仮面ライダーARTHUR 王の名を持つ仮面の騎士   作:名もなきA・弐

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 お待たせしました(どうかは分かりませんが)。EV編、開幕です。
 今回のメインは両備と両奈、そして琴音と戒の幼馴染組です。この話では作者も理屈抜きで好きな『あの人』がいよいよ登場しますがきちんと描写できるか不安です。
 それでは、どうぞ。


ESTIVAL COMBO 選択と未練
COMBO13 お参り×未知


もしも、大切な人が黄泉から戻ってきたら…人はどうするのだろうか?

泣いて喜ぶのだろうか?それとも、拒絶するのだろうか?

少なくとも、穏やかな気分ではいられないのだろう。

そんなことは不可能だ、不可能なことだと分かっているからこそ人々は生きていくのだろう。

だけど、自分はそんなことは耐えられない、耐えられるわけがない。

そのために力を手に入れたのだ。そのために人の身を捨て、新たな名と姿を手に入れたのだ。

「不死鳥」を……。

 

 

 

 

 

戒と琴音は両備と両奈の二人と共にある森林を訪れていた。

森の中は特に険しい地形でも複雑な構造でもなかったこと、道を知っていた両備たちが率先したのもあって四人は『そこ』に辿り着いた。

 

「今日はカー君と琴音ちゃんを連れて来たよ、お姉ちゃん」

 

両奈がそう呟くと手に持っていた花束を両備と共に置いた。

ここは両備と両奈の姉であり育ての親である両姫が眠る墓…とは言ってもそれは蛇女の教師である涼音がそう述べているだけなので本当なのかどうかは分からない。

だが、このように花を用意出来るのは忍の道を生きる二人からしたら立派な墓地なのだ。

戒は生前彼女が好きでよく飲んでいたミルクティーの缶を置き、琴音が違う種類の花束を置いたのを確認すると、瞳を閉じ両手を合わせて弔う。

戒たちからしても、彼女にはよくお世話になった…それこそ弟や妹のように可愛がってくれた。

そんな胸中を表に出さずに、しばらく弔いをしていると戒はゆっくりと目を開いた。

それに続くように両備や琴音も顔を上げたがあることに気付く。

 

「あれ?両奈は何処行った?」

「え?」

 

戒の言葉通り、両奈が見当たらなかったのだ。

三人は辺りを見渡すが、茂みから聞こえてくる音の方に身体を向ける。

結論から言うと両奈はいた。

いたにはいたのだが、彼女は上半身を茂みの中に突っ込んでおり丈の短い学生服を着用しているからか水玉模様のパンティーが露わになっていた。

 

「ぶふっ!?///」

「見るな変態!」

「何て格好してんの、よっ!!」

 

顔を赤らめて噴き出す戒の目を塞ぐ琴音と、滑稽な姿を見せている姉に苛立ちを募らせた両備は平手打ちを浴びせる。

その際、両奈から嬉しそうな声が聞こえたが目を塞がれている戒が呆れた様子で尋ねる。

 

「何してるんだ、お前は…」

「とにかく見て!こっちを見てぇ~」

 

両奈の急かす声に三人は疑問符を浮かべると、彼女に言われた通りに茂みの中に潜り込むと、そこには信じられない光景が映っていた。

森林の中で何かの儀式を行っているであろう三人の巫女と老婆…。

恐らくあの四人の中では中心核であろう巨大な白い数珠を首にかけて、赤いスカーフを巻いた老婆が何かの詠唱を始めており四人は轟々と燃え盛る炎を前に並んでいる。

その際、戒の学生服の懐にいたウェルシュが姿を見せて伝える。

 

『……戒。あの場所、忍結界が張ってある。微弱だが魔力も感じる』

「でも、一体何を……」

「そんなことより、あの火の中に飛び込んだら熱いよね?両奈ちゃん、絶対気持ち良いよねぇ!?」

「「この、バカっ!」」

 

ウェルシュと戒は結界を張っている四人…恐らく忍の関係者であろう人物について考えるが、シリアスな雰囲気を壊すようにマゾヒズム全開の両奈のセリフに琴音と両備があまり言葉を出さない代わりに彼女の頭をはたく。

気を取り直してしばらくこの奇妙な光景を見ていると老婆が詠唱を止めた。

その時、赤々と燃えていた炎が紫色へと変化したのだ。

突然の現象に四人は驚くことしか出来なかったがやがて紫色の炎は幾つかに分裂するとそれはやがて死覇装を纏った女性たちへと姿を変えた。

その光景に少しばかり驚いたが、それでも彼らは自分の心を必死に押さえつける。

しかし、それは長くは続かなかった。

 

「っ!?」

「嘘、だろ…?」

 

両奈と戒、そして両備と琴音は驚愕する。

なぜならその女性の内一人は、自分たちにとって見間違うはずのない人だったのだから…。

生気のない表情だったが間違いない、間違えるはずがない。

戒たちの脳裏に、常に優しい笑みを浮かべていた彼女の顔がフラッシュバックする。

老婆がその人物の頬に触れようとした時だった。

 

「『両姫』お姉ちゃんに、手をださないでぇっ!!」

 

悲痛な叫びと共に両奈は二丁の拳銃を召喚すると、結界に向けて発砲しながら走る。

侵入者が現れたのにも関わらず、老婆はそれを楽しそうに見ていたが彼女はそれを気にせず、皹を入れた結界を蹴って割ると両姫らしき人物を追いかけ始める。

 

「…っ!待て、両奈っ!」

 

「くそ!」と戒は両奈の後を追うと彼の行く手を阻むように長い茶髪をツインテールにした巫女が前に出る。

だが……。

 

「邪魔だっ!」

「っ!?」

 

勢いを殺さず、彼女の身体ごと受け流すと両奈の元へ走り、慌てて両備たちも追いかける。

バランスを崩した相手は追跡してこなかったがそんなことを考える暇は今の戒にはなかった。

一方両奈は両姫らしき人物を追いかけるが、その人物が静止すると地面から青と白、そして黒で塗り分けられた棺…棺桶が出現するとまるで主を迎え入れるようにゆっくりと開く。

両奈は何とか彼女に手を伸ばそうとするが棺桶は閉じてしまう、しかし棺桶の蓋に手を掛けて開けようとする彼女を見た両備は迷いながらも彼女の手伝いをする。

近くに来た琴音はどうしたら良いか慌てていたが戒は追手が来ないか、目の前にいる人物への攻撃に備えて鞘に納めた日本刀を構えて警戒する。

巫女たちの顔は分からなかったが丸いサングラスをかけた老婆は彼らの行動を楽しそうに見ているだけだった。

そして、二人が蓋を開けた途端…眩いほどの光が周囲を包みこむのを感じた戒たちはそこで意識を失った。

 

 

 

 

 

「動き出しましたか」

 

同時刻、膨大な魔力反応を感知したフェニックスは普段から愛用している黒い着物を着用すると、ゆっくりと椅子から立ち上がった。

この時からずっと待ち続けていたのだ…ようやく、ようやくこの時が来たのだ……。

自分の内から湧き上がる感情を必死に押し込めながらも、自分の笑みを隠すことが出来ないでいた。

「しかし」と彼は思う。

 

「流石は小百合様ですね。巫女の手を借りたとはいえ、あれほどの結界を短時間で創り上げるとは……」

 

フェニックスはこの場にはない、尊敬していた人物へ賛辞の言葉を贈るとエラーカセットを起動して怪人態へと融合を遂げる。

ようやく待ち望んだチャンスが来たのだ、既にオーナーからは許可を取っている。

後は、自分のさらなる救済を遂げるだけだ。

フェニックス・エラーは首を傾けて鳴らすと、楽しげに呟いた。

 

『ゲームスタートです。待っていてください』

 

そして、彼はマントを広げて巨大な一対の極彩色のした綺麗な翼へと変化すると大空を飛び立った。

その後、誰もいなくなった部屋に残されたのは……。

翼からひらりと舞い散った、一枚の羽根だけだった。

 

 

 

 

 

「ぐっ、うぅ……?」

 

身体から走る痛みで戒の意識は覚醒した。

軽く頭を振って無理やり回復させて周囲を見渡す…場所は先ほどと同じだが何処か違和感のあるその場所に戒は疑問を感じたがそれよりも目に入った物があった。

 

「……何やってんだ、あいつら?」

『目が覚めたか、戒』

 

「まぁな」と起き上がると、双子で行っている言い合い(と言っても両備がツッコムを入れているだけだが)を宥めている琴音という図式となっている今の状況をウェルシュに尋ねる。

どうやら、先ほどの衝撃で興奮した両奈に対して心配した両備が怒鳴っているのを琴音が間に入って止めているらしい。

本当に、あいつはシリアスが長く続かないな……。

喉の奥まで出かかった言葉を飲み込むと、両備たちの元へ向かう。

互いの無事を確認し合い落ち着いたところで両備が話を切り出した。

 

「さっきのあれ…姉さんよね?」

「そうだよ!あれ絶対両姫お姉ちゃんだったよ!」

「だけど、両姫姉さんは亡くなったはずだろ?それが何で…」

「実は生きていた……とかはないよね?」

 

両奈、戒、琴音が口々に話す中でウェルシュがある考えを全員に向けて話す。

 

『私の推測だが…彼女は精霊として転生したのではないか?』

「どういうことだ?ウェルシュ」

『戒には話したことがあるかもしれないが、極まれに強い魂を持った人間は精霊として転生するケースがある…』

 

ウェルシュの言葉を要約するとこうだ。

あそこで結界を張っていたのは周りの目を隠すためなのと同時に精霊としてこの世に留めるために必要なことだった。

そしてもう一つは……。

 

『私たちが飛ばされたこの場所とも関係があるかもしれない。先ほど調べたが、この場所は密度の濃いマナで構成されている。専門ではないから詳しくは分からないが「精霊を生前の状態のまま具現化させる」のに最適な環境である可能性が高い』

「「「ふむ……」」」

 

確かにそれならば合点が行くには行くが……釈然とせずに考え込む三人に対して両奈はある提案をする。

 

「とにかく、両姫お姉ちゃんを追いかけようっ!」

「追いかけるって言っても、ここが何処か分からないんじゃ……っ!?」

「「っ!」」

 

琴音が意見を言おうとした時…周囲から何者かの気配を感じハルバードを構える。

戒も軽くその場で跳ね、両備も自身の得物であるスナイパーライフルを召喚して構えたのと同時に黒子のような人物が複数現れるといきなり襲い掛かってくる。

 

「うわっ!?」

 

驚きながらもそれを防ぐ琴音だったが、敵の攻撃から問答無用と判断した琴音は刃を潰して非殺傷にしたハルバードを振り回して黒子たちを吹き飛ばす。

 

「「忍転身っ!!」」

 

忍転身をして両備は黒いロングスカートに白い服に赤い上着を着込んだ忍装束に、両奈は背中に翼の飾りがある白いバレリーナを彷彿させる装束へと変わるとスナイパーライフルと二丁の拳銃を召喚して攻撃を行う。

ハルバードを振り回す攻撃をしている琴音に対してインファイトへと持ち込もうとする黒子を蹴り飛ばすと、近くでダンスをするように銃を乱射している両奈に声を掛ける。

 

「両奈ちゃん!」

「うん!」

 

琴音からの呼びかけに全てを察した彼女はハルバードの上に乗り絶妙なバランス感覚で降り立つとその場で回転を始める。

それと同時に琴音もハルバードを身体ごと振り回した。

 

「「合体秘伝忍法『時が止まるワルツ』ッ!!」」

 

ハルバードによって生じた暴風と両奈からの射撃によって一掃されるが、回転が止むと二人は目を回してしまう。

その隙を狙おうと黒子が動き出そうとした時だった。

 

「オラッ!」

「両備たちを忘れてんじゃないわよ!ほらほらっ!!」

 

戒が跳び蹴りを黒子にくらわせる一方、両備はサディスティックな笑みを浮かべながら狙撃を行って黒子たちにタップダンスを強制的に踊らせる。

背後から狙おうとする黒子をライフルで殴り飛ばし、黒子から奪い取った武器で応戦している戒に鋭い声で命令する。

 

「戒っ!あれやるわよ、息を合わせなさいっ!」

「了解っ!」

 

小太刀と鞘の二刀流で二人、三人四人と打ち倒すと両備の元に駆け寄り、今度は近くに落ちていた銃を拾うと同時に構える。

 

「「合体秘伝忍法『JACK POT』ッ!!」」

 

同時に放った二人の銃撃が残っていた黒子たちを一掃した。

気絶した黒子たちは起き上がると、深々とお辞儀をしてから煙玉を地面に落としその場から退散していった。

 

「見たことない忍だったけど…まいっか!行こ、みんな!」

『まぁ、先ほどの女性の魔力は覚えたが…』

「…あー、うん……」

「……」

 

現れた忍たちに疑問を持った両奈だったが今すぐに両姫を探そうと提案する。

しかし、戒は困ったようにボーラーハットに手を掛け、両備も乗り気じゃないようだ。

流石に様子がおかしいと感じた琴音は両備に問い掛ける。

 

「どうしたの両備ちゃん?」

「どうもしないわよ!……ただ、心の準備が…」

「お前が胸にパッドをしていること…調子に乗って本当にすいませんでしただからその銃しまってください」

 

落ち着かない彼女が言った言葉に戒が余計なことを言おうとしたが無言でスナイパーライフルを向けてきたので一息で謝罪する。

戒を黙らせた両備は話を変えるように両奈に向けて噛みつく。

 

「大体あんたこそ、そう言う変態チックなところ姉さんに見せないでよね!」

「そんなことないもん、両姫お姉ちゃんは両奈ちゃんのこと大好きだもん。両奈ちゃんのこと好きだって何度も言ってくれたもん!」

 

両備の言ったことに両奈は腕を動かして反論するが、それに対してさらに反論を行う。

 

「あんたがそんな調子だと、姉さんも梅酒みたいに顔をくしゃくしゃにしてドン引きするわっ!!……て、おいおい。それを言うなら梅干しだってーの」

「「「……」」」

『……』

 

最後にギャグとツッコミを入れた彼女だったが、あまりにもしょうもないギャグとツッコミの内容に三人とウェルシュは沈黙してしまう。

特に両奈に至っては真顔だ。

 

「両備ちゃん、その一人ツッコミ一人ボケはやめた方が良いよ。特に両姫お姉ちゃんの前では」

「正直ドン引きだわ」

「ゴメン、両備ちゃん。フォロー出来ない」

『ノーコメント』

「うるさいうるさいっ!!さっさと姉さんを探しに行くわよ!ほら案内しなさい、ガラクタミニ四駆!!」

 

両奈、戒は冷めた目で見つめ、琴音は申しわけなさそうに謝りウェルシュにすらも引かれた両備は彼の身体を揺らす。

「ガラクタはないだろう」と文句を言いながらも、ウェルシュは先ほどの人物の魔力を探知すると、そこに向かって走行を始める。

両奈が先陣を切って後を追いかけると琴音を慌てて後を追うが戒は立ち止まっている両備に顔を向けた。

 

「…姉さん。今更、どんな顔して会えば良いの……?」

「……両備」

 

そう呟いた彼女に、戒は何も言うことが出来なかった。

 

 

 

 

 

両奈たちは会える気持ちを抑えながら、同じ景色の道を走り続けていた。

一人はあの人物が本物なのか。

一人は本当にあの人に会えるのか。

一人は純粋に自分が慕う姉に会いたいから。

一人は姉に対して言葉に出来ないでいる複雑な感情を胸に残しながら。

それぞれの想いを抱きながら四人はただ、ウェルシュの示していた道をひたすらに進んでいた。

走り始めてから数分後、ようやく長くも短いこの道に終わりが見えてきた。

森林を抜けるとそこには青い空と海、そして白い砂浜が視界に広がっていた。

目の前の光景を夢や幻のように思ったが身体から感じる温度と耳から聞こえる波の音が、この景色が夢ではないことを教えてくれる。

動揺する戒たちだったが両奈からの呼び声に我に返ると、彼女の示した方向には最初に見た棺桶が佇んであった。

やがて、ゆっくりと開くとそこには……やはり彼女が眠っていたのだ。

死覇装ではない黒と青を基調とした、何処となく両備の忍装束に似たドレスを纏っており右側に青のリボンをつけた美しく黒いロングヘアーは太陽の光によって輝いている。

両奈には劣るもののそれでもバランスのとれた母性本能溢れる身体…。

ただ一つ違う点があるとすれば、某少年漫画で使われていた黄色い輪っかが頭上にあったがそれ以外は戒たちが覚えている姿と何ら変わっていなかった。

やがて、彼女……『両姫』はゆっくりと目を開くと棺桶から音を立てずに前に進み出る。

 

「両備ちゃん、両奈ちゃん。お久しぶりね……」

 

あの頃と変わらぬ、優しい口調で語りかけた彼女は青い瞳を琴音、戒へと向けていく。

 

「大きくなりましたね。琴音ちゃん、戒君……」

「「っ!!」」

 

自分たちのことを覚えていてくれた……それだけで琴音は両手を口元に持っていき、目に涙を浮かべてしまうが戒は涙を見せないよう帽子を目深に被って、情けない表情をしているであろう顔を隠す。

そんな彼らに対して両姫は嬉しそうに微笑み、そして……。

 

「お姉ちゃん、生き返っちゃいました♪」

 

邪気も何もない満面の笑みで明るく告げたのだった。




 プロフィールだと両姫さんの好きなものはナスときゅうりなのですが、「あれってあくまでも死んだあとのプロフィールだよな」と思ったので生前の好きな飲み物をミルクティーにしました。何だか好きそうでしょ?え?自分だけ?
 初恋の人に再開してしまったカー君はどうなるんでしょうね?取りあえず恥ずかしい思いをしてもらう予定です。
 ではでは。ノシ

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