性『デッド』にオーナーは彼らの名前を呼ぶとパペット人形の『アライブ』は申し訳なさそうに頭を下げるが彼は気にせずに微笑む。

元々オーナーは彼の行動だと分かった時点で独断行動を不問にしていた。

なぜなら、彼に何かを言ったところで正直に従うとは思わないからだ。

 

「気にしなくて良い。どうだった、海外の方は……」

「駄目だねぇ。ミニ四駆君が残した遺産は思いの外厄介でねぇ、あの連中はかなり面倒でさぁ……」

『海外での活動は無理だ…でも、成果はあったぜ』

 

デッドは困ったようにオーバーな動作をするがアライブは表情豊かに動かす。

目を向けたオーナーの意図を理解した彼は言葉を述べた。

 

「『奴』は負けたよ、お兄さんたちの周りをぶんぶん飛び回って目障りだったからねぇ。幹部なきまでに敗北させたよ」

『完全に叩きのめしたが最後にミラージュカセットを解放させて逃走しやがった…だが、仮に生きていたとしても記憶に問題が残るだろうな』

 

不意に低くしたトーンで語るデッドに続くようにアライブは冷徹に言ったその言葉にオーナーは満足したように頷くと、『彼ら』と共にモニターに目を移した。

 

 

 

 

 

その一方、戒たちは落書き掃除を完了させ探偵事務所へと集まっていた。

初めてお邪魔する異性の家に土方と菖蒲は妙に緊張していたり、美緒は「また違う女の子を連れて来た」と軽くショックを受けていたが後々面倒になるので無視していた。

リアと千歳からもらった違う現場の落書きの写真を調べたが特に共通点はないように見えるが……。

 

「母さん、『マジェンタ』って何の色?」

「マジェ…?あぁっ、マゼンタのことですか?色の三原色の一つでピンクに近い色ですがとても綺麗なのですよ」

 

全員にお茶を用意していた美緒は戒の言葉に返して自分のスマホのケースを見せる。

 

「これがそのマジェンタなんですか?」

「ええっ、実はこれ夫が使っているカメラと同じ色なんですよ。お揃いなんですよお揃い、きっかけですか?それはもう語るも…」

 

途中から惚気話に突入しようとしたので千歳が疲れたような表情で美緒を奥の部屋に引きずると戒は考え始める。

 

「落書き…マジェンタ…一体何が目的で…」

 

そう呟いていた時、「カー君!」と聞き慣れた声が聞こえ、階段のある方向を向くと二階から琴音が降りてくる。

 

「琴音、お前また自分の部屋から俺の部屋に…」

「言ってる場合じゃないって!外で、エラーが暴れているっ!!」

『はぁっ!!?』

 

その言葉に全員が驚きながらも、戒は慌てて外に出ると残りのメンバーもつられて後を追いかける。

そこにはサモン・エラーが手に持った絵筆を模した長槍でカラフルな魔力の奔流でセンスのない落書きを始める。

 

『イヤッフーッ!!』

「人の家で何してんだっ!!」

 

上機嫌で自分の家と琴音の家に落書きをしているサモンに流石に怒りを露わにした戒は跳び蹴りを叩き込もうとするが赤い光弾がサモンに直撃した。

 

『ぎゃあああああああああああああっっっ!!!?』

 

強い衝撃にサモンは煙を上げながら地面を転がり、戒は光弾が放たれた方向…自分の後ろを振り向く。

 

「…近所迷惑です、落書きなら余所でやりなさいな」

 

後ろには茶色く分厚い本を開いたまま構えた美緒が立っており、戒が振り向いたころには何かのビジョンの消滅と同時にギリシャ神話のマークと青い蝶がデザインされた栞が手元に現れる。

呆然としている彼らに気づいたのか彼女は何時も通りの様子で話しかける。

 

「……後で掃除手伝ってくださいね」

 

それだけを言って自宅に避難した美緒を横目に気を取り直して戒はアーサードライバーを装着する。

そして、起動したドラゴンカセットをスロットに装填して変身シークエンスを開始した。

 

「変身っ!!」

【RIDE UP! DRAGON! 牙の連撃!RED KNIGHT!!】

 

戒はアーサーへと変身すると強烈なキックで起き上がった直後の相手を吹き飛ばし、近くの広場へと戦いの舞台が変わる。

体勢を立て直したサモンは自分の頭を振って王様を思わせる巨大な二頭身のキノコを模した怪物と赤、黄色、黒、緑の鉢巻と甲羅を持った四匹の亀の怪物が現れる。

 

「最初の亀と言い、こいつらと言い…まさか」

『戒、避けろっ!!』

 

アーサーが何かを言おうとした時、ウェルシュの声と同時に巨大なキノコの怪物がその脚で踏み潰そうとして来るがそれを躱してカウンターキックを浴びせる。

 

『ぬぬ~!生意気だぞ貴様~~~っ!!』

「それっ!」

 

憤るキノコの怪物に風魔は手裏剣を投擲し、相手にダメージを与えると同時に装着されていた鎖で雁字搦めにされる。

その隙を狙うように清明のロケットランチャーがキノコの怪物を浮かす。

 

「ナイスだ二人ともっ!!」

【MAGICIAN!】

【RIDE UP! MAGICIAN! 魔法、錬成!WHITE FANTASY!!】

 

マジシャンリンクとなったアーサーは緑色のボタンを押し、そのまま落下してくるキノコの怪物目掛けて鋭いアッパーを叩き込んだ。

 

『やっ、や~ら~れ~た~っ!!』

 

キノコの怪物は巨大な水晶に変化し、その直後に粉砕する。

一方で琴音はハルバードで四匹組の亀を吹き飛ばし、菖蒲の蹴りと村正の拳が追撃として放たれる。

しかし、レッドカラーの亀の怪物は立ち上がると仲間と遠くで観戦していたサモンに声を掛ける。

 

『こうなりゃ奥の手(たったいま思いついた)を見せてやる!坊ちゃんと姉御っ、来てくださいっ!!』

『『っ?』』

 

指示されるまま、サモンは赤・黒・黄・緑の順となっている亀の怪物の天辺に立つ。

そして、赤い亀の怪物が叫んだ。

 

『くらえっ!ネオスクリューアタックッ!!』

「うぉっとぉっ!?」

 

急速回転を始めたまま突撃を開始した。

四色の竜巻はアーサーたちを狙うが単純な軌道のため難なく躱されてしまう、しかしサモンが長槍を振るってエネルギー弾を撒き散らすため厄介なことこの上ない状況となっている。

 

『はーっはっはっ!見たかっ、もう一度!』

「「させるかっ!!」」

【ATACK ARTS! CHARGE!!】

 

赤いボタンを押してパワーを底上げしたアーサーと、ハンマーを上段に高く構えた土方は同時に地面を叩く。

すると、衝撃によって亀の怪物たちは顔を覗かしてしまっただけでなくバランスが取れなくなってしまう。

 

『うわわわっ、く、崩れるううううううううううっっ』

「もらったっ!!」

【CRITICAL ARTS! COMBO BREAK! MAGICIAN!!】

 

再度赤いボタンを押して左の拳に力を込め、高く跳躍したアーサーはマジシャンブレイクを叩きつけて亀の怪物たちを粉砕する。

四匹の亀の怪物はそのまま消滅すると、バランスを崩したサモンはそのまま地面に落ちてしまう。

そして、アーサーの二撃目が炸裂しようとしていた。

To be continued……。




 今回の怪人…サモン・エラーはエルミンさんからいただきました!エルミンさん、誠にありがとうございます!妄想を召喚するので漫画表現でよくある白い雲みたいな吹き出しを頭部にするなど少し弄ってしまいましたが大丈夫でしたか?(ガクブル)
 さて、次回は有名なあのヒーローが登場しますが一体誰でしょう?ヒントは今回の話でサモンが召喚したモンスターがヒントです(それ答えやん)
 ではでは。ノシ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。