仮面ライダーARTHUR 王の名を持つ仮面の騎士   作:名もなきA・弐

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 次回からリアルの都合で更新が少し遅れるかもしれません。ですが失踪する予定はないのでご安心ください。
 今回カー君赤面しっぱなしです(笑)後、飛鳥とのシーンも入れましたがもう少しイチャイチャさせたいです(切実)。
 それでは、どうぞ。


COMBO16 事情×未練

森林の奥ではファンシー・エラーは自身の怨敵に対抗していた。

 

「そらよっ!」

『やでぇっ!!?』

『イーッ!?』

 

アーサーのグレンバーンによる抜刀がファンシーとポーントルーパーを捉えると、ファンシーは吹き飛び、片方は両断されて消滅する。

地面を転がった後、起き上がったファンシーは等身大サイズのぬいぐるみと別個体のポーントルーパーにアーサーに襲わせるが鞘に納めたグレンバーンで殴り、脚力強化した足技で圧倒する。

いくらレベルアップしようと、数が多かろうと一度戦った相手に負けるほどアーサーは弱くもなければ慢心もない。

 

「どうした?もっとゆっくりしない、ファンシーちゃん?」

『こんのぉぉぉ……!!!』

 

余裕な態度で自身を挑発するように左手をスナップするアーサーにファンシーは怒りで身体を震わせるが、少し遠い距離ではけたたましい音と共に複数のぬいぐるみが吹き飛んでいた。

そこには上半身と腰回りを隠したセクシーな忍装束の蓮華と、赤と白の横シマの薄手のシャツの上に薄い緑色のハッピのような忍装束に身を包んだ華毘がぬいぐるみとポーントルーパーたちを相手に無双していた。

 

「てやんでぇっ!!私はこの程度じゃ止まらないよぉっ!!」

「どんどん行くっすよー!!さあさあ、ご覧あれぇっ!!!」

 

蓮華は神輿と太鼓が合体した物体をバチでリズムよく叩く秘伝忍法『紫電・改』によって生じた雷撃と、華毘は黒い巨大なハンマーを叩いて敵を浮き上げるとそこから打ち上がった花火による秘伝忍法『スーパー・メガボンバー!!』で殲滅する。

自慢の精鋭が全滅し唖然としている中で水色の園児服の忍装束を着た華風流がイルカ型の鉄砲を突きつける。

 

「お人形ちゃんが全滅しちゃいまちたよ~、マジワロスwwww。はい論破」

『ぐぎぎぎぎぎ……っ!!!』

 

赤ちゃん言葉とスラングで挑発する少女にファンシーは眉間に青筋を立てた。

そもそも、巫神楽三姉妹がアーサーこと戒と行動を共にしているのは昨夜……つまり前回の最後まで遡る。

それは、戒の部屋でのことだ。

 

 

 

 

 

「簡単ですよ、あなた方の隠し事を秘密にする代わりに俺に協力してほしい…ただそれだけです」

「それが私たちとどう関係があるの?」

「そっちは祭りを少しでも延長したい……大方、自分たちを救って死んでしまった人に再会してお礼を言うための時間が欲しいのでしょう?」

「な、何で…むぐっ!?」

 

戒の取引は単純にフェニックス捜索の協力を頼む代わりに小百合に口を紡ぐことだった。

半ば約束にも近い条件に華風流は警戒するも、それを軽く流してから放った彼の言葉に華毘が反応する。

最も、蓮華と華風流が慌てて口を塞いだがその反応で分かった。

盗み聞きしていた辺りからそんな予感はしていたが、三人の反応で確信が持てた…戒が話を続ける。

 

「俺はあなた方が気になっていることを全て話しました」

『次は君たちが話す番だ。最も、嘘が苦手な三人でどうにか出来るならこの話はなかったことにしてくれて良い』

 

少し悪い言い方になってしまったがこうしたのには訳がある、延長の理由について確信は持てたがなぜそこまで秘密にしたいのか分からなかったからだ。

本人たちの口から聞きたい、そう思ったから戒はエラーと仮面ライダーのことを全て話したのだ。

 

「……話すよ」

「蓮華お姉ちゃん!?」

「仕方ないだろ、ここまで正直に話してくれたんだ。ここで黙ったら女が廃るってもんでいっ!!」

「そうっす、華風流ちゃん!門矢君はここまで言ってくれたっす!!なら、うちらも全て話すべきっすよ!」

 

真っ直ぐ過ぎる二人の姉に圧された華風流はついに根負けしてしまったのか「勝手にすれば」と顔を横にそらしてしまった。

 

「あんたの言う通り、私たちは…私たちを助けてくれた『あの子』に会うためだったんだ…」

 

胡坐をかいた蓮華が自分たちの目的を話し始める。

三人は幼いころから巫女になるために修行をしており、修行場でもある村の中で、『その少女』と遊んでいたそうだ。

その少女が何者かは知らなかったが、少なくとも特別な訓練を受けていた自分たちに追いつくことが出来たのだ。

彼女に聞いても忍なのか、それとも余所から来た別の巫女なのか…それは分からなかったがそれでも四人は仲良く遊んだ。

ある日、今まで黙っていた少女がふと口を開いた。

 

――――「明日の夜十一時、妖魔がここに来るよ」――――

 

でも、まだ幼かった蓮華たちはそれを冗談だと思っていた……。

だから村の人には何も言わなかった…残ったのは妖魔から自分たちを守るために散って行った少女の赤いリボンだけだった。

勇気がなくてゴメン、信じてあげられなくてゴメン、助けることが出来なくてゴメン…。

心の中でずっと謝罪をしていた…その時、小百合が来たことでチャンスだと思った三人はカグラ千年祭であの子に会おうと決心したのだ。

 

「……てことだ、分かったか?」

「……」

 

蓮華が話を締め括ると同時に手を叩いて無理に笑顔を作っていたが戒だけは黙っていた。

しばらく、沈黙していたがやがてゆっくりと立ち上がり歩くと……。

トイレの方へ向かった。

 

「…って何処に行ってんだあんたはあああああああああっっ!!!」

 

華風流の投げた携帯電話が戒の後頭部にクリティカルヒットした。

 

 

 

 

 

「じゃあ、俺はあなたたちの行動を黙認する代わりに、あなたたちは俺の目的のために協力してもらう…てことで構いませんか?」

 

頭にタンコブの出来た戒がそう締め括ると同時に三姉妹が頷くとアーサードライバーが光り、シェアリングナイトフォースを起動する。

ようやく話が終わった蓮華は身体を解すように腕を回すと、衣服に手をかけてそのまま服を脱ぎ始めた。

 

「はっ!?ち、ちょっと何してるんですか!!///」

「何って、風呂に決まってんだろ?部屋に戻るのも面倒だから使わせてもらうよ」

「いや、待ってください!こ、ここ、困ります!!///」

 

顔を赤くした戒が止めようとするが半裸になった彼女は彼の首に腕を回して身体を密着させて笑う。

 

「気にするなって、私は構わないから!」

「そうっすよ!門矢君も一緒に入るっす!!」

「良いから!別に良いですから!!や、やめてえええええええええええっっ!!!///」

 

乗り気な蓮華と華毘、それを頑として止める華風流とそんな一幕があったが戒は三姉妹と協定を結ぶことにしたのである。

そして、時間軸は再び先ほどの戦い……ぬいぐるみを空間のあちこちに張り巡らせて暗躍しようとしていたファンシーとの激闘へと戻る。

 

 

 

 

 

「「合体秘伝忍法『ドルフィンフィーバー』ッ!!」」

 

リズムリンクにチェンジしたアーサーと華風流が上空に向かって発射されたイルカ型の音のエネルギー弾はファンシーたち目掛けて突撃する。

着弾した後も、まるで意思を持っているかのように縦横無尽に動くイルカに翻弄されている間にマジシャンリンクへとチェンジすると隣に立っていた蓮華と共に走る。

そして彼女が紫電を帯びた太鼓型のエンブレムをアーサーの前に召喚すると水晶生成を発動させたマジッグローブで殴る。

 

「「合体秘伝忍法『紫電・結晶』っ!!!」」

『やでぇ~~~~~~っっ!!!?』

 

波紋が幾重にも広がるように召喚された雷を帯びた水晶がポーントルーパーを巻き込みながらファンシーに大ダメージを与える。

そしてドラゴンリンクに戻ったアーサーが脚力強化で加速すると、生き残っていたポーントルーパーとぬいぐるみを蹴り上げた。

そこを華毘がハンマーで花火玉をノックの要領で上空に飛ばすと熱操作で炎を発生させたグレンバーンを抜刀し発火させる。

 

「「合体秘伝忍法『スターマイン』ッッ!!!」」

『っ!!』

 

グレンバーンを帯刀すると同時に色鮮やかな花火と共にポーントルーパーたちを星にする。

ファンシーはやけくそ気味にアーサーに殴りかかるがそれを軽く避けるとすれ違いざまに脇腹を蹴り飛ばした。

蹴られた箇所を抑えて地面に蹲るファンシーを見下ろしながらドラゴンカセットを左腰のスロットに装填して赤いボタンを押す。

 

【CRITICAL ARTS! COMBO BREAK! DRAGON!!】

「オラアアアアアアアアアアッッ!!!」

『サラバやでぇえええええええっ!!』

 

ドラゴンストライクで蹴り貫かれたファンシーは悲鳴と共に爆散した。

媒介となっていたエラーカセットと傀儡が音を立てて壊れたのを確認したアーサーは変身を解除する。

一息つくと蓮華たちの方に目を向ける。

各々の手には何時の間にか矢文が握られており、苦虫を噛み潰したような顔をしていることから恐らく小百合からの文だろう。

蓮華が軽く謝罪すると三姉妹は本業を全うすべくその場を後にした。

 

 

 

 

 

ファンシーを撃破し、巫神楽三姉妹と別れてから戒は何の気なしにホテル周辺を歩いていた。

最初の内はウェルシュと行動していたが「海の景色を録画したい」と彼が言い出したため、ここから別行動を取り戒はプールのあるエリアへと足を踏み入れたのだ。

 

「あ、戒君」

「飛鳥さん?」

 

一人で泳いでいた飛鳥が彼の存在に気づくと、元気よく手を振る。

濡れた妙に艶めかしい身体と彼女の活発な性格がアンバランスな魅力を出しており、またしても戒は軽く赤面してしまうも気づかれないように手を振り返す。

プールサイドの端に腰を掛けると飛鳥もこちらの方に来ると口を尖らせて話す。

 

「琴音ちゃんから聞いたよ、一人で行動しちゃって……」

「すいません。迷惑かけない方が良いかなーとかって考えたり…」

「そっちの方がよっぽど迷惑」

 

苦笑い気味にそう言う戒だったが逆に手厳しいお言葉を返されてしまい、困った表情を見せる。

そんな彼を見た飛鳥は不機嫌な表情からいつもの明るい表情に戻すと話題を切り替える。

 

「あのさ、戒君と私って会ったことある…かな?」

「…どうしてそう思うんですか?」

「戒君とは初対面のような気がしなくて…それに初めて会った時に言われたことが気になって」

 

「あれか」と戒は思う。

確かに、あの時自分はそう言った……でもあの話をしても彼女が覚えているかどうか微妙だし、今自分が初めて変身した時のことなど話しても仕方ないだろう。

 

「近い内に、みんなに話しますから…ね?」

「うーん、分かったよ」

 

戒の言葉に飛鳥は納得がいっていないようだったが信頼している彼からの頼みに頬を綻ばせるとプールから出てくる。

しかし……。

 

「うわっとと…!」

「危ないっ!」

 

タオルで身体を拭きに行こうと荷物を置いているチェアの方へと歩いた途端、バランスを崩し転びそうになる飛鳥を支えようと戒が駆け寄るが。

 

「うわっ!?」

「きゃっ!?」

 

軽い悲鳴と共に二人揃って倒れてしまった。

幸い、戒が下敷きになったおかげで衝撃がこなかったが自分を助けてくれた彼に感謝の言葉を口にしようとする。

 

「あ、ありがと…ひゃんっ!?」

「へ?…うわわっ!!ご、ごめんなさい!///」

「だ、大丈夫!ちょっとくすぐったかっただけだし、それに…嫌じゃないから///」

 

今の戒は倒れ込んだ飛鳥に両腕を回して抱きしめる形となっておりその際彼女の背中を擦ってしまい変な声を出してしまう。

その声に気づいた戒は顔を赤くして慌てて謝罪するが飛鳥は満更でもない様子。

 

「「……///」」

 

その後、妙な沈黙が両者に緊張感を生み同時に温かい心地よさを覚える。

飛鳥は初めて感じる異性の身体に頬が赤くなるのを感じると鼓動が早鐘を打つのが分かる。

一方の戒は密着したことで自分の身体から感じる女性の身体と豊かな胸による弾力に体温を上昇させた。

「しばらくはこうしようか」と互いに思った時だった。

 

「何、してるの?」

「「っ!!?」」

 

底冷えする声が聞こえてきた。

慌てて声の主を確かめようと振り向くと、その場には琴音がおり制服を着ていることから休憩中なのだろう。

しかし、その表情はいつもの屈託のない笑みではなく夏の天気さえも凍えさせるような冷たさを醸し出していた。

能面のような顔だったがやがて琴音は笑みを作る、が…目は笑っておらずむしろ恐怖が増しただけだ。

 

「ち、違うの琴音ちゃん!こ、これは事故でね!」

「そうだよ!えと、転びそうになったから俺が支えようと…!」

 

飛鳥と戒は揃って弁解を口にするが、起き上がらず何時までも身体を密着させている二人を見ている琴音は身体を震わせ、そして……。

 

「御託は良いから、さっさと離れろやあああああああああああっっ!!!」

 

さんさんと輝く太陽の下、琴音の嫉妬と怒りによる叫びが木霊するのであった。

 

 

 

 

 

小百合は波の音が聞こえる浜辺を歩いていた。

今頃、両姫の妹である双子と黒影の孫である雪泉、そして愛孫を含む忍たちは悩みながらも祭りに参加するだろう。

そして分かるだろう、千年祭の意味が……。

「それにしても」と思う。

忍でない人物がこの空間に入った時には少し焦ったが様子を見るに、あの二人は率先して介入するつもりはないことが長年の経験から来る直感で分かった。

ならば彼らには純粋に楽しんでもらおう、可愛い孫の大切な友人であり少年の方は将来の跡取りになるかもしれない。

そんなあり得るのかも分からない遠い未来のことを考えていた時だった。

 

「相変わらず子供にお優しいですね、小百合様」

「……お前さんだったんじゃね。『カグラ千年祭元執行部 段蔵』」

 

背後から聞こえた声に振り向くことなく、小百合はかつて所属していた青年の肩書と名前を口にする。

「段蔵」と呼ばれた黒い和服を着た赤毛の彼は感情の籠っていない声で彼女に返す。

 

「…その名は捨てました」

「空間のあちこちで騒がしいと思っていたけど、まさかお前の仕業だったとはね」

「やはりお気づきでしたか、それではなぜ?」

「あの少年、噂の騎士なんじゃろ」

 

その言葉だけで納得した。

彼女は仮面ライダーに全てを任せるつもりなのだと…それは責任の逃避ではなくある種の信頼の念を抱いているということだ。

やがて、彼女はゆっくりと振り返り鋭い視線を向けた。

 

「お前さん、何を企んでおる……?」

「あなたにお話しする義理はありません……忍転身」

【PHOENIX!!】

【LOADING…~♪!RIDE UP! PHOENIX! BAD and DEAD END! THE ERROR…!!】

 

その掛け声と共に起動したフェニックスカセットをエラーブレスに装填すると、赤いデータ状の魔力に身を包まれてフェニックス・エラーへと変貌する。

彼の忍装束と秘伝動物にも似たその姿と、発せられる魔力の余波……そして時折身体に走るノイズに小百合が目の色を変えた。

なぜ今まで気づかなかったのか、彼の『異常』に気づいたのだ。

 

「まさか、あんた……!!」

『ええ……今の私は秘伝動物、すなわち精霊その物です。使いこなせるようになると完全に人の身を捨てるみたいです』

 

「ですが」と彼は話を続ける。

 

『「彼ら」の痛みに比べたら、苦でもありません』

「っ!段蔵…」

『祭りの最終日、楽しみにしていますよ』

 

フェニックスのセリフの中にあったキーワードに反応した小百合が声をあげようとするが、彼はそれを遮ると翼をはためかせて何処へと消えた。

飛び去った彼を追うように彼女は空を見上げ、寂しそうに口を開く。

 

「…本当に、不器用じゃの。お前さんは……」

 

そんな言葉は、彼に届くことはなかった。

 

 

 

 

 

『段蔵、か……』

 

一部始終を見ていたウェルシュは呟いた。

人の気配を感じたためとっさに隠れてしまったが思わぬ情報を聞けてしまった。

フェニックスの目的は未だに分からなかったが彼が完全に関与している証拠が揃ったのを確信すると戒に報告しようとその場を後にするのだった。

彼の元に来たのは良かったのだが不機嫌な琴音と、彼女に何かを弁解をしようとしている戒と飛鳥(なぜか両者共に頬が赤かった)を見てため息をつくのであった。

To be continued……。




 とうとう、フェニックスの正体がばれてしまいました。しかしその目的は謎が多いです。ぶっちゃけ彼の伏線を張っておけば良かったと少し後悔しています(おい)
 飛鳥のシーンは入れたかったんです、彼女は主人公ですから何かしらの出番を与えました。個性的なキャラが登場する中、飛鳥は一周回って好きなキャラです。
 そう言えば、Ni○tend○ S○itchで閃乱カグラの情報が出てましたが何なのでしょうか?色々と気になっている今日この頃です。
 ではでは。ノシ

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