スーパーロボット大戦V-希望を繋ぐ者   作:ナタタク

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機体名:ハンブラビ
形式番号:RX-139
建造:地球連邦軍
全高:19.9メートル
全備重量:56.9トン
武装:腕部クロー×2、テールランス、背部ビームキャノン、ビームサーベル×2、海ヘビ、フェダーインライフル(ビームライフルと選択可能)、ダミーバルーン
主なパイロット:ヤザン・ゲーブル

グリプス戦役中にティターンズが開発した試作可変型モビルスーツの1機。
全身に5つのモノアイが搭載されており、視認可能範囲が広くなっている。
また、燃焼効率を重視した設計となっていることから同じスラスター出力の機体と比較すると機動力が高い。
同時期に開発された可変機と比較してもコストが低く抑えられており、3機小隊での運用をコンセプトとしていたが、何度も戦闘中に可変を繰り返すことになることから練度が求められ、一般兵では運用できず、数機の試作機が生産されるにとどまった。
現在、ヤザン・ゲーブル少佐が運用している物は地球連邦軍の倉庫に死蔵されていたもので、アンクシャやリゼルのパーツの一部を流用したことでサブフライトシステムとしての運用も可能になっている。


第49話 ロンド・ベルVSGハウンド

-地球衛星軌道上-

先日の木星帝国及びガミラスの部隊によって壊滅した連邦軍のモビルスーツ、そして戦艦の残骸が20年近くにわたって繰り広げられた戦争によって生まれたデブリと共に漂っている。

中には破壊された、もしくはコロニー落としの際にばらまかれたコロニーの残骸もあり、それらはいずれは地球の重力に引かれ、大気圏との摩擦熱で消えるか、地球に落ちる運命にある。

本来なら、燃え尽きずに地球へ落ちる可能性のあるデブリ、特にコロニー外壁の破片についてはコロニー公社や地球連邦軍によって回収、もしくは解体する必要がある。

だが、地球連邦軍はジオンとの戦争と荒廃した地球の復興に忙殺されて手が出せず、それが行えるのは現状、コロニー公社のみ。

増加したデブリに彼らだけでは対応できず、先日は街にデブリが落下し、多数の死傷者を出すことになったという。

そんなデブリ漂う衛星軌道上に1隻のペガサス級がやってくる。

前足を伸ばした木馬というべき外見をし、放熱板を左右に2枚ずつ羽根のように取り付けたその戦艦の名前はアルビオン。

17年前の一年戦争までに完成が間に合わず、ジャブローに未完成のまま放置されるはずだったが、ジオンとの戦いの長期化によってふたたび建造が再開され、完成後は地球や宇宙を行き来し、戦い続けた。

退役後は開発元であったアナハイムに払い下げられ、性能も現行の戦艦と比較すると旧式であり、試験支援艦として用いるとしてもコストがかかる。

解体するとしても、ミノフスキークラフトを搭載し、なおかつ宇宙でも重力下でも運用できる戦艦そのものが貴重であることからそのこともできず、結局死蔵されることになった。

使われるとしたら、アナハイムでは記録に残すことのできない汚れ仕事程度だ。

そして今、アルビオンは特命によってここを訪れている。

「周囲に連邦及びジオン、確認できず。降下ポイント…オーストラリア大陸クックタウン」

「よし…早く降ろしてここを離れるぞ。ジオンが物資降下に来てもおかしくないからな」

艦長席の隣に立つ紫のスーツでグレーの髪を左右に分けた中年の男、ウォン・リーは窓から赤い地球を見つめる。

一年戦争時代、7月ごろまで圧倒的優勢であるはずだったジオンが膠着状態に陥り、そこから地球での主導権を失った理由には伸びきった補給路がある。

スペースノイドの大半は地球で生活しておらず、コロニーの人類の生活しやすい環境に設定された暮らしに慣れ切った彼らには地球の管理されていない環境になじめなかった。

その中で、補給体制を整備することができず、できたのはジオン本国と占領した月面で生産した補給物資をHLVを利用して降下することだった。

それで降下した貴重な物資のすべてが地上のジオン軍に届いたかというとそうではない。

どんなに計算したうえで降下したとしても、落下ポイントがずれることもある。

そのせいでまだ連邦の勢力圏だった場所に落ちて鹵獲されてしまう、海に沈んで回収すらできないこともあった。

その鹵獲された物資の中には当然、ザクⅡもあり、連邦軍はザクⅡを解析してモビルスーツというものを学びつつ、解析が終わって解体する必要もなくなった機体については今後の連邦軍でのモビルスーツ運用のデータ収集を兼ねて、実戦で使われた。

ジオンに残る記録の中にはアリゾナ砂漠などで鹵獲したザクⅡの部隊がジオンの補給基地を襲撃したというものがある。

それらには連邦軍の識別マークがないことから、本来なら国際法違反となるが、これまでの歴史でも同じような手段を使った例は数多く存在する。

その乏しい資源が届かない部隊もあり、不足分を現地で調達することも難しかった。

コロニー落としによって壊滅した地域では、物資を手に入れることは難しく、現地住民からは並々ならぬ憎しみを買っていた。

それゆえに現地住民によるゲリラ戦や暴動も珍しくなく、それを抑えるためになけなしの物資を現地の復興に使わざるを得なくなり、電力供給のためにわざわざザクⅡの核融合炉を使うことさえあった。

更に、コロニー落としによって地球環境に与えた影響もあり、本来なら熱帯の地域にブリザードが起こったという話もある。

必要になる物資は増え、占領したとしても増やせる物資が少ない。

そうなると物資は不足することになり、次第にジオンの動きが鈍り、膠着状態に陥ることとなった。

今ではさらに状況が変わり、連邦は物量というアドバンテージを失っているものの、ジオンの補給問題も解決していない。

補給体制は長年の戦争で学んだかもしれないが、懐事情は何一つ変わっていないようだ。

「いいか、そのモビルスーツで無理に空中戦を行うなよ。こいつはゼータのフライングアーマーではない、ガタのついた博物館ものだぞ」

モニターに映る格納庫の、これからコアファイターデッキから発進する機体にウォンは通信を送る。

ウェイブライダーに似た姿をしているものの、格納している腕や露出している脚の部分の塗装が青がかなり目立つものとなっている。

更にはその上には黄土色の戦闘機というべき機体が取り付けられていて、フライングアーマー搭載前の機体がいびつな形となっていた。

パイロットからの通信が届き、ため息をつくとウォンは口を開く。

「お前なら大丈夫かもしれないが…病み上がりだぞ?それに、もしお前の身に何かあったら、私はあの世でクワトロ大尉に詫びを入れなければならなくなる。それに、もう貴様の面倒を見るのも御免だからな」

今、ウォンが貸しているウェイブライダー、本来の名前はZⅡのパイロットは1年ほど前までグラナダの病院で呆けていて、身体機能回復のリハビリを受けた後は看病してくれた幼馴染の少女と共に各地を駆け回っていた。

復活したことを誰にも知らせないでほしいと頼まれ、彼の回復が伝わらないように情報統制にかなり骨を折ることになった。

面倒を見るのは回復するまでと決めていたのに、過去には軍人としての自覚がなく、身勝手にふるまっていたことをとがめて修正した少年に使い走りにされるとは思いもよらなかった。

回復後に地球へ降りるのは初めての彼のことは娘であり、ルオ商会の実質的な指導者であるステファニーが面倒を見るだろう。

「まったく…さっさと行け!ZⅡ及びメタスを発進させろ!!」

耳元で大声で叫ばれたことにうんざりしつつ、艦長が受話器を取り、格納庫に通信を送る。

コアファイターデッキから発進したZⅡは地球へと降下し、モニターには摩擦熱で真っ赤に燃える姿が映し出された。

「ふっ…行ったか、さあ…ジオンよ、究極のニュータイプが帰ってくるぞ…」

見送るウォンはフゥと一息つくものの、帰ってからが大変だ。

アルビオンとフライングアーマーについては登録抹消されていることからいくらでも言い訳ができる。

メタスについてもつい最近までスクラップの状態で放置されていたため、それについても問題ない。

だが、ZⅡについてはどう言い訳をすればいいか。

そのことを考えながら、ウォンはアルビオンに用意されている私室へと足を運んだ。

 

-オーストラリア クックタウン-

「くそ…!まさか、友軍と戦うことになるなんてな!!それに…!!」

ウェイブライダー形態となったデルタプラスに乗るリディは機体をかすめるビームの余波を感じつつ、自らのビームライフルで撃ち落としたケッサリアから飛び降りながらマシンガンをばらまくグスタフ・カールをにらむ。

Gハウンドは連邦でもエコーズに匹敵する嫌われ者軍団であるとはいえ、それでも連邦軍の一員であることには変わりない。

不当な扱いを受けたとはいえ、まさかこのような形で矛を構えることになるとは思わなかった。

それに、ティターンズのようにエリートを集めているということもあるのか、兵士の練度も装備の質もいい。

実際、ネェル・アーガマのモビルスーツ部隊やヤマトから発進した戦闘機の中には撃墜されている機体もある。

「くそ…兄さんなら、本丸を狙い撃ってるだろうな…」

マルチロックを終え、GNピストルビットで母艦に迫るGハウンドの部隊に乱れ撃っていくロックオンは高度を上げたシムルグに目を向ける。

西暦世界でドロスの艦橋を狙い撃った狙撃ライフルはすぐに用意できるものではないうえ、数多くの敵機が来ている今では出すことも難しいだろう。

「こうなったら、ハイメガキャノンを使って…!」

「さあせるかよぉ!!」

空中でモビルスーツ形態へ戻ったハンブラビがZZにビームサーベルで斬りかかる。

ヤザンに気付いたジュドーだが、ハイパービームサーベルを抜く時間がなく、やむなく左腕のウィングシールドで受け止める。

「シャングリラでの借り、返させてもらうぜ?小僧ぉ!!」

「すごい殺気だ…これが、本当のヤザンさんかよ!」

ジュドーの記憶にあるヤザンはシャングリラに流れ着き、落ちぶれた姿の時のものでしかない。

ティターンズが壊滅し、作業用モビルスーツでアーガマを襲った時にはエースパイロットとしての実力を発揮できないまま、圧倒的な性能差を持つZガンダムに乗るジュドーにやられることになった。

グリプス戦役で戦った彼ほどではないが、ヤザンにはジュドーへ個人的な恨みがある。

「パワーだけで勝てるほど、戦いは甘くないってことを教えてやるぜ、ジュドー!!」

2枚重ねにするならともかく、1枚のみならただの薄いシールドでしかないそれを切ると、すぐさま距離を取り、右腕に内蔵されている海ヘビをZZに撃ち込む。

離れたハンブラビをダブルビームライフルで撃ち落とそうとしていたために、それが右腕に接触する。

「さあ、ボイルにしてやるぜ!!ハイパーボイルにしてやれねえのが残念だけどなぁ!!」

スイッチを押すと同時に海ヘビから高圧電流がダブルビームライフルに向けて流れ込んでいく。

コックピットにも電流が襲い、バチバチと音が鳴り響く。

「うわあああ!!く、くそお!電撃兵装…!!」

「ジュドー!!」

感電するZZを見つけたハサウェイが救援に向かおうとするが、真上から来る殺気に気付き、速度を緩める。

あと少し前に出たところにメガ粒子砲が撃ち込まれ、廃墟の街を焼く。

「メガ粒子砲!?この熱量は…!!」

動揺するハサウェイに追い打ちをかけるように今度はミサイルが飛んでくる。

ジュドー救援を断念し、その場を離れるものの、飛んできたミサイルはいずれも軌道を変化させ、Ξガンダムを追いかける。

「これは…ファンネルミサイル!?」

バルカンで迎撃するハサウェイは目の前の異様なミサイルの存在に戦慄する。

ファンネルミサイルはΞガンダムでしか運用されていないはず。

Ξガンダムがつかんだ敵影を見たハサウェイの表情が凍り付く。

「なんだ…こいつ!?モビルアーマーなのか…??」

 

-ネェル・アーガマ改 格納庫-

「こいつの整備は後だ!このジェガンを手伝ってくれ!!」

「ほら…引っ張れ!衛生兵はまだかよ!?」

Gハウンドとの戦いで傷つき、弾薬を使い果たして戻ってくるジェガンやリゼル、そしてガンダムを整備兵たちが対応する。

チェーンが今対応しているの片腕片足がえぐり取られた状態のジェガンで、撃墜された原因を突き止めるべく、拾えるデータを取り出そうとしている。

ちなみに、この機体のパイロットはここに到着したところで意識を失い、集中治療室送りになっている。

「上空からのメガ粒子砲による攻撃…少しでもずれていたら、パイロットまで蒸発していたわね…。でも…」

シムルグのメガ粒子砲にはそのような細かい芸当ができるわけがない。

となると、発射したのはモビルスーツであり、なおかつZZのような火力を誇るタイプで、飛行可能。

Gハウンドが運用しているケッサリアにはそんな装備はなく、ハンブラビとバイアラン・カスタムには大火力を誇る装備はない。

ふと、チェーンの脳裏をあるモビルスーツの存在がよぎる。

ネオジオン戦争が終わり、アムロを失った心の傷をいやすかのようにアナハイムのフォン・ブラウン支社でΞガンダムの開発の補助をしていた際、かつてνガンダムの開発にかかわったことで親交のある同支社主任技師であるオクトバー・サランからもう1機のミノフスキークラフト搭載型モビルスーツの存在が伝えられた。

νガンダムやΞガンダムなどをロンド・ベルに配備していることから連邦軍内のパワーバランスの問題が発生しているとして、上層部の指示によってGハウンドへの配備を前提として開発中だというモビルスーツ。

その開発と担当したのはグラナダ支社であり、本社指示によって、フォン・ブラウン支社にあったνガンダムなどの機体データを持っていかれたという。

その中には、Ξガンダムのものも含まれていた。

そして、そこで開発された試作機の面倒を見ていた軍人が現在、シムルグの艦長となっている。

「Ξガンダムの兄弟機が…敵の中にいる。アムロ、ハサウェイ…気を付けて…」

 

-オーストラリア クックタウン-

「ほぉ…ヤザン少佐から話は聞いていたが、死に損なって戻ってきたみたいだな、こいつの兄弟機が…」

全周囲モニターに映るΞガンダムの姿に、赤がかった茶色の整っていない髪を白のヘルメットで隠した黒い瞳の青年がニヤリと笑う。

自分が駆るグレーのモビルスーツ、鳥を頭にかぶせ、翼が両肩から胸部までを包むような増加ユニットを搭載したいびつな構造となっているガンダム、ペーネロペーの仮想敵がまさにΞガンダムだ。

確かに完成度についてはΞガンダムが上回るかもしれないが、パイロットは所詮、ロンド・ベルの総司令官であるブライトの息子であり、ただの親の七光りで入った男にしか見えない。

それに対して、レーン・エイム中尉は軍学校を卒業し、パイロットとしての力量が認められてケネスの元でペーネロペーのテストパイロットを務め、そして連邦総司令部直属のGハウンドに彼ともどもスカウトされた。

きちんと実力をつけて、なおかつそれが認められて今ここにいる自分がそんな彼に負けるはずがない。

「ミノフスキークラフト付きのモビルスーツはロンド・ベルには無用の長物なんだよ!接収できないなら、破壊するまでだ!」

「くぅ…!!」

Ξガンダムが発射したファンネルミサイルがペーネロペーのファンネルミサイルがぶつかり合い、相殺する。

爆発の煙が両者を分かつ中で、Ξガンダムは構わずビームライフルを発射する。

ビームによって煙が吹き飛び、視界がクリアになるが、そこにはすでにペーネロペーの姿はなかった。

「いない…!?うわ!!」

ドゴンと揺れが起こり、Ξガンダムの左肩メガ粒子砲にビームが命中する。

左側にはペーネロペーの姿があり、右手に握っているビームライフルの銃口はΞガンダムに向けられていた。

反撃すべくビームライフルを撃つハサウェイだが、上空へ飛んで回避したペーネロペーは鳥のようなモビルアーマー形態といえる姿へと変えると、猛スピードでΞガンダムから距離をとり、ばらまかれたファンネルミサイルがΞガンダムを襲う。

「ミノフスキークラフト付きモビルスーツはこうやって戦うのだ!!」

「くそぉ!速すぎて照準が…!ああ!!」

まずはビームライフルを持つ右手が爆発し、次々と飛んでくるミサイルがΞガンダムを傷つけていく。

だが、30メートル近い大きさとミノフスキークラフト搭載機ということもあってか、機体そのものも頑丈に設計されているようで、機体そのものへのダメージは抑えることができた。

「モビルアーマーはどこに…!?」

「ここだよ!!」

レーンの言葉とともに、ペーネロペーの肩部のメガ粒子砲の照準がΞガンダムに向けられる。

ファンネルミサイルでビームライフルとメガ粒子砲1門をつぶしていて、すぐに動き出す気配もない。

ここでとどめを刺すべく、最大火力をぶつける。

大出力のビームが発射され、Ξガンダムのモニターにまぶしい光が映る。

「ああ…!!」

「く…何をしているハサウェイ!!」

アムロの叫びが通信機に響き、同時にハサウェイの前に4基のフィンファンネルがビームバリアを展開する。

バリアがメガ粒子を阻むが、それが持つのは短時間。

その間にどうにか飛行した後でフィンファンネルがその場を離れ、自由になったビームがビルを焼き尽くしていく。

「ちぃ…!とどめを刺せなかったか!」

「気にするな、レーン!そのデカブツはボロボロだ。それに…!」

飛行するジェリドのバイアランカスタムが高い推力を生かして進んでいく。

迎撃のためにビームライフルを連射するジェガンが乗るドダイ改をメガ粒子砲を撃ち込む。

シャワーのように襲い掛かるビームはガンダニウム合金を焼き尽くすのには時間がかかるものの、耐久性の低いドダイ改にとっては脅威で、爆散してしまう。

吹き飛んだジェガンをビームサーベルで両断し、背後で爆発する光景を目にくれず、ジェリドはモニターに映るネェル・アーガマをにらむ。

「アーガマの後継艦だな…こいつを沈めれば、奴の帰る場所もなくなる…!!」

「ちぃ…!!」

ネェル・アーガマの直掩をしていたダグザのジェガンがビルの上へ飛び乗ってビームライフルを連射するが、高高度を維持し、立体的な動きを見せるバイアランカスタムに当たらない。

「くっ…!ユニコーンはまだか!?」

ビームライフルでは効果がないなら、対抗策として頭に浮かぶのはユニコーンガンダムが装備しているメイン兵装であるビームマグナムだ。

専用Eパックを搭載し、一撃でビームライフル4発分の出力を発射できるそれはEパックの都合上、一度の出撃で最大15発しか撃つことのできないしろものだが、かすめただけでも並のモビルスーツを破壊することができるものであるため、それがあればバイアランカスタムに対抗できる。

そのパイロットとなったバナージも出撃するというが、今はユニコーンそのものの調整が終わっていない状態だ。

ヤマトとネェル・アーガマによるビームの弾幕を軽々とよけながら、ついにネェル・アーガマに肉薄する。

「堕ちろ!アーガマもどきが!!」

「くっ…!!撃ち落とせぇ!!」

ついにネェル・アーガマに取りついたバイアランカスタムのビームサーベルが艦橋を切りつけようとする。

だが、急に聞こえてきた警告音にジェリドの注意が向かう。

「何が…うわあああ!!」

急に質量弾が直撃したような衝撃が側面から襲い掛かる。

ネェル・アーガマのモニターに映るのは急に飛んできたフライングアーマーの激突によって右腕部分がへしゃげ、吹き飛んでいくバイアランカスタムの姿だった。

「これは…フライングアーマー?!どこから…!」

 

-ネェル・アーガマ 格納庫-

「…!?」

「どうした、バナージ!!」

コックピット内で調整が終わるのを待つバナージの何かに気づいたかのように様子をタクヤは心配する。

だが、今のバナージの耳には彼の声よりも近づいてくる星のような大きな何かが気になっていた。

「なんだ…何か、大きいもの、力が…来る…?」

一瞬、バナージの脳裏に映った宇宙のようなビジョン。

ジュドーやハサウェイ、アムロといったニュータイプと最初に触れた時でさえ感じなかった大きな何かが来るのをバナージは感じていた。

 

-オーストラリア クックタウン-

「くっそぉ!!」

思わぬふいうちを食らい、姿勢制御がままならないままビルに激突したバイアランカスタムが滑るように地面まで落ちる。

せっかくトリントン基地の兵士たちが整備してくれたバイアランカスタムの右腕は使い物にならなくなっていて、フライングアーマーの激突とビルへの衝突によってスラスターにもダメージが発生していた。

ふざけた邪魔をした伏兵はどこかと血眼になったメインカメラを動かす中、ようやくその姿を見つける。

「こい…つは…!!」

ジェリドの目に映るのはほっそりとしているものの、Zガンダムに似た青がベースのウェイブライダーで、その背中に何かを積んでいるように映る。

その期待は背中のものを分離すると同時に変形していき、モビルスーツの姿をあらわにする。

分離されたものも、変形していき、胴体部分がほっそりとしていて、四肢がドムの熱核ホバーのような太さを持ついびつなモビルスーツへと変形していく。

「よし…ZⅡは大気圏内でも問題なく動かせる。ファ、メタスはどうなんだ?」

「こっちも大丈夫よ、行きましょう…カミーユ」

「ああ…」

ZⅡのコックピットに座る、深い緑のバイザーで顔を隠した、それと同じ色のラインが刻まれた白のノーマルスーツ姿をした少年、カミーユ・ビダンは赤く染まった海を見た後で、こちらに目を向けるバイアランカスタムの姿を見る。

通信用モニターに映る、青がかった黒の、肩までの長さの髪をした少女、ファ・ユイリィに答えた後でキッと鋭い視線を周囲で戦闘を行うGハウンドに向けた。




機体名:ZⅡ(フライングアーマー装備型)
形式番号:MSZ-008FA
建造:アナハイム・エレクトロニクス社
全高:18.3メートル
全備重量:75.7トン
武装:メガビームライフル(ビームライフル、クレイバズーカと選択可能)、ビームサーベル×2
主なパイロット:カミーユ・ビダン

アナハイムがエゥーゴとの共同開発プロジェクトであるZ計画の元で開発した試作モビルスーツ。
元となったZⅡについてはベースとなったZガンダムと比較するとウェイブライダーへの変形機構が単純化されており、それと引き換えにフライングアーマーが廃止となったことから大気圏突入能力と1G重力下における飛行能力を失っていたが、ウェイブライダー形態での加速性能は高い。
性能面、コスト面、ピーキーな操縦性については高く評価されたものの、同時期に開発された、圧倒的な性能かつ多機能性を誇るZZガンダムの開発が優先されたことから少数生産にとどまり、主力モビルスーツとなることはできなかったものの、この機体を元にリ・ガズィやリゼルなどが生産されている。
本機についてはグラナダに保管されていた1機をウォンが無断で持ち出したうえで、廃止されたフライングアーマーをZⅡに合わせて調整を行った上で搭載している。
これによって失った大気圏突入能力を取り戻しているものの、元々フライングアーマー装備を想定していないZⅡに無理やり搭載する形となり、更にはそのフライングアーマーが登録抹消の上に解体される予定だったものであり、重力下では十分に機能しない形となった。

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