仮面ライダーARTHUR 王の名を持つ仮面の騎士 作:名もなきA・弐
少し短くなってしまいましたが、どうぞ。
「させるかっ!!」
【CRITICAL ARTS! COMBO STRIKE! RHYTHM!!】
リズムカセットをピアノアローに挿入したアーサーは必殺技…シューティングフィーバーがフラムの放った炎の斬撃波を相殺した。
衝撃の余波でフラムの分身たちは消えるように消滅するが本体のフラムはとっくにこの場から立ち去っており、舌打ち気味するとアーサーは変身を解除する。
攻撃から助かった琴音たちは戒にお礼を言うと、彼の安否を確認する。
「大丈夫?」
「ああ、何とか」
短くそう返した戒はフラムがいなくなった場所を見つめていた。
アーサーたちから逃げることに成功したフラムの身体は震えていた。
自分の手を見ると先ほど自分のした行為に対して恐怖で震えが止まらない…そんな彼に対してエラーカセットの人格は語りかける。
『何ビビッてんのさぁ、悪いのは君の邪魔をしたあいつら…自業自得なんだよ、分かる?』
『でも、でも…!あんなの、僕のしたかったことじゃない……』
フラムははっきりとした言葉で反論する。
確かに邪魔をしてきたのは事実だが、あそこまでする必要も…ましてやあんな悪党のような行動をしてしまったことに恐怖を感じる。
このままでは、自分の正義が狂っていく……そう考えた彼は融合を解除しようとするがもう一人の人格がそれを止める。
『あれれ?良いのかなぁ、正義が果たせなくなっちゃうよ』
『っ!!』
『元の臆病な自分に戻りたいんだったら、主サマの好きにしなよ。ただし…無様に死んだお父さんの代わりになれないかもしれないけどねぇ!!』
その言葉にフラムは頭を振って「やめろっ!!」と拒絶するがそれでもエラーカセットは明るい声で彼を狂わせる。
『正義のヒーローなら、黙ってゴミを掃除するんだよ』
『違う……!僕は…僕は……!』
『違わないさっ!さぁ、掃除の続きを始めようじゃないかっ!!』
『……』
そう高笑いする怪物に、フラムは何も言うことが出来なかった。
その光景を、見ている影があった。
(やれやれ、随分な奴が誕生したニャ)
物陰でミケネはフラムを煽り、焚き付けているエラーカセットに対して苦い顔をする。
根っからの寄生型だがあそこまで我の強い個体は見たことない、本来ならば即刻デリート対象だが今の自分たちの行動を仮面ライダーたちに気づかれるわけにはいかない。
一先ずは様子見することに専念したミケネはフラムの監視を続けるのであった。
『フラムはエラーカセットの言葉に従い続けている…下手をすると融合者の人格が歪められたままになってしまう』
「それじゃ、どうすれば…」
一度、門矢家に集まったメンバーはウェルシュからの話を聞いており琴音が頭を抱える。
しかし、戦闘を行ったから分かるが融合者…風本護は純粋で優しい少年だ…そんな彼を凶行へと駆り立てようとするのはエラーカセットの少年の人格だ。
一体どうしたら彼を助けることが出来るのか……。
「フラムを説得するのが一番の確実だが…」
そう言って戒は難しい顔をする…彼が今抱えている正義感を否定すれば多少はどうにかなるかもしれないが同時に彼の持っている正義を否定することになる。
元来、お人好しな戒には難しい。
しかしそんな中で口を開く人物がいた……。
「わしに、任せてください」
意を決した表情で夜桜は彼の目を見るのであった。
――――「正義を見失うな」――――
それが父の口癖だった。
警察官でもあった彼は自分たちに何時もそう言い聞かせてくれた。
厳しくも優しい、そんな良き父親であったと思う…同時に憧れの存在でもあった。
だけど、どんなに素晴らしい人間も呆気なく死んでしまう。
万引きをした少年を車から救おうとして代わりに撥ねられたのだと言う…だから父の言葉に従って自分も彼のようになろうと決意した。
嫌いだった勉強も頑張った、誰かに迷惑を掛けないように必死に頑張った、それでも自分は何も出来なかった。
誰も助けられない……でも、もう終わりだ。
自分の足元で尻もちをつく不良たちを睨む。
「あっ、あぁ…助けて……」
『…うっ、うぅ…あぁ……!!』
埋めぎ声をあげるフラムが西洋剣を思い切り振り下ろした、しかし…。
「「はぁっ!!」」
『っ!!』
またしても自分の攻撃が防がれてしまい、乱入者…戒と夜桜のカウンターによって後退してしまう。
三度も邪魔をした彼らにどす黒い感情を胸に宿したフラムとは対照的にエラーカセットは笑う。
『あははははははははっ!良いよ!君たち最高に面白い!でも…ちょっと遅すぎだ』
その言葉通り、既にフラムはエラーカセットによって負の感情に支配されており彼を愉しませるための傀儡となってしまっている。
それにめげず、夜桜はフラムとなっている融合者に声を掛ける。
「護君、でしたね…母君からあなたのことは聞きました。父君のことも」
『……』
「わしや友達と似ています。悪のない世界を目指そうとしたわしらに」
話を始めた夜桜を茶化そうとするエラーカセットを戒は目で黙らせると、彼女のは話を続けて行く。
「だけど、新しく出来た友達は…もう一つの正義を教えてくれました。そこで分かったのです、正義にも様々な形があると」
フラムは黙って彼女の話を聞き続ける…話が聞こえているのかは分からなかったがそれれも夜桜は話を続ける。
「あなたの正義を否定するつもりはありません…でも、歪んでしまった正義を見ていることだけは…耐えられません」
『……!!』
「歪んでしまった正義」という単語に僅かに反応を示すフラム……。
「本当にこれがやりたかったことなのですか!命乞いをする人間も、無関係な人すらも傷つけようとするその姿はあなたが思っていた正義なのか!!違うじゃろっ!!」
『っ!!』
その言葉にフラムの意識が急速に覚醒する…そうだ、自分は悪を倒したいからじゃない。
父親に憧れたからヒーローになったんだ、誰よりも優しい警察官に……。
『僕は…僕はっ……!!』
『やめろっ!!耳を傾けるなっ!無視しろっっ!!!』
「もう一度聞きます、どうして正義を志そうとしたのですか?」
正気を取り戻し始めたフラムに対してエラーカセットは慌てて対処しようとするがもう遅い…一度息を吸った夜桜は改めてフラムに問い掛ける。
『憧れたから。強くて優しい…父さんに憧れたからっ』
泣いた声でそう話したフラムは西洋剣を地面に捨てて膝を崩した……完全に正気を取り戻したのだ。
年相応に泣きじゃくる様子に一安心する夜桜と戒だがそれを許さない存在がいた。
『ふざけるなああああああああああっっ!!よくも邪魔をしてくれたなぁっ!絶対に許さないぞおおおおおおおおっっっ!!!』
「許さないのはこっちのセリフだ」
『懺悔での準備は出来たかね?』
エラーカセットが身体の主導権を奪って勢いよく立ち上がると青白いモノアイで睨むが戒とウェルシュは軽口を叩いて挑発する。
怒りを燃やすフラムは分身体を生成するが控えていた琴音と真希奈が現れる。
戒は起動したドラゴンカセットを装填したアーサードライバーのサイドグリップを握り、夜桜も巻物を手に取り互いに叫ぶ。
「変身っ!」
「忍転身っ!!」
【RIDE UP! DRAGON! 牙の連撃!RED KNIGHT!!】
姿を変えた二人はフラムに突撃すると、同時に攻撃を与える。
一方で琴音と真希奈は分身体の相手をするが、何度も対戦したこともあってか瞬く間に分身体を倒していく。
分身の一体が後方支援をしていた真希奈を狙うが攻撃の瞬間を狙うように胴体に拳を叩き込んだ。
「『まだまだ甘いよ』…てね~♪」
「すご、お母さんそっくり」
桜花の真似をした真希奈は彼女と酷似した動きで分身体を殴ったり蹴り飛ばしたりを繰り返し地面に倒れた分身体の頭部をサッカーボールに見立てて蹴り上げる。
真希奈は基本的に音を利用した精霊術を使うが相手の声や癖を観察する能力があるためある程度の『ものまね』が出来るのだ。
母親の戦闘スタイルと酷似した動きに琴音は感嘆するがハルバードを分身体に向かって投げつけると戦斧で分身体を全て吹き飛ばすのであった。
そしてアーサーと夜桜は本体のフラムに攻撃する。
『このっ!僕の楽しみの邪魔はおろか、攻撃を浴びせるなんてっ!絶対に許さないっ!!』
苛立ったようにフラムは燃え上がる西洋剣を振って反撃を開始するが感情に身を任せた荒い斬撃を繰り出していく彼に夜桜は籠手によるガード、掌底による受け流しを使って攻撃を防いでいく。
「オラッ!!」
『ぐっ!!』
その隙を狙ったかのように現れたアーサーの前蹴りが右脇腹にめり込む。
ダメージによってバランスが崩しフラムに追撃が行われる。
グレンバーンを召喚したアーサーは緑のボタンを押して冷気を身体と武器に纏わせると、今度は抜刀術を一閃・二閃と繰り出していく。
『こ、こんな……』
「こいつはおまけだ!持って行けっ!!」
最後に強烈な居合がフラムの胴体に直撃した。
夜桜との息の合った連携、そしてアーサーの連続攻撃を受けたフラムは後退する。
そして、悔しそうに地団太を踏むと自身の身体を炎と一体化させてそのまま逃走しようとするが……。
『…させないっ』
『なっ、このっ、邪魔をするなぁっ!!』
フラムの融合者が逃走を妨害したのだ。
元来、融合が進むごとにエラーカセットと融合者は感情と思考が一体化していくものだが正気を取り戻した『彼』がそんなことを許すわけがない。
思うように動かない身体に動揺し憤るフラムに夜桜の右ストレートが炸裂する。
「護君っ!」
『お姉ちゃん、仮面ライダー…頑張ってっ!!』
「待ってな、すぐに助けてやる」
『後は私たちに任せたまえ』
フラム……護の言葉を聞き届けたアーサーは快く了承し、頷くと鞘に納めたグレンバーンをフラムの脇腹に強烈な打撃として叩き込むと、その勢いで反転させた後ろ蹴りを浴びせて怯ませる。
ミドルとハイキックを絡めた連続蹴りを行い、続けて膝蹴りを叩き込んでいく。
冷気を纏った連続攻撃によってフラムは凍結していくが炎を放出させると西洋剣を振り下ろしてアーサーを両断しようとする。
しかし、それを抜刀したグレンバーンで防いで流し、カウンターによる斬撃をフラムに浴びせる。
止めとばかりに最速の居合がフラムの身体を拭き飛ばした。
『ぐあああああああああああっっっ!!!こ、こんなはずじゃあ…やだっ、やだあああああああああああっっ!!』
「逃がすかっ!!」
自身がGAME OVERとなることに恐怖したフラムは二人に背を見せてそのまま逃走しようとするがそれよりも早く動いた夜桜が巨大化した右の籠手でフラムを殴りつけると近距離で爆発が連続する。
「秘伝忍法『極楽千手拳』っ!!」
『アギッ!!?』
自身の能力も上手く使えなくなってきたフラムに止めを刺すべく、アーサーはグレンバーンにドラゴンカセットをセットする。
【CRITICAL ARTS! COMBO STRIKE! DORAGON!!】
「はぁぁぁ……」
炎と冷気を纏わせたグレンバーンを構えると、勢いよく駆ける。
そして、フラムを連続で目のも止まらぬ速さで斬り裂いた。
『ぎゃああああああああああああああああああああっっっ!!!!』
『ブレイズスラッシュ』をまともに受けたフラム・エラーは後ろを向いたアーサーが納刀した直後に爆散し、護も倒れたように現れるとエラーカセットを粉々に砕けた。
事件は終わり、風本護は無事に助け出すことが出来た。
彼はお礼の言葉を口にしておりその表情からも変わることが出来るだろうと分かった。
自宅で報告書を書き終えた戒はゆっくりと伸びをすると、隣にいた琴音が冷蔵庫から出したお茶を汲んだコップを彼に渡す。
真希奈もおり、今はパソコンで音楽を聴いている最中だ。
「お疲れ様」
「ありがと」
短い掛け合いだがそれだけで互いの考えが伝わっているようなやり取りに遊びに来ていた夜桜は少しだけそわそわしていると、戒が彼女にお礼を言う。
「今回は夜桜さんのおかげです、本当にありがとうございます」
「そんな、わしはただ自分の思ったことを伝えただけで」
「でも、あの少年が助かったのは事実ですし、今度何かおごりま…」
そんなことを戒が言っている時だった。
足元を見ていなかったのか真希奈が使っていたパソコンの充電器ケーブルに躓くとソファに座っていた夜桜の胸元にダイブしてしまう、琴音は「やっちゃった」と言わんばかりに原因の一端となった真希奈の首根っこを掴んで退散するとこの場にいるのが戒と夜桜だけになる。
「なっ、なな……!!///」
「ぷはっ。ご、ごめんなさいっ!あの、これはわざとじゃなくて…!///」
「何をするんじゃああああああああああああっっ!!///」
顔を真っ赤にした夜桜のアッパーカットが見事に炸裂したのであった。
護は帰路を歩いていた…自分を助けてくれた彼らには感謝しても感謝しきれない。
彼らの言葉ははっきりと聞こえていたが本当に自分に正義が成し遂げられるのか不安を覚える。
すると、階段を上ろうとする老婆を見かける…しかし、荷物が多いらしく階段を歩くのさえも一苦労だ。
それに対して、護は彼女の元へ駆け寄ると声を掛ける。
「手伝い、ます…」
そう言われた老婆は驚いた表情をしたがすぐに「ありがとうね」と微笑んだ。
重い荷物を背負いながら、彼は考える。
しばらくは、人を助けてみよう…変わることから初めてみようと思う……。
自分を助けてくれた…正義を教えてくれた恩人たちのために。
To be ontinued……。
正義をテーマにしたお話は難しいですね…改めて実感しました。
今回は夜桜をメインにしてみましたが如何でしたでしょうか?あまり活躍できていなかったら申し訳ありません。
そして、フラム・エラーの出番はこれで終了です。146(名前考え中)さん、素敵なエラーを本当にありがとうございました!
ではでは。ノシ
フラム・エラー CV小林裕介・鈴木達央
146(名前考え中)さんからいただいたオリジナルエラー。モチーフは『炎と狐 ヒーロー』
風本護の正義感と悪への怒りで融合した。全身に白い炎を纏った狐のような姿をしており、赤いラインが所々ペイントされている。その名の通り炎を自在に操る能力を持つ。
炎で武器や分身を作ることもでき、一定時間自身の体を炎に変え、攻撃を回避することが出来る。ちなみに、炎を吸収可能。
主な攻撃方法は、炎を固形化して生成した剣での攻撃。また、体を炎に変えられるため、攻撃の自由度は高い。
裏モチーフとして『ウルトラマン』の要素があり『フラム』は「炎」を意味する。