仮面ライダーARTHUR 王の名を持つ仮面の騎士   作:名もなきA・弐

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 そろそろ語ることがなくなってきました…今回は幼馴染組のターンです。どうやってクライマックスへと向かわせるか構想を練っています。
 両奈のデレってどのようにすれば良いのか手探り状態です。しかし、本格的にリアたちの出番がないな…マジで番外編で挽回するしか……。
 短いですが…それでは、どうぞ。


COMBO18 幼馴染×言葉

フェニックス・エラーとハイド・エラー戦後、森林から抜け出ると飛鳥に連絡を入れた戒とウェルシュは浜辺を歩いていた。

海の景色を眺めながらも一人と一機は会話を始める。

 

『フェニックスはこの空間をいたく気に入っている。やはり、カグラ千年祭の結界を永久に留めることなのだろうか…』

「かもしれないな、あの声…間違いなく本気だった」

『何れにせよ、再生エラーの残りも少ないはずだ』

「そうなると、残りは……」

 

そう言って、スマホを起動させるとエラーの顔写真が入っている画面へと切り替わる。

即席で作った再生エラーのリストだ、先ほど撃破したハイドの顔をタップして✕字にすると残りのエラーを数え始める。

残りは、シーフ・エラーとバイシクル・エラーにステルス・エラー…そしてマグネティック・エラーの四体。

ブラッド・エラーは突然変異なのとエラーの人格を持たないため、登場しないのではないかとウェルシュが断言したため無条件で削除する。

厄介な奴が残ったな……。

そうため息をつきながらも、歩を進めていた時だった。

 

「カー君~っ!!」

「へっ?…ぐぼっ!?」

 

聞き覚えのある声と呼び掛けに立ち止まって前を向いた瞬間、腹部に強烈な衝撃が入り倒れそうになるも何とか堪える。

視線を下に向けると見覚えのある金髪があり、体当たり紛いのハグをしてきた人物の名前を咳き込みながらも呼ぶ。

 

「ゲフッ。り、両奈…何を」

「丁度良かった!一緒にご飯食べよっ!!」

「ご飯ねぇ」

 

どうするかと考えたが、腹の虫が鳴いているのを聞いた両奈は笑顔で彼の手を握って連れて行こうとする。

 

「ほら、早く早くっ!琴音ちゃんや両姫お姉ちゃんもいるから」

「うわー、マジか」

「両姫お姉ちゃん、お風呂のこと気にしてないって言ってたよ?」

「何で話すのかなぁ、あの人はっ!?」

 

両姫の名前を聞いた戒は気まずげな声を漏らすも両奈がフォローをするが逆にツッコミを入れる結果になってしまった。

リードされる形で戒は行動を共にするが、目的地らしき場所で煙と音があがっているのに不安を抱く。

 

「…何か、昼食の雰囲気とは思えないぐらい殺伐としているんだけど両奈さん?」

「両奈ちゃんがお姉ちゃんの輪っかを触ったからだよ、多分反抗期の両備ちゃんと戦っているんじゃないかな?」

「あの輪っか、そんな設定があったのっ!?」

 

そんな二人のやり取りを黙って聞いていたウェルシュは「飾りじゃなかったのか」と思いながらも、あえて言葉にはせず幼馴染二人の会話を黙って聞いていた。

そんな中、ふと戒は自分の手を握っている両奈の手を軽く握るとまじまじと見る。

突然の彼の行動に疑問を持った彼女は歩くのを止めると首を傾げて尋ねる。

 

「どうしたのカー君?」

「いや、両奈の手綺麗だなーって」

「っ!?///」

 

急にそんなことを言いだした戒に普段とは違う反応を見せた両奈は顔を真っ赤にすると、彼の手を離そうとするが今度は戒が彼女の手を離さない。

 

「あんまり意識してなかったけど、何だろ…触っていて気持ち良い」

「…何で、そんなこと…///」

「いや、気分?」

 

普段らしくない彼女に疑問符を浮かべながらも、理由を話す。

事実、戒は急に突飛な言動をすることがあり幼少期のころからもそのような部分があった。

今回もそんな悪癖が出ただけだと割り切ろうとしたが両奈の鼓動は意思とは反して速くなっている。

元々被虐体質の彼女だが戒にだけは少しでも女の子らしくしようとしている彼女からしたら彼の褒め言葉は罵詈雑言(ごほうび)に等しいのだ。

オッドアイを忙しなく動かして明らかに動揺している両奈に戒が声を掛ける。

 

「どした?両奈」

「へっ!?ううんっ、何でもない!何でもないのっ!さっ、行こうカー君っ!」

 

まくし立てるように喋ると彼の手を握り、赤くなった顔を隠すように走ると自然と戒も彼女に引っ張られるように走り出した。

 

 

 

 

 

「どう、戒君。美味しい?」

「……ん」

「両奈ちゃん、飲み物取って」

 

目的地に着いてから数時間後、戒は蛇女学園のメンバーと琴音、両姫がいる場所で昼食を取っていた。

おにぎりを頬張っている自分に対して頭を撫でてくる両姫に頷き、琴音は両奈から渡された飲み物を飲む。

雅緋や忌夢たちも食事を楽しんでおり、紫もやや距離を置きながらもおにぎりを味わって食べているなどしばらくは楽しく穏やかな時間が流れていたが立ち上がってその場から離れようとしている人物がいた。

 

「…もひほうはま」

「ん?両備、今何て言ったんだ?」

「御馳走様ですって」

 

口にまだおにぎりを含んでいるのかもごもごと話した彼女に忌夢が疑問を浮かべると両姫が笑みを保ったまま通訳する。

しかし、飲み物を飲んでいた戒が待ったをかける。

 

「もう少し食べて行ったらどうだ?両姫姉さんのご飯美味しいぞ」

「ふあべふあたほおああらむほうく。ふあんふあふぃふあはんふぇいふあい」

「口に物を含んでる奴が何言ってるんだよ、それに関係あるなしの話だろ」

「ふっふあい、ふぇふふあい」

「誰が変態だお前っ!」

「いや何でさっきから言葉が通じてるの!!」

 

なぜか会話が成立している戒と両備に対して琴音がツッコミを入れると、ゆっくりと立ち上がった両姫が彼女の前に立つ。

 

「両備ちゃん、どうしてお姉ちゃんを避けているの?」

 

悲しそうな表情を見せる彼女に対しておにぎりを飲み込んだ両備が、気まずそうに口を開く。

 

「……分かるでしょ、それぐらい」

「分からないから、聞いているの」

「…両備が最後に言った言葉、憶えてるでしょ?」

「っ?そんなこと、言われたかしら」

「嘘っ!しらばっくれないで!!」

 

感情を露わにし始めた両備に対して琴音は止めようとするも、戒がそれを抑える。

本当に憶えていないのだろう、思い出そうとしている両姫に対して彼女は顔を横に反らして、あの日言ってしまった言葉を口にする。

 

「……死んじゃえば良い。私は姉さんにそう言ったんだよ」

 

一字一句間違えずに、忘れるはずもないあの言葉を口にする両備だが言われた側である両姫は口元に手を当てて思い出したように呟く。

 

「そういえば、そんなことも言われた気がするわ」

「気がするって…」

「でも、お姉ちゃんは怒っていないし、何にも気にしていないからそんなことで避けなくて良いのよ」

「……そういうところが嫌いなの」

 

 

何時もの微笑みを見せた両姫だったが、それが余計に両備の胸を締め付ける。

やがて小さく呟いた言葉に、彼女が「えっ」と驚いた時だった。

 

「死ねって言われて気にしてないとか、どんだけ心臓に毛が生えているのよっ!!」

「そうは言われても……本当に気にしてないから」

「っ!!もう良いっ!」

 

両姫の言葉に過敏に反応した両備はこの場から走り去ってしまった。

逃げるように走って行く彼女を呼び止めようとするがそれよりも早く動き出した影があった。

…戒と琴音、両奈は両姫にアイコンタクトを取るとその場から離れる。

一瞬だけ寂しそうな表情を見せた両姫だったが三人の後ろ姿に頼もしさを感じると、何処か安心した笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

「ぜー…ぜー…!お前っ、足速っ…!」

「はぁっ、はぁっ…!手っ、離しなさいよ…!!」

 

数時間後、両備に追いつくことが出来た戒は息を切らしながらも彼女の手を掴むことに成功する。

一方の両備も全速力で走ったのか深呼吸を何度も繰り返して手を離すように言うも却下される。

息を荒げながらも自分に追いついた琴音と両奈に逃げられないと悟ったのか両備は肩の力を抜いた。

 

「……中学生の時」

「えっ?」

「中学生のころから、私は姉さんに対して負けたくないって思うようになったの……」

 

両備は三人に話し始める。

…中学生になり始めた時、何でも出来る姉に対して何時しかコンプレックスを抱くようになってきた。

きっかけは何だったのだろう、幼いころからあった嫉妬心なのかもしれないが両備はとにかく姉に勝ちたかった。

だから、料理だって必死に覚えたし嫌いだった勉強も一人で頑張るようにした。

姉に弱みを見せないために隠れて努力を重ねてきた。

けれど、両姫が常に自分の一歩上を進んでいた…それを鼻にかけることなく自分を褒めてくれたことが余計にみじめにさせた。

あの日だってそうだった…疲れているのに一切の苦労を顔に出さずに笑顔でいる姉に対して不満を覚えた、つまらない妬みだった。

だから、だから口に出してしまったのだ…「死んじゃえば良い」と。

実のところ、両備はその言葉に対して深い意味はなかった。

両奈に対するいつもの調子で吐き出してしまっただけだ、本心で言ったわけではない。

だが、両姫が亡くなってしまった…それがいつまでも自分の心に突き刺さり、仇を討とうとしたのも罪滅ぼしの意味合いが強かった。

そこまで話すと、両備は息をゆっくりと吐いた。

琴音と両奈は何も言わなかったが戒はおもむろに彼女の頭を撫でる。

 

「頭を撫でるな…て痛っ!?」

「たく、急にシリアス入ったから何かと思ったら…」

「あはは…でも、両備ちゃんらしいな」

 

抗議しようとするがデコピンされて額を抑える両備に対して戒が呆れたように顔に手を当てるが、琴音は笑ってフォローを入れる。

二人に対して憮然とした表情を見せる彼女に戒は言葉を続ける。

 

「上手く言えないけどさ、正直に言ったらどうだ?」

「謝れって?けど…」

「両姫姉さんが忍の盆踊りに参加した理由を考えて見ろ、そうすれば分かる」

「多分だけどさ、両備ちゃんは姫お姉ちゃんに伝えたいことが他にあるんだと思うよ」

 

笑ってそう言う二人に困惑した表情を見せるも、両奈が両備の元に駆け寄る。

 

「両備ちゃん。明日から雅緋ちゃんや雪泉ちゃんたちを調査しよう」

「何で両備が…」

「絶対だよ、両奈ちゃんとの約束!」

 

笑って言い切られた両備は首を縦に動かすと両奈はさらに笑みを深めて彼女に抱き着いた。

当然、両備から蹴り飛ばされていたがそれでも二人は僅かながらも笑顔を見せていた。

「よし」と戒が伸びをすると提案をする。

 

「じゃあ解散するか。琴音、疲れたからおぶってくれ」

「体格差考えてっ!無茶だからねっ!?」

「じゃあ両奈ちゃんがおんぶしてあげる!」

「わ、私が…」

「お前は別に良いわ」

「どういう意味だこらっ!」

 

そんな楽しそうに会話する四人を物陰から見守っている人物がいた。

 

「あらあら、私の出る幕はなかったかしら」

『行かなくて良いのかい?』

「お姉ちゃんが出たら、空気を壊しそうだから」

 

「そんなことはない」と言うウェルシュだったが、その人物…両姫は純粋に楽しそうな笑みを四人に向けている。

そこには寂しさがなく、彼らの幸せを祈っているようにも見える。

しかし、ウェルシュはわざとらしく走行し彼女の背を押すようにさりげなくぶつかると、衝撃によって両姫は物陰から出てしまう。

 

「きゃっ…えと、こんにちは?」

 

両姫が困ったように微笑んであいさつすると両奈と琴音が彼女の手を掴むと、強引に輪の中へと入れる。

その光景を、ウェルシュが見守っているのだった。

To be continued……。




 短いですが、そろそろクライマックスですのでそれに向けて意図的に短くしています。色々とカットしていますが焦点を両備に当てているからね、是非もないです(泣)
 本当は色々とやりたいことがあるんですけどねー(遠い目)両奈のデレは無理やりぶち込みました。戒君たち込みで全キャラ回すのは本当に難しいです。
 ではでは。ノシ

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