仮面ライダーARTHUR 王の名を持つ仮面の騎士   作:名もなきA・弐

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 新しい話だと思った?残念、幕間だよ!(ドヤ)
 いや、すいません。前回は斑鳩と葛城の描写が出来ていなかったと感じたのでその補完みたいな形で投稿しました。
 今回の話は恋愛描写があります…人の恋の動きを描写するのって難しい…それがすらすらと構想できて、書ける方々を素直に尊敬します…!
 後、閃乱カグラシリーズに登場する『彼』ですが「キャラちがくね?」と疑問に思うかもしれません、しかし自分はSVと2で見せた姿が彼本来の姿だと思っているのでそこを自分なりに書きました……町内鎖鎌大会6位は伊達じゃない!
てなわけで、どうぞ。


COMBO4,5 想い×思い

ある日の休日、実家に帰省していた斑鳩は自分の部屋で物憂げなため息をついた。

母親は普段外に出ない父親を連れ出して買い出しへと向かい、弟は友人である戒と一緒に遊びに出かけており、この場には彼女一人しかいなかった。

 

(……戒さん)

 

ふと、弟の友人である彼の名前を心の中でそっと呟くと、斑鳩の心中は穏やかではいられなくなる。

彼の本質を理解して以降、仲間となった彼と本当の意味で絆を結ぶことが出来たことに嬉しさを感じたが、それと同時に気恥ずかしさも感じるようになった。

今では、少し肩がぶつかっただけで驚いてしまったり手袋越しの彼の手と触れ合うだけで背筋を伸ばすなど今までにないほど意識をしてしまう。

そして、誰もいない時に何の気なしにふと想像する…もし彼が自分と親しい仲になれたらと、もし自分が彼と恋仲になれたら……。

 

(っ!/// なっ、何を考えているのですか、わたくしはっ!?ど、どうしてそのようなことを…!?///)

 

自分の中で湧き上がった想像(もしくは妄想)を、頭を振って忘れようとするが一度湧き上がった考えはそう簡単には消えない。

元々、周りに同性の友人しかいなかった上に、修行や勉学に明け暮れていた彼女にとって年齢の近い異性と話をしたり触れ合ったりするのにほぼ面識がないのだ。

ましてや、恋愛など自分が読んでいた本の中でしか知らないのも相まって斑鳩の顔は赤く染まっていく。

 

(この顔では、お父様たちの前に出られません……!)

 

少し風に当たろう…そう考えた斑鳩は、部屋から外に出ると広い庭を歩く。

熱くなった頬に当たる風と美しい庭の景色に心が落ち着き始めると、見覚えのある人物…自分の兄である村雨がいた。

愛用している服を脱ぎ、腰にサラシを巻いて木刀で素振りをしている彼は斑鳩の存在に気が付くと素振りを続けながら彼女に聞く。

 

「どうした?お前が外に出るとは珍しいな」

「いえ、特には……お兄様は何を?」

「ただの筋トレだ。最近は何かと物騒だからな、護身程度に体を鍛えておいて損はないだろうと思ってな」

 

斑鳩と軽く話をしながらも、村雨は素振りを止めない。

元々、彼は経営の才能こそはあったが忍の才能は全くなく、当主は柊介に譲るはずだったがその彼も不慮の事故で脚を怪我したため、遠縁の子である斑鳩が養子となったのだ。

最初こそ初めて出来た妹と姉に戸惑い、イヤミの一つや二つを言っていたものだが家族は家族…村雨は『妹大好き検定』なる資格を取り、柊介も敬語こそ使っているものの話をしたりするなど兄妹としての関係を作ろうと相応の努力をしていたのだ。

閑話休題……妹の様子がおかしいことに直感と父親の仕事の手伝いで身に着けた観察眼で気付いた村雨はある質問を斑鳩にする。

 

「妹よ。物事において大切なことが何か分かるか?」

「え?それは、日々の積み重ね…ですか?」

「それも正解だが少し違う…『基礎』だ」

 

素振りをしながら村雨は話を続ける。

 

「勉学も、修行も…その根本となる部分、基礎が大切だ。そこを疎かにし先へと進んでは簡単に乗り越える壁すらも容易ではなくなる、だからこそ基礎を積み重ねることが大切なのだ」

「はぁ…」

 

彼の話を聞いている斑鳩は納得こそするが釈然としない…なぜ自分にそのような話をするのか、脈絡のない話のように聞こえる。

 

「斑鳩、お前が何に思い悩んでいるかは詳しくは聞かん。だが、お前が誰かに抱いているその感情は恥でもなければ忘れて良い物でもない。人間ならば誰もが感じることの出来る『大切な基礎』だ、忘れずに精進しろよ当主様?」

「お兄様……」

 

最後はからかうように言っていたが、自分に助言をしてくれた兄の言葉に、斑鳩は改めて彼に尊敬の念を抱いた。

丁寧にお辞儀をすると、感謝の言葉を口にする。

 

「ありがとうございました、お兄様…ですが最後に一つよろしいですか?」

「何だ?」

「…素振りをするのに衣服を全て脱ぐ必要はないと思うのですが……!!!」

 

そこまで言い切ると、斑鳩は愛と怒りの籠った拳を『腰にサラシだけを巻いていた全裸の村雨』に叩き込んだのであった。

 

 

 

 

 

息子のいない門矢家兼政宗探偵事務所は家族会議の場となっていた。

その場には『不可能犯罪捜査』に所属する警部の紅いロングヘアーの美女『政宗美海(まさむね みう)』と、小さな音楽教室を開く、何処かおっとりした黒のボブヘアーの女性『政宗真希奈(まさむね まきな)』、そして美海の彼氏であり部下である警部補の青年『片倉佑斗(かたくら ゆうと)』と隣の家にいる薄い金髪のロリ体型の女性『幸村桜花(ゆきむら おうか)』がテーブルにある椅子に座っていた。

やがて、議長…今回の家族会議を開いて(有無を言わさず収集した)美緒が話を切り出す。

 

「では、これより!『息子二号に忍び寄るケダモノたちから防御せよ!』の会議を開始します!」

「「わー!!♪」」

「…頭痛いわ、佑斗」

 

ノリノリな姉と、楽しそうに拍手をするマイペースな妹と友人に対して頭を痛める美海に佑斗は「まあまあ」と宥める。

 

「残念なことに、私の可愛い可愛い息子二号である戒は…ある特別クラスに編入させられました…おまけに琴音ちゃんから聞きましたが辺りはモンスターだらけ!」

「え~!?本当なの美緒お姉ちゃん~。私の可愛い甥っこが~!戒君が~!?どうしよう~…このままじゃ戒君が女の子に言い寄られちゃう~っ!!」

 

美緒の話を聞いた真希奈は今にも泣きそうな表情を作り、頭を抱えて混乱するが桜花は笑顔で言う。

 

「私は、カー君や琴音にお友達が増えるのが嬉しいけど…美緒ちゃんたちは嫌なの?」

「い、嫌と言うわけではないんですよ!?ただ、私は自分の息子を守ろうと…」

「じゃあ、礼司君は?彼女連れて来た時喜んでいたよね?」

「あの時礼司は二十歳でしたし、喜びと同時に泣いてました!!」

 

桜花と美緒のやり取りに美海は嫌な予感を感じていた。

だが、空気を読まずに真希奈が二人の会話に入り込んでくる…議論は増々ヒートアップしていく。

 

「待ってよ~!本題は戒君でしょ~!?」

「黙っていなさい、真希奈。この分からず屋とは一回話し合わなければ気がすみません」

「良いよ。美緒ちゃんがそれで満足するならやってあげるね」

 

美緒VS桜花と言う形式になってきた二人を見かねた真希奈は話を無理やり戻そうと割り込んでいく。

言葉と言葉が飛び交い、バトルロワイヤルと化してきた辺りに、カオスが充満して来ると……美海は身体を震わせ、大声の限り叫んだ。

 

「あ・な・た・た・ちぃ……好い加減に、しろおおおおおおおおおおおっっっ!!!!」

「み、美海ーーーーーっっ!!?」

 

我慢の限界を迎え、暴走する美海を…唯一この場を見守っていた佑斗がこの惨状を止める結果となり、母親を迎えにきた琴音が止めるのであった。

 

 

 

 

 

「は~い。いらっしゃいませ…て、かつ姉様ぁ!!菖蒲に会いに来てくれたんですかぁ!?」

 

ある平日の午前終了時…半蔵学院の忍学科に存在する『購買部』に入った葛城を出迎えたのは、学制服に身を包む少女であった。

顔立ちは可愛い系に分類されるであろう、おっとりした雰囲気を持つタレ目が特徴で腰まで届くほどの黒い長髪をカチューシャで前髪を上げて留めており白い額が見えている。

屈託のない笑顔は、例え営業スマイルだとしても、ここに来た来客を安心させるような雰囲気が有った。

忍学科一年に所属しここでバイトをしている彼女『菖蒲』はハイテンションな口調で目の前の尊敬する先輩である葛城に話しかける。

 

「昼飯買いに来たんだよ、昼飯…おにぎり二つ」

「またラーメンとですかぁ?好い加減にしないと太りますよぉ」

 

「アタイは太らない体質だよ」と菖蒲の忠告を軽く流して財布からおにぎり二つ分の代金を渡す葛城。

菖蒲はため息をつきながらも、辛子明太子とおかかの具が入ったおにぎりをビニール袋に入れて手渡した。

 

「かつ姉さま、最近機嫌が良いですねぇ。もしかして件の編入生ですかぁ?」

「ま、まぁな///」

「ふふ♪どんな殿方なんですぅ?かつ姉様がそこまでご執心な幸せな人はぁ…」

 

少しだけ照れたように肯定する葛城に菖蒲はニヤニヤと笑みを浮かべながら追及すると、彼女は困ったように彼のことを語る。

 

「何て言うかさ、『強さ』を感じたんだよ」

「力が強いってことですかぁ?」

「そうじゃなくて、えーと……一見ふざけているように見える癖に、アタイに抱き着かれると顔を真っ赤にしちまうぐらい初心な奴で、お人よしなんだよ」

 

「でも」と葛城は話を続ける。

 

「そこに、あいつの『強さ』の根本って言うか…あいつの、その……優しさが見えたんだよ///」

「要約すると、彼が優しかったから惚れたんですねぇ……かつ姉様ちょろすぎませんかぁ?」

 

「うっせ!」と菖蒲を黙らせ葛城は照れ臭さを隠すように腕を胸の下に組んだ。

菖蒲は思う、『強さ』に対して必要以上のこだわりを持つ彼女の事情は知っている…大事な家族を守れなかった自分を恥じた葛城は、掟を破り組織を追放された忍…『抜け忍』となった両親と再び出会うために、善忍陣営での地位を得ることで両親の信用を取り戻そうとしているのだ。

そんな彼女が、自分とは違う強さを持つ少年に尊敬と思慕の念を抱いている…それが、自分を不良から助けてくれた先輩の一面を見れたことに嬉しさとわずかな嫉妬を感じていた。

すると、ドアの開ける音に気付いた菖蒲は挨拶をしようとそちらの方を向いた。

 

「かつ姉ー?飛鳥さんから、ここにいるって聞いたんですけど…」

「……」

 

葛城を探しに購買部に顔を出した戒……今まさに話題となっていた同い年の少年を菖蒲は呆然と見つめていた。

中性的な顔立ちと宝石のような紅い瞳、パーカーのような学生服を着こなした一般の男子より低い身長と優しい声、何もかもが菖蒲の好みと完全一致していた。

 

「か…」

「か?」

「カッコ良いですぅっ!何でこんなにカッコ良いんですかぁ!どうしてここに来たんですかぁ!?あ、もしかしてあなたが菖蒲の運命の王子様ですかぁっ!?」

「はっ、はっ!?」

 

目を輝かせながらいつも以上のハイテンションで自分に詰め寄り、手袋をはめた自分の黒い手を握ってくる少女に戒はいつもの態度を取ることが出来ず困惑するばかり……。

初対面でありながら出会ってそうそう、戒に惚れ込む菖蒲に葛城は苦笑いで彼女を制止させようとするが、遅かった。

 

「菖蒲の身体を触って下さい、王子様ぁっ!」

「はっ、はああああああっ!!?/// ちょ、な、なな、何を言って…///」

「さあ、さあっ!遠慮なく触って下さい!菖蒲の身体はもう、かつ姉様と王子様だけのものですからぁっ!!!」

「ま、待って待って待って、ちょっと待って!/// か、かつ姉助けてええええええええっっ!!?///」

 

自慢のサイズをぐいぐいと押し付けて暴走する菖蒲に顔を真っ赤にしながら戒は葛城に助けを求めた。

その後、菖蒲は戒と葛城に謝罪をした後…時々購買部に顔を出す戒と世間話をする程度には仲良くなり母親たちの危惧していたことが半ば事実となりかけていた。

 

 

 

 

 

その夜、社会に馴染めぬ若者たちのたむろ場は一体の異形によって破壊されていた。

騒ぎ、己の不満や欲望をぶち巻け、気に入らない奴は誰であろうと突っかかる…自分たちより優れた者など存在しないとさえ豪語する彼らは、突如現れた『来客』によって蹂躙されていた。

折れた鼻から流れる血ともはや痛みも感じない箇所を抑えながら、気絶を免れた若者の一人は腰の抜けた身体を引きずり、目の前の異形を見る……。

 

『この街は、「彼女」が好きだった街だ。誰もが笑顔でいることに望み、綺麗な街が好きだった「彼女」の街だ……』

 

若い少年の声で異形が独り言のように話す。

錆びたようなイエローとマゼンタのシンプルな身体とスポーツ用ヘルメットを模した頭部…腕部と脚部には銀色のスプリングが装着されており、両肩には横向きになったBMXのアーマーが被されている。

見た目こそ奇天烈だが、若者たちからすれば自分たちを襲い始めたその存在は恐怖の対象だった。

異形『バイシクル・エラー』は逃げ出そうとする若者に気付くとゆっくりと歩を進めていく。

 

『だから消えろ…ここは、「彼女」が眠る街だ。消えろ、消えろ。そして消えろ……安らかに眠る「彼女」の街から』

「…ああああああああああああっっ!!!!」

 

バイシクルが呟きながら車輪型のチャクラムを振り下ろすのを、ミケネは楽しそうに観ているのであった。

 

Next Stage →COMBO5 憎悪×恐怖




 幕間でした。今回は本編で出せなかったオリキャラを何人か出したかったのと、自分なりのカッコいいけど残念な村雨を書きたかったので個人的には満足です。
 次回は柳生と雲雀のストーリーとなります。バイシクル・エラーに関しては詳しく記載しますが、モチーフは言わずもがな、シャカリキスポーツです。
 菖蒲は出したかったんです。新作にも登場しますし、可愛いですし…チョロインを通り越した一目惚れ…これには驚いたかもしれませんが恋に落ちるのってこんなこともあるかな?と思いながら書きました…まぁコメディパートと思っていただけたら。
 ではでは。ノシ

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