仮面ライダーARTHUR 王の名を持つ仮面の騎士 作:名もなきA・弐
後今回は試験的に一人称視点で書いてみましたが難しいものですね…銀○みたいなハッチャけたギャグもやってみたいです。
ある日の午前、穏やかな日光に照らされながら俺は街をぶらぶらと歩いていた。
普段なら友人と遊びに出かけるか、家で美少女ゲームをしているかとどっちかだがこうやって一人で出歩くのは本当に久しぶりだった。
一人で外に出歩こうと思った理由はない…ただ何となく、こうして街をぶらついてみただけだ。
「……暇だな」
しかし、分かり切っていたが流石にこのまま歩いているだけでは暇など潰せるわけがない。
……そういえば、途中で止まっている漫画があったっけ?
一先ずの方針を決めて向き直ると書店に向けて歩を進めようとした時だった。
「ん?」
何処かから男性の怒鳴り声が聞こえてくる、気のせいかと思ったが声が裏路地の方から聞こえてくる。
普通、こういったトラブルは当人たちの問題であって第三者で赤の他人である俺が首を突っ込む必要はない。
けれど。
「放っておけないんだよなぁ」
自分の悪い癖に辟易しながらそう呟くと、俺の脚は自然と裏路地の方へと向かっていた。
奥の方へと進んで行くと声の主が見えてきた。
巨体にスケバン風のセーラー服で身を包んでいたので一応女子と分かる…てか、あれは女子の声だったのか。
様子を見るため、モンス…もといスケバン女子の言動を物陰で見る。
もしかしたら、友人同士の喧嘩ということもある…何事もなかったらそのまま帰るつもりだったがどうも違うらしい。
「だから、たかがカツアゲの一つや二つ…見逃せって言ってんだよ!!」
「あなたたちの行っているのは弱者を追い詰める行為、すなわち『悪』です。正義の元に、その蛮行を見逃すわけにはいきません」
スケバンの風の女子が巨体を揺らしながら灰色の学生服(珍しいワンピースタイプだ)と黒いタイツに身を包んだ女子に突っかかる。
一般人が見たら尻込みするである重圧を放っているにも関わらず、学生服の女子はそれをものともしていない。
ここからでは分からないがスケバンの風の女子が風船のように分かりやすいほど真っ赤になっており今にも掴み掛からんばかりの勢いだ。
…出るなら今か。
ゆっくりと息を吐きながら、物陰から飛び出した。
「すいませーん」
「あっ?」
「え?」
頭に被った帽子に手を当てながらへらへらと笑いながら出てきた俺にスケバンと制服の女子が同時に声を出す。
それもそうだ、いきなりこんなところに名も知らない一般人Aが出てきたら驚く。
「何だか大きな声が聞こえたもので…カツアゲがどうとかって」
「だったら何だってんだ、アァンッ!?」
目標を俺に変えたスケバンは俺を睨み付ける…もしラノベやゲームの主人公だったら力を使ったりしてボコボコにするんだろうが俺は好きじゃない。
敵に容赦をしないスタイルはカッコイイが俺自身、敵に情が移るタイプなためそういったことが肌に合わないのだ。
出来れば穏便に済ませたいのが俺としての本音だ。
だが、目の前の御仁はそういったものが通じないらしい……。
俺が口にするよりも早く拳が飛んできたからだ。
振り出された拳ははっきり言って遅い、桜花おばさんの方がよっぽど速いし威力もあの人なら大理石を砕けるだろうな。
そんなことを考えながら、その拳を躱そうとした時だった。
「ブベラッ!?」
学生服の少女から繰り出された掌底がスケバン風女子の顎を打ち付けていた。
見事なほど綺麗に入った攻撃を受けたスケバンは巨体を宙に浮かして地鳴りにも似た音とともに倒れた。
すごいな、おい……。
「ご無事ですか?」
「え?アッハイ」
掌底を入れた少女が向き直り呆気にとられている俺に声を掛けてくる。
しかし、彼女の姿を改めて見た俺は思わず言葉を詰まらせてしまった。
第一印象は……『雪』であっただろうか。
華奢で何処か儚げな雰囲気のあるアイスブルーの瞳には月光のような確かな意志を宿しセミロングのグレーの髪は、大きな白いリボンによってキッチリと後頭部で束ねられ、所謂ハーフアップと呼ばれる髪型だ。
そして何よりも、何よりも胸囲部分が凄かった!だって、制服越しでも揺れてるんだぜ?引くなよ、俺は男子だよ。
そこまでの思考を母さん譲りの無駄な頭の回転力で処理し、目の前のGカップ美少女もとい、女子に感謝の言葉を口にする。
「ありがとうございました。助けるはずがこんな形になっちゃって」
「そのようなことはありません。あなたの雄姿は立派でした」
「いやぁ、はは///」
大したことはしなかったが美少女にそこまで言われると照れるしかない、元々女子が苦手なのでそのまま帰ろうとしたが視界の端に木刀を構えている影が見えた。
「危ないっ!」
「え?きゃっ」
振り下ろしてきた木刀から少女を助けようと駆け出し、庇うが彼女ごと押し倒す形になってしまい、衝撃が身体を襲った。
「痛ったた……(あれ?手に何か柔らかい感触…)」
「あ、あの///」
恥ずかしそうな少女の声に顔を上げると、俺の右手は彼女の胸を掴んでいた。
いや、しかし柔らかいな…服越しでこれなら直に触ったら…ていかんいかん!
慌てて上体を起こすと、顔を真っ赤にしてこちらを見てくる彼女に対して慌てて謝罪をする。
「す!すすすす、すいません!/// あの、わざとじゃなくてですね!?え、えと事故で、アクシデントであって…いや素敵な感触でしたけど……じゃないっ!!///」
「お、落ち着いてください。他意がなかったのは、その分かりますから///」
パニクって何を言っているか分からない俺とは対照的に、頬を赤らめながらも落ち着かせようとする彼女。
やがて、痺れを切らしたようにマスクを装着している不良風の男子がイラついた口調で怒鳴りたてる。
「おいっ!てめぇらさっきからイチャついてんじゃ…」
「うるせぇっ!!」
「ひでぶ!?」
それどころじゃねぇんだよ、タコ頭!!
木刀で再び襲い掛かってきた不良に対して俺は素早く少女の前に立つと、その胴体を蹴り飛ばした。
その後しばらくして俺と少女…『雪泉』と名乗った彼女は改めて俺の方に向き直ると丁寧な動作でお辞儀をしてくれた。
「本当にありがとうございました」
「いえ、こちらこそ」
本当は謝りたいことが星の数ほどあったがややこしくなると思ったため、軽く会釈で済ますと踵を返した。
「……それでは、雪泉さん」
「はい…また、お会いしましょう」
そう言って俺は、目的へと脚を進めた。
「はい。ええ…飛鳥さんの仰る通りでした。本当に、素敵な殿方……ふふ♪」
もしかしたら、彼女と再び出会うのにそれほどの時間は必要ないのかもしれない。
スマホで時間を確認すると、まだそれほど時間が経っていないことに気付いた。
時刻は丁度昼時を指しており行きつけの喫茶店で昼食を済ませようと歩を進め、到着するとドアを開いた。
「いらっしゃいませー…て、戒君っ!あの時は助かったよー」
「どうも、マスター」
知り合いのマスター(本人のこだわり)と軽く会話しながらも、「席が空いているか」と尋ねるが満席らしく空いている様子はない。
「相席なら可能だけど、どうする?」
「向こうの人たちが良いなら構いませんよ」
この際、相席でも良い…そう判断した俺はマスターに答えると彼は手早く話を済ませ席へと案内された。
「どうもすいません。迷惑をおかけしま…」
そう言って相席となった二人の少女たちに挨拶をしようとしたが途中で止まってしまった。
見覚えのある緑と青のオッドアイ、そして茶色の長髪を黒い紐リボンでツーテールにし、前髪を赤いカチューシャで纏めている少女とセミロングの金髪の少女に見覚えがあった。
間違いない、俺はこの二人をいや…この双子の姉妹を知っている。
向こうも驚いているだろう…眼をぱちくりとさせながら俺たちは恐る恐る互いの名前を呟いた。
「両備と、両奈?」
「「……戒(カー君)?」」
相席となった人物は、俺の小学生からの幼馴染でした。
「こんなところで会うとはね、正直びっくりしてる」
「その言葉、そのまま打ち返してあげるわ」
「じゃあその言葉をバットで打ち返す」
「なら両備はそれをキャッチして…」
「両備ちゃん、カー君。そのやり取りまたやるの?」
昼食を終えた後、俺たちはコントまがいのことをしながら話をしていた。
両備と両奈は、俺と琴音が七歳ぐらいの時に遊んでいた幼馴染だ。
金髪でジト目のふわふわした雰囲気を持つ『両奈』が姉で、彼女とよく似た顔立ちのツインテールが妹の『両備』だ。
ちなみに、両奈は左眼が緑で右眼が青のオッドアイで両備はその反対…何かも正反対な二人だが仲が良かったのを覚えている。
それに。
「体型もすっかり正反た…」
「それ以上言ったらぶん殴るわよ」
「さーせん、調子に乗ってました」
昔から兆しがあったが、すっかり豊満に成長した両奈と幼少のころから全く変わらない両備を見比べて話そうとしたが鬼の形相で睨んでいたすぐに謝罪した。
その際、息を荒げて興奮する両奈がいたがそれを無視…て言うか近い!
「両奈、ちょっと近…///」
「だって~、カー君と会うの久しぶりなんだもーん」
そう言いながら身体を押し付ける両奈…柔らかい感触が身体に当たって気持ち良い、じゃなくて!
「ほら、離れろ」
「あぁん♪」
その声にゾクッと来るものがあるがそれを聞き流し両備の方を見る。
……ものすごく不機嫌な表情を見せていた。
「ほら、機嫌治せって…アメちゃんあげるから」
「…もらう」
妙なところで素直な部分は変わってないな。
苦笑いしながら、俺は棒つきキャンディーの包みを外すと両備に突き出すと、彼女はそれを口に咥えて舐め始めた。
そんな彼女を見ながら俺と両奈は意地悪そうにニヤニヤと笑うのであった。
「はー……」
店を出てからゲームセンターと書店で一しきり遊ぶと、もう空は暗くなっていた。
久しぶりに出会った俺たちは並びながら帰路へと進みながら話をしていると、俺は深く深いため息をついた。
「……」
「あんまり、落ち込まないでよ」
「カー君…」
俺の顔が辛い表情を見せていることに気付いたのか、両備と両奈が心配そうに声を掛けてくれる。
両姫姉さん…俺や琴音にも優しくしてくれた両備たちの年の離れた姉である人。
そして、俺の初恋の人。
彼女のことを聞いた時はその場でパージして走り回ろうと思ったが両備が頭を殴ってくれたおかげで正気に戻っていた。
けれども、やはりと言うかショックがでかい…あんな綺麗な人が。
だがいつまでも暗い考えのままじゃ仕方がない。
頭に残るショックを振り払うと、俺は笑顔を作って二人にある提案をする。
母さんや琴音、桜花おばさんたちも喜んでくれるだろう。
「そうだ、飯食べてくか?夜も遅いし」
「え?でも…」
「良いの、カー君?」
両備と両奈は目を丸くさせたが「良いから」と彼女たちの手を繋ぐと走って帰路へと向かいだした。
そして、見慣れた家…俺の帰るべき家のドアを開けた。
「ただいま」
こうして、奇妙な出会いを経験した俺の日常は終わりを告げた。
短いですが日常編でした。
幼馴染は『両備』と『両奈』、そして初恋の人は少し年の離れた『両姫(17歳)』でした。飛鳥との出会いについては彼が初めて変身した番外編にでも。
本編の方は気長にお待ちください。次回は満を持してのフォームチェンジ回です。
ではでは。ノシ