スーパーロボット大戦V-希望を繋ぐ者   作:ナタタク

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第8話 メタルビースト

-エンゲラトゥス 不時着艦付近-

「おい、そこのええっと…目つきの悪いロボットのパイロット!聞こえるか!」

ソウジが黒いロボットの肩に触れた状態で接触回線を開き、そのロボットのパイロットに話しかける。

正直に言うと、このモビルスーツでもないロボットに接触回線が使えるのかどうか不安ではあった。

だが、通信に関するシステムの構造がモビルスーツの物と同じであったため、容易につなげることができた。

「ああ!?誰だ、てめえは!?っていうより、話は後にしやがれ!!」

「あなたの乗っているモビルスーツの名前、それからあなたの名前を…!」

「モビルスーツじゃねえ、こいつはゲッター1だ!それから、俺の名前は流竜馬!これでいいなら、さっさとどきやがれ!!」

竜馬がゲッター1と呼んだ黒いロボットは左手でゲッターマシンガンを手にし、残弾を気にせず目の前のロボットに向けて連射する。

40メートルクラスの大型ロボット故にできる重い銃弾の連発で、そのロボットは穴だらけになり、生理的に不快感を感じさせる悲鳴を上げながら砕け散った。

「荒っぽいみてーだが…悪いやつじゃなさそうだな、こりゃ」

「Bravo1、ヴァング1、こちらは戦術長らの回収を行います。接近してくるあの正体不明の生物の相手をお願いします」

不時着した艦の前に到着した玲はソウジ達に通信を入れた後、艦内に隠れていた古代達をコスモゼロに向けて誘導を始める。

「なぜ君が、コスモゼロに…?」

2機あるコスモゼロのうちの1機のパイロットである古代はなぜ玲がもう1機に乗っているのかわからなかった。

だが、今はそれを聞いている場合ではなく、森や原田、アナライザーと共にコスモゼロに乗りこむ。

「戦術長、何があったんです?」

「すまない…。救難信号を出していたあの艦に来て、生存者を確信している間にロボットに襲われた。人型ロボットで、ガミラスの物と思われる銃を使って、コスモシーガルを破壊された」

「では、あの…機械と融合した生き物は何です?」

玲はあえて、例の艦の生存者について聞くことはしなかった。

あの場に古代達4人しかいなかったこと、そして艦の中や周りに遺体がなかったことが何を意味するのか、玲にはよくわかっていたためだ。

「あのロボットがやってきたのとほぼ同時に現れた。例のロボットはあの黒いロボットがすべて破壊したが、あの機体が来たせいで、俺たちは身動きが取れなくなった。あのロボットのパイロットは…確か、あれをメタルビーストと呼んでいた」

「あんなものが宇宙に…」

古代が言うメタルビーストはこれまでの惑星調査記録にも載っていないもので、しかもゲッター1も流竜馬も一切記録にないロボットと人物だ。

しかも、モビルスーツ以外の人型兵器は地球連邦にもなく、そもそも人型兵器を使わないガミラスがそれを使っている可能性は限りなくゼロに近いと言ってもいいだろう。

「チトセちゃんとかわいいOSが乗ってんだ。近づいてくんじゃねえよ、化けもん!!」

目から触手を伸ばし、ヴァングレイを捕らえようとしたメタルビーストに向けてポジトロンカノンを発射する。

高濃度圧縮ビームが命中、膨張する中で触手を伸ばしていたメタルビーストがほかの仲間もろとも消し飛んでいく。

「手を貸すぜ、ええっと、竜馬ってやつ。どうやら、俺たちの仲間もこいつらに世話になったみたいだからな!」

「へっ…勝手にしやがれ!ゲッタービーーム!!」

腹部の砲門からピンク色のビームが発射され、ビームを受けたメタルビーストが次々と溶けていく。

更に、肩から出したトマホークを手にし、ゲッタービームを受けてもなお生きているメタルビーストをこれでもかと切り裂いた。

そして、ゲッター1が黒いマントで身を隠し、接近してくるメタルビーストの大軍に向けて回転しながら突撃していく。

そして、そのままゲッタービームを次々と連射していき、そのビームは軌道を変化させて、次々とメタルビーストを葬っていく。

「あいつの戦い方、めちゃくちゃすぎるぜ…」

ビーム砲やレールガンでメタルビーストを迎撃しながら、ソウジはゲッター1の動き、そして竜馬の荒々しい戦いっぷりに圧巻されていた。

おまけに完全に息の根が止まるまで攻撃を辞めないところを見ると、逆にメタルビーストの方がかわいそうに見えてきてしまう。

20分が経過し、ヴァングレイのセンサーからはメタルビースト及びガミラスの反応が消えた。

「はぁぁー…もう、あのメタルビーストってロボット??ううん、モンスターとは二度と出会いたくないわ!」

メタルビーストの死体や肉片に向けて念入りにゲッタービームで焼却していくゲッター1を見ながら、チトセはモンスターと形容したあのメタルビーストがすっかり脳裏に焼き付いてしまったようだ。

「ああ、とても今日は肉や魚を食いたくねえぜ…」

「…!ヤマトから通信。トビア君とキンケドゥさんが502と共にヤマトへ帰還。更に、現地で未確認のロボットの助けを借りていて、それのパイロットもヤマトに乗艦すると…」

通信で送られた文章と一緒に送られた、その未確認ロボットの画像をヴァングレイの前方モニターに表示する。

「モビルスーツよりもデカイな…おまけにあのゲッター1ってロボットと同じ人型…。一体どうなってんだ?っと、それよりも」

ヴァングレイがメタルビーストの全焼却を終えたゲッター1に触れる。

「あんたも、ヤマトに来てもらえるか?」

「ヤマト?お前らの母艦か?」

ソウジの話を聞いた竜馬はコックピットに座ったまま少し考える。

数秒だけ考えた後で、ヴァングレイに向けて返事を返す。

「ああ。俺もいろいろと知りてえことがあるからな」

 

-ヤマト 格納庫-

「ふーむ、さっぱりわからない構造と技術ですなぁ」

格納庫に収容された2機のロボットを見た榎本は首をかしげる。

「改造したゲッター1とグレートマジンガー…どちらも地球連邦軍のデータベースにはありません」

「サナリィやアナハイムがこんなのを作るはずもないしなぁ…」

榎本の言う通り、地球連邦軍の量産型モビルスーツの生産及び発注の打ち切りの影響で、サナリィとアナハイムはモビルスーツから戦艦・航空機生産にメインをシフトしている。

モビルスーツ開発予算も大幅に削減されたとのことで、おまけに戦艦・航空機の発注がひっきりなしで来ることから、このようなロボットを作る予算があるとは到底思えない。

おまけに、モビルスーツは15mクラスが主流となっていた現在では、25mや40mといった大型化は時代を逆行しているとしか言いようがない。

「ふぃー、どうにか、戦術長達が無事でよかったぜ」

「はい。ですけど、後の問題は…」

パァン!!

「おお…?」

コックピットから出てきたばかりのソウジとチトセは音が聞こえた方向に目を向ける。

そこには玲と加藤、そして古代がいて、彼女の頬が赤く腫れているのを見ると、どうやら加藤に修正されたのだろう。

「玲…確かにお前のおかげで古代や森君たちは無事だった。それについては分かっている。だが、勝手にコスモゼロを使い、無断出撃したことについては無視できない」

「…」

加藤の言葉を玲は黙って聞き、弁解する様子は見られない。

彼女自身も、古代達が無事だったのは結果論でしかないことを理解していた。

それに、軍人である以上、このような勝手な行動に対してはけじめをつけなければならない。

「古代、艦長はなんと?」

「…山本三等宙尉については今回のコスモゼロの無断使用と無断出撃への処罰として、3日間独房に入ってもらうことになった」

「…艦長がそう決めたというなら、特にいうことはない」

そういった加藤は格納庫から出ていく。

格納庫には玲を連行するため、星名ら保安部の兵士数人が来ていた。

「戦術長、あとのことはお任せください」

「ああ…頼む」

「戦術長」

「ん…?」

後のことを星名に任せ、格納庫を出ようとした古代を玲が呼び止める。

「戦術長にお願いしたいことがあります」

 

-ヤマト 応接室-

「というと、このヤマトって艦は地球連邦軍の物でいいんだよな?」

「そうだ。現在は単独で任務に就いているがな」

「こんなたいそうな戦艦ができてるとは…俺がムショにいる間に派手にドンパチとやっていたみたいだが、随分と世の中変わっちまった見てぇだな」

右足を机の上に置き、思いっきり背もたれに身を任せる竜馬を見た保安部の兵士がムッとした表情を見せるが、真田は相変わらず表情を変えるそぶりがない。

ただ、竜馬からの話を記録し続け、彼とどのように話すかを考えているだけだ。

だが、ムショという言葉を聞いて、ペンを止める。

「ムショ?」

「月面戦争が終わったころだ」

「月面戦争…?」

「軍人の癖に知らねえのか?月面で起こったインベーダーとの戦争だよ。俺はその時、ゲッターロボのパイロットとして戦っていた」

「待ってくれ、そのインベーダーというのは、今日戦ったあのメタルビーストだというのか?」

「何寝ぼけたことを言ってやがる!?あんだけ大騒動になったインベーダーとの戦争を忘れちまったのか!」

足を戻して、思いっきり拳で机をたたきながら、すごい剣幕で竜馬は真田に迫る。

これだけ真剣な表情を見せるということは、竜馬は決してうそを言っているわけではないことを理解した真田は新見に目を向ける。

「副長、おそらくは…」

「そのようだな…まさか、本当にこのような事態を目にするとは…」

「…流君、質問を変えよう。君は今、何年だと思っている?」

竜馬に視線を直した真田は核心に迫るために、1つの質問をする。

仮に、真田の新見の仮説が正しければ、この答えでこのことが真実なのだということがわかる。

「0082か0083だろ?」

「では…君は地球人かな?」

「俺をからかっているのか?地球人に決まってるだろ!?」

真田の2つ目の質問に怒りを覚えた竜馬は彼の胸ぐらをつかむ。

「おい、貴様!!副長に何を…!」

「いや…待て…」

竜馬を取り押さえようとした兵士を制止させ、真田は表情を変えずにじっと竜馬の目を見る。

表情を変えない真田を面白くないと感じたのか、乱暴に彼を放した。

「流君…我々の地球は、インベーダーという生き物に襲撃されたという歴史はない」

「何!?」

真田から告げられた言葉に驚きを見せる竜馬に新見は予備の検索用端末を手渡す。

受け取った端末でインベーダーやゲッターロボについて調べたが、それらに関する情報が一つもなかった。

インベーダーにしても、レトロゲームとして一昔前にはやったインベーダーゲームが出るくらいだ。

「自らを地球人と名乗る君の言葉に嘘がないとしたら…君は別の宇宙、つまり平行世界の地球からやってきたということになる」

「なんだと…!?」

真田から告げられた言葉に言葉を失った竜馬の手から端末が離れていく。

「信じられないのは私も同じだ。ワープや波動砲の研究の中で、多元世界の存在は実証されたが…。それに、それ以前にも多元世界の存在を主張していた科学者もいた。だが、目の前にその平行世界の住人が現れたというのは今回が初めての事例だ」

「あんた、ムショボケした俺をからかっているわけじゃあねえだろうな…?」

ポーカーフェイスで驚いているなど、自分の感情を言葉にする彼があまり信用ならないのか、竜馬はドスの利いた声をぶつける。

「私は科学を携わる者として、客観的に事実を述べているに過ぎない。それで、君はどの状況で次元の壁を超えて、この世界に来たのかをこれからじっくり聞かせてもらいたい。もちろん、そこにいる剣君についても」

隣に座っていながらも、竜馬と真田のやり取りに口を挟むことなく、ノーマルスーツを着たまま話を聞き続けていたグレートマジンガーのパイロット、剣鉄也に真田は目を向ける。

「…わからない」

「何?」

「俺は…グレートマジンガーと俺自身の名前以外、何も思い出せない。気が付いたら、あの場所にいて、当てもなくさまよっていたところをあのコスモシーガルと遭遇した」

「解離性健忘、つまり…記憶喪失…」

「教えてくれ、本当にグレートマジンガーはこの世界のロボットではないというのか?」

「ええ…。ヤマトのデータベースにはそのようなデータはないわ…」

新見の言葉を聞いた剣は沈黙する。

誰だって、いきなり記憶を失い、それだけでなく自分とは何のかかわりもない別世界に来てしまったとなると、大きなショックを受けるはずだ。

「ゲッターロボとグレートマジンガー…まさかイスカンダルへの旅の始まりにこのようなものと遭遇するとは…」

 

-ヤマト 第一艦橋-

「これより、ヤマトをエンゲラトゥスを離れる。大気圏離脱の準備を急げ」

「了解。ヤマト、発進準備!」

アクシデントがあったとはいえ、コスモナイトの回収に成功したヤマトが離陸を始める。

ある程度高度を上げていくと、古代の目は不時着艦に向けられていた。

(古代…)

(古代君…)

その姿を見た沖田と森は彼の身を案じながらも、自らのやるべきことを行い続ける。

古代の前には、あの艦で回収された地球連邦軍製の銃が置かれている。

そして、あの不時着艦の正体がMIAとなっていたユキカゼであり、銃が古代の兄、守の物であることが明らかとなった。

(兄さん…僕は地球をユキカゼのようにしたくない…)

艦長室でそれらのことを報告したときに沖田が言った言葉を思い出しながら、古代はユキカゼの残骸から目を離し、任務を遂行した。




機体名:ブラックゲッター
形式番号:なし
建造:竜馬によるハンドメイド
全高:38.8メートル
全備重量:245トン
武装:ゲッターレザー、ゲッタービーム、ゲッタートマホーク、ゲッターマシンガン
主なパイロット:流竜馬

エンゲラトゥスで平行世界の地球から転移してきた竜馬が3年自力で組み立てたもの。
機体が黒いのは転移したときに一緒にその場にあったゲッターロボの残骸も一緒に転移し、更にその時に起こった爆発によってそれらの表面が焦げてしまったためとのこと。
元々近接戦闘を得意とするためか、遠距離攻撃用の武器はゲッタービームとゲッターマシンガンのみで、接近してからのメリケンサック付きの右拳による打撃や左腕の拡大、縮小が可能なカッターであるゲッターレザーや肩に収納されている小ぶりの斧、ゲッタートマホークによる斬撃を主体としている。
なお、この機体の動力源であるゲッター炉心はゲッター線がなければ機能しないことから、この機体が動くという時点でこの世界にゲッター線があるということの証明となる。
この機体の材質であるゲッター合金は現在、ヤマトの万能工作機ではデータ不足のため生産が不可能で、整備性については重大な問題をはらんでいる。
なお、ブラックゲッターという名前は竜馬から話を聞いた榎本がつけた名前であり、甲板部ではその名前が浸透しているものの、竜馬自身はゲッター1と呼び続けている。


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