仮面ライダーARTHUR 王の名を持つ仮面の騎士 作:名もなきA・弐
NOVEL大戦とは別ベクトルで進行しているアーサーの番外編となります。所謂夏の劇場版のようなものですね。
では、どうぞ。
某国某所……そこに人知れず存在する研究所の内部に足を踏み入れる男性がいた。
建物全てが研究所として使用されている内部は鉄の臭気で充満しており目的があって侵入したがあまりにも酷い臭いに顔をしかめる。
「…奴らも派手にやったものだ」
纏わりつく鉄臭さを誤魔化すように一人ごちると、男性…青年と呼んでも差し支えのない人物がある場所を目指して歩く。
冷酷さを感じさせるその端正な顔立ちを持った青年は黒いコートを埃で汚しながらも進む。
やがて目が慣れて行くとあちこちには赤黒いシミが飛び散っており鉄の臭いをそれが原因だろう。
ここで何があったのかを青年は知っている、だがここで行われていた『実験』は彼の怒りを増幅させるだけでありこのような惨状も奴らの自業自得であることも理解していた。
そして、しばらく自分の目だけを頼りに薄暗い通路を進んで行くととあるプレートの前で足を止めた。
「第五実験室」とプレートに書かれた扉のノブに手を掛け、人間とは思えないほどの力で破壊すると壊した扉に目もくれず室内へと侵入する。
周囲に誰もいないことを確認すると、一台のパソコンに近づいて黒いタブレットとコードを繋ぐ。
そして、パソコンに内蔵されているデータの収集を始める。
『……マスター、「
「そうか、これで奴らも終わりだな」
懐から聞こえる少女の声に頷いた青年はタブレットをしまい、用のなくなったこの研究所から立ち去ろうとした。
その時……
「……」
扉の前には白いスーツを着た男性が彼の行く手を阻むように立ち塞がっていた。
しかし、スーツは所々赤黒い血で汚しており顔の半分は焼け爛れていて見るに堪えない…痛々しい容姿をしているのにも関わらず目の前の男性は無機質な瞳で青年を見ていた。
様子がおかしいこと、今まで人の気配がなかったことから青年はスーツの男性に対してある考えが思い浮かぶ。
しかし、それよりも先に男性が口を開いた。
「侵入者を、発見。こ、れより…排除を開始、します」
何処か無機質なような機械的な口調で喋る男性…だが声帯がやられてしまっているのかその声はとても聞き苦しく、無理に声を出しているようにも感じる。
「今頃再起動したってところか?だがもうここのラボは破壊されているぞ、機関の操り人形…いや、『財団X』」
「ターゲットの、言動、から組、織の中枢にいる、ことを確、認。警、戒レベル、を3、から、最大、レベル、に移行しま、す」
青年の言い放った言葉に僅かな反応を示した男性は左腕のスーツを破り、そこに装着された赤と白でカラーリングされた鳥の顔を模した腕輪が露わになる。
そして、右腕を腕輪の方に持っていく。
「A、■■、Z、■N」
潰れた声帯から声を吐き出しながら嘴のスイッチを押し込んだ途端、紫色の衝撃波と熱が放出されるとその姿を変えた。
ダークブラウンの体色と猛禽類を思わせるような特徴的な頭部から動物に詳しい人が見ればハゲタカのように見える怪人の姿……。
緑色の瞳をぎらつかせながらハゲタカの怪人は飛び掛かるように襲い掛かるが青年はそれを最小限の動きで避けると脇腹を蹴り飛ばす。
地面を転がりながらも、何事もなく起き上がる怪人に青年はコートの懐からある物を取り出した。
それは黒でカラーリングされたアーサードライバーであり、『彼』が所持しているのと比べて無機質な印象を受ける。
『プレイアブルドライバー』を腰に当て、自動的に伸びたベルトが巻き付くと今度は金色の飛龍がイラストされたエラーカセットを構えてスイッチを押す。
【WRATH!!】
「……変身」
今までとは違う少女の声でコールされたエラーカセット『ラースカセット』をスロットに装填すると、青年は左側のサイドグリップを握ってトリガーを引いた。
【RIDE UP! WRATH! 憤怒の雷!THUNDER SWORD!!】
電子音声が鳴り響くと、青いスーツが彼を覆うと
プテラノドンを思わせる翼のような白いマントと金色の頭部、狼の頭部を模した両肩の装飾となる。
「『仮面ライダームネノリ』……お前の巣食う悪、ここで断ち斬る」
宣言したムネノリにハゲタカの怪人は目の前のターゲットを殴り飛ばそうと拳を振るう、通常の人間ならば受け止めることも不可能な威力だがそれを片手で受け止め、捻り上げると怪人は回転して地面に倒れる。
起き上がろうとする怪人に先手を打つべくムネノリは胴体を思い切り踏みつけた。
それによりもろくなっていた地面は破壊され、戦場は主な研究を行っていた第一実験室へと変わる。
しかし、ハゲタカの怪人は痛覚を遮断している機能が仕組まれており並のダメージでは怯みもしない。
ハゲタカの怪人はすぐに起き上がりボクシングの構えを取る…恐らくベースとなった人間の記憶をなぞっているのだろう。
軽快なフットワークで詰め寄り、フェイントと共にジャブを織り交ぜたストレートを繰り出すがそれをバックステップで躱し、バックルに配置されている銀色のボタンを押す。
【ATACK ARTS! RAIKEN SHOURAI!!】
電子音声と共に彼の右手には金色と青の稲妻が起き、一振りの太刀へと変形する。
青の鍔と柄、銀色の刀身を持つ専用の日本刀『雷鳴刀剣 エレキノタチ』を両手で構えると、鋭いアッパーカットを放ってきたハゲタカの怪人をすれ違いざまに斬り捨てる。
『……!』
「遅い」
反撃に出ようとする怪人よりも速く繰り出されるムネノリの剣術に追い詰められていき、防御や回避を顧みない自身の最大の戦術でさえも満足に行えない。
攻撃を行おうとする瞬間を見逃さず、一瞬の隙を縫うように斬撃を浴びせる。
相手の一手を常に読んでいるからこそ出来る達人の域でありその斬撃は速いだけでなく鋭く重い…片手で武器を振るいながらも彼は水色のボタンを押す。
【MAGICAL ARTS! BIRBIRI GASSHA-N!!】
「はぁっ!!」
『っ!!?』
何億ボルトの電流がエレキノタチの刀身に纏わりつくと、ムネノリはハゲタカの怪人の胴体を斜め上に斬り裂いた。
雷と斬撃による強烈な一撃を受けた怪人は大きく吹き飛ばされるがそれでもなお立ち上がろうとする。
しかし、その足取りは覚束ない…蓄積されたダメージがついに己の身体を蝕み始めたのだ。
『マスター…』
「あぁ、これで決める」
エラーカセットの人格に力強く頷いたムネノリはスロットからラースカセットを引き抜くと、エレキノタチの鍔の部分になるスロットに装填する。
【CRITICAL ARTS! COMBO STRIKE! WRATH!!】
「はぁぁぁ……!!」
刀身に青と金色の稲妻が収束される。
そして、限界までチャージされたエレキノタチを振り下ろした。
「はああああああああああああっっっ!!!」
『っっっ!!!!』
雷を帯びたその斬撃は大きな衝撃波となり、必殺技『激怒雷牙』に直撃したハゲタカの怪人は大きく吹き飛ぶと実験室の大量の電子機器にぶつかり、断末魔をあげることもなくスパークした機器と共に爆発する。
そして、ムネノリは飛んできた自身の愛機へ乗り込むと連鎖するように大爆発をする研究所を後にするのであった。
愛機である戦闘機『スカイプテラー』から降りると未だけたたましい音を立てて爆発を起こしている研究所を遠くで眺める。
『マスター……これからどうします?』
「一先ずはこれを政府の連中に見せる、上手くいけば脅しの材料にもなるだろう」
相棒であるエラーカセット『ラース』の声にそう応えながら変身を解除した青年は研究所に背を見せて歩き始める。
――――「また、見たいな…あの子たちと星を……」――――
「あぁ…約束するよ、
愛する人との約束を胸に、青年の姿へとなってしまった彼『神楽坂
例え身体に異常を起こしてでも、彼の覚悟は…意思は決して歪まないだろう。
溢れ出る世界への憤怒を抑え、約束のために戦士は戦う。
「大罪」の名を持つエラーたちと……。
KAMEN RIDER MUNENORI……GAME CLEAR。
如何でしたか?所謂夏の劇場版ライダーの一人である『仮面ライダームネノリ』です。彼の正体は「ある作品」を知っていれば分かるかもしれません(多分)
今回聞いたことある単語があるかもしれませんが本編に絡むことは絶対にありませんのでご安心ください。
ではでは。ノシ
仮面ライダームネノリ CV斉藤壮馬
「神楽坂祐花」がプレイアブルドライバーと特殊なエラーカセット『ラースカセット』で変身するライダー。モチーフは「侍とプテラノドン、そして狼」
決め台詞は「お前の巣食う悪、ここで断ち斬る」
変身後は共通してややたれ目気味の緑色の複眼。青いスーツを素体としてプテラノドンと狼を模した金色の装甲を纏う。
合気道と古武術、プレイアブルドライバーで召喚した日本刀「エレキノタチ」の剣術と雷撃を纏わせて攻撃する。必殺技は青と金の雷を纏わせた斬撃「激怒雷牙」
専用マシンはプテラノドンを模した戦闘機「スカイプテラー」
名前の由来は活人剣の思想を提唱した『柳生宗矩』