仮面ライダーARTHUR 王の名を持つ仮面の騎士 作:名もなきA・弐
と言う訳で、第二話という名の戦闘パートです。どうぞ!
……確かめたけど大事な場面で誤字とかあったらどうしよう……。
飛鳥を除いた斑鳩たち忍学科のメンバーは今、信じられない光景に唖然としていた。
二つの声で話す怪人、そして突如現れた少年の変身した姿……今まで見たこともない光景に全員が固唾を飲んで見守っていた。
『くっ、はっはははははっっ!良いぞ、壊し甲斐のある奴が来たっ!!破壊、破壊するっ!』
『あっはははははははっっ!!!』
目の前の騎士を明確に『壊すべき存在』と認識したメタリックは鉄球を叩き込もうとするが、隙の多いその攻撃をアーサーはバックステップで躱す。
『は?あ、当たれ!当たりなさいよっ!この!このっ!!』
「ふっ、あらよっと!」
続けて放たれる攻撃を、身軽な動きで避けていくアーサー。
『…ああああああああああっ!さっさと、私の手でぶっ壊れなさいって言ってんでしょおおおおおおおっっっ!!!!』
攻撃が当たらないことに苛立ちを感じたメタリックの攻撃は激しくなるも軌道が単純になっていく。
それが命取りとなった。
「その瞬間を待ってたぜ!」
その言葉と共にアーサーは身体を捻ると、抉るようなキックを鳩尾に叩き込んだ。
『がっ!?』
「もう十分動いたろ?こっからは俺のターンだ!」
思わぬ反撃を受け後退するメタリックに宣言すると、アーサーはマフラーと共に身を翻し、跳び蹴りを浴びせると、回し蹴りからのアッパーキック、ミドルキックを順に叩き込んでいく。
『ぐぅっ!!』
次々と繰り出される足技になす術もないメタリック。
武器である鉄球で防ごうにもそれより早くアーサーの蹴りが飛び、攻撃に転じようにもその攻撃をする時間が潰されているのだ。
「あの身のこなし…彼は一体……」
「すごい……!あんなに速く攻撃出来るなんて……」
「カッコ良い…!」
アーサーのスタイリッシュながらも前衛的な動きに斑鳩や飛鳥、雲雀は感嘆の声を上げ柳生や葛城も何も言わないながらも彼の戦い方に魅了されていた。
「オラッ!」
『があああああああっっっ!!!』
アーサーから繰り出された二段蹴りをくらい、中央へと吹き飛ばされるメタリック。
「どうした、もうヘバったのか?」
『くそっ、くそっ!!それならこれだっ!これで破壊する!!』
余裕飄々と言った感じでメタリックの元に近づくアーサー。
だが、エラーが突然叫びだすと鎖を長く伸ばし鉄球を飛ばす…単純な軌道のそれをアーサーは難なく躱す…だが。
「うおっとぉ!?」
身体中から小さな鉄球の礫を発射してきたのだ…驚きながらも、アーサーはそれを横転して躱すが、休むことなく放たれる礫をくらってしまう。
「つっ!痛った!!やりやがったな、この野郎!!」
『戒!ボタンを押して能力を解放するんだ!!』
「了解!」とウェルシュの声に応えるとアーサーは態勢を立て直しドライバーの赤いボタンを押した。
【ATACK ARTS! SONIC BITE!!】
赤いオーラに覆われその場で軽く跳ねると、アーサーの姿が消えた。
『なっ、きゃああああああああああああっっっ!!?』
驚きの声を上げるも強烈な一撃を何時の間にか浴びせられたメタリックは地面に叩きつけられると同時に、アーサーは再び姿を見せるもまた姿を消し追撃を行う。
この時、攻撃を受けているメタリックや戦いを見ていた飛鳥たちは考える間もなかったがアーサーはバックルに付いているボタンを押すことで自身の魔力を解放し、様々な能力を発動することが出来るのだ。
今、アーサーが使用している能力は赤いボタンの『脚力強化』であり姿が消えたように見えたのもメタリックがその速度に付いて来られなかっただけの話なのだ。
口を開けたドラゴンが噛み砕く魔力のエフェクトと共にアーサーは蹴り技による攻撃を続ける。
更に……。
【MAGICAL ARTS! BOWABOWA KACCHI-N!!】
「オラアアアアアアアアアッ!!」
『がああああああああああっっ!!?』
白いボタン『熱操作』の能力で炎を纏った両足による締めのドロップキックをくらったメタリックの身体が吹き飛ばされた。
数メートル地面に転がったのを確認するとアーサーは能力を解除し動きを止めた。
『ぐっ、うぅ…こうなったら。来いっ!雑兵ども!!』
メタリックが叫びながら、二つの黒いエラーカセットを宙に投げると、「NPC」と書かれた胸部の白いプレートに、黒いスーツと手袋の容姿に骸骨の仮面を被った怪人『ポーントルーパー』が六体現れる。
『ハカイ、ハカイ』
『ヒャッハー!ブレイクタイムだぁっ!ブレイクブレイクーッッ!!』
『ヤートット、ヤーットット』
支離滅裂な言葉を繰り返しながらポーントルーパーはアーサーに群がり短剣を振り下ろしてくる。
アーサーはそれを躱し攻撃を仕掛けるが先ほどまでのメタリックの戦闘と、数で押してくる相手に苦戦を強いられてしまう。
そして、後ろからポーントルーパーが攻撃を仕掛けようとした時だった。
「やあっ!!」
『ブレイクッ!?』
仲間の制止の声を無視して駆けだした飛鳥が脇差で防いだのだ。
「忍転身」と呼ばれる『忍』としての力を開放するための忍法によって半蔵学院の制服からベージュ色のカーディガンと緑色のチェック柄のスカート、ニーハイソックスとローファーを身に着けた忍装束を身に纏った飛鳥は、籠手を装備した両腕で二振りの脇差でポーントルーパーの短剣を抑えていた。
急に助けに入ったアーサーと琴音たちは驚くが、専用武器…グレンバーンを召喚して三体の戦闘員を斬り伏せると、困ったように言う。
「昨日、深入り禁止って言ったんだけどなぁ」
「ごめん。でも…やっぱり放っておけないよ…だって」
私は忍だから……。
彼女の言葉を受けたアーサーは一瞬面をくらったが仮面の下で笑う…彼女の純粋ながらも迷いのない言葉に、尊敬し感激したのだ。
飛鳥とアーサー…戒との間に芽生えた絆を認識したアーサードライバーは『シェアリングナイトフォース』機能を展開しアーサーの持つ『エラー破壊能力』を飛鳥と共有する。
「何これ、力が…!」
『戒が君のことを認めてくれたことの証明さ、行こう戒!」
「ああ!タッグプレイで一気に終わらせてやる!」
宣言と同時にアーサーはバッタのように高く跳躍し飛鳥は二振りの脇差を構えると、メタリックと残ったポーントルーパーに向かって走る。
「秘伝忍法『二刀繚斬』!!」
メタリックたちが攻撃を仕掛けるよりも早く、飛鳥は前方に跳躍して交差状に斬りつけ攻撃を受けた相手を前方に吹き飛ばす。
だが、それだけでは終わらない…跳躍したアーサーが落下の勢いを利用した踵落としでポーントルーパーの頭を砕き、消滅させる。
「よっと!……そして、シュートォッ!!」
『『ぎゃああああああああっっ!!?』』
アーサーに足払いされ、うつ伏せに倒れると頭部をサッカーボールに見立てて蹴り飛ばされたポーントルーパーは主であるメタリックを巻き込みながら消滅する。
背後が隙だらけとなったアーサーを攻撃しようと最後の一体が短剣を構えるが……。
「させないよ!」
『っ!?』
それに気づいた飛鳥が脇差で防ぎ、もう片方の刀で空いた胴体に斬撃を与える。
そしてアーサーが一歩そこから退くと……。
「秘伝忍法『半蔵流乱れ咲き』っ!!」
『ガアアアアアアッッ!!』
『ちょ、ちょっと!こっちに来て…ああああああああああっっ!!』
飛鳥は前進しながらポーントルーパーを連続で斬りつけ、回転攻撃に移行してメタリックを巻き込み、跳び上がって刀を地面に突き刺すと、尖った岩を前方に三つ発生させた。
攻撃を受けたポーントルーパーは消滅し、メタリックも尖った岩によって吹き飛ばされ地面を転がる。
『ぐっ、まさか、俺が破壊されるだと!?バカな、こんなことがっっ!!』
『いや、まだ私は壊していない、壊さなきゃ…いやっ!もう壊したくないっ!!苦しませなきゃ…嫌だぁっ!もう誰も苦しませたくないよぉ……!!』
男性の人格は必死に抵抗しようとするが、攻撃を受け続けたメタリックの融合者である女子生徒は正気を取り戻したのかエラーとしての破壊欲求と本来の明るく優しい性格に苦しみ、嘆く。
彼女の悲痛な言葉が聞こえた飛鳥は目の前の騎士……仮面ライダーに自分の気持ちを託す。
「……お願い!仮面ライダー!」
「ああ!ラストはこれで決めてやるっ!!」
快く了承したアーサーはスロットからドラゴンカセットを抜き取り、左腰のスロットに差し込み、片手で赤と緑のボタンを同時に押した。
【CRITICAL ARTS! COMBO BREAK! DRAGON!!】
「はぁぁぁぁぁ……!」
必殺技を告げる電子音声が鳴り響くと両足に炎と冷気のエネルギーを纏ったアーサーは助走をつけ、勢いよく跳び上がりそして……。
「はあああああああああああっっ!!」
メタリック目掛けての急降下キック『ドラゴンストライク』を繰り出した。
『ガアアアアアアアアアアアッ!!!』
蹴り貫かれたメタリック・エラーはその場で巨大な爆発を起こし、それを背景にアーサーは華麗に着地した。
『あ…あぁ……』
爆発したエラーの身体がボロボロに崩れ落ちると中から気絶した女子生徒が倒れるように現れ、魔力だけとなったその身体はエラーカセットと共に粉々に砕け散った。
「後は美海姉さんに連絡、だな……」
アーサーは意識を失った彼女の元に駆け寄り安否を確認すると琴音に目線を送る。
その意味を理解した琴音は頷きスマホを手にすると、美海に連絡した。
(ど、どうしよう……)
幸村琴音は目線を落とし、どうしようもない空気に飲み込まれていた。
エラーを戒が倒し、美海にも連絡を取り、女子生徒も無事に確保され事件も解決した。
しかし、そのまま帰ろうとしたところ、斑鳩が良い笑顔で状況説明を求めたため、琴音たちは、自身の学校である半蔵学院……裏の顔である忍学科の校舎へと案内されたのだ。
詳しい話は彼女たちの担任が来たら話す予定なのでそれ以外では特に話すこともないし、向こうもどう話しかけたら良いか困惑しているようだった。
重い空気に耐えきれず、助けを求めるように隣にいる戒とリア、千歳に視線を向けるが……。
「……♪」
「「もきゅもきゅ」」
(何でこの三人こんなにリラックスしてんの!?よく物怖じしないねっ!!)
周りの視線や気まずさも何のその、戒はスマホで音楽(おそらくアニソン)を両耳に付けたイヤホンで聴いており、千歳とリアに至っては途中で買った肉まんを同じタイミングでほおばっていたのだ。
無論琴音はそれに対してツッコミを入れたいが余計気まずくなると思ったので口には出さなかったが……。
そんな状態がしばらく続いていたが、扉が開くとそこには一人の男性がいた。
短くした白髪に上下とも黒いスーツ、何処か熟練の雰囲気を漂わせた壮年の男性は戒たちの元に来るとまずは軽く頭を下げた。
戒は自身のしていた行動を止め、彼を見据えると嬉しそうな笑みを見せた。
「久しぶりです、『霧夜』先生。やっぱり何か隠してたんだ」
「それはお互い様だ。お前も私に隠しごとをしていたんだからな」
そんな二人の会話に驚いたのは琴音だけではなかった。
飛鳥たち半蔵学院のメンバーも驚きを露わにしており飛鳥が代表して彼に尋ねた。
「き、霧夜先生!彼と知り合いだったんですか!?」
「ほんの少しだけな。あの時はただの正義感の強い少年だと思っていたが……」
そこまで言うと顔を引き締め、霧夜は戒たちに対して鋭い視線を向けた。
「今度はきちんと、話してくれるな?」
その視線に琴音や肉まんを頬張っていた二人は委縮してしまうも、戒は困ったような表情を浮かべる。
「あー、事情は分かるんですけど…話すのはちょっと難しいっていうか、教えられることはないと言うべきか……」
「…オレたちを信用出来ないと……?」
「でも、せめてあの怪物のことを教えてくれても…」
「別にそういうわけじゃありません。こういうのは専門家の出番だって言いたいんですよ」
「専門家」と戒の言った単語に忍学科メンバーが、皆一様にして首を傾げる。
すると、道路のような小さい道を造りながら走行する赤いミニ四駆…「ウェルシュ」と呼んでいた機械が現れたのだ。
『…やれやれ。なるべく秘密にはしておきたかったが…致し方ない』
「し、喋ったっ!それにこの声……」
『ああ、私は自分の意識をベルトにも移せるからね…初めまして。私は「ウェルシュ」、あの怪物と、仮面ライダーの専門家さ』
上部にあるディスプレイで器用に笑顔を見せ、なおかつ流暢な言葉で自分たちと会話するミニ四駆に戒や琴音たちを除く全員が驚きを露わにしており、霧夜も冷静を装っていたが驚きを隠せないでいた。
そんな彼女たちの反応にウェルシュは楽しそうな表情を見せると、話を始める前に忠告をする。
『さてと、先ほどのことを説明する前に一つ約束がある。今から私や戒の言うことは他言無用だ。他の人はもちろん友人や家族にも、だ。約束出来るかね?』
その問いかけに全員が力強く頷くとウェルシュは質問を促す。
『では、まずは何を聞きたい?』
そして代表として斑鳩がウェルシュに全員が思っていたであろう疑問を投げかける。
「それでは、まずはあの怪物のことです。人が変身したように感じましたが……」
『あれはエラー……ミラージュカセットによって、人間に宿っている精霊の魔力をその身に融合させた
「そしてそれと戦い、人を守るのが俺の…仮面ライダーの役目だ」
ウェルシュの話を続けるように戒は一連の話を迷いなく話し始めた。
人間には遥か昔から己の内側に存在する霊的エネルギー『精霊』と『魔力』のこと、そしてそれを利用したミラージュカセットの存在、そして怪人エラーと彼らが起こす事件『救済』のことなど彼らが知っていること全てを……。
やがてしばらくすると戒とウェルシュの話が終わる。
話を聞き終えた霧夜は腕を組んだまま、妖魔とは違う脅威の存在のことを考え出した。
「成るほど、我々が知らなかった未知の敵か…………門矢君、幸村君、リア君と千歳君、俺のわがままだが聞いてくれ」
霧夜の、いや忍学科のメンバーたちの決意を秘めた眼差しに戒や琴音たちは何も言わず先を進めるように促す。
「我々、忍学科は君たちの力を借りたい……どうか、力を貸してくれないか?」
その言葉を聞かなくても、戒たちの答えは既に決まっていた。
「もちろん、断る理由なんてありませんしね」
「宜しくお願いします!」
「お願いします」
「……」
『これから我々はチームだ。よろしく頼むよ』
五人の言葉を皮切りに空気が緩んだような、安堵したような雰囲気が流れた。
【門矢 戒 所属:政宗探偵事務所兼国立半蔵学院通常科→忍学科所属】
【幸村 琴音 所属:政宗探偵事務所兼国立半蔵学院通常科→忍学科所属】
To be continued……。
あー、長い……文章が長くなってしまうのも反省点ですね。
今回の話で出た『シェアリングナイトフォース』はメタ的に言うと、クロスしたキャラを弱くさせないための配慮です。詳しくは次回の番外編で。
オリキャラたちが出ましたので、タグに追加しておきます。ご迷惑をおかけして申し訳ありません(ペコリ)
霧夜先生が「君」づけなのは出会って間もない生徒なら言いそうだなと思ったので、次回には名前で呼び捨てになります。
ポーントルーパー(戦闘員)のセリフは完全にネタです(おい)、適当に思いついた言葉を喋らせています。
てなわけで、本日のエラーリストです。ではでは。ノシ
メタリック・エラー CV中原麻衣・竹本英史
将来を約束された半蔵学院の元陸上部の女子が融合変身した姿。細身だが鈍く光る鉛色のボディ、頭部には銀色のモノアイがある。左足に包帯のような帯が幾重にも巻かれているのは原因となった怪我があるから。
鎖つきの鉄球による攻撃と身体中から発射される礫が武器、パワーに優れているが攻撃は普通に通るため、防御力が高いわけではない。
両親からも期待されていたが、練習中に足を怪我しその時の両親の表情を見たことにより裏切られたと思った彼女はエラーの力を手に入れた後、声に従って裏切った場所…自宅、病院…そして学校を襲おうとした。
余談だが両親が辛そうな表情をしたのは「娘の大好きな陸上が出来なくなるから」であり、「期待外れだったから」ではない。
ちなみ、半蔵学院が休みになったのは戒の策略だが飛鳥たちがいたのは完全に予想外だったので実は内心焦ってた。