仮面ライダーARTHUR 王の名を持つ仮面の騎士   作:名もなきA・弐

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 本編を期待していた方々は誠に申し訳ありません。今回も番外編です…現在雪泉がメインの話を煮詰めていますが、少し時間がかかるので銀○パロのお話を投稿します。本当に申し訳ありません……。
 今回のメインは戒の母親と叔母たちです。終盤の方に聞いたことある人やキャラが登場しますが、後々書く作品で登場する予定のキャラたちですので本編に絡むことはありませんので「こういうキャラがいるんだ」程度に考えてくれたら幸いです。今回は全編ギャグですし、細かいところは気にしたらいけません。
 それと、第二回アーサーチャンネル!!を少しだけ加筆しました。それでは、どうぞ。


ANOTHER COMBO2 バカ×サングラス

某月某日、門矢家のリビングには三人の女性がもんじゃを焼いている鉄板を囲んでいた。

一人は紅い髪のロングヘアーの女性で頭にはアホ毛が一本伸びており、金色の瞳は眠そうな半目をしている。

二人目はブレザーと丈の長いワンピースに、黒のニーソをはいており、黒い上着のポケットには犬のパペットを入れている黒のボブヘアーのおっとりした女性で、オレンジ色の瞳には香ばしい匂いを漂わせているもんじゃを映していた。

最後にいるのは紫色の瞳で銀髪をツインテールにした女性で、全員のコップにコーラを注いでいる。

三人が思い思いの行動をしていると、台所から一人の女性が現れる。

青色の少し長いボブカットヘアーに、赤いカチューシャを着けた女性で長い白のワンピースの上に黒い上着と白いネクタイを着用していた。

他の三人と比べると小柄な体系をしており、知らない人から見たら女子高校生と間違えられるであろう。

しかし、これでもこのメンバーの中では彼女が最年長なのだ。

カチューシャの女性『門矢美緒』は三人が座っているテーブルに座り、口の前で指を組むというどこぞの司令のようなポーズをとる。

 

「今日あなたたちを呼んだのは他でもありません。『奴』が…奴が遂に動くとの情報が今入ったんです」

「「…」」

「…美緒お姉ちゃん、それ本当~…?」

 

本題に切り出した美緒に黒髪の女性、真希奈が他の二人を代表し神妙な面持ちで、しかしおっとりした口調で彼女に聞く。

 

「間違いありません。私は奴の周りに常にコソ泥(某水色ライダー)を張らせておいたのです。奴もそれに勘づいて大人しくしていたようですが…我慢比べは彼や私の十八番です。さっき報告で我慢出来ずに動き出したと連絡がありました…私はもう後手に回るつもりはありません……!」

 

そこで一度言葉を切り、息を吸って宣言した。

 

「決戦です。奴も、奴の野望も全て潰します…!」

「…そっか。美緒お姉ちゃんがそのつもりなら私たちの命も、お姉ちゃんに預けるよ~……」

「…頼りにしてますよ……さて、難しい話は終わりして本格的に食べましょうか。明太子とチーズとってきますね」

 

そう言うと美緒は台所へと引っ込んでいった。

彼女が居なくなったのを見計った真希奈は隣にいた赤髪の女性、美海と、次回の本編に初登場する予定の銀髪の女性『政宗恵利奈(えりな)』に話し掛ける。

 

「……みぃお姉ちゃん、恵利奈お姉ちゃん。少し聞きたいことがあるんだけど~」

「…?何かしら」

「どったの?」

 

真希奈は間を使った後、彼女たちの方に向き直りこう問いかけた。

 

「……奴って誰かな~?」

「知らないのかいっ!!」

 

美海の渾身の叫びが門矢家に響いたのであった。

 

 

 

 

 

「ドリームアイランド」と呼ばれる数年前に建設された安着過ぎるこの遊園地の前にある時計塔、そのすぐ傍にある広場に戒は来ていた。

三日前、ここである人物と待ち合わせの約束をしており、その相手はまだ来ておらず、近くのベンチに座りスマホを弄って暇を潰していた。

 

「門矢さん!……申し訳ありません、遅れてしまいました」

 

と、そこに自分を呼ぶ声がしたのでスマホから顔を上げると、そこには白いリボンを頭につけた雪泉がいた。

手には可愛らしい青いバッグを持ち、服装は白を基調としたセーターをその上に灰色の上着を着ており、首にはバッグと同じ青いマフラーを巻いていた。

余談だが、その可憐な容姿に近くにいたカップルの男性が思わず目を向けてしまい、隣にいる彼女に無言の腹パンを喰らっていたとか。

 

「いえ、俺も来たばかりですから。そんなに待ってませんよ」

「そうですか、実は電車が遅れていまして」

 

雪泉は、ほっとしたように胸をなでおろし遅れた理由を説明する。

 

「今日は遊園地に行くんでしたっけ?なら早く行きましょう。『善は急げ』ってヤツですよ」

「はい…///」

 

戒は軽く笑うと、彼女をリードするように目的の遊園地へと向かって行く。

雪泉はというと少し顔を赤くしながら三歩下がって戒の後をついて行った。

 

 

 

 

 

しかし、その微笑ましい光景を近くの茂みの中で見ている四人の影があった。

 

「あのアマァ…ふざけないでください。戒はね、あなたが来るのを五分も待ってくれていたのですよ。どうしてくれるんですか?手塩にかけて育ててきた息子二号の人生を五分も無駄にしてくれるなんて…」

 

グラサン掛けてライフル銃で雪泉を狙っているバカ(美緒)がいた…。

そして彼女は怒りを露わにし、より決意を固めた。

 

「仕方ありません…あなたの残りの人生、全てをかけて償って貰います。美海、あなたちょっと土台になりなさい」

 

暗殺を決行するという決意を…。

 

「待たんかいいいい!!あなた何っ!!?奴ってアレ、戒の友達!?ただのデートじゃないっ!!!」

 

だがそんなことを警察官として、それ以前に人として見逃せるハズもなく、当然の如く美海のツッコミが入った。

 

「デートなんかじゃありません!!あんなバインバインな雪女もどきとデートだなんて…ママは絶対認めませんっ!!!!」

「やっかましいわっ!私はそんなあなたが名探偵だったなんて絶対認めないわよ!!」

 

だが美緒も負けていない。

「デート」というキーワードに反応したのか癇癪を起こしたように美海に怒鳴りつけるも、美海も負けじと怒鳴り返す。

 

「美海、美海。恵利奈も君が警察だなんて絶対認めないよ!」

「あなたは黙ってなさい!!…はぁ、冗談じゃないわ。折角の非番だっていうのに、あの子たちのデートの邪魔をしろ?やってられないわ…帰る」

 

双子の妹である恵利奈の煽りにツッコンだ後、美海は自分の呼ばれた理由に呆れてしまい、帰ろうとするがそれを美緒は「ちょっと待ってください」と彼女を引き止める。

 

「私がいつそんなこと頼みましたか?私はただ、あの女の抹消をして欲しいだけです」

「もっと出来るか…!」

 

美海の言った言葉に、銃を構えたまま美緒は彼女の間違いを正すが、とんでもない内容のため美海は彼女に冷たい言葉を浴びせる。

 

「あの子が戒を幸せに出来るとは思えません。それは、確かに戒を好きになった女の子のことは応援してあげたいですよ?それで悩んで悩んで色々必死に考えました…それで、『あ、もう抹消しかないな』という結論に…」

「色々考え過ぎでしょ!!極道かあんたはっ!!?」

 

途中からもはや妄想に近い領域に入ってしまっている美緒に美海はツッコミを入れる。

 

「探偵なんて仕事、ほとんど極道みたいなものですよ」

「元探偵がとんでもないこと言い出したわ」

「母というのはね、息子を護るためなら神様だって殺してみせるものなんですよ」

 

とうとうぶっちゃけた美緒に美海は反射的にツッコムもそれに重ねるように名言を使う。

美緒はもはや、完全に周りが見えない危険な状態になっており、もう美海の言葉は、彼女の耳に届く状態ではない。

 

「はぁ…重症ね。真希奈、あなたもこの親バカに何か言ってやりなさい…」

「…真希奈?誰だぁ、そいつぁ…」

 

美海はため息を吐き、これ以上自分の説得は無理だと判断し、陰でこそこそしている真希奈に応援を求める。

だが、呼ばれた本人はドスの利いた声で、妙なことを口走ったのだ。

そして…。

 

「『殺し屋マキナ13(サーティーン)』と呼べ…」

 

グラサンを装備し、美緒と並んでライフル銃を構えるバカ二号(真希奈)がいた。

 

「……何やってるのあなた、てか『13(サーティーン)』って何?」

「不吉の象徴、『13日の金曜日』借りたと思ったら『14日の土曜日』だったの~…そんなことより美緒お姉ちゃん、私も手伝うよ~!」

「真希奈…」

 

美海の疑問に真希奈はすぐさま普段の声で13の由来を説明するもそれを片隅においやり美緒の手伝いをすると宣言する。

何とか二人を止めようとするも、そうしている内に戒と雪泉は四人から遠ざかっていることに美緒が気づく。

 

「いけません!!ターゲットが遠ざかって行きます!さぁ!!」

「レッツゴ~!!」

「ちょっと!待ちなさいバカ共!!」

 

美海の必死の制止も無視し、美緒と真希奈は茂みから飛び出すと、デビルハンターも顔負けのスタイリッシュな動きで二人の後を追った。

 

「まずいわ…今のバカ共なら本当に…恵利奈!あの二人を止めるわよ」

「誰が恵利奈かな?」

「…は?」

 

美海は汗を流しながら先ほど行ってしまった二人が起こす最悪の未来を回避するため、残っていた恵利奈に呼びかける。

だが、恵利奈の一言によって思考が一瞬フリーズしてしまう。

 

「『殺し屋エリナ13』だよ」

 

そう言ってグラサンを掛けた恵利奈も美緒たちの後に続くように飛び出して行った。

 

「ちょっとおおおおおおおっっっ!!?」

「面白そうだし行ってきまーす♪」

 

そして美海も余計なことを仕出かそうとする三人を追いかけるのであった。

なんだかんだ言いながらも彼女は面倒見のいい女性なのである。

 

 

 

 

 

ドリーム・アイランドと言うファンシー臭い名前の遊園地は、初代園長の夢と希望が詰まった名称のテーマパーク。

さすがに今日は休日という事もありカップルや親子連れなどで大盛況でありごったがえった人でいっぱいだった。

その人混みの中で、戒と雪泉はアトラクションの一つであるメリーゴーランドに乗り、気ままに楽しんでいた。

さすがに子供の乗り物だからか戒は若干恥ずかしがっているが雪泉は目を輝かせながら楽しんでいるように見えた。

だが、その二人を狙う銃口が三つ。

 

「むぅ~…これに乗るなんて~。馬が上下に動くから狙いが中々定まらないよ~…」

「それになんか段々気持ち悪くなってきた……ウエェ」

「それにしても二人共?…これいつになったら彼らに追い付けるんですか?さっきから全然距離が縮まらないんですけど」

 

バカ13たちだった。

真希奈は照準が合わないため撃てず、恵利奈は一点を眺めていたせいで吐き気を催し、美緒は二人が乗っている白馬と黒い馬に追い付けず苛立っていた。

 

「縮まるかあああああっ!!!これメリーゴーランドよ!?土台ごと一緒に回っているのよ、永遠に回り続けてなさいバーカ!!」

 

そんな三人に後ろから美海の罵倒に近い至極当然なツッコミが飛ぶ。

 

「メリーとバント?なんですかそれ?私、士さんとのデートの時はいつも映画館か秋葉原だったから遊園地なんて来たことないから良く分かりません。『大人の遊園地』なら捜査の一環で行ったことはありますけど」

「誰も聞いてないわよ!…良い?早まったことはしないでよ。要するにあの女の子の告白(予定)を阻止すれば良いのよね?なら他に方法はいくらでもあるじゃない」

「何ですか美海、私たちの仲間に入りたいのですか?殺し屋同盟に入りたいのですか?」

「あなたたちが血迷ったことをしないか見張りに来たのよっっ!!!!」

 

美緒は遊園地に来たことないという旨の説明をするも最後の方にとんでもない事実を喋ったので美海は強制的に黙らせると三人の説得を続ける。

しかし美緒はそれを仲間に加わりたいと解釈したのか勧誘しようとするが美海は叫び、一呼吸して心を落ち着かせると冷静な口調で語りかける。

 

「気持ちは分かるけど、私はあの子たちの邪魔する気なんて起きないわ」

「だって見てよ、美海お姉ちゃん~!あの上着からでも分かる膨みを~!?兵器だよ~!?おっぱいが大好きな戒君を悩殺するための兵器なんだよ~!?人間に穴開けるぐらい簡単な兵器なんだよ~!人間なんて元々身体中穴だらけなのに更に穴開けようとするとか…意味分かんないもん~!!」

「落ち着きなさい。私もあなたの言っている意味が全然分からないから」

 

彼女の言葉に過敏に反応した真希奈の反論に冷たい言葉を吐く。

戒と雪泉がメリーゴーランドから降りたのを確認すると、四人もすぐさま降りて後を追いかけるのであった。

 

 

 

 

 

 

「門矢さん、あれは何でしょうか?」

 

 

メリーゴーランドを楽しんだ雪泉がそう言って指をさしたのは、激しい高低差と遊園地を二週ほど巻く長さのレールがある巨大なジェットコースターだった。

 

「『ジェットコースター』ですね。ここのは確か、スピード、長さなどが全てにおいてギネスに載ってるとか」

 

これを見た戒は、あまりの長さに若干引きながらもジェットコースターについて軽く説明をする。

説明を聞いた雪泉は興味深そうに見上げている。

 

「…乗ってみたいですか?」

「え!?あ、えと…はい///」

 

戒の言葉に雪泉は慌ててしまうが数回呼吸をして落ち着かせた後、顔を赤くして肯定した。

 

「じゃあ、行きましょうか」

 

戒は雪泉の手を取り、ジェットコースターの方へと向かって行く光景を見ていた四人は各々の反応をする。

 

「嘘っ、あの子たちこんなのに乗るの!?」

「…これって確か、良くCMでやっているものですよね!?観たことありますよ!」

「これって今年人気のジェットコースター『デッドトルネード』だよね~?」

「あっ、知ってる知ってる。確かこれに『カップルで乗ったら二人の想いが成就される』ってリスナーから聞いたことあるよ」

 

美海はアトラクションとは思えないほどの長さを誇るジェットコースターを見て驚愕し、美緒は「テレビで見たことある」と言ってテンションを上げる。

真希奈と恵利奈はジェットコースターの名前とそれにまつわる都市伝説を説明する。

どうやら恵利奈の話からすると、吊り橋効果を狙ったやり方のようだ。

 

「はっ!?ま、まさか、戒を無理やり乗せて弱ったところを狙って大人のアトラクションに直行するつもりですね!そうと分かれば…二人とも、私たちも乗りますよ!!」

「「アラホライエッサー!!」」

 

気合いの入った美緒の呼び声に、二人は元気良く応え、一人はため息彼女の後をついて行った。

 

 

 

 

 

デッドトルネード内に入り、しばらくすると四人がジェットコースターに行き順番が来た。

バラバラになるかと思ったが、運良く、戒たちと同じ車両になることが出来た。

しかし、四人が戒たちに見付からないようにコソコソしていると、美緒は単独行動を取り、最終的に三人は最後尾の車両に、美緒は最前列から二列目の…丁度戒たちの真後ろへとなった。

 

「美緒姉さん、一体何をするつもりかしら?」

「なんせ『サディストクイーン』だからね。何仕出かすんだろ?」

「戒君にばれて嫌われなきゃ良いけど~」

 

三人がそうこう話している内に発射するカウントダウンのアナウンスが聞こえる。

 

『発射五秒前…』

「あっ!二人ともしっかり掴まって!!首痛めるよ」

「え?ジェットコースターって最初はゆっくり動く物じゃないの?」

『発射四秒前…』

 

恵利奈は二人に注意をすると、美海はあっけらかんと返事する。

 

『発射三秒前…』

「スタートからすぐに最高速度なんだってさ。それがこのジェットコースターの怖い理由らしいよ」

「「はぁっ!?」」

 

恵利奈からデッドトルネードの特徴を聞き、二人は驚きの声をあげ慌ててベルトを締める。

 

『発射二秒前…』

「みぃお姉ちゃん~…私、ここから無事に帰ったら、カラオケに行くんだ~……」

「いやそれ死亡フラグッ!!」

『発射一秒前…』

 

真希奈は瞳を閉じ、どこか優しい声色で帰った時のことを美海に告げるも、彼女はそれに言葉を返しながら衝撃に備える準備をする。

 

『発射』

 

アナウンスと共にジェットコースターの車両はけたたましい音をたてて発射された。

その加速は凄まじくとてつもない重力が乗客全員を襲う。

 

「うっ!?何これ……!!」

「ふわ~!!すごいよ~!…ってあれ?何か聞こえない~?」

「え?そういえば風の音に紛れて、な~んか聞こえるような…」

 

美海はジェットコースターの急加速の衝撃に驚き踏ん張り、真希奈もコースターの速度に驚く。

しかし途中変な音が聞こえ、恵利奈もそれに気付いたのか耳をすましてみる。

三人は音のする方向、最前列を見てみると……。

美緒が前から飛んで来たのだ。

 

「…ぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああっっっっ!!!!!」

「「「え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛ええええええええええええええええええ!!?」」」

 

あまりの出来事に、三人は驚愕の声を上げてしまうも、それで止まるわけもなく、そのまま美緒は美海と恵利奈の顔面に直撃してしまう。

 

「ブッ!!」

「アベシッ!?」

 

二人に激突したことでスピードは落ち、美緒はなんとか座席の枕に掴むことに成功する。

だが余程の衝撃だったのだろう、美海と恵利奈は鼻を押さえている。

 

「み、美緒姉さん!!?あなた、何してんのおおおおおお!!!」

「美緒お姉ちゃん!?ベルトは、ベルトはどうしたのさっ!?」

「あばばばばばばば!!!ベルト締めるの忘れたっ、ベルト締めるの忘れましたああああああああああっ!!!」

 

美海と恵利奈は、吹き飛ばされて普段の彼女とは思えないほど慌てる美緒に理由を尋ねる。

ここで事情を知らない人たちのために分かりやすい説明をすると、こうなる。

当初の予定の通り、美緒は直接邪魔をするため戒たちのいる席、つまり最前列の後ろの席に座ったのだ。

だが、邪魔をすることに意識を集中させていたのかアナウンス直前まで、ベルトを締めるのを忘れており、気付いた時にはもう手遅れ。

彼女は風になってしまったのだ……。

人はこれを自爆というのである。

 

「わ、分かった!分かったから!!おおおお、落ち着きなさい!!」

「いや、みぃお姉ちゃんも落ち着いて~!!」

 

だが、そんなことを三人は知るはずもなく、美海は落ち着かせようとするも真希奈に逆に冷静になるように指摘されてしまう。

 

「たたたた、助けてください恵利奈あああああああっっ!!!」

 

錯乱状態の美緒は、あろうことか恵利奈の髪を掴んでしまったのだ。

 

「へっ?…痛っ!!イダダダダダ!!髪、それ髪いいいいいいいいいいい!!!!!」

「わ~!!!美緒お姉ちゃん~!!それ恵利奈お姉ちゃんの髪の毛~!!!」

 

髪を掴まれた恵利奈は目に涙を溜めて叫ぶ。

真希奈は「髪を離せ」と言いそうになるが冷静になって考えてみると、これを離したら美緒は増々危険な状態になるのだ。

その手前、「離せ」と言うことなど言えるわけがない。

そして…

 

「「「「ぎゃああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!」」」」

 

何も出来ぬまま、四人の絶叫がコースター内に響き渡った。

そして、長くも短くも感じた地獄のジェットコースターは終了した。

 

 

 

 

 

「恵利奈、しっかり」

「美緒お姉ちゃん大丈夫~?」

「「…………」」

 

美緒と恵利奈の腕を首に回して肩を貸している美海と真希奈が二人に話しかけるも、当然二人からの返事はない。

あの後、美海の髪に掴まることで美緒はジェットコースターから無事に生還出来たのだが、

激しい遠心力で揺られてしまい、終わった頃には自分で立っていられないほどグッタリしていたのだ。

それは美緒に髪を掴まれていた恵利奈も同様であり、引っ張られたおかげでボサボサになっており、それを直す気力もなかったのだ。

 

「美海お姉ちゃん、とりあえずこの二人をベンチまで運ぼ~」

「そうね…」

 

ジェットコースターを後にし、美緒と恵利奈を引き摺るようにベンチまで運ぶと、美海は戒たちを追い掛けるのを諦め、少し遠くから眺めて見守ることにする。

真希奈は近くの自販機でオレンジジュースを二本買い、その内の一本を美海に手渡す。

 

「…それにしても楽しそうねあの子たち…」

「私は、絶対に…認めませんよ」

「ウェ…まだ気持ち悪い……」

 

ジュースの缶を傾けながら美海が楽しそうにしている二人を見て物思いに耽ふけっていると、美緒と恵利奈は復活していた。

おぼつかない足取りだったが美緒の目にはまだ光が灯っており、その様子からして諦めていないようだ。

 

「まだそんなことを言ってるの?あれは誰がどう見ても仲のいいカップルよ」

「駄目です、まだ早いです!!男の子は一度盛ると手がつけられなくなるんですよ!?もしかしたら戒だって…」

「そんなわけないでしょ!あなたは息子が可愛くないのか!!」

 

美海は諦めの悪い美緒に呆れるも美緒のあんまりな言い分に思わず怒鳴ってしまう。

すると戒たちを見ていた真希奈から声が掛かった。

 

「あっ、美緒お姉ちゃん~!あれを見て~!!」

「「「…っ!!」」」

 

全員の視線が真希奈の指差す方をみると、それは巨大な観覧車であり戒たちもそこに向かっているのが見える。

 

「観覧車に行くんだよ~!間違いないよチューするつもりだよ~」

「ええ!?そうなのですか!?」

 

真希奈の言葉に美緒は驚く。

 

「そうだよ~。観覧車っていったらチューだよ、チューするために作られた乗り物だよ~」

「そうなの!?…はっ!戒の貞操が危ない!!」

 

美緒はすぐさま立ち上がり、走りだす。

その際、スマホを取り出し何処かに電話をかける。

 

「もしもし…私です…はい、実は今日『あれ』を使って遊園地に来て欲しいのですけど、OKィ?え?知りませんそんなの私の管轄外です…そうそれで良いんです。ありがとうございます…さぁ!最後の一仕事ですよ!!」

「「了解カ~イ!!」」

 

数分の会話の後、美緒は電話を切り真希奈と恵利奈に声をかけるとそのまま三人はどこかへと走り去ってしまった。

そして、三人が走り去るのを見送った美海は……。

 

「ハァ……」

 

ため息を吐き眉間を揉むと、スマホを取り出しある人物へと電話をかけた。

 

 

 

 

 

数ある観覧車の一室、もうすぐ頂上に着き街が一望出来る頃。

 

「フゥ…このように遊ぶのは久しぶりで、ありがとうございます」

「いえいえ、お礼を言うのは俺の方ですよ」

 

二人の少年少女が向かい合って座っている。

しばらく談笑していたがその内、話す話題もなくなってしまい、二人の間に静寂の時間が流れる。

だがそれは気まずいものではなく、どこか心地よさを感じさせた。

 

「…あの、門矢さん///」

 

雪泉は唐突に話を切り出す。

チャンスは今しかない、自分を鼓舞し、雪の結晶のような瞳を彼に向ける。

ほんの少し、頬を赤らめながら息を吸い、彼への想いを伝えようとする。

そして…。

 

「私は……っ!?」

 

外から聞こえる奇妙な音が後に続く言葉を遮った。

絶好のタイミングで邪魔された雪泉は顔をしかめながら音の発生源、つまり真横を見る。

それは直ぐ見付かった。

ホバリングしているヘリコプターだった。

そう、黒塗りのヘリコプターが二人の目の前に存在していたのだ。

 

「へ、ヘリッ!?何で…!」

 

突如現れたヘリコプターに戒は焦りながらも観察すると赤い鳥のようなマーク『鴻上ファウンデーション』のマークが…

すると、ヘリコプターは再び横に旋回しドアがガラッと開く。

そこにはライフルを構えた三人の殺し屋たちの姿があった。

 

「「「殺し屋13!お命頂戴する!!」」」

「「え、ええええええ!!!?」」

 

決め台詞と同時に三人はライフルを構え直す。

そんな超展開に、狼狽することしか出来ない二人。

三人のバカが何も知らぬ少年少女に牙を向けた瞬間…。

奴らは現れた。

 

「そこまでよ!」

「無粋な真似はするものじゃありません」

『っ!?』

 

殺し屋と標的…両者の間に割って入るように新たな声が響く。

彼らは声のする方、観覧車の屋根の上を見ると奴らは…彼女たちはいた。

 

「あ、あれは…」

 

美緒は見覚えのある姿が現れうろたえる。

 

「み、みぃお姉ちゃん~!!?」

「ら、雷華!?ど、どうして…?」

 

そう、先ほど三人を見送った美海と、黒いセーラー服のような洋服を着た黒髪ショートの女性『左雷華(らいか)』だった。

二人ともグラサンをかけており美海はネックレスを精霊術で変化させたバズーカを肩に担ぎ、雷華は自身の契約精霊『霊獣 鵺』を具現化させ、その背に乗っていた。

真希奈と恵利奈は突如現れた二人に戸惑いを露わにするも、彼女たちは不敵な笑みを浮かべる。

 

「美海?誰かしらそれは」

「雷華?ふっ…今はそんな名前じゃありません」

 

そう言うと美海はサングラスを親指で少し上げると腰を落とし、バズーカを三人に向けて構え、雷華に指示を与えられた鵺は口を開けて大気中にあるマナを溜める。

そして二人は高らかに名乗った。

 

「私は、『守護者ミウ13(サーティーン)』」

「同じく『守護者ライカ13』」

「「人の想いを邪魔するバカは…消え去れええええええっ!!!」」

 

守護者13たちが放った攻撃はプロペラの根元を貫いた。

当然それによってヘリコプターのバランスが崩れてしまい、運転手の慌てた声が聞こえる。

 

「え、ちょっ、待っ…」

「「「ああああああああああおっ!!!」」」

 

制御の利かなくなったヘリコプターは、そのままバカ三人+αと共に海の、もとい噴水の藻屑へと消えて行った。

そして、戒たちが遊園地から帰った数時間後…。

 

「あなたたちはねぇ、もう少し常識を弁えたらどうなの?」

「まったくです!そもそも子どもたちの遊びに大人が介入する時点で…」

「「「うぅ……」」」

「あはは……」

 

それから二人による説教が二・三時間続き、その後は美海と雷華によるありがたいお話を受けるのであった。

事情を聞かされたヘリの運転手…パンツにこだわっていそうなイケメンも説教している光景を見て苦笑いするのであった。

本日の教訓『男女の関係は他人が詮索してはいけない。特に身内に関しては』

 

 

 

 

 

 

……Next Stage →COMBO9 正義×狙撃




 銀○パロ楽しいです(白目)、本編の方も微弱ながら進んでいるので安心してください。
 ではでは。ノシ

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