仮面ライダーARTHUR 王の名を持つ仮面の騎士   作:名もなきA・弐

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 今回は連続更新です。短くなってしまいましたがあまりぐだぐだ長くするのもあれかなと思ったので。そろそろ二号ライダーも登場させなきゃいけませんし(ボソ)。
 では、お楽しみください。


COMBO19 輪廻×狂気

ゆらり、ゆらりと輪郭がぼやける。

まるで炎のように、決して消えない絶望と悲哀が自分を燃やしていく。

激情に駆られて妖魔を始末しても彼らの無念は消えない、決して忘れてはならない。

 

――――「先生、■■■■て生きて……」――――

――――「ごめんなさい、先生」――――

 

違う、違うっ!あなたたちは何も悪くない、自分が悪いんだ。

あなたたちを死なせてしまった、自分の……。

責任を負わされた自分はカグラ千年祭執行部に異動となったが今の状況では未来ある忍たちに教鞭を取ることなど無理だったし、都合が良かった。

その時、あの方から聞かされたのだ…忍の盆踊りを。

特別な結界による時間停止と亡くなった人物との永遠の時間、愛する人たちを決して失わない理想郷。

悲しみが存在しない世界……。

そして、彼と出会った自分は救済を終わらせ、人間を捨てた。

 

「……私は、誰も悲しませないために世界を塗り替える」

 

その言葉と共に決意を固めたフェニックスは怪人態へと融合し、羽根を撒き散らしながら空へと飛び立った。

 

 

 

 

 

戒はホテルの部屋にあるベッドに寝そべりながら天井を見つめていた。

その近くではウェルシュが難しい顔をしており自分の見ている映像を彼に伝える。

 

『……始まったぞ、戒』

「そっか」

 

彼の言葉に短く応える。

今日で祭りも最終日に入るだろう、根拠も何もない…それこそただの勘だが今日で祭りは終わる。

そんな予感がするのだ。

ベッドから起き上がると、冷蔵庫に入っていたペットボトルの水を飲む。

「ぷは」と一通り飲み終えた時、インターフォンが鳴った。

 

「カー君、私」

「ん……」

 

来客…琴音の声を聞いた戒は扉を開けて彼女と対峙する。

特にお互い語ることもなく、彼は外に出ると琴音と共に外へと向かった。

 

「……何か今回、シリアスだな」

「台無しだよ、カー君」

 

気を紛らわそうと言ったセリフだったが怒られた。

 

 

 

 

 

両備は両奈と共に、戦う準備に備えていた。

戦う相手は小百合でも、ましてや巫神楽三姉妹でもない……育ての親であり憧れであり、嫉妬の対象であった両姫。

伝えたいことがある、だけどそれには言葉じゃない。

戒に言われたことを思い出す。

両姫が自分たちの前に現れた理由…それはきっと。

 

「両備ちゃん」

 

両奈に自分の名前を呼ばれたことでふと我に返った。

慌てて前を向くと、そこには琴音と戒がいた。

軽く挨拶を交わすと彼は自分の前に来る。

 

「…見つかったか、答えは?」

「私は…両備たちは姉さんと戦う。だけど、それは姉さんに謝りたいからでも妬ましいからでもない……『ありがとう』って伝えたいの」

 

彼女の言葉を戒たちは黙って聞く中、両備は続けていく。

本人は気づいていなかったが両姫と面影がある笑みを見せており、吹っ切れているようにも見えた。

 

「ずっとお母さん代わりになってくれて、優しくしてくれて、見守ってくれて……ありがとう。素直な気持ちで、姉さんに伝えたい」

「……そっか」

「ありがとう、か…良いんじゃないかな」

「でしょっ!両奈ちゃんも大賛成したんだ!!」

 

戒たちの反応に気恥ずかしくなった両備はそれを隠すように両奈の頭を小突くと改めて彼の方を向く。

そして、小さな声で呟いた。

 

「……あんたが幼馴染で良かった///」

「俺もだよ」

 

短く言葉を交わすと、二人はその場から立ち去って行った。

 

 

 

 

 

両備たちと話していた戒たちだが、肝心なことを忘れていることがあった。

そう、自分たちは半蔵学院の生徒…流石に飛鳥たちと顔を見せなければまずいと判断した二人はウェルシュの助けで彼女たちのいる場所へと向かう。

幸いにも飛鳥たちはすぐに見つかった、汚れた忍装束と息を切らしていることから戦闘が終わったのだろう……が、彼女たちの他に先客がいた。

斑鳩のように黒く長い髪をなびかせ、黄色いシャツと赤いスカーフが特徴の女性であり左腕には黒い象のようなマスコットがくっついている。

 

「おや、あんたたちも来たかい?随分と遅かったね」

「少し野暮用で…て、誰ですかあなたっ!?」

「あれっ、確かPVで出ていた…」

 

自分たちのことを知っている女性に二人は警戒するが、飛鳥は困ったように女性の正体を教える。

 

「二人とも、この人…私のばっちゃん」

「何だ、小百合さんか…て、えっ?」

「はっ?」

「何だいその顔は…」

 

飛鳥の衝撃発言に脳の処理が追いつかない戒と琴音は呆然としており、その表情に小百合(?)は苦笑いする。

 

「いやいやいやいや、おかしいですって。何で梅干しの妖怪みたいな姿からナイスバディの素敵なお姉さんに変わっているんですか?まさか、脱皮したんですかっ!?」

「よし、あんたがあたしをどう思っていたのかよーく分かった…」

 

混乱のあまり、地雷を踏み抜いた戒が彼女から拳骨をくらうと改めて小百合もとい『ジャスミン』から話を聞く。

 

「しかし、ここまで祭りが進んだのはお前さんが口を噤んでくれたおかげだよ」

「あー…やっぱり気づいていました?」

「やはり、戒さんはこの祭りの真意に気づいていたのですね」

 

斑鳩の言葉に頷いた戒はジャスミンの方に向き直る。

 

「この祭りの真意…それは千年に一度来る災厄に備えて鍛え上げること。違いますか?」

「……そこまで分かっているなら何を知りたい?」

「この空間ですよ。あなたは自分で作り出したと言いましたが『元になる場所』がなければここまで完全に再現出来るわけがない。俺の仮説が正しければこの場所は…」

「全員が妖魔によって死んだ世界…そう言うわけだよ」

 

その言葉に全員が驚いたが戒だけは表情を崩していなかった。

最初に疑念を持ったのは生活必需品が大量にあったこと…この時点では特に気にしていなかったがホテルを一望した時にその疑念が膨れ上がった。

シャワーもあるし露天風呂もある、ホテルに必要な設備が完備されていることに気づいたのだ。

同時に最初の方で言っていたウェルシュの言葉を思い出す。

――――『まったくだ。専門家が見たらあちこち解体されて終わりだろうけどね』――――

 

つまり、このような現象を一から創ることは現代の精霊術では不可能だと言うこと。

そこまで考えた途端、別の疑問にぶち当たる…元になった世界は何処から見つけたのか?

その答えがようやく彼女の口から語られた。

 

「…並行世界」

「そう、ここは何もかもが妖魔によって滅ぼされた世界…それをあたしがチャクラの塊として固定させた。これが真実だよ」

 

「さて」と、一通り話を終えたジャスミンはスケールの大きい話に唖然としている飛鳥たちの方に鋭い視線を向ける。

 

「これで分かっただろう、甘さだけでは誰も救えないし守ることも出来ない。さっきのように手加減せずに戦い抜いた。それが、情を捨てると言うことじゃ……」

「捨ててないよ」

 

祖母の言葉に飛鳥はゆっくりとそれを否定する。

そして、彼女は語り出した。

 

「ばっちゃんへの情があったから、私たちは思い切り戦う決意が出来たんだよ」

「……あくまで情は捨てていない、と?」

 

自分への問いに頷いた飛鳥に対して、ジャスミンは「やれやれ」と首を横に振ると背を見せて去って行く。

恐らく他の忍たちと相見えるのだろう、煙幕と共に姿を消した。

戒は飛鳥たちに尋ねる。

 

「飛鳥さんたちはこれからどうします?」

「この祭りを続けることにするよ。戒君たちは?」

「俺は見学してますよ。琴音、しばらく頼む」

 

琴音の肩を叩いてそう言うと、またしても何処かへと去ってしまった。

彼の姿を見た飛鳥たちも、顔を合わせて自分たちのすべきことのために動き出した。

 

 

 

 

 

戒は最初の日に黄昏ていた場所にいた。

なぜここに来たかは分からない、ただ何となくこの場所にくれば彼女に会えると思ったからだ。

そして、彼女はここにいた。

 

「両姫姉さん」

「はい、どうしました戒君?」

 

優しく微笑んでくれる両姫に戒は少し気恥ずかしそうにするが、やがて意を決したように彼女に抱き着いた。

両姫は少し驚いたが彼の背中に手を回す。

 

「…今から、我が儘言っても良い?」

「……」

「俺、両姫姉さんと別れたくない。琴音と両備、両奈と一緒に騒いでいたい…両姫お姉ちゃんと、離れたくないよぉ……!!」

 

服の裾を強く握りながら、涙目で懇願する彼に対して両姫が微笑むと黙って話を聞く。

 

「ずっと、会いたかった」

「私もよ」

「死んだって聞いて悲しかった、もう会えないって思ったら…!!」

「でも、両備ちゃんたちの前では泣かなかった。気を使ってくれたんですよね」

「今更こんなこと言って、最低だ」

「そんなことない」

 

戒の言葉に両姫は頭を撫でながら返事をする、時折彼の手袋に覆われた両手に触れる。

 

「大きくなったわね、戒君」

「うん」

「昔は可愛かったけど、今はとっても可愛いですね」

「カッコ良くない?」

「うふふ、カッコ良いですよ」

 

しばらくの間、二人は似たようなやり取りを繰り返していた。

数時間後、落ち着きを取り戻した戒は手で涙を拭うと両姫の目を見る。

 

「…もう良いの?」

「ありがとう、両姫姉さん。だけど、もう大丈夫」

 

その言葉に彼女は嬉しそうに頷くと、ゆっくり立ち上がって笑顔を見せる。

だが、その表情が真剣その物になる。

 

「そろそろ、来るみたいね」

「そっか…両備が来るまで耐えてよ」

「もちろん♪」

 

忍転身をして青と黒の忍装束に姿を変えると、自分の武器であるショットガンと盾を構えて眼前で構える敵…半蔵学院のメンバーに銃口を向けた。

 

「命はないけど……命、燃やし切りますっ!!」

 

 

 

 

 

両備と両奈は走っていた。

もう迷いはない、恐れもない、ただ自分の想いを伝えるために彼女の場所へと走る。

さっき、けたたましい音が聞こえた…きっとあの場所で彼女が戦っている……自分たちと戦うために、彼女もまた『忍』としてあの場所で自分たちを待っているのだ。

そうして二人は、両姫と初めて会った浜辺へと辿り着いた。

両備たちの目の前には、満身創痍の両姫が立っているが瞳に宿した闘志からまだ戦えることが分かる。

戒と琴音は離れた場所で気絶した飛鳥たちの介抱をしている。

気を利かせてくれたのだろう、「余計なお世話だ」と思いながらも彼らに感謝すると両備は両姫を見据える。

 

「……来たのね」

「忍学生としては失格だと思うけど……姉さん、はっきり言うね。両備は、妖魔も忍の最高位であるカグラもどうでも良いの」

「……あら」

 

その言葉に、彼女は小首を傾げるが気にせず両備は話を続けていく。

 

「姉さんに勝ちたい、両備の願いはそれだけなの」

「うーん。随分と小さい願いなのね」

 

そう言って、両姫は腕を組んで考え込む動作をしながら彼女に視線を向ける。

 

「小さいとか大きいとか両備には関係ないの。小さい胸でも想いがいっぱい詰まっていればそれはもう爆乳って呼んでも良いはずだから」

「それはないぞーっ、爆乳は胸が大きいから爆乳と呼ぶんだーっ!」

「両備ちゃん、何か話がずれてるよ……」

「勝手に喋るなっ!バカ犬とその他っ!!」

 

両備の言葉に戒と両奈は野次を飛ばすが反射的に彼女は二人にツッコミを入れると、改めて両姫に自分の想いを吐露していく。

 

「両備は何をやってもすごい姉さんに反抗しているだけの子どもだった……だから、言っちゃったんだと思う。『姉さんなんて死んじゃえ』って……」

 

そしてそれは自分の本当の想いを縛り付けることになった、だから今まで彼女に対して素直に気持ちを表現出来なかった。

でも、今は違う……。

 

「そっぽ向いて反抗なんてしない。両備は、真正面から姉さんと向き合うから」

「……」

「忍の誇りは何時でも高く持っている。けど、妖魔から世界を救うこととカグラを目指すことは、姉さんを乗り越えてからの話」

 

「だから」と、両備は拳を握り締めた。

 

「両備は姉さんに勝つ!そして姉さんを成仏させてあげるっ!!」

「……本当に、立派になったわね」

 

迷いのないその言葉に両姫は微笑んだ。

両備だけではない、両奈も、戒も、琴音も…自分が子どもだと思っていた彼女たちは逞しく、大きく育った。

本当に嬉しい、その気持ちに嘘偽りはない……だからこそ。

 

(二人を返り討ちにしなくっちゃね♪)

 

気持ちの整理をつけると、両姫も武器を構えた。

 

「両姫お姉ちゃんは……何時でも強く!何処でもたおやかに!忍の道を貫き通しますよっ!!」

 

その言葉が激闘の合図となった…忍転身をした両備はすぐさまスナイパーライフルで狙撃する。

当然、両姫はそれを盾で防ぐが距離を詰めた両備が鋭いハイキックを繰り出す。

不意を突かれた両姫だがそれをバックステップで躱すと、着地点を狙うように両奈の銃撃が襲い掛かる。

 

「くっ!」

 

少し被弾するが、大したダメージではない。

盾を少し前に突き出すと、内蔵されていた銃器が露わになる。

 

「秘伝忍法『HAPPY MISSILE』ッ!!」

「きゃっ!?」

 

そこから発射されたミサイルランチャーによる爆撃に両備は巻き込まれるが煙に紛れるとスナイパーライフルを構える。

精霊術で生成した機雷を放すと、魔力で生成した一発のライフル弾を装填して発射した。

 

「秘伝忍法『リコチェットプレリュード』ッ!」

 

連鎖的に起こった爆発が両姫を包み込む、ダメージを与えることに成功したが彼女の手元には盾がない。

疑問を覚えた両備だったが両奈の声で上空に顔を向けると、両姫の真上にあるのを確認した。

 

「秘伝忍法『HAPPY RAIN』!」

「うわわっ!?」

 

ショットガンの散弾を周囲に跳弾させた秘伝忍法に両備たちは慌てて回避するも、両奈は二丁拳銃を乱射して追撃を阻止する。

 

「う~、やっぱり両姫お姉ちゃんは強過ぎるよ」

「……本当にそうなの?」

 

「え?」と両奈が聞き返すよりも先に両備はショットガンを突きつける両姫に尋ねる。

 

「姉さん、本当にそれが姉さんの全力なの?」

「……」

 

沈黙する彼女だが、これで確信を持てた。

強い意志を瞳に宿した両備は手加減をする両姫に自嘲的な笑みを零す。

 

「分かるよ、それぐらい。本気か本気じゃないかくらい……でも、手加減して戦っておいて、両備たちの想いはそんなものなのっ!?」

 

指を突きつけた両備は両姫に向かって強い口調で叫ぶ、お互い悔いを残したくないからこそ彼女は要求する。

 

「戦うんだったら、本気で来いっ!それで死んだって本望……両備は忍なんだ!!」

「……そうね、ごめんなさい。両備ちゃんの言う通りだわ」

 

自分が本気じゃないのに、向こうには本気で戦えと言っても説得力はない。

それは勝負ではない、自分はあの二人と本気で戦う義務がある。

だから……。

 

「……殺す気で行きます」

 

自分の手で、自分の意思で輪っかに触れた。

途端、両姫の身体には激情と闘争心が湧き上がると内に秘めていた魔力が緑色のオーラとなって溢れ出る。

絶・秘伝忍法『HAPPY TURN』……自身の戦闘能力を増幅させる奥の手中の奥の手。

 

「これが本気の本気じゃあああああああああっっ!!今更土下座しても許さんからなああああああああっ!!!」

 

ショットガンと盾を投げ捨てると、最初に自分が眠っていた棺桶を手元に呼び出し、地面に叩きつける。

途端、叩きつけられた箇所から罅割れが起こる。

 

「ごらああああああああっっ!!クソボケ両備とアホンダラ両奈あああああああああっ!かかってこんかあああああああっっ!!!」

「来いっ!!」

 

荒々しい口調でまくし立てる両姫に、改めて両備と両奈も武器を構えた。

両姫が地面を砕きながら前進すると棺桶を振り下ろす。

それを躱すと地面に叩き付けた棺桶から上方向にミサイルが数発発射される。

 

「それ本当に棺桶っ!?何でそんなもの内蔵されてるのよ!!」

「両備ちゃん!言ってる場合じゃないよっ!?」

 

二人が驚くも、それを無視して彼女は棺桶を構え直すと今度はガトリンガンが顔を見せる。

そのまま高速回転すると無数に近い弾丸が発射されるが両奈と両備の銃撃で相殺する。

両姫との距離を詰めた両備と両奈が一撃を浴びせると、彼女の身体は吹き飛ばすが受け身を取って地面に降り立つ。

もう一度、ミサイルを発射しようと棺桶を展開した時だった。

 

「っ!?」

 

両姫の周囲には六つの機雷が旋回していたことで攻撃を一瞬だけ躊躇してしまう。

それが命とりだった。

両奈が前方へ滑走しながら銃撃し、そこから回転して周辺を銃撃すると片足で回転して広範囲にキックと銃撃を浴びせた後、ポーズと共に自分の周りに氷を発生させる絶・秘伝忍法『リベリオンコンチェルト』が両姫を襲う。

そして、彼女は見た……円形の射撃ユニットを召喚、武装している両備を。

 

「絶・秘伝忍法『メヌエットミサイル』」

 

ユニットから発射されたミサイルを三個ずつ十六回発射し、最後に六つのミサイルをまとめた巨大なロケットを両姫に向けて発射した。

爆風が止むと、そこには膝をついた両姫がいる……決着がついたのだ。

 

「はぁっ、はぁっ!…強く、なったわね。両備ちゃん、両奈ちゃん」

「姉さん、ありがとう」

「両姫お姉ちゃん……」

 

元に戻った彼女の元に、両備と両奈がゆっくりと歩み寄ると彼女に手を貸した。

全員が全員、彼女たちの戦いを見届けており、やがて戦いを見ていた小百合が前に出る。

ようやく、この祭りが終わる……だが、これまでの戦いを観察していた襲撃者はその終わりを許さなかった。

 

「やっと終わりましたか」

「っ!がはっ!?」

「ばっちゃんっ!!」

 

その声に小百合が振り向いた時には既に遅かった。

腹部に鋭い衝撃が走ると彼女の身体は吹き飛ばされ、地面に倒れるのを飛鳥と焔が駆け寄る。

雪泉たちは突如現れた襲撃者に攻撃しようとするが、彼を守るようにバイシクル・エラーとシーフ・エラーが並び立った。

一方の襲撃者…フェニックスはわざとらしい拍手をすると恭しくお辞儀をする。

 

「若き忍の皆さん、誠にお疲れ様でした。つきましては、ここからこの私…フェニックスが不肖ではありますが後夜祭の指揮を行わせていただきます」

 

彼女たちの言葉や動揺を無視して、フェニックスは自身の巻物を取り出すと自身の得物であるステッキを空にかざす。

 

「…我流・秘伝忍法『輪廻転生』」

 

呟いたのと同時に、ステッキを地面に突き刺した。

その瞬間、大きな揺れが全員に襲い掛かりそんな中で戒はフェニックスを睨む。

 

「何をしたっ!」

「簡単ですよ、この空間を現実世界と一つにさせるのです。私の羽根をこの空間の全体にばら撒いておきましたので完全に馴染むはずです」

 

彼の発言に戒は驚いた表情を見せる。

フェニックス・エラーの目的はこの空間を永遠に留めることが目的だと思っていたからだ…彼の顔を見たフェニックスは楽しげな笑みを彼に見せる。

 

「流石にあなたにも分かりませんでしたか?なぜ私が『この空間を忙しなく動き、再生したエラーを動かしていた』のか……」

 

その言葉が戒の頭の隅に入れておいた疑念にぴったりと噛み合う。

そうだ、思えばフェニックスは一つの場所に留まらずにいくつもの場所に現れていた。

疑問を持つことはあったが再生エラーの除去に集中していたためスルーしていたのだ。

だが、もし再生エラーが囮だったとしたら?作戦を円滑に進めるために必要な駒だったとしたら?フェニックスが自分の分身とも呼べる羽根をあちこちにばら撒いていたとしたら……!?

 

「まさか、最初からこのために…!!」

「気づいたところで、もう遅い……これで世界はこの空間そのものとなるっ、もう誰も死なない、誰も傷つかない世界へと変わるのですっ!!」

 

そう狂ったように笑うとフェニックスは「忍転身」と呟き、起動させたエラーカセットをエラーブレスに装填する。

 

【LOADING…~♪!RIDE UP! PHOENIX! BAD and DEAD END! THE ERROR…!!】

 

濁りきった電子音声が鳴り終わると、彼の身体は怪人としての姿……フェニックス・エラーに変わる。

しばらく歓喜に満ちた笑いをしていたフェニックスだったが怪訝な表情をする。

全員が全員、自分に対して敵意を向けた視線を送っていたからだ。

「なぜ」と驚く彼に対して、両姫がゆっくりと立ち上がる。

 

「あなたは勘違いしているわ、『死』がなくなった世界に意味なんてない。そんな世界、理想郷でも何でもない」

『死人風情が口を開かないでください、残された者の気持ちなど分からない癖に』

「…両姫姉さんの言う通りだよ」

 

両姫の想いを斬り捨てるが、その言葉に賛同したのは他でもない…戒だ。

帽子の汚れを取り払って被り直すと彼から視線を逸らさずに正面から見据える。

 

「誰も死なない世界?誰も傷つかない世界?ふざけんな、結局のところお前は誰かの死が怖くて駄々をこねているだけのだ臆病者だ。もう一度言うぞ、ふざけんな」

『…死を恐れて何が悪いのですか、そんな世界を望んで何が悪いのですかっ、死に対して臆病になって何が悪いのですかっ!!それは、当たり前の感情じゃないですかっ!!!』

 

その言葉にフェニックスは初めて感情を露わにする。

壊れた彼は自分に向けて放たれる言葉が理解出来ない、なぜ拒む?なぜ否定する?なぜそんな悲しい視線を向ける。

混乱するエラーに、両姫は優しく言う。

 

「そうですね…それでも、あの子たちは生きていくのですよ」

『っ!好い加減にしなさいっ!!』

 

彼女に向かって火炎弾を飛ばすがそれを弾き飛ばす物体があった。

赤く輝くマシン…ドライグハートが両姫を守ったのだ。

 

『時間はかかったが、これでアーサーの装備は全て揃った』

「さぁて、と……反撃開始だ」

 

左手をスナップしてからアーサードライバーを腰に巻きつけると、戒はドラゴンカセットのスイッチを押して起動する。

 

【DRAGON!!】

「変身っ!」

 

グリップを握ってトリガーを引いた途端、ドライバーから竜を表すグラフィックと電子音声が流れた。

 

【RIDE UP! DRAGON! 牙の連撃!RED KNIGHT!!】

 

戒の周囲をドラゴンの霊装が旋回すると、黒いスーツを纏ったその身体に覆い被さる。

その場に降り立つのは王の名を持つ仮面の騎士。

 

『何なのですか…あなたは、あなたは何者なのですかっ!?』

 

フェニックスは睨む、自分の思いを理解せず、否定しなおも眼前に立ちはだかる少年を。

 

「仮面ライダー…」

 

アーサーは名乗る、絶望に染まり身も心も怪物へと堕ちてしまった『人間』へと。

 

「俺は、仮面ライダーアーサー!さぁ……お前の物語、ここで終わらせるっ!!」

『Start our heart!!』

 

仮面ライダーアーサーは宣言すると、フェニックス・エラーへと駆けだした。




 EV編もクライマックスです。フェニックスはどうなるのか?両姫は最後に何を語るのか?色々と期待していてください。
 ではでは。ノシ

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