とある提督コンビ達と艦娘深海棲姫物語   作:ユージンアームストロング

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プロローグ

1996年5月2日、とある産婦人科を目指して、一人の男が駆けて行く。

男の名は荒上 正臣(アラガミ マサオミ)。

今日、この日に彼は一児の父になる予定だ。

 

入り口到着した正臣は急いで受付に向かう。

 

 

正臣「すみません!荒上正臣です!妻は…治美は何号室に?」

 

受付「荒上 治美さんのご主人ですね?治美さんなら303号室で休まれていますよ。」

 

正臣「ありがとう!」

 

 

受付に礼を言った正臣は303号室に向かった。

 

 

コンコン

 

 

正臣「治美、居るかい?」

 

治美「入って」

 

 

部屋の中から治美の超えがはっきりと聞こえた正臣はゆっくりと部屋のドアを開ける。

 

 

治美「今丁度眠ったところよ。

いっぱい泣いたから、泣き疲れたのでしょうね…ウフフッ」

 

正臣「治美、その…間に合わなくてごめん…」

 

 

海軍士官である正臣は本来なら今日の出産に立ち会うはずだったが、それは叶わなかった。

上層部からの頼みで緊急の仕事をしていたのだ。

 

 

治美「なによ…改まって、大丈夫よ。それもわかって私は貴方と一緒になったんだから…」

 

正臣「ありがとう…」

 

治美「抱っこ…してみる?」

 

正臣「ああ…」

 

 

正臣は初めて自分の目で見る我が子をその手で抱いた。

 

 

正臣「軽い…な」

 

治美「当然でしょ…まだ生まれたばかりの赤ちゃんなんだから…」

 

正臣「そうだよな…ハハハ」ツー

 

 

正臣の目からは涙が流れていた。

 

 

正臣「ごめん…泣くつもりは無かったんだが…」

 

治美「別にそんなこと気にしないわよ。

それに…貴方がこの子の事で流す涙なんてもう見れないかもしれないわよ?」

 

正臣「からかわないでくれよ…」

 

治美「フフフッ」

 

 

しばしの沈黙の後、治美が口を開いた。

 

 

治美「名前…もう決めてあるんでしょ?」

 

正臣「ああ、色々考えたけど…もう決めてあるよ。

雅治…今日から君の名は荒上 雅治だ。」

 

 

正臣はその腕眠る我が子の頬を優しく撫でながら言った。

 

 

治美「雅治…いい名前ね。どんな子に育ってくれるんでしょうね?」

 

正臣「そうだな…俺の個人的な考えも多少は有るが…やっぱり自分の信じる道を突き進んで育ってくれれば、俺はそれで十分だ。」

 

治美「そうね…」

 

 

こうして新たに誕生した小さな命には『雅治』と名付けられた。

 

そして、その夜。

 

正臣は昼に残った仕事を片付けていた。治美と雅治は明日、退院する予定だ。

 

 

正臣「これでよしと。それにしても暇だな…まだ8時か…」

 

 

ピンポーン

 

 

家の呼び出し音がなる。

 

 

正臣「ん?誰だ?」

 

 

ガチャッ

 

 

?「よう。治美さんと雅治の退院は明日だろ?

今晩は飲み明かそうじゃないか。」

 

正臣「賢人か…そうだな。

でも、由美さんと桐人は放ったらかしで大丈夫なのか?」

 

賢人「ああ、あいつらならもう眠ってるよ。退院はしたが、由美は産後の疲れが出ているらしくてな、早めに体を休ませるようにしてあるからな。」

 

 

正臣の自宅を訪れたこの男の名は草壁 賢人(クサカベ ケント)。

正臣とは昔から同じ街で育った幼馴染であり、親友だった。

 

 

正臣「お!なかなか味が良さそうな酒を持ってるじゃないか?」

 

賢人「だろう?これを手に入れるには結構苦労したんだぞ?

その地方では名産の冷酒だ」

 

正臣「早速頂こうじゃないか。」

 

 

正臣は食器棚を開け、お猪口を取り出した。

お猪口に冷酒を注ぐと賢人の前に置く。

 

 

賢人「それじゃ、雅治の誕生と父親になった正臣に乾杯!」

 

正臣「乾杯!」

 

 

チンッ

 

 

正臣と賢人は最初の一口と一気に飲み干す。

 

 

正臣「予想はしていたが、やはり美味いな。」

 

賢人「ああ、俺もこれを飲むのは初めてだが、俺の目に狂いはなかったな。」

 

正臣「ところで桐人はどうだ?」

 

賢人「生まれてまだ1ヶ月も経ってないのが信じられんぐらいに元気だよ…さすがは俺の子って感じだ。」

 

正臣「そうか…未来ある子供達のために俺達大人が先導を切ってこの日本を守らないとな…」

 

賢人「何を急に年寄り臭いこと呟いてんだよ…俺達はまだ20歳だぞ?」

 

正臣「確かにそうなんだがな…やっぱり父親になると改めて俺は大人になったんだなと実感が湧いてな…」

 

賢人「ヘッ!そうかい。相変わらず真面目さんだなお前は…」

 

 

互いに他愛のない話を交わしながら夜は更けてゆく。

 

 

賢人「さて、そろそろ帰るか…」

 

正臣「悪いな…遅くまで付き合ってもらって。」

 

賢人「いいさ…俺も暇だったからな。

ところでどうだ、例の新兵器開発は?」

 

正臣「お陰様で順調だよ。明日には男1人、女1人で試験運用が展開されるはずだ。成功すれば、早急に量産を開始して戦線に投入できるように段取りしている。」

 

賢人「さすがだな。深海棲姫の本土襲撃からもう3ヶ月…確実に試験運用を成功させて反撃といこうじゃないか。」

 

正臣「そうだな。こちらもやられっぱなしで終わるわけには行かないからな。」

 

賢人「じゃあ帰るわ。また明日な。」

 

正臣「ああ、また明日。」

 

 

【続く】

 

 

 

 

 

 

 


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