仮面ライダーARTHUR 王の名を持つ仮面の騎士 作:名もなきA・弐
時系列はESTIVAL編より前です。それでは、どうぞ。
商店街のある場所に位置する定食屋は、葬式会場の入口となっていた。
この定食屋は他の店とは違い、金のない人たちにも食事を出してくれること人情派として知られている。
多くの人が集結していた場所を見つけた琴音は親父の生前の人徳に改めて驚いていた。
「すごいね、こんなに人が集まるなんて…」
「当たり前だろ。客の好みに合わせて作る定食屋なんてないからな、親父さんの人徳なんだよ」
琴音の言葉に戒がそう返すと親父の奥さん、つまり定食屋おばちゃんが戒たちに気付き、近づいてくる。
「あらあら、戒君も来てくれたのね…」
「恩人の葬式に顔出さない恥知らずなんていませんよ、おばちゃん」
「よしてよ、恩人なんて大げさねぇ。あの人は明るいのが好きだったから、今日は涙なんかより笑顔で迎えてあげてね」
そう言っておばちゃんがそこから離れると、ややあって両備・両奈・忌夢が葬式場に入ってくる。
戒と両備は無言でお互いに近づくと軽く会釈する。
「惜しい人を亡くしたな、両備」
「ええ、この街の宝が…一つ減ったわね……」
二人が、会話している横で琴音が両奈に話しかける。
「両備ちゃんも…?」
「うん、あの人には両奈ちゃんたちもお世話になってたから、知らせを聞いてからしばらく部屋から出てこなかったの」
実はここの定食屋の親父には両備たちもお世話になっており、当時中学生でもあった彼女たちの姉を「お手伝い」という名目で雇ってくれたことがあるのだ。
「まぁ、ボクたちもあいつらの意思を汲んで親父さんを迎えてあげよう」
「そうだね~」
忌夢と真希奈はそう言って悲しんでいる戒と両備を見つめた。
やがて葬式会場に集まると、そこから間もなくして葬式が始まり、坊さんがお経を読み始める。
だが。
「なんまいだ~ゼンマイだ~玄米だ~インベーダ~」
そのお経がどうもおかしかったが全員はそれをスルーしていた。
その間もヘンテコなお経は続き、ふと戒が棺のほうを見ると突然半透明の親父が棺の中から起き上がってきた。
そしてジロリ、と遺族たちを睨みつける。
それを見た戒は、震えながら琴音の肩をバシバシと叩く。
「ちょっ、何カー君、痛いって…!」
「な、なぁ琴音…あ、ああああ、あれ……」
「えっ?何?」
戒は震えながらも半透明の親父に指を指すも琴音は首を傾げるばかりだ。
恐らく彼女には見えていないのだろう。
「いやあれ!!おいあれぇっ!!!」
「戒君、何騒いでるの~?静かにしなさい~」
呂律が回っていないが、戒はそれでも異常を伝えようとするが真希奈からも注意をされてしまう。
「いやいやいや、あれだって!!あれよ、あれぇっ!!」
「おい両備、静かにしろ。何騒いでいるんだまったく…」
戒が隣を見ると、両備も自分と同じようなことをして忌夢から注意を受けていた。
冷や汗を流している彼女は、顔をこちらに向ける。
「ひょっとしてお前…アレ…見えてる?」
戒がそう聞くと、両備はこちらを向き、「あんたも?」といわんばかりに棺のほうを指差すと戒は小さくうなずいた。
「な、なななな何よ、何なのよアレ、ひ、ひょっとしてりりり、両備たちだけに見えるとかそういうアレなの?」
「いいいいやそういうアレじゃあねーと思うよ両備、大丈夫だろ」
両備が呂律の回らない口調で戒に問いかけるも、「そんなわけない」と両備の言わんとしていることを否定する。
「だだだ大丈夫じゃないわよ、そういうアレじゃなくてああいうアレでしょ、だってアレおおお親父さんじゃない」
「そんなわけねーだろ!!親父さんは死んだんだよ!!親父さんの葬式だよこれ!親父さんはあんな半透明じゃなかっただろ、もっと物事ははっきりいう人だったろ!!アレだよ、別人だよ!!」
「そっか、そうよね、親父さんははっきりした人だった。半透明じゃなかったわね」
二人は目の前で起きている現象にしばらく言い争っていたが最終的に「親父さんははっきりした人だったからあの半透明な人は別人である」と言う戒の言葉でとりあえず二人は落ち着いた。
だが当然と言うべきか必然というべきか、両備は不可解なことに気づく。
「つーかさ、半透明の時点でおかしくない?親父さんかどうか以前に半透明って何よ?おかしいじゃない」
「じゃあ親父さんでいいだろ。ここぞという時は優柔不断だっただろ、半透明だっただろ?」
「そう言えばそうだったわ、あの時ははっきりしてなかった。半透明だったわね」
最終的に、「親父である」という結論に二人はようやく落ち着くことが出来た。
しかし。
「……ていうか親父さんなら、猶更おかしくない?何で死んだ親父さんが半透明でこんなとこにいるのよ、おかしいでしょ」
「そりゃあ…あれだろ、お化けだからだろ?」
「そっか、お化けか」
「「……」」
自分たちで出した最終結論に沈黙してしまう二人。
そして。
「「…っ!!!!」」
あれがお化けだとわかった途端、戒と両備は一目散に入り口から逃げようとするが、長時間正座していたのと恐怖で足が震えたため派手にすっ転んでしまう。
「ちょっとカー君、両備ちゃん!!何してるの!!静かにして!!!」
「トトトトイレに、ちょっとトイレにいいいいっ!!」
「ちょっとバ戒っ!!あんた何足引っ張ってんのよ、手を離せええええええええええええええええええええええええっっ!!!」
琴音の注意を受けながらも戒は両備の足を掴みながら「トイレ」と言う。
両備は自分の足を掴んでいる戒に文句をぶつける。
そこで二人はハッとして棺のほうを見ると、半透明の親父がじっと二人を睨み付けていた。
(やっべええええ!!!親父さんこっち見てる、すごいこっちガン見してるぞ!!!)
(目を合わせちゃ駄目!!気づいてないフリ、気付いてないフリ!!!)
しかし、そんな戒と両備の考えとは裏腹に親父はゆっくりと、しかし確実に、戒たちの方へ歩いてきた。
「どうすんのよ、こっち来てる!!親父さんこっち来てるわよ!!!」
「死んだふり、死んだふりしろ!!!」
「いや死んだふりって、むこうはマジで死んでるじゃない!!本職じゃない、通じるわけが…」
二人があたふたしている間にも親父との距離は確実に縮まっていた。
そして半分ほど近づいたところで親父が突然ピタリと足を止める。
親父の目線の先には遺族の方々が座っていた。
だが、良く見てみると、葬式中にも関わらずチャラチャラした青年がヘッドホンで音楽を聴いており、母親がそれを注意しているという光景だった。
それを見た親父はゆっくりと青年のほうへ近づいていき、そして……。
「ぶほぉっ!!?」
思いっきりブン殴った。
ヘッドホン青年は式場の壁が凹むほどの勢いで叩き付けられ、意識を失ってしまった。
「タツ?どうしたのタツ!!?……すいません、息子が急に具合悪くなったみたいなので…失礼します」
そういって母親にかつがれながらDQNは式場を後にした。
一部始終を見てしまった戒と両備はおそるおそる親父のほうを向くと、そこにはサングラスをかけ、フィンガーグローブを装備し、葉巻を咥えた親父がボキボキと指を鳴らしながらこちらを向いていた。
その瞬間、二人はあっという間に自分の席へ戻る。
「あれ?両備ちゃん、トイレ行くんじゃなかったの?」
「い…いや…ひ、引っ込んだわ…」
両奈の言葉に両備は震えながらも大丈夫という返事を返す。
「引っ込んだって全身震えているよ。体に悪いから我慢しないほうが良いよ?」
「い…いや…大丈夫だから、引っ込んでて…」
琴音の言葉に戒が返事を返し、黙らせる。
そこで二人は、ある結論に達してしまった。
親父は、自分の葬式がきちんと執り行われるようにあの世から舞い戻ってきたのだと。
しかもその証拠に、先ほどまで居眠りをしながらヘンテコお経を読んでいたお坊さんの頭に、葉巻を擦り付けていた。
その様子を見た戒と両備は…。
((親父さんに祟り殺させる!!!))
と、全身から冷や汗をダラダラと掻いていた。
(冗談じゃねーよ!!俺はあの気のいい定食屋の親父さんに別れを言いに来たんだよ、あんなハードボイルドな怖い人に会いに来たわけじゃねーんだけど!!!)
お坊さんが熱さでのた打ち回っている光景をスルーしながら戒が心の中でツッコム。
両備もまるで別人のような変わった親父に警戒し下手な行動は慎もうと思った。
しかし……。
「あの、次の焼香君たちの番ですよ」
「へ?すいません、今なんて?」
自分に話しかけてきた遺族に戒がもう一度問いかける。
「いや、ですから焼香の順番。もう遺族の方々も終わったので…」
どうやら戒たちが親父にビビッている間にも、いつの間にか焼香の順番が回ってきてしまっていたらしい。
「ちょっと、どうするのよ?焼香の順番が…」
「ふざけんなよ…この距離でもすでにちびりそうだってのに、あんな間近でゆったりアロマテラピーできるわけねーだろうがっ!ケツから別の香が香ってくるわ!!」
あまりの異常すぎる空間と展開に普段冷静な戒はテンパってしまい、良く分からないことを言ってしまう。
「そもそも焼香ってどうやってやるんだっけ?前に行って粉パラパラすんのは覚えてんだけど…」
「バッカ!!!あんたそんなことも知らないの、三回おでこに粉持っていってあれをあれしてあれすんのよ!」
「後半あれしか言ってねーじゃねーか、お前もあやふやじゃねーか!!」
「焼香台の前に行けば出来るわよ、あんたとは違うのよ!!!」
「じゃあお前が先に行け!」・「ふざけんなあんたが行け!」などと二人が不毛な争いをしている中、突然琴音が席を立ち上がった。
「…っ!ちょっと待て琴音、早まるな!」
当然戒はそんな琴音を止める。
もし琴音が粗相をしでかしたら親父がどうなるか分からないからだ。
最も、琴音からしたら戒の行動は理解出来ない。
「えっ、早まる?何のこと?真希奈さんがやり方あやふやだって言うからお手本見せようかと思って」
「出来るのか、やれるのか!?絶対しくじるなよ、必ず生きて帰って来いよ!!!」
「バカにしてるの?まあいっか、真希奈さん、良く見てくださいね」
戒の言動に琴音は頭の上に「?」を浮かべながらも焼香台の前へと向かって行った。
①遺族と坊主に一礼
「まず、焼香台の前に行き遺族とお坊さんに一礼」
②遺影に合掌
「焼香台の前に立ち、遺影に合掌」
③左手に数珠、右手に抹香をつまみ、額におしいだき香炉へ落とす。これを三度
「左手に数珠、右手に抹香をつまみ、額におしいだき香炉へ落とす。これを三回繰り返す」
④もう一度遺影に合掌、遺族に一礼
「最後にもう一度遺影に合掌、遺族に一礼して」
「これで終わり。真希奈さん、思い出せました?」
「ミッションコンプリート!お前ならやれると信じてたぜ。今日は祝勝パーティだな、おめかしして来いよ!!」
「さっきから何なの、もしかしてナメてるの?」
無事に戻ってきた琴音を手放しで褒める戒、だが事情も知らない琴音は彼に対して苛立ちを露わにする。
「両備から言わせればまだまだだけど、少しはまともなツラになって帰ってきたんじゃないの?」
「焼香一つでどこまで褒められるの!?どれだけ駄目な奴だと思われてるの私は!!!」
たかが焼香なのに歓迎をした両備に琴音は心中穏やかではなかった。
だが、戒たちにとってはあんな厳つい親父の前で粗相の一つもせずに帰ってきた琴音がとても頼もしく見えたのだ。
そのおかげか、親父の顔が心なしか穏やかになっているように見える。
…このまま行けば…。
二人がそう思っていると……。
「よ~し、それじゃあ、今度は私が行って来るよ~」
「真希奈姉さん!琴音のやったようにするんですよ、しくじらないでくださいね!!」
「任せて戒君、ばっちり頭に叩き込んだから~」
そういって真希奈はゆったりした動きで焼香台の前へと歩いていった。
①遺族と坊主に一礼
「まずは、え~と…意外と坊主に一撃」
「はなから丸々違うだろうがああああああっ!!!」
こともあろうか真希奈は坊主の脳天に目掛けてチョップを放った。
可憐な外見から想像も出来ないあまりにも鋭い一撃に坊主の鼻から血が噴出する。
その光景に戒は悲鳴をあげる。
②遺影に合掌
「イエーイ!!さあ、皆さんもご一緒に~!」
『イエーイ!!』
「い…イエーイ……」
「イエーイで合唱じゃねええええええ!!乗らなくていいから坊さんたちっ!」
なぜか真希奈に合わせてノリノリで合唱する坊主(死に掛け)と遺族に注意する戒。
③左手に数珠、右手に抹香をつまみ、額におしいだき香炉へ落とす。これを三度
「で、次が……とりあえずこんな感じだったかな~?」
そう言うと真希奈は坊主の頭を掴み、香炉に三回叩き込んだ。
「坊主うううううううううう!!!」
坊主の悲惨な姿に叫ぶ戒。
④もう一度遺影に合掌、遺族に一礼
「イエーイ!!」
「い…イエーイ……」
「坊主ううううううううううううううううう!!!!!」
そして散々粗相をやらかした真希奈がやりきったような顔で戒たちの元へ戻ってきた。
「うん、こんな感じかな~」
「あなたは一体琴音の何を見てたんですか!!誰が坊さんの頭にバッチリ叩き込んでこいって言ったよ!!!」
「ずっと座りっぱなしで足が痺れちゃって~……」
「足関係ないでしょ、痺れてるのはお前の頭っ!!!」
真希奈がやらかしてしまったせいで親父の機嫌が見る見るうちに悪くなってしまい、坊主に葉巻を押し付けるという八つ当たりをする。
その際「何で坊主に八つ当たり!?」と戒がツッコンでいたが…。
両備は葬儀を立て直すため、ある作戦を立てる。
「フローチャートに作業を一つ加えるわ!『①遺族と坊主に一礼』、その後に、『②坊主を蘇生』、その後に焼香!!!」
「じゃあ次は両奈ちゃんが行って来るよ!」
そういって両奈が自信を持って立ち上がる。
「両奈!?大丈夫なの、いけるの?信じていいんだよね?」
「うん、絶対ぜーったい大丈夫!さっきのフローチャート通りやればいいんでしょ」
両備を安心させるように、そういうと両奈はおもむろにチョビ髭を生やした遺族の隣に立つ。
①遺族を一礼で坊主
「まずは、遺族を一礼で坊主…」
「そっから間違ってるけどおおおおお!!?」
一礼をしながら遺族が着けていたカツラを奪い取るという暴挙を行った。
当然両備のツッコミが炸裂する。
「何フローチャートまで勝手にいじくってんのよ!のっけから一歩も前に進んでないでしょうが!!もう良い、焼香はしなくて良いから坊主だけ蘇生して戻って来なさい!!!」
「はーい!」
そう言うと両奈は気絶している坊主の頭に遺族から奪い取ったカツラを、ぱさりと置いて帰ってきた。
「何を蘇生させてんだああああああああああああああ!!!?」
坊主の蘇生させるポイントを間違え満足そうな表情で戻ってきた両奈(姉)にシャウトする両備(妹)。
「誰が坊主の毛根蘇生させてこいっつったのよ!?さっきと何にも変わってないじゃない!!!頭にただカツラ乗っただけじゃないっっ!!!」
「絶対変わってるって!両備ちゃんよく見てよ、心なしか安らかな表情になっているでしょ?」
「良いことあって良かったわね、お坊さん…じゃないわよっっ!!!」
真希奈に続いて両奈までもやらかしてしまったため、親父の顔はどんどん濃くなり、坊主の頭部に乗っかっているカツラを、ライターを使って燃やし始めた。
坊主が苦しんでいる姿を見て戒も両備も顔を青ざめる。
「おい、親父さんもう完全にご立腹だよ!!!伝説のスーパーサイ親父になってるぞ!!!」
「もうやめてっ!!坊主はもう苦しんでいるから、充分苦しんだからぁ!!!」
叫びながらも、もうこうなっては坊主の救出を最優先にすべきだと両備は思い、坊主の蘇生を行ってから、遺族と坊主に一礼に手順を変更しようとする。
だがここで想定外のことが起こってしまった。
「おいちょっと待て、遺体が増えてるぞっ!」
戒が指差す先には、何と先ほど両奈にカツラを取られた遺族が白目を向いて倒れていた。
「何でヅラ取られて死んでんのおおおおおおおおおっ!!?」
あまりにも想定外の出来事にシャウトせざるを得ない両備。
「どんだけメンタル弱いのよっ!!てかなんで全員ガン無視?ヅラに気付いてない振りしてあげてるの、それが優しさなのっ!!?」
「……仕方ない、このままじゃあ親父さんの葬儀がめちゃくちゃだ。代表してボクが親父さんの葬式を責任持って全て立て直してくるよ」
そう言うと忌夢は立ち上がり、焼香台の前へと歩いていった。
「忌夢…あんた…」
「とりあえず『①坊さんと遺族の蘇生』、その後に、『②坊さんと遺族に謝罪及び一礼』だ。まあ見ていてくれ、ボクは葬式には何回か行ったことがあるから」
この時の忌夢は、戒と両備の目には彼女が荒れ果てた大地を救う女神・救世主のように見えた。
「まずは坊さんの蘇生!!…あなたはここでお経読んでいてください」
だが、忌夢が蘇生させたのは坊主ではなくカツラがなくなってしまった遺族だった。
「いやそれハゲてるけど遺族っ!!」
坊主違いに指摘する両備。
だが、忌夢はそれを無視して次のステップへと進んでしまう。
「次は遺族の蘇生!!!…迷惑かけてすいませんでした」
そう言って遺族の座っていた座布団ににカツラを置いて謝罪する。
「それ遺族の遺族うううううう!!!」
両備は喉が枯れるぐらいの声量で叫ぶ。
そして、最終ステップへと足を踏み入れた。
「そして木魚だ」
「もうお坊さんを許してあげてください…」
しかし忌夢が置いたのは木魚ではなく、坊主の頭だった。
両備はもうそれしか言うことが出来なかった。
「好い加減にしろよゴラァ!!どんどん状況が悪化してっているでしょーが!!!」
「つーかあの遺族なんで言われるがまま坊主やってんの?」
明らかにわざととしか言いようがない忌夢の行動に戒が怒りを露わにし、両備は何も言わずお経を唱え、坊主の頭を木魚の代わりにしている遺族に疑問を挟み込む。
「何でも、ショックで一時的に記憶喪失らしくて…」
「喪失したのは頭ん中じゃなくて頭の上でしょうがっ!!!」
最後の砦である忌夢ですらまともに焼香が出来なかったため、もう親父の怒りは頂点になっていた。
近くにいた坊主も取られてしまったため今にも元気玉を放たんと言わんばかりのオーラが出てくる。
「ああああ、もう知らねぇ!!人の気も知らないで好き勝手しやがってっ!」
「あっ!待ちなさい、自分だけ逃げるつもり!?そうはさせるかっっ!!!」
「ちょっと何やってんの二人とも!まだ葬儀のと…」
もうやってられないと戒と両備は二人そろって式場を抜け出そうとする。
それを見た琴音が注意しようとしたが…。
ドサリ、と音を立て倒れてしまった。
「…こ、琴音……?」
同時に、両備を除く全員が白目を向いて倒れてしまう。
戒と両備は、恐る恐る親父の方向を向いた。
そこには…。
((た、魂質取られたあああああああああ!!!)
自身の周囲に魂を漂わせている親父の姿だった。
後半に続く。
何でか後編に続きました。魂を取り出されてしまった彼女たちはどうなるのかお楽しみください。
ではでは。ノシ