仮面ライダーARTHUR 王の名を持つ仮面の騎士 作:名もなきA・弐
後、NewWaveのキャラが登場しますよ!どうぞ。
戒と佑斗が教官に決まったその日…秘立蛇女子学園・学生寮のとある一室では真夜中、選抜メンバーと一般生徒のほとんどがこの部屋に集まっており、語り役である両備の声に神経を集中する。
「あれは、今日みたいに季節を先取りしたような日差しの暑い日のことだったわ…両備は友達と一緒に花火やってたら、何時の間にか周りが真っ暗な時間になってて…『ヤバイ!姉さんに怒られる!』…そう思って、帰ることにしたの…」
懐中電灯を顔で照らしながら、不気味に語りかける。
雰囲気が出ており、誰もが話しかけることが出来ないでいる。
「…それで、散かった花火を片づけていたら、ふっと近くのぼろぼろになった神社を見たのよ。もうこんな時間なのによ?しかも古い神社の窓から、赤い着物の女がこっち見ていたの…!」
『………』
両備の話に聞き入っているのかじっと黙る少女たち。
そして、話の方もとうとう終わりの時間がやってきた。
「それで流石の両備もぎょっとしちゃってさ、でも気になって、そいつに訊ねたのよ。『こんな時間のこんな場所で、何やっているの?』って…そしたら、ニヤァッて笑ってぇ…」
「デコレーションが足りないぞぉっ!!!」
『キャアァァァーーー!!!!?』
突然後ろから聞こえてきた大声に少女たちの絶叫が部屋中に響いた。
そして、部屋に電気が点灯する。
「ちょ、ちょっと雅緋!折角盛り上がってたのに、両備の大切なオチを…」
「私の知ったことか。それより、ケーキのデコレーション用のお菓子が切れたぞ。補充を怠るなと言っただろう」
後ろにいたのは選抜メンバーのリーダーである雅緋。
彼女の仲間であり語り手となっていた両備は折角の話を滅茶苦茶にされたことに文句をぶつける。
だが、当の本人はそれを一蹴し、かわいらしいクマのマシュマロや犬の砂糖菓子が大量に乗っけられたケーキが見せながら言う。
「もう充分にデコレーションされているじゃない!てか何よそれっ!もうデコレーションでも何でもないわよっ!!」
そう両備がツッコンでいる間にべべたんを抱えた紫が隣の方をちらりと見る。
すると。
「…お姉ちゃん?」
「あーっ!忌夢ちゃん!」
「大変だー!忌夢様がケーキで気絶したぞ、最悪だああああっ!」
忌夢が白目をむきながら気絶していた。
驚く両奈、喚く仲間と生徒たちをよそに、雅緋は廊下へと出て行った。
「下らん、怪談などしてなにが面白い?」
学生寮にいた仲間たちと生徒たちとのやり取りの後、雅緋は自分の寮に戻らず教室で書類の整理をしていた。
作業中に、ぷ~ん、という羽音と共に飛んできた蚊を雅緋は手ではたきつぶす。
「…最近妙に虫が多いな、まったく目障りな」
そんなことを言った時だった。
カーン!という釘を金鎚で叩く音が聞こえてきたのだ。
『死ねぇ、死ねぇ、死ねよ雅緋ぃ…!頼むから死んでくれぇ……』
外から聞こえる嫌な声……。
そして釘を金槌で叩く音が聞こえてくる…。
「ま、まさか…?」
雅緋は意を決して窓を開けて外を見た。
「死…」
そこには死装束を着て、胸に五寸釘の刺さったワラ人形と金鎚を持つ戒。
「何をしている?こんな深夜にそんな格好で……」
「……ト、トレーニング」
「そんなわけあるか!そんな服装でトレーニングなどしていたら警察に通報されるわっ!儀式だな?私に対する嫌がらせの儀式をしていたのだな!?」
眉を引くつかせて問いかけた雅緋に対して明らかに無理があるであろう言い訳を口にする戒に対し、至極もっともな言葉を述べる雅緋。
「自意識過剰ですねぇ。ノイローゼになりますよ」
「何だとっ!?……?」
「やれやれ」と言わんばかりに首を横に振る戒に対して雅緋が文句の一つを言いかけたその時、彼女は垣間見たのだ。
赤い着物を着た髪の長い女性がこっちを見ているのを…。
「どうかしました?」
「門矢…今、何か見えなかったか?」
「…?何がです?」
戒は見えなかったのだろうか雅緋の問いに対して首を傾げるだけである。
(…何だったんだ、今のは?)
雅緋がそう思った瞬間
『きゃあああああああああああああああっ!!!!』
「「っ!?」」
学生寮にいた少女たちの悲鳴が響き渡った。
数日後…。
治療室のベッドには、選抜メンバーの両奈と一般の生徒たちで殆ど埋めつくされていた。
「酷いな、これで何人目ですか?」
「十六人だな。両奈だけでなく一般の生徒もやられた。流石にここまで来ると、何が原因なのかを探りたくなる」
治療室の前で話し合う雅緋と戒。
「まったく、冗談ではない。仮にも忍が『幽霊紛い』にやられるなど……」
雅緋は溜息混じりにそう言ったが事実はそうなのである。
襲われながらも意識の残っていた少女たちはみな、「赤い着物の女にやられた」と雅緋たちに証言をしている。
「違う、ボクは違うよ雅緋!ボクはケーキにやられたよ!!」
「余計に口外出来るか」
そう言い訳する忌夢に冷たい対応をする雅緋。
三人は場所を変えるため、紫が待機している選抜メンバーの教室へと戻る。
「みんなうわ言のように『赤い着物の女』と言っていますが、もしかして伊吹たちが話していた例の怪談のアレですかね?」
「バカを言え。幽霊など存在するか」
戒の言葉を「下らない」と一蹴する雅緋だったが、忌夢は彼女に顔を青くし、話しかける。
「いや…霊を甘く見ない方がいいよ、雅緋。きっとこの学園は呪われたんだ、それも、とんでもない力を宿した霊にね…!」
「なにをバカなことを……」
しかし、そう言った雅緋の脳裏に浮かび上がったのは昨夜見た奇妙な存在。
そう、口では否定しながらも彼女は妙な者を自分の目で見てしまっているのだ。
「…ないな…」
それを振り払うかのように自分に言い聞かせる雅緋。
「忌夢、連れてきたわよ」
「あ、ありがとう。両備」
そこへ、両備がとある三人をつれてくる。
「街で捜してきた、霊媒師よ」
「…どうも…」
最も、服装がかなり胡散臭い三人組だったが。
「何だこいつらは?」
「いやー、御祓いしてもらおうと思ってさ」
「大丈夫なのか?こんな得体のしれない連中に」
「んー……この匂い、何処かで……?」
そう問いかけた雅緋に忌夢はさも当然のように答える。
雅緋はあまりの胡散臭さに、紫は何処かで嗅いだことのある匂いに渋っていると、霊媒師の一人であるサングラスをかけた少女は雅緋の方を見て、話しかけようとする…。
「あれ?そこの女の人…背中に……」
「何だ、背中に何か?」
すると女は隣にいる、笠を被っている少女に耳打ちする。
「ひそひそ、ひそひそ……」
「あぁ、あれはもう駄目だな」
「そうじゃな、そっとしておくかの」
「おい、舐めているのか……?」
いきなり失礼なことをいう彼女たちに、雅緋は軽く怒る。
「あの~先生方、何とかなりませんかね?このままじゃ校内の活動に支障をきたします」
「ああ、我らに任せよ眼鏡」
「あれ、今眼鏡って言いませんでした?」
協力を求める忌夢にコートを着たマスクの少女は彼女の特徴でもある部分に対してそう言う。
「あ~、ずっとこの建物のことは見させてもらいましたけど、これは相当ヤバい幽霊がいますよオデコさん」
「あの、別に『オデコさん』って、変な渾名付けられても…」
サングラスは、忌夢に対して学園の状況を説明するが、忌夢は自分につけられた不名誉な渾名にツッコム。
「取り合えず、私たちに任せろ。ついでに報酬金のことなのだが…」
「おい、事を済ませた後のことをもう語るのか?」
さりげなく金の話をしようとする笠を被った少女に雅緋は疑問を口にする。
「それで、どんな幽霊なんだ?」
「村ちょ…」
何かを言いかけたサングラスの少女を、笠を被った少女が殴る。
「え、今…なんて言いました?」
「えっと、過労で亡くなったとある村で村長をしていた男性の幽霊だな」
笠を被った女性は「村長の幽霊だ」と説明する。
しかし、忌夢が首を傾げて話す。
「いや、あの、生徒たちの話だと赤い着物を着た女性だと…」
「間違いじゃ。正しくは過労で亡くなったとある村で村長をしていた男性のお姉さんに似ていると言われてショックを受けて自殺した女性の幽霊じゃな」
「いや、長すぎるわっ!村長の下りは別に必要ないだろっ!!」
笠を被った少女の言葉を、コートを纏ったマスクの少女が訂正するが半ば付け足しに近い訂正に対してツッコミを入れる雅緋。
「取り合えずお前、両備とか言ったか?」
「え、な、何よ?」
三人はゆっくりと両備に近づき、彼女を取り囲む。
「お前の肉体に霊を降ろして祓うから」
「ちょ、ちょっと待ちなさい。どういう風に祓う気よ?」
「お前ごとしばく」
「何よそれっ!?誰でも出来るじゃない!」
そう叫んだ両備の隙をつき、サングラスの女性は彼女の腹を力一杯殴った。
「はい!今これ入りました、霊が入り込んだぞ!」
「霊ではなく、ボディーブローが入ったぞ」
笠を被った少女が言った言葉に雅緋がありのままに起こった状況を口にする。
「違います。今入ってます『あー忙しい、村の行事がこんなに忙しいと思わなかったわい…』」
「おーい!それって村長の幽霊じゃない!?」
すると、サングラスの女性は気絶した両備の後ろに周り人形のように手を動かしながら幽霊の真似をしようとしている。
忌夢は明らかに降霊すべき魂の人選ミスにツッコム。
「あれ?何でしたっけ?」
「ば、バカ!過労で亡くなったとある村で村長をしていた男性のお姉さんの幽霊だろっ」
「違うじゃろ…過労で亡くなったとある村で村長をしていた男性のお姉さんの従妹の…って違う……あれ?何じゃったかのう?」
「……というか、今時自殺した霊なんて、ちょっとありきたりではありませんか?」
客をほったらかしてひそひそと話を始めた三人になぜか千歳が現れて割って入る。
「もう適当で良いじゃろ」
「無理です。適当って言われると余計に演じるキャラのチョイスが難しくなります!」
「誰もそんな本格的なこと求めてるわけないだろ!」
「ああ、もう我がやる。ちょっと貸せ」
すると段々小声で話していたものが大声へと変わっていきコートのマスク少女の言葉にサングラスの少女が拒絶する。
「嫌ですっ!これは伊吹に与えられた唯一の使命です!誰にも邪魔させませんっ!!」
「どんな使命だっ!寂しすぎるだろ、そんな使命!」
後から出てきた緑色の髪に桜の髪飾りを付けた小動物系の少女『芭蕉』が紫色の瞳をオドオドさせながら止めようとする。
「あ、あの…二人とも、もうその辺で…」
「「黙ってろ(ててください)っ!芭蕉(ちゃん)!!」」
「「「「……」」」」
呆気なく正体がばれました。
校庭には缶のコーラを手に持っている戒と気絶から回復した両備がおり、手には戒と同じくフルーツオレの缶ジュースを手にしている。
そして彼らの目の前にはある太い丈夫な大木があり、そこには蛇女学園の制服を身に纏った三人の少女たちが逆さ吊りされていた。
彼女たちは蛇女学園の後の選抜メンバーとなるであろう一年生徒で構成されたグループ。
笠を被った霊媒師は挑発的な赤い瞳と茶髪をストレートに長く伸ばしたナルシスト系少女『総司』でサングラスの霊媒師は前髪を犬の耳のように垂らし黒いカチューシャをつけた自称常識人の少女『伊吹』。
そして、最後は尊大な態度を取る赤い髪を伸ばした邪神系少女『芦屋』。
この三人と千歳、芭蕉、リアが補欠メンバーである。
そんな彼女たちがなぜあのような怪しいことをしていたのか?
それは…。
「いや、別に悪気はなかったんだ。別にお金が欲しかったわけじゃないんだ。ただ純粋に人助けをだな…それに美しい私は生まれつき霊感が強くてな、ほらお前らの後ろにもうっすらと霊が見えているんだ」
「あー、きっとあれね。両備たちが小さいころ行ってた駄菓子屋の婆ちゃんね」
「こえーなー。俺あの時、陰口叩いたんだ、どーしよ」
総司の言い訳をものともせず手に持ったジュースを飲みながら軽く流す二人。
「なら、私たちが何とかしてやる。そのためにはすぐにこれを解放して水をだな…」
「じゃあ、これ鼻から飲んでください」
「ついでにあんたもよ」
すると戒は手に持っていたコーラを総司の鼻穴に、両備も特に何も言ってなかった芦屋にフルーツオレを鼻に流し込んだ(おそらく私怨)。
「あぐっあっぐ!え、ちょ、何この懐かしい感覚っ!?プールで溺れたかのようなあの感覚がするぅ!あっぐあぐ…」
「何で我までっ!?ケホ、ケッホ…!」
ジュースを流し込まれた二人はあの懐かしい感覚を思い出しながらも何とか口を開け、苦しみを和らげようとする。
「総司ちゃん、芦屋ちゃん…もう頭パーンてなりそうですぅ、このままじゃ…助け…て……」
「あ、あのっ!伊吹さんが頭爆発するって言っているのですがっ!き、教官っ、両備さんっ!!?」
限界が来たのか伊吹が今の状況を伝えた後、そのままゆっくりと両の瞳を閉じてそれっきり何も言わなくなった。
それを見て危険だと感じた芭蕉(彼女を含む千歳とリアは免除されている)は戒と両備の良心に訴えかけたようとするが、二人は返事の代わりに満面の笑みで返す。
それを見て総司は直感で悟ってしまった。
「(あ、私たち死ぬんだ…)…誰か助けてくれええええええええっ!!」
総司の叫びが木霊するのであった。
そして、その光景を見ているのは雅緋と忌夢、紫の三人。
「なぁ、雅緋。そろそろ解放したらどうだい?好い加減にしないと、両備と門矢がSに目覚めるよ…」
「…あの三人も反省しているようですし……」
「何を言っている?あいつらはサディスティック星の住人だぞ。もう手遅れだ」
忌夢と紫は二人が起こしている惨状を見て、降ろすように雅緋に説得するも彼女は元凶たちを見てそう口にした。
そして、その数時間後、三人はようやく降ろしてもらえたが全員がまったくの無傷というわけではなく総司と伊吹は地面に大の字になって寝っころがり、芦屋に至っては口元に手を当てて吐き気を堪えたりしていた。
「これぐらいで済んだことに感謝するんだな、それに私たちはあいにくお前たちに関わっているほど暇ではない。早く失せろ」
雅緋の放った言葉に総司と芦屋は何か気づいたのか調子づいたような顔をする。
「ふん、幽霊が怖くて仕事に手がつかないか?」
「おやおや、可哀そうじゃのう。トイレにでも一緒についていってあげようかの?」
「ボクたち選抜メンバーを愚弄するかあああああっ!!…トイレの前まで、お願いしますっ!!」
「お願いするのかいいいいいいいっ!!」
忌夢が彼女たちの挑発に乗り激昂すると、芦屋の前で直角九十度の綺麗なお辞儀をした。
そんな彼女の思い切りすぎる行動を見た雅緋がツッコム。
「いや、さっきから我慢していたんだけど…どうも怖くて……」
「ほら、行くぞ」
「あ、はい!」
芦屋にリードされるように忌夢はトイレがある校舎へと向かっていった。
「おい!良いのか!?お前の人生はそんなので良いのかっ!?」
雅緋は忌夢の後ろ姿に向かって叫んている雅緋を尻目に両備はため息をついた後、総司たちの方を向く。
「あんたたち、頼むからこのことは他言無用にね。頭ならいくらでも下げるから」
「もしかして件の赤い着物の女ですか?」
ようやく酔いから立ち直った伊吹が両備にそう言う。
「情けない話よ、まさか幽霊騒ぎでこんなことになるとはね…相手に実体があるなら殴るなり蹴るなりするけれど、正体すらあやふやな存在じゃあ対処する方法すら見当つかないわよ」
「ん、なんだ?お前は幽霊を信じてるのか?アイタタタタタ!痛いよぉ!お母さん!ここに頭を怪我した人がいるよー!」
幽霊を半ば肯定するような発言をした両備に対し、片腕を抑えながら彼女をバカにする総司。
「あんた後で覚えなさい…!」
「雅緋さんも見たのですか?その、赤い着物の女」
「…分からん。だが妙な者の気配は感じた。あれは普通の人間じゃない、恐らく……」
彼女の挑発に対し軽くキレそうになる両備をスルーし、戒は雅緋にそう問いかける。
雅緋は目撃したものに対して自分なりの仮説を述べようとするも、途中で言葉を詰まらせてしまう。
彼女が言葉を詰まらせていると…
「「アイタタタタタタ!痛い、痛いよぉお父さーん!」」
「絆創膏持って来てぇ!出来るだけ大きな、人一人包み込めるくらいのぉ!」
「お前ら打ち合わせでもしていたのか?」
まるで一心同体と言わんばかりに息ピッタリに雅緋のことをバカにする総司と戒。
あまりのウザさに雅緋のこめかみに青筋が立つ。
「赤い着物の女か…確かにそんな怪談ありましたね」
「私も聞いたことがあります」
先ほどまでのやり取りを黙って眺めていた千歳とリアも、雅緋たちが話していた話題に参加し、「そんな話を耳にした」と口にする。
「私たちがまだ幼かった頃、貧民街で一時そんな噂があって。えっと何でしたっけ、確か……夕暮れ時のゴミ捨て場で、一人で遊んでいると……」
話している内に詠の口調は小さくなっていくのと比例するように全員が彼女の話に聞き入っていく。
リアは少々間を置きながら千歳の言葉を続ける。
「そう、誰もいるはずがないゴミ捨て場に……」
彼女たちの口にする言葉の一言一言が、重く感じられる…。
全員が二人の言葉を一字一句聞き逃さないように耳を傾けている。
「赤い着物を着た女が現れるって…」
「それで『何をしているの?』って聞くと…」
「うああああああああああああああっ!!!!」
「「「「「「っ!?」」」」」」
リアと千歳の説明を遮るように校舎の方、いや、正確にはトイレがある方向、つまり忌夢たちのいる方向から彼女の悲鳴が響き渡る。
あきらかに普通ではない声に全員は急いで絶叫が聞こえたで場所あろうトイレへと向かって行った。
「な、何じゃ!どうしたのじゃ忌夢殿っ!?」
そこでは芦屋がドアを叩きながら忌夢に呼びかけていた。
「芦屋、どうしたっ!?」
「分からん…急に叫び声をあげたかと思えば何も……」
「退けっ!!」
雅緋は渾身の力でドアを蹴破った。
そして目の前に広がっていたのは…
「……」
「何でこうなるの?」
犬神家の如く、便器に頭をつっこんでいる忌夢の姿だった。
「あ…あ、赤い着物の女が…来る。こっちに、来る…!」
「おーい、しっかりしてください、忌夢さん」
雅緋たちの教室に運ばれ、敷布団の上でうなされる忌夢にそう言いながら戒は背後へと周り、なぜかヘッドロックをかけている。
「これはアレか?昔泣かせたイジメられっこの逆襲?」
「忌夢はそんな陰湿なことをする人間ではない。私が保証する」
雅緋は総司の言葉を否定する。
「じゃあお前が昔泣かせたクラスメイトが逆恨みして…」
「そんな性根が腐った人間と関わった覚えはない」
総司は新しく立てた仮説を口にするも、雅緋はこれを否定する。
「じゃあ何だこれは?」
「私のセリフだ…!」
そんな不毛な議論を切り替えるように両備は話を変える。
「けど…この学校に得体のしれないモノがいるのははっきり分かったわね」
「やっぱり、幽霊の仕業…?」
「はっ、私は幽霊なんて非科学的な物は信じない。妖魔とラピュタは信じるがな」
芭蕉が恐る恐るそれを口にするも総司はその言葉を一蹴する。
「付き合いきれないな、私たちはこれでお暇させてもらう」
「あの、総司ちゃん。これは…?」
そう言って彼女は立ち上がって仲間たちとこの場を去ろうとした。
伊吹と芦屋の手を握りしめて…
「何だ?お前等が怖いと思って美しく完璧な私が気を遣っているんだ、感謝しろ」
「総司、お主の手すごい汗なのだが」
「おい芦屋、何を言って……」
「…あ、赤い着物の女」
戒の言葉に反応して、総司は部屋の隅に瞬時に移動し武器である鎖鎌を構える。
「…何しているんですか、総司ちゃん?」
「……ラピュタの気配が…」
誰がどう聞いても見えすいた言い訳をする総司。
はっきり言ってバレバレである。
「総司、お前まさか……」
「な、何だ?何が言いたいんだ教官?」
「雅緋さん、この人……ん?」
戒が雅緋に何か言おうとするがいない。
しかし周囲を見ると、雅緋は自身の机に隠れながら武器を構えていた。
「……何やっているんですか?」
「…いや、ファンシー王国の入り口が…」
戒の冷たい問い掛けに、総司と同等の見苦しい言い訳をする雅緋。
分かりやすい性格をしている。
『……』
何かを察してしまった戒たちは総司と雅緋を置いて部屋から出ようとする。
「待て待て待て!違う!こいつはそうかもしれんが、私は断じて違うぞ!」
「怯えているのはお前だ。嘘八百もいい加減にしろ」
子ども以下の低レベルな言い争いを始める総司と雅緋に対して両備は侮蔑の視線を向ける。
「はいはい、分かった、分かったわよ。ラピュタの気配でもファンシー王国の入り口でもどこでも調べていなさいよバカ共」
「「なんだその蔑んだ目はっ!?」」
両備が放った毒舌に二人の声がぴったり揃った反論をすると、戒たちは何も言わず雅緋たちの後ろを見て沈黙した。
『……』
「な、何だ?」
「ふん、驚かそうったって無駄だ。二度目はないぞ」
しかし、彼らは沈黙したままであり、じっとある一点を見つめている。
千歳とリアに至っては口を開けたままである。
「おい、しつこいぞ」
『きゃあああああああああああああああ!!!!』
雅緋がしびれを切らしたようにそう言った直後、芭蕉たち残りのメンバーは悲鳴あげながら逃げてしまった(戒とリアは無言のまま走り去っていた)。
「…ったく、手の込んだ嫌がらせを…」
「これだから阿呆は…」
「「引っ掛かるか…」」
そう言いながら二人は後ろへと目を向けた。
…二人の背後には、長い黒髪をたらし、赤い着物を身につけた青白い肌をした女性が立っていた……。
「「……こ、こんばんわ」」
一先ず挨拶を済ませた二人だった。
「ちょっとおおおお!?い、いた!本当にいたわよ、ゆ、ゆゆゆゆ幽霊!!」
「総司さんんんんんんっ!!」
「忘れろ、芭蕉!もう手遅れだ」
まさか、目撃するとは思わなかったのだろう両備はパニックになりながらもそれから逃げようと廊下を走る。
芭蕉は仲間の名前を呼びかけるも戒はそれを無情にも切り捨てると、先ほどの部屋からけたたましい音と共に煙が上がる。
そして、そこから二つの人影が見えた。
「あ!切りぬけて来ましたよ!……あれ、ちょっと待って…背負ってる!なんかヤバいの背負ってる!こっち来ないでくださあああああああああいっ!!」
そう人影の正体は総司と雅緋…だが、伊吹の言うとおり彼女たちの後ろには変なものがいたのだ。
それに、止まるわけもなく伊吹たち全員はスピードアップをする。
「おい待て!何故逃げるんだお前たち!」
「ん……おいちょっと、後ろ重く感じないか?」
「知らん、私は何も知らんぞ!」
後ろにいる何かに気がついていないのか雅緋は突然速度を上げ始めた六人に声を上げながらも足を止めない。
すると、総司は今自分が感じている妙な感覚を雅緋に疑問としてぶつけるが、雅緋はそれを否定する。
「いやそうだって!絶対なんか乗ってるぞ…!」
「だったら自分で確認しろっ!」
「お前もちょっとくらい見てくれてもいいだろ!?」
だが、しつこく言ってくる総司に雅緋はイラつきながらも、「確認しろ」と言うが、彼女は恐怖のあまり、後ろを振り返ることが出来ない。
「よ、よし、だったら、『せーの!』で二人同時に振り向くぞっ!」
「お前絶対見ろよ!裏切るなよ!絶対見ろよっ!」
雅緋が出した提案に総司は彼女に何度も確認しながらも、その案を了承することにした。
「よし、行くぞっ!!」
「「せーの!!」」
そして、二人は思い切り止まり、勢いよく後ろを振り向いた。
すると、そこには…
「………!!」
「「…こ、こんばんわー」」
赤い着物を着た長い黒髪の青白い女が立っており、二人は挨拶をした。
「「…っああああああああああああああ!!!!」」
そして叫び声が響き渡った。
「やられた、今度こそやられたちゃいましたよ」
「…これで、私の出番が少し増えるかな…べべたん?」
「言ってる場合じゃないわよ!」
忍具や傀儡人形を置いている倉庫の中に避難したメンバー。
順に不安を口にする伊吹、腹黒いことをさらりと言う紫、その言葉に対してツッコミを入れる両備。
「あ、マッチ発見。誰か灯り持ってません?」
「…教官、蚊取り線香ならありましたよ……」
「ありがと、芭蕉」
「……いえ///」
芭蕉が倉庫で発見した蚊取り線香を戒に渡し、それを手に取り戒は拾ったマッチで着火する。
「一体何ですか?エラーは見たことありますけど…あんなの、見たことありません」
「雅緋さんたち大丈夫かな…神隠し、とかにあったりしてませんよね?」
千歳は冷静にさっき見たものが何か分析し、紫は仲間たちがその後どうなったのか不安を口にする。
「そ、そういえば…ずっと前に春花様が実験で作った新薬を伊吹が花や虫にあげていたことがあります…もしかしたら、それが原因で…?」
「…我も邪神様を呼び出そうと儀式を交わしていた気が…」
「いや、何やってんのよこの駄犬どもっ!」
「……元凶。雅緋さんの仇……えい、えい…!!」
伊吹と芦屋のとんでもないカミングアウトに両備は罵倒とツッコミを入れ、それを聞いた紫が伊吹と芦屋にべべたんを押し付けてくる。
「あぁもう、狭いんだから止めなさいっ!……全くこんなことしてる場合じゃ…」
「……」
そう言いながらドアの方を見る両備。
すると、先ほどの女がドアの隙間からこちらを睨んでいた。
「い、いやあああああああっっ!!?」
当然両備はそれにパニクってしまい、取り出したスナイパーライフルで乱射する。
それによって土煙が発生し、視界が遮られる。
数分後、土煙が晴れ視界が良好になると赤い着物の女は姿を消していた。
「き、消えた…?」
「や、やっぱりあれは本物の…」
「本当に幽霊、でしょうか?」
「……」
誰もが姿を消した存在に対して困惑する中、戒は顎を手に乗せしばらく考えると、灯りにしていた蚊取り線香を手に取り今までの情報を引き出す。
昨日からなぜか虫の多い学園、自分たちを襲わなかった赤い着物の女、そして蚊取り線香がある一つの結論へと結びついた。
「なるほど、そういうことか…」
そう呟くと、戒は急いで治療室の方へと走って行きリアたちも慌てて後を追うのであった。
一方、赤い着物の女に遭遇した二人はと言うと。
「「…うるさいんだよっ!!」」
誰もが嫌がるであろう蚊の羽音に苛立ち、茂みに隠れていた雅緋と水場の中に隠れていた総司が出てきた。
「お前、生きてたのか?」
「ふん。お前こそ、悪運の強い…」
お互いに軽口を叩き合う二人。
どうやらこんな時にでもプライドだけは一人前らしくいつもの強気な態度で総司が雅緋に尋ねる。
「おい、奴はどこに行った?」
「知らん。多分他の連中のところにいったんだろう」
「逃げたのか…実は私、さっき逃げてた時、あいつを睨みつけていたんだ。あれだな?」
「ふん、バカを言え。私は逃げている間奴の身体をずっと抓っていたぞ」
「小さいな、私なんか…」
茂みからガサリ、と何か聞こえた瞬間、二人はけたたましい音を立てながら同時に水中へ。
そして、ゆっくり顔をあげるとそこには小さいカエルが跳ねていた。
「…さて、水を浴びて頭も冷えた頃合いだ。そろそろ反撃と行こうか?」
「無理をするな、声が震えているぞ。奴は私が仕留める、ヘタレは家で怯えていろ」
総司のその挑発が普段滅多に怒らない雅緋に火をつける引き金となる。
「怯えているのは貴様だろ!わざわざ水に隠れたのは、本当に濡れている場所を隠すためじゃないのか?」
「何だと、幽霊の前にお前を潰すぞ!」
そうすると、二人は忍転身を行い忍装束へと姿を変える。
「この際だ。お前を打ち倒し、私たちが選抜メンバーとなってやる」
「望むところだ」
蚊の羽音が聞こえる中、二人は互いに武器を構える。
睨みあう緊迫した状況の中、羽音が聞こえた。
…プーーーーーン…。
「「さっきからうっさいぞ!!」」
好い加減蚊の羽音に鬱陶しくなり、上空を怒りのまま見上げると。
『シャァー……!!』
「「………」」
羽音を立てながら上空を飛ぶ、女の姿。
赤い着物を着ており背中には蚊を彷彿させるような翅が生えており、女の胸部にはゲームパッド型のユニットがあった。
一方、治療室へと戻っていた戒たちは被害者たちの検査をしていた。
そして、彼女たちにある共通点が存在したことが判明する。
「…兄様の言った通り、どの方々も蚊に刺されたような赤い跡がある。あれは……幽霊ではなくて」
そう呟くリアに肯定するように、背後から戒が現れ自らの答えを述べる。
「その通り、あいつの正体は…エラーだ」
上空を旋回する女…『ブラッド・エラー』を睨みつけた総司の脳内にある考えが浮かぶ。
「……よし、折角だ。奴を仕留めた方が勝ちってことで」
「面白い、受けて立つ」
総司の誘いに雅緋が乗ると二人は魔力と黒炎を纏った刃を構える。
「「はああああああっっ!!!」」
そして、武器を振り下ろした。
その瞬間。
【CRITICAL ARTS! COMBO BREAK! RHYTHM!!】
「オラアアアアアアアアアアアアッ!!」
助走をつけ勢いよく跳躍したアーサーが二人の攻撃よりも先に、ブラッド目掛けて音を纏った必殺の飛び蹴り『リズムストライク』を叩き込んだ。
翌日、エラーを倒し、変身解除させた女を総司たちが吊るされていた大木に逆さ吊りにし、事情を説明してもらうため、意識を失った生徒たちが話を聞くことになった。
「あのー、どうもすいませんでした。私実は忍でして、分かっているかも知れませんが、血を吸収する能力を持ったエラーだったんです」
逆さ吊りにされたまま己の素性を明かす赤い女。
だが通常、エラーはミラージュカセットと融合することで、完全な怪人へと姿を変えるのである。
なぜ中途半端な、それも蚊のような姿になってしまったのか?
女はか細い声で語り始める。
「最近上司との間に子供がデキちゃって……あの人には家庭があるから、私一人でこの子を育てようと…それで、あるシスターからもらったカセットを使おうとした瞬間、使い魔の蚊も一緒に融合してしまって…」
そのせいであのような不気味な容姿となってしまった挙句、融合を解くことも出来ずに困っていたがそれでもお金を稼ごうと吸い取った血液を売血で稼いでいたらしい。
「本当に、すいませんでした…でも私、強くなりたかったの!この子を育てるために、強くなりたかったんです…!」
「あのー、すいません。顔の影を変に濃くするのやめてくれませんか?…怖いんで」
そう告白した女は、顔の影を濃くする。
彼女なりの意思表示なのだろうが、まぁ、こちらからしたらかなりのトラウマものだが……。
こうして『赤い着物の女事件』は解決したのだが。
「雅緋…そんなところで何しているんだい…?」
「…コンタクトを…落とした」
この件がしばらくの間、雅緋と…そして総司のトラウマとなったことは言うまでもない。
To be continued……。
銀○パロは番外編の時に、ほどほどにねじ込みたいと思っています。次回はあの番組が復活!?……するかもしれません。
ではでは。ノシ