仮面ライダーARTHUR 王の名を持つ仮面の騎士   作:名もなきA・弐

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と言う訳で第一話です。閃乱カグラを知らない人のために人物の描写をしているため、長くなってしまいました……。
タイトルの通り、飛鳥が仮面ライダーと再会します。


COMBO1 再会×変身

かつては人がダーツや酒を楽しむ場だったクラブ……数年前から使われなくなったその場所で、四つの影があった。

 

『ミナサンに大変残念なお知らせがありますニャ。数日前からプレイヤーとして活動していたハイドが昨夜、GAME OVERとなりましたニャ』

 

言葉を発しているのは人間ですらない存在だった。

黒い体色に茶色い縞々模様が付いた短い手足と尻尾、目にあたる部分は赤いバッテン、口はギザギザの白い歯をむき出しにしたお世辞にも可愛いとは言えない猫のぬいぐるみだった。

 

『はぁっ!?どういうことだ「ミケネ」!ハイドが倒されただとっ!?俺たちに勝てる連中が存在するわけ…』

『仮面ライダー……』

 

背中、両肩にはエンジンのパイプが設けられたレース用の赤いカートが人型になったような怪人が黒猫の名を呼びながら荒々しい口調で問い詰めようとするが、それよりも先に言葉を発した存在がいた。

童謡に登場するような魔術師の格好をしているが炎を模した王冠、真っ赤な身体と黒いコートには極彩色のクジャクの羽根を装飾品にした怪人は言葉を続ける。

 

『我々のゲームを邪魔出来る存在がいるとしたら、それは彼らしかいません…その程度のことは貴方でも分かるはずでは、「レッドゾーン」?』

『……何が言いてぇんだ、「フェニックス」』

『わざわざミケネを問い詰める必要はないということですよ。それに撃破されたのはまだ一人、焦る必要は…』

『ざっけんなっ!!救済を望む連中が、「仲間」が一人倒されたことには変わんねぇだろうがっ!?これ以上ふざけたことをほざくなら…』

 

拳を握りしめて魔術師『フェニックス・エラー』を感情のまま殴り飛ばそうとする『レッドゾーン・エラー』…しかし、それを止めた影があった。

 

『やめなさい。ミケネの「目」がある…この意味が分かるでしょ?二人とも』

 

全身から植物を生やした緑色の狩人『ユグドラシル』は気品のある女性の声で二人を静止させると、ミケネに確認を取る。

 

『それで、今活動しているプレイヤーは?』

『ニャーゴ…昨日キミの渡したカセットが「メタリック」として活動しているニャ』

『そう、なら監視は任せるわ。ミケネ』

 

「仰せのままに」と短い手足でおどけるようにお辞儀をすると、そのまま姿を消した。

ユグドラシルは二人に目配せをすると、左腕に装着していたデバイスからカセットを抜き取り、融合を解除すると続く形で二人も融合を解きその場から立ち去った。

 

 

 

 

 

一体あれは何だったのだろう……。

昨夜のことを、昼の時間に飛鳥は忍学科の教室でぼんやりと考えていた。

自分を助けてくれた彼が通報したであろう警察が駆けつけると、飛鳥は事情を説明した。

その際、自分のことや怪人のこと、仮面の騎士…仮面ライダーだったかのことは伏せておいた、どう説明したら良いか分からない上、信じてもらえるか怪しいと思ったらからだ。

この時話を聞いていた女性の刑事は「相変わらずあの子はカッコつけて」とぼやいていたが何か事情を知っている彼女はそこで打ち切った。

 

「飛鳥さん?大丈夫ですか」

 

心配そうに彼女に声をかけた少女の名は『斑鳩』…忍学科の三年生にして、クラス委員でもある彼女は前髪を切り揃え、黒い長髪が印象的な少女である…彼女も飛鳥と同じ、それ以上にプロモーションを学生服で包んでいた。

事情を登校した飛鳥から聞いた彼女は妖魔とは違う敵に警戒心を抱いたが、何よりも後輩であり、

 

「あ、はい。大丈夫です、ただちょっと……」

 

心配を掛けないよう明るく取り繕う…彼女が考えているのは、仮面ライダーのことだ。

自分を知っているかのように呟いたあの言葉が何だったのか…昨日からずっと考えているのだ。

 

「あんま気を詰めんなよ、飛鳥。辛かったらアタイたちにドーンとぶちまけなっ!!」

「かつ姉…うん、ありがとう!」

 

そこらの男子よりも男らしい言葉を放ったのは斑鳩と同じく三年の長い金髪と制服の胸元を開けている活発な少女『葛城』に飛鳥は嬉しく思い彼女本来の明るさを取り戻した、

 

「…っし!そうと決まったら飯だ、飯っ!二人もそろそろ帰ってくるころだろうしな」

「そうですね、昼食の準備をしましょうか…飛鳥さん、お手伝いをお願いしてもよろしいですか?」

「はいっ!」

 

元気よく返事をすると、飛鳥は斑鳩と共に奥へと向かって行った。

『彼』との出会いまで、後??分……。

 

 

 

 

 

「今日、学校が休みだったのが幸いしたな」

 

そう言いながら、黒いズボンとシャツに身を包み、黒い手袋をつけた少年『門矢戒』は不敵な笑みを浮かべながら警察から借りた資料に目を通した。

 

「良く言うよ、その原因を作ったのはカー君じゃん」

「…学校にサイバーテロを仕掛けろと言われた時は流石に驚きました」

「ですが、兄様らしいと言えば兄様らしいです」

 

戒を「カー君」と呼ぶ、飛鳥たちとは色々と正反対の体型を持つ小柄な少女『幸村琴音』は頬を膨らませながら文句を、タブレットを持った二本のアホ毛の少女『千歳』は憮然と、対照的にスレンダーな身体の少女『リア』は口元に笑みを浮かべて言う。

 

「でも、本当に来るのかな?」

「来るさ」

 

話しの本題へと入った琴音の疑問に、戒は自信を持って答える。

 

「美海姉さんからの情報で確信が持てた。犯人は裏切られたと感じた場所を襲う…そして、残った場所は、『ここ』だ」

「じゃあ、最初に自宅で襲われたあのおじさんたちは…」

「庇っているんだろうね。大切な娘だからか…それとも、彼女に何か言ってしまったか、定かじゃないけどさ」

 

そこで話を打ち切ると戒は愛用のボーラーハットを被り、三人に指示を出す。

 

「琴音は俺と一緒に、リアと千歳は先に別ルートで向かってくれ…じゃ、『政宗探偵事務所』、活動開始!…てね」

 

最後におどけて言った言葉と共に、リアと千歳は姿を消し、戒と琴音は外に出ると西洋甲冑のような赤いバイク……ドライグハートの方へ向かった。

『少女たち』との出会いまで、後?分……。

 

 

 

 

 

「『柳生』ちゃん、早く帰ろうよ!」

「分かっている、走ると危ないぞ、『雲雀』」

 

校庭では三つのリボンを付けた桃色の髪の少女と、白く長い髪をリボンでツインテールにした少女の二人が走っていた。

飛鳥や斑鳩たちと同じく、忍学科に所属する少女、雲雀と柳生である。

一見正反対な二人はとても仲が良いが、仲が良すぎて『そっちの気』があるのでは?と一部から疑問を持たれているが本人たちは特に気にしていない。

忍務を終えた雲雀は早く仲間たちの元へ帰ろうと駆け足で、柳生はそんな彼女を窘めるように少し遅れる形で歩いていた。

やがて校門の前に差し掛かった時、雲雀の目に『ある人物』が入った。

本来なら休日で誰もいないはずの校庭に、半蔵学院の制服を着た一人の女子生徒が立っていたのだ。

その生徒は俯き視線を地面に向けながら、何やらぶつぶつと呟くと、時折左足をさすっていた。

一般の生徒だと判断した雲雀はそのことを疑問に思いながらも心優しい彼女はその女子生徒に近づき、声を掛けた。

 

「あのー、大丈夫ですか?」

「どうして、どうしてよ……」

 

雲雀に声を掛けられた女子生徒は返事をせず、ただぶつぶつと呟いているだけだ。

明らかに様子がおかしい彼女に、雲雀は困ったように柳生に視線を向けるが当の本人はいつもと変わらぬ表情で雲雀の様子を見ていた。

やがて、女子生徒はスカートのポケットから『ある物』を取り出した。

 

「どうして、私を裏切るのよおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!どうしてえええええええええええええっっっ!!!!」

 

顔を上げ、あらん限りの声で叫び血走った目で周囲を当り散らしながら彼女は「オーラを纏い武器を持った戦士」がデフォルメされたイラストのカセットテープのスイッチを押し起動させた。

 

【LOADING…GAME START…】

 

闇を思わせるような暗い電子音声が鳴ると、等身大のカード状のデータが女子生徒の身体に重なるよう包み姿を変えた。

細身ながらも鈍く光る鉛色のボディ、頭部には銀色のモノアイ、何より特徴的なのは左足に包帯のような帯が幾重にも巻かれている。

 

『やっとか!やっと俺の出番だなっ!!良いぞ、破壊だ、破壊の時間だっ!』

『あっははははははは!そうね、壊しましょう!壊して壊して、壊しちゃいましょう!』

 

彼女の欲望『怪我をしない鋼鉄のような丈夫な身体』をモチーフにした怪人『メタリック・エラー』は鎖のついた鉄球を召喚、手に持つとそのまま地面へと叩きつけた。

衝撃によって土煙が舞うと、メタリックの鉄球が土煙で咳き込んでいる雲雀を襲うが柳生は番傘を広げて防ぐも、強烈な一撃で雲雀ごと吹き飛ばされてしまう。

騒ぎを聞きつけた飛鳥、斑鳩、葛城は校庭で暴れているメタリックを見て驚愕する。

 

「あれが…飛鳥さんの言っていた…!」

「おいおい、随分と派手に暴れるじゃねぇか」

「……!」

『あら?健康的な人間が今度は三人も…あっははははははっ!!ぶっ壊してあげる!!』

 

襲い掛かってくる鉄球に飛鳥たちは散開し標準を絞らせないようにするが笑いながらメタリックは鉄球を何度も鉄球を地面に叩きつけ視界を奪うと、鉄球を思い切り振り回し吹き飛ばす。

 

『あれれ?もう終わり?じゃあ壊れちゃって!あははははっっ!!!』

『壊せっ!壊せっ!壊せっ!破壊、破壊しろぉっ!!』

 

衝撃で身動きを取れなくなった飛鳥たちが身構えた時だった……赤いバイクが猛スピードでメタリックと彼女たちの間に割って入った。

 

『なっ!?……きゃあっ!!』

 

突然現れたバイクに動揺したメタリックが突如現れたリアの剣撃と千歳の銃撃によって怯まされている間、運転手である少年はゴーグルを上に上げ、ヘルメットを外すと中性的な顔が現れる…戒だ。

全員が全員…突然現れて、自分たちを守ろうとするように立ち塞がる少年に動揺していたがただ一人、飛鳥だけは彼に既知感を覚えた。

 

(あのバイク…!もしかしてあの子が?)

 

見覚えのあるバイク…ドライグハートから琴音と共に降りると、リアと千歳は二人の両側に並び立つ。

 

「どうやら、完全に取り込まれているみたいですね」

「カー君!」

「わかってる…良いぜ、止めてやるよ。俺が、力づくでな…ウェルシュ!」

 

琴音たちを下がらせると、戒の声と共に赤いミニ四駆…ウェルシュは道路を作り、走行しながら『ある物』を投げ渡す。

戒がキャッチしたそれは赤を基本カラーとした四角いパッドのような奇妙なバックル…中央には四角いディスプレイを挟んで赤と緑のボタンが配置され、上部には何かを挿入するスロット、右側にはグリップとトリガーがあるそれは、見る人が見ればゲームパッドのように見えるだろう。

それ…『アーサードライバー』を腰に軽く当てるとシルクの生地が編み込まれた赤を基調としたベルトが伸び、腰に巻き付いた。

そして戒は懐からもう一つの、小さい物を取り出した。

 

『何っ!?それはっ!!そうか、貴様がっ!!』

 

それを見た男性の人格は敵意をむき出しにする。

戒が取り出した物は他でもない、自分たちより前に開発された純正品『ミラージュカセット』だったからだ。

シャープなデザインをしており、全体的に綺麗な印象を与えるカセットテープだ。

余談だが区別をつけるため相手が使用したカセットは今後『エラーカセット』と呼称する。

メタリックの反応に気にせず戒は赤いドラゴンのファンシーな絵柄をした赤いミラージュカセット…バトルゲームアプリを宿した『ドラゴンカセット』のスイッチを起動した。

 

【DRAGON!!】

 

起動音声と共にバックルの左側に位置するスロットに装填する。

 

【HENSHIN ARTHUR! GAME START!!】

 

すると、和ロックのようなノリの良い待機音声が周囲に鳴り響き、それを背景に戒は左手に軽く力を込めると、それを斜め前に突き出し残った手はバックルのサイドグリップを握り、トリガーに手を掛ける。

 

「……変身!」

 

叫びと同時にトリガーを弾くと四角いディスプレイにドラゴンの赤いグラフィックが映った。

それと同時に、戒の身体を昆虫のような赤く丸い複眼に黒と紫のアンダースーツが全身を包み、カセットの絵柄に描かれた赤い竜…自身の精霊を具象化した『霊装』が召喚されると、パーツ状に展開されてスーツを纏った戒の上に装着された。

 

【RIDE UP! DRAGON! 牙の連撃!RED KNIGHT!!】

 

電子音声と共に現れたのは門矢戒と言う少年ではなく、赤を基調とした『騎士』がそこにいた。

左右に配置されたドラゴンを模した赤い装甲と牙のような白いパーツ。

マスクの上部に装着されたV字型のホーンが生えたドラゴンのバイザーから竜の騎士を彷彿させ首元に出現した赤いマフラーが変身の余波で靡く。

 

「行くぜ、ウェルシュ!」

『OK! Start Our Heart!!』

 

飛鳥を助けた騎士、『仮面ライダーアーサー ドラゴンリンク』はメタリックを指さし、告げる。

 

「お前の物語、ここで終わらせる!」

 

アーサーとメタリック・エラーの…戦闘の幕開けだった。




取りあえず、変身まで。後半から戦闘パートです。
キャラクターを描写するのが難しいです…勉強勉強。

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