仮面ライダーARTHUR 王の名を持つ仮面の騎士   作:名もなきA・弐

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 後編です。おかしい、自分は後編を書いていたはずでは……どうして甘い雰囲気になっているんだ?
 それはさておいて……言葉を誤認してしまう厄介なエラーにどう立ち向かうのか?それでは、どうぞ。


COMBO22 言葉×暗躍

コントラスト・エラー(クールサイド&ホットサイド)はフードを被ったエラーに首根っこを掴まれていた。

「離せ」と彼女たちは抵抗していたが動じている様子はなく、しばらく歩くと二体を突き放した後、フードを被ったエラーは姿を消す。

 

『何なのよ、あいつっ』

『せっかく戒とデート出来ると思ったのに』

『そんなこと思ってないっ!///』

『言ったでしょ?私はあんた…そんなことも分からないんでちゅかー?はい論破』

 

コントラストCとHはまたしても口論を始めるが、それでもHの口が上手く、論破されてしまう…そもそも、コントラストCは『好意に気づかない戒へ苛立ち』が形作られたのに対してコントラストHは彼女自身の好意が具現化したエラーであるため本音で語る彼女に口喧嘩で負かすことなど到底不可能な話だ。

再び険悪になった二体のコントラストは再びバトルへと突入しようとした途端、声が響いた。

 

「こらこら、自分同士で喧嘩するのは良くないよぉ。お兄さんは悲しい」

『…あんたっ』

『あの時の……!!』

 

声の主はコントラストに無理やりエラーカセットを渡して強制的に融合させた人物だった。

黒いスーツと黒頭巾で全身を隠しており白いスカーフを首元に巻いている男性は両腕を後ろに組みながら、ゆっくりと彼女たちの元まで歩く。

人を逆なでするような言動を繰り返す男性に対して彼女たちも次第に苛立ちを募らせる。

だが、コントラストCとHが攻撃するよりも先に男は言葉を続ける。

 

「君たちの目的はお兄さんと戦うこと?それとも自分同士と戦うこと?違うよねぇ、君たちの目的は…生きて戒君を自分の物にすることじゃないかなぁ?」

『『っ!!』』

「愛しい相手…戒君だっけ?彼は君たち対して動揺していた、困っていた。それはどういうことか分かるかなぁ」

 

男性の言葉に二体のコントラストは黙って聞く。

しばらく考え込むとコントラストCとコントラストHは顔を上げて喋った。

 

『そ、そそ、それはつまり…ありえない、ありえない!キモイキモイキモイッ!!///』

『そっかそっか。戒は私のことが可愛いから困っていたんだ…えへ、えへへへへへへへへへ♪///』

 

彼女たちが異なる反応をする中、その様子を男性は楽しそうに観察している。

感情が高ぶりと比例するように彼女たちの身体から冷気と高熱が魔力となって放出されていく。

やがて、感情がピークまで達したコントラストはこの場から逃げるように去ってしまった。

それを黙って見ていた男性は楽しそうに笑うとやがて口を開く。

 

「まさか、ここまで対照的とは驚いたねぇ。君もそう思わないかなぁ?」

『思うわけねーだろ、このドM野郎』

 

彼の独り言に返したのは妙に甲高い声…後ろ手に組んでいた両腕を解くと左腕に装着している四つの眼を持った白いパペット人形が動いた。

パペット人形はやや汚い口調で男性に対して話を始める。

 

『だけど、良いのかよ。テメーのやっていることは単独行動だろ?』

「大丈夫さ。マキムラ君は優しいからねぇ、でも世界樹ちゃんと車君は許してくれないかもしれないけどねぇ…そうなったらお兄さん死ぬかもしれないねぇ、怖いなぁ」

『どの口がほざきやがる「生ける自殺志願者」が』

 

傍から見れば腹話術の芸にしか見えない光景だが彼らはまるで世間話をするかのように会話を続けており、パペット人形が罵倒すると男性は否定せず楽しそうに笑う。

やがて男性がパペット人形に対して話した。

 

「…細工は?」

『あっ?……あぁ、首根っこ掴んだ時に。多分倒されるまで抵抗するだろうよ』

「若いことは良いねぇ、それは実にロマンチックだよ」

『趣味が悪いんだよ、根暗野郎』

 

パペット人形がそう吐き捨てると、男性はこの場にいる用はなくなったのかそのまま姿を消した。

 

 

 

 

 

門矢家に戻った戒たちはしばらくウェルシュの話を聞いていた。

斑鳩と葛城、柳生は今回裏方に周り飛鳥と雲雀のサポートをするらしくリアと千歳と連携してコントラストの行方を追っている。

全員が全員、リラックスした態度だがその顔は終始真面目であり特に蓮華と華毘、ルカは普段の笑みが鳴りを潜めている。

 

『先ほどの戦闘で分かったことだが、コントラストのダメージ、感情は共有している。つまり、片方のどちらかさえ倒せば華風流は救えるはずだ』

「本当か、ウェルシュッ!?」

「華風流ちゃんは助かるってことすよねっ!?」

 

二人の言葉に笑顔の表情をディスプレイで映して肯定するとその表情にようやく笑みが戻るが、華毘が思いついたような表情にすると疑問を口に挟む。

 

「でも、どうするつもりっすか?一番何とかなりそうなピンクの方っすけど氷の方の華風流ちゃんがいたらすごい面倒っすよ」

「そこだよなぁ…」

 

彼女の言葉に蓮華は頭を悩ます。

個体別として見れば大したことはないし、互いにいがみ合っているが、共通の敵を見つけると抜群のコンビネーションで相手を追い詰めて行くのだ。

コントラストCが冷気と氷を駆使した相手を追い詰め、止めにコントラストHのベアハッグもといハグで相手を焼き尽くす。

現に飛鳥たちも彼女たちのコンビネーションによって全滅一歩手前まで追い込まれたのだ。

「どうするか」と悩んでいる琴音たちだったが、戒はゆっくりと伸びをすると手早く準備をする。

 

「とにかく、飛鳥さんたちに任せるのもあれだし…別に探して見ましょう」

「…だな、ここで考えるのも私たちらしくないしな」

 

彼の言葉にそう肯定した蓮華は自分の頬を叩いて喝を入れると、琴音たちも行動を開始した。

 

 

 

 

 

「見つからないなー」

「そうだなー」

「そうっすねー」

 

数時間後、戒と蓮華、華毘の三人は椅子に座って適当に喋りながらクレープを口一杯に頬張っていた。

一応彼らの弁解をするがこれはサボりではない、華風流の捜索している時に小腹が空いたからクレープを買っただけだ…決して疲れたからってサボッているわけではない、そう決してだ。

大好きなチョコバナナクレープを頬張りながらちらりと左右を見ると二人も美味しそうに食べている…ちなみに華毘はベリー&ベリー、蓮華は生キャラメルとバニラアイスをトッピングしてある。

束の間の休息を楽しみにながらも、ふと右隣に座っていた華毘の口元に目が行く。

彼女にひと声かけた戒は相手が返事するよりも先に指で口についているクリームを取る。

 

「ふぇっ!?な、何をっ…///」

「いや、ついていたから…何か?」

「えっ、えと…ありがとうっす///」

 

 

頬を赤らめて俯いたまま黙々と食べ始めた彼女に「悪いことしたかな」と軽く謝罪して自分のクレープを食べる作業に入る。

その光景を見ていた蓮華は何を思ったのか自分の食べていたクレープに目を向け、次に戒の方に目を向ける。

そして……。

 

「戒、私のクレープ食べてみないか?」

「良いんですか?」

「おう、その代わりお前のクレープ食べさせてくれよ」

 

突然の要求に驚いた戒だったがそれに快く了承するとクレープを持っていた手を交差させて食べる。

甘ったるい味が伝わってくるが、蓮華もチョコバナナの甘い味に満足すると再び自分のクレープにかぶりつく。

 

(……あれ?これって関節キス…///)

 

そこまで思った雑念を払う…自分らしくない、あまり異性と触れ合っていなかったから変にテンションが上がっているだけだ。

そんなことを考えながら、ほのぼのした空間でクレープを食べていた時だった。

 

『……何してんの、蓮華お姉ちゃん。華毘お姉ちゃん…』

「「「えっ?」」」

 

ぞっとするような声色で、その方に向くとそこには『氷鬼』がいた。

 

『ねぇ、どうしてそいつにべたべたしてんの?何、ラブコメみたいな空気醸し出してんの?』

『戒にそんなことさせるなんて、羨ましい…!!』

 

氷鬼……コントラストCは絶対零度と表現することが出来そうな声で二人の姉に聞くと、その横に現れたコントラストHは高熱を出しながら怒りを露わにして喋る。

 

『戒にべたべたしているんじゃないわよ、私の戒に…』

『こんな奴に骨抜きにされてんじゃないわよ、気持ち悪い』

『あんたもあんたよ、私は魅力ないの?』

 

最初こそ静かに話していたが、次第に二体のコントラストは声を大きくしていく。

嫌な予感がした戒は慌てて理由を説明しようとする。

それがいけなかった。

 

「待った。華風流、俺たちは別に仲良くクレープを食べていたわけじゃない」

『『じゃあ、何よ』』

「えっと…あ、お前を探していたんだよ、うん」

 

その言葉を聞いたコントラストCとコントラストHは「愛しいお前を探していた、口の中に舌を入れてやるよ」と認識した二体の機嫌は直るがそれは同時に彼女たちの理性を崩壊させるのに相応しい言葉であり……。

 

『~~~~~~っっ!!?し、信じらんないっ!バッカじゃないのっ!!!///』

『そ、そんな…愛しいだなんて。えへ、えへへへへへへへへへ♪///』

「あー……やっぱりこうなるのか」

 

身体を怒りと羞恥で震わせるコントラストCと、もはや言っていない言葉を呟きながら両手を顔に当てて喜びを露わにするコントラストHの姿を見て困ったように笑った戒はアーサードライバーを腰に巻きつけると起動させたマジシャンカセットをスロットに装填する。

 

「変身っ!」

【MAGICAL ARTS! PRISMA PRISM…SHOW TIME!!】

 

マジシャンリンクに変身したアーサーは赤いボタンを押して強化した腕力で飛び掛かってくるコントラストCの攻撃を防御する。

生成した巨大な氷塊を両手で持ってぶつけようとするがアーサーはそれを砕き、カウンターパンチを叩き込む。

ダメージを共有する形で蓮華と華毘と戦闘していたコントラストHも二人から距離を取った後、苦しそうに膝をつく。

 

『…んでよ』

「っ?」

『何でこんなに胸がドキドキするのよっ!?わ、私はこんなに軽い女じゃないっ!あんたなんか大っ嫌いだもんっ!!///』

『戒と一緒にいるからドキドキしちゃってる、この胸の高鳴り…聞こえていないよね?えへへへへへ///』

 

攻撃を受けたはずなのになぜか照れたり怒ったりするコントラスト。

「吊り橋効果または吊り橋理論」と呼ばれる心理現象がある…人は吊り橋のような高くて揺れる場所では、その恐さで興奮してしまう、それを頭が勝手に恋によるものだと勘違いしてしまうといったものだ。

その似たような現象が二体のコントラストにも起きていたのである。

つまり、「仮面ライダーに敗北する」というある種の生命の危機に対する心理状況を『恋による胸の高鳴り』だと勘違いしているのだ。

おまけにコントラストは戒の言動及び彼に関する事柄は全て誤認してしまうため彼女たちの行為もヒートアップしていく。

 

『もおおおおおおおおおっ!!絶対にあんたを許さないんだからっ!何よ同い年の癖に偉そうにっ!!』

『まるでお兄ちゃんみたいでカッコ良かった///』

『嫌い嫌い嫌いっ!蓮華お姉ちゃんたちと一緒にクレープ食べて、オシャレのつもり!?』

『私も食べたいっ!「あーん」してもらったり、く、口についたクリームを舐め取って欲しいっ!!///』

 

言葉と共に攻撃が激しくなっていくコントラストCとコントラストH、いくら防御力に絶対の自信があるマジシャンリンクでもこのままでは倒すことも難しい上に長引かせると融合者である華風流にも何が起こるか分からない。

抱き着いてきたコントラストHを投げ飛ばした時、そこでふとある考えが浮かぶ……今までの言動から華風流は自分を慕っていることが分かった。

だから自分の言葉は全て好意を伝える言葉として伝わっているのだ。

決意を固めたアーサーは「華風流」と強く呼びかける。

 

「俺は、お前が好きだっ!!」

『『っ!?///』』

「「はっ!!?」」

 

突然の言葉にこの場にいた全員が驚くも、アーサーは言葉を続けていく。

 

「お前の気持ちは分かった、だから俺も伝える…華風流、お前のことが好きだ」

『『な、ななななななななななななっっ!!?!?!!?///』』

 

思いもしなかったアーサーからの告白にコントラストCとコントラストHは混乱し、冷静さを失っていく。

そして、頭が完全に沸騰した二体は身体を震わせると照準を完全にアーサーへと向けた。

 

『は、ははは、恥かしいことを言うなバカアアアアアアアアアアアッ!!!///』

『えへ、えへへへへへへへへへ♪わ、私も大好きいいいいいいいっっ!!!///』

 

二体同時にこちらに突っ込んでくるのを確認したアーサーは勝利を確信する。

マジシャンカセットを左腰のスロットに装填して緑のボタンを押す。

 

【CRITICAL ARTS! COMBO BREAK! MAGICIAN!!】

「ふんっ!!」

 

マジッグローブで地面を殴りつけた途端、巨大な水晶が次々と地面から生えていくと二体のエラーは巨大な水晶に拘束される。

 

「はああああああああああああっ!!」

 

水晶越しにマジシャンブレイクを叩き込まれたコントラスト・エラーの二体…クールサイドとホットサイドは水晶が砕けたのと同時に爆散。

元の姿へと戻った華風流の身体が水晶の欠片と共に倒れてくるのをアーサーが優しく支えるのであった。

 

 

 

 

 

「やられちゃったねぇ、残念だねぇ」

 

物陰でコントラストの撃破を見て、やや大げさな言動で喋る男性に対してパペット人形は相方に毒を吐く。

 

『ならもっと残念にそうに言え、どうすんだ?』

「うーん、しばらくは適当にエラーカセットをばら撒もうかなぁ」

『さっさとマキムラたちに顔を見せに行け、自虐系男子が』

 

パペット人形からの毒舌に軽く笑って流すと男性はその場を後にした。

 

 

 

 

 

その日の翌日、迷惑を掛けた人たちに謝罪を終えた華風流は戒と一緒に商店街を歩いていた。

彼女が誘ったわけではない、戒の方から誘われたのだ。

戸惑いながらも了承した彼女は二人きりのデートを口では否定しながらもその表情は楽しそうであり、見る人が見ればカップルのデートに見えるだろう。

しばらく歩いたことで小腹が空いた二人は昨日の場所でクレープを食べる。

その際、「食べさせてやろうか」とからかうように言った戒に華風流は睨むというワンシーンがあったがやがて意を決した彼女は昨日のことを尋ねる。

 

「ねぇ、昨日の言葉…あれって」

「えっ?あー、あれね。本当だけど」

「そ、それって…///」

 

その言葉を聞いた華風流は顔を真っ赤にする、間違いなく彼は「本当」だと言った…つまり、その言葉に嘘偽りはない。

期待なんかしていない、あくまでも気になっただけだ……そう、曖昧なままだと「私が廃る」と自分に言い聞かせた答えを待つように彼女は戒の顔を見た。

 

「友達として」

「……はっ?」

 

その一言で周囲の空気が重くなる、それを敏感に感じ取りながらも戒は言葉を並べる。

 

「いや、ほら…あの時焦ってて。それであんなキザなセリフをだな…何か誤解させたなら、ゴメン」

「……」

 

申し訳なさそうに頭を下げる戒だが華風流のオーラは上昇を続けている。

察しの良い方々ならこのオチは分かったかもしれないが戒は鈍感だ、だから彼女の片割れが起こしていたデレ状態は『兄みたいに慕っている』感情だと勘違いしていたのだ。

もちろん、「好き」と言った本心は本物だ…LoveではなくLikeの方だが。

まぁそんなことを言っても、そろそろ今回のオチが近づいてきた。

 

「えと、華風流さ…」

「一回沈め、この朴念仁んんんんんんんっっ!!」

 

湧き上がる苛立ちを隠さず、華風流は綺麗なアッパーカットで戒を宙へと浮かしたのであった。

ちなみに、こっそりと後をつけていた姉の蓮華と華毘は彼女に対する同情と彼の鈍感さに安堵していたのであった。

余談だが一番彼と付き合いの長い琴音曰く。

 

「カー君の好きは基本Likeの好きだから」

 

とのこと…少女たちの受難は、まだまだ続きそうである。

To be continued……。




 コントラスト・エラーの出番はこれで終了です。麦蕎那支さん、素敵なエラーを本当にありがとうございました!
 カー君は鈍感ですが意外と空気が読める子です。てか自己評価が普通なので一周回って気づかないんです。気づくときは気づきます…多分。
 もう分かったかもしれませんが謎の男は幹部格のエラーです。どんな能力かはお楽しみに。ではでは。ノシ

コントラストエラー CV井澤詩織
麦蕎那支さんからいただいたオリジナルエラー。共通モチーフは「ツンデレとハート」
華風流が謎の人物によって融合させられてしまった姿で『クールサイド(氷柱モチーフ)』と『ホットサイド(リボン)』の二体に分離し身長が伸びている。
共通として目を瞑ったモノアイを持つ黒い素体にハートの片割れを模した装飾がある。
クールサイドは水色カラーで氷柱の刺々しい学生服がデザインとなっているが、左側にハートの片割れを模した装飾があるホットサイドはピンクカラーと全体に巻いた赤いリボンのブレザーが特徴。
クールサイドは攻撃的で氷と格闘戦を得意とし、ホットサイドは無害を装い近づいて全身から高熱を出し抱きつくなどの行動で敵を焼き尽くすがダメージを共有しているのが弱点なのと、アーサー(戒)の言葉は全て口説き文句として認識してしまう。
クールサイドはワガママさと計算高さを持つ所謂通常の華風流だが、ホットサイドは彼女の隠された好意の塊であるため子どもらしい純真爛漫さがあるが重い。

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