スーパーロボット大戦V-希望を繋ぐ者   作:ナタタク

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機体名:ニンジャ
建造:影の軍団
全高:12メートル
全備重量:9.2トン
武装:口部火炎放射器、鎖、鉄砲型ビームライフル、忍刀
主なパイロット:影の軍団兵

ショーグン・ミフネ率いる影の軍団が所有する武装ロボット。
武装ロボットの中では小柄で、発泡金属製の装甲を採用していることから重量も低い。
武装は忍者や戦国時代の足軽をイメージした武器が多いが、これは古き良き日本にあこがれるショーグン・ミフネの趣味。
なお、操縦は搭乗者の動きをトレースするバイオフィードバックシステムを採用しているが、その技術の出どころは現時点では不明。


第34話 取り戻すためのキーワード

-ヌーベルトキオシティ レインボーブリッジ付近-

「ぐ…くうう!!」

「どうした、マイトガイン!貴様の力はその程度か!!」

マイトガインとブラックマイトガインの動輪剣がぶつかり合い、ブラックマイトガインが徐々に押していく。

マイトガインを倒すために作られたブラックマイトガインの性能はマイトガインを上回っており、単純なパワー勝負ではマイトガインの方が分が悪い。

「さあ、もっと!もっとやるネ!」

「ブラックマイトガインがマイトガインを討ち、ヌーベルトキオシティはアジアマフィアのもの…奴らの上に立つことができます!」

チンジャの脳裏には既にマイトガインを倒し、勇者特急隊をつぶした後のことを考えていた。

アジアマフィアとなっているスポンサーからの依頼で、ピンクキャットとウォルフガング一味、影の軍団の同盟を作り、共に勇者特急隊やそれを支援する組織を倒すことが決まっている。

中国の裏社会を席巻したホイにとっては彼らはただの小悪党にしか見えず、彼らと対等になるというのははっきり言って不愉快な話だったが、日本に進出できたのはそのスポンサーの助力も大きく、これまで受けた支援も考えると首を縦に振らざるを得ない。

だが、仮にアジアマフィアだけで勇者特急隊を潰し、ヌーベルトキオシティを占領したら、そしてそれを可能にするだけの武装ロボットを独自に生産できたとしたら、話が違ってくる。

その功績を手土産にして、スポンサーに交渉すれば、自分たちが他の小悪党よりも上の存在だと認めさせることができる。

そして、奴らと同盟関係ではなく従属関係に置き、上に立つことができる。

「さあ、倒せ、ブラックマイトガイン!マイトガインを!!」

 

上空でヴァングレイがレールガンを連射し、AEUヘリオンを鉄くずに変え、地上へ転落させる。

「コックピットへの損傷は軽微だ。運が良ければ助かるかもな。だが…」

しかし、アジアマフィアが引き連れているモビルスーツの数が多い。

撃破しても撃破しても、まだまだ敵機の反応が増えていく。

突出することになってしまった舞人を助けに行きたいのはやまやまだが、この数を放っておくわけにはいかず、中には町に向けて攻撃を加えている機体までいる。

「舞人、ガイン…」

「ブラックさん…」

「信じよう、ナイン、ソウジさん。ヒーローは必ずハッピーエンドを見せてくれるって…」

それは論理的ではなく、願うだけで戦局に影響を与えるとは思えない。

だが、そう願わないと戦っていられなかった。

 

「く…動輪剣が持たない!!」

何度も鍔迫り合いをした動輪剣にひび割れが生じ、次の一撃を受け止めたら砕け散ってしまう。

舞人はコンソールを操作し、ボロボロになった動輪剣にエネルギーを送り、それをブラックマイトガインに向けて投げつけさせる。

「ヤケクソになったか!マイトガイン!!」

「ガイン!」

「了解、シグナルビーム!!」

舞人の狙いがわかっていたガインはシグナルビームを投げたばかりの動輪剣に命中させる。

ビームライフルレベルの出力で、それを貫通したビームではブラックマイトガインの装甲を撃ち抜くことができない。

しかし、動輪剣が爆発と共に入っていたエネルギーが爆発と共に強い光を発する。

「何!?」

「目くらましだと!!」

「とまれ、ブラック!!」

目がくらんだブラックマイトガインの両腕をつかみ、正面から押し倒す。

「うわああ!何をやってるネ、ブラック!!」

激しい揺れでシートに何度も背中をぶつけたホイはブラックを責める。

ブラックマイトガインは確かに性能面ではマイトガインを上回っている。

だが、マイトガインにはこれまで救助活動を行い、武装ロボットたちと戦った経験がある。

そのアドバンテージを生かすことができれば、ブラックマイトガインを止める手段はある。

「ぐうう、離れろぉ!!」

ブラックマイトガインはシグナルビームを直接舞人のいる頭部に当てようとするが、発射する前に頭突きを受け、発射装置が故障する。

ブラックマイトガインがマイトガインと同様の兵器を持っているとしたら、まだ両腰にあるマイティキャノンを使ってくる可能性がある。

だが、少しでも動きを封じることができれば十分だった。

「クルツさん、頼みます!」

「おう、任された!!」

戦場からある程度距離が離れたところでECSを利用してドダイ改共々姿を隠していたクルツのガーンズバックがECSを解除してビルの屋上へ飛び降り、狙撃用ライフルを手にする。

マスクとブラックパイルダーがブラックの超AIに影響を与え、悪の戦士に変えているとしたら、それを破壊する、もしくは無力化することで彼を取り戻すことができるだろう。

(グレートマジンガーのパイルダー、ブレーンコンドルとあの黒い飛行機と同じなら…)

これは戦闘中に舞人と鉄也が思いついたプランで、それが確実かどうかは分からない。

だが、ブラックを取り戻す他の手段が思いつかない。

照準がブラックマイトガインの首筋に合わせる。

そこに伝達ラインが存在する可能性がある。

(あいつだったら、この状況でも間違いなく成功させるだろうな…)

クルツの脳裏に、かつて自分が師事した狙撃手の姿が浮かぶ。

自分が狙撃手として目覚めることができたのは、間違いなく彼の指導のおかげで、今も自分が彼を超えることができたかと問われたら間違いなくまだだと言うだろう。

そんな『魔人』のような彼なら…。

「だが俺は…あいつのようにはならねえ」

クルツが引き金を引くとともに、狙撃用ライフルから発射される弾丸が一直線にブラックマイトガインの首筋に向けて飛んでいく。

銃弾の軌道は、クルツの脳内で行った計算が正しければ、間違いなくそこに向かっている。

そこを命中すれば、ブラックパイルダーからブラックを解放することができる。

「ホイ様!!」

「まずいネ、ブラック!!」

警告音と共に、こちらへ飛んでくる弾丸がモニターに表示され、慌てたホイが思わず側面にある赤いボタンを押してしまう。

「ホ、ホイ様…そのスイッチは…」

「へっ…?」

「うおおおおお!!!!」

「何!?」

ブラックマイトガインの体が動き出し、転がるように逆にマイトガインを地面に押し付け、ブラックマイトガインが上に乗るような状態になる。

そして、銃弾は回転している間にマイトガインに頭部側面をかすめるだけで終わってしまった。

「うわああ!し、しまった!!」

「舞人!ブラックの…ブラックの出力が上がっている!!」

「どけぇぇぇ!!」

ブラクマイトガインが腹部を膝蹴りしてマイトガインの巨体が宙を舞う。

起き上がったブラックマイトガインは落ちてくるマイトガインの頭部をつかむ。

「このまま握りつぶしてやろうか…?」

「や、やめろ…ブラック!」

ブラックマイトガインに向け、マイティキャノンを発射するが、謎の出力上昇によってより強固になったフェイズシフト装甲によって無力化されてしまう。

「舞人!!」

モビルスーツ部隊を突破に成功した鉄也はブラックマイトガインに向けてドリルプレッシャーパンチを放つ。

マイティキャノン以上の破壊力を持つドリルプレッシャーパンチがブラックマイトガインを叩き飛ばし、マイトガインは自由の身になるが、頭部装甲は大きくへこんでいて、カメラにもダメージが発生している。

「ど、どうなってるネ!出力上昇はいいが、警報音ばかりでうるさいネ!!」

「ホ、ホイ様!リミッターが解除されています!」

バッテリーの消耗が規定よりも大きく、バッテリーそのものにも強い負荷が生じている。

チンジャの計算が正しければ、あと数分この状態が続いたらブラックマイトガインが爆発する。

核分裂炉搭載モビルスーツが起こす核爆発のような惨事にはならないが、それでもヌーベルトキオシティに甚大な被害を与えることになる。

「ええい、こうなったらやるだけやらせるネ!そして、爆発する前に脱出!!」

「よ、よろしいのですか?ブラックマイトガインは…」

「構わんね!また別のものを作るだけネ!!」

ブラックマイトガインを失うのは惜しいが、暴走する中でマイトガインを撃破できたなら、それはそれでホイにとっては十分だ。

超AIを再び作るのはデータを失っているため不可能なものの、この戦闘データがあれば強力な武装ロボットを作ることができる。

それはそれでウォルフガング達の上に立つための手段になりえる。

「…もう、方法がないのか?」

「舞人…」

「ブラックを、破壊するしかないのか…?」

ブラックを止めることは重要だが、それ以上に勇者特急隊としてヌーベルトキオシティに惨事を招くわけにはいかない。

正義を宿していたブラックに罪を重ねさせるわけにはいかない。

舞人とガインの脳裏に浮かぶブラックと共に人々を守る未来が消えていく。

「いくぞ、ガイン!」

「くっ…許せ、ブラック!!」

マイトガインはもう1本の動輪剣を手に、ブラックマイトガインと対峙する。

リミッター解除による負荷が超AIにも及び始めているようで、ブラックマイトガインは手当たり次第にシグナルビームやマイティキャノンなどの火器を発射し、ビルや味方のアジアマフィア所属の機動兵器を巻き込んでいく。

暴走しているおかげか、動きが単調になり始めてもいた。

「舞人、ブラックの超AIは左腕だ。今の私と同じならば…」

「ああ、そうだな…」

動きが少しでも止まっているならまだしも、動きまくるブラックマイトガインの首筋の伝達ラインだけを破壊するのは不可能だ。

フェイズシフト装甲のブラックガインを破壊するには、ギリギリまで距離を詰めて、現状の最大火力であるマイティキャノンを放つことが一番だ。

超AIが破壊されれば、その瞬間ブラックマイトガインの操縦はブラックパイルダーに乗っているホイ達がやらなければならなくなる。

マイトガインは超AIがいるおかげで、舞人が行う操作がある程度簡略化されている。

仮にブラックマイトガインが同じような構造ならば、大幅に複雑化した操縦をホイ達はやらなければならない。

そうなれば、ブラックマイトガインを完全に破壊するチャンスだ。

「舞人の兄ちゃん!?くそぉ!!」

自らの手で仲間を討つ覚悟を固めつつある舞人を見た勝平は無念の怒りを込め、ザンボットカッターでティエレンを両断する。

かつて自分たちを救うために特攻した父親の姿、人間爆弾にされ、人々を巻き込まないために消えていった人々の姿が目に浮かぶ。

そのような悲劇を二度と起こさせないために戦っているにもかかわらず、また同じことを目の前で起こるのを許してしまう無力さが許せなかった。

あきらめの空気が広がり始める。

「キャップ、姉さん。提案があります」

「何だ、ナイン!?」

「ヴァングレイでブラックさんにとりついて、接触回線を開いてください!ブラックさんを止める手段があります!」

「接触回線だと!?」

今のブラックは外部からの通信が遮断されている状態で、無理やりやろうとするならば接触回線を開く以外に方法はない。

だが、それで説得して止めることができるなら最初からしている。

それに、ヴァングレイで今のブラックマイトガインにとりつくのは至難の業だ。

「信じてください!!」

無茶な注文をしているのはナインも分かっている。

真剣なまなざしを向けられ、ナインがどれだけブラックを取り戻したいと願っているかが分かってしまう。

だが、暴走するブラックマイトガインにとりついた状態をどれだけ維持できるかはわからないうえ、爆発や攻撃に巻き込まれる可能性だってある。

「お願いします、ソウジさん、チトセさん!ナインが言う手段が正しければ、きっと止めることができます!」

「浜田君まで…」

「…分かったぜ、こうなりゃ腹をくくるしかないな!!」

フットペダルを思い切り踏み、ヴァングレイはブラックマイトガインに向けて飛んでいく。

ヴァングレイを追いかけようとする武装ロボットはアーバレストのボクサーを撃ちこまれるか、ダイタンクのレッグキャノンで撃ち落とされる。

ヴァングレイが接近してくるのは舞人のモニターにも映っていた。

「ソウジさん、チトセさん!?何をしているんですか!?ブラックの爆発に巻き込まれるつもりですか!」

「いいや、巻き込まれるつもりもないし、倒すつもりもない!だが…」

「大事な仲間をこれ以上好きにさせるわけにはいかないの!ソウジさん、3時の方向からキャノンが来ます!」

「サンキュー、チトセちゃん!」

ブラックマイトガインが発射するブラックマイティキャノンを避け、接近しているヴァングレイは腕を伸ばし、ブラックマイトガインをつかむ。

出力が無理やり上昇しているブラックマイトガインは火器を発射しながらじたばたして振り払おうとするが、マニピュレーターだけでなくサブアームも駆使してしがみつこうとする。

「くうう…とりついたぜ…ナイン!!」

「ありがとうございます、キャップ!皆さん、お願いします!!特許許可する東京都特許許可局!!」

「な…??」

急にナインの早口言葉が聞こえ、なんで今この状況でそんなことを言うのかわからずにソウジは混乱する。

だが、それを接触回線で無理やり聞いた早口言葉にブラックマイトガインのツインアイがかすかに点滅する。

「特許許可する東京都特許許可局!」

「特許許可する東京都特許許可局!」

「特許許可する東京都特許許可局!!」

ジュドーやキラ、サリアなどの青戸工場やメガロステーションに残っているメンバーの早口言葉が矢継ぎ早にブラックマイトガインに送られてくる。

「ハハハハ!!早口言葉?そんなものを聞かせるためにこんな馬鹿な…」

「ホ、ホイ様!?ブラックガインの超AIに負荷が…!!」

「何ぃ!?」

「舞人ぉ!!」

超AIの負荷のせいか、暴走していたブラックマイトガインの動きが鈍り始める。

だが、バッテリーにかかっている負荷はまだ変わっておらず、爆発する可能性はまだ収まっていない。

「ソウジさん…チトセさん…」

「いくぞ、舞人!!」

「ああ、うおおおおお!!!」

動輪剣へ送るエネルギーを絞り、マイトガインはスラスターを噴かせてブラックマイトガインに向けて突っ込んでいく。

ヴァングレイが離れた瞬間、マイトガインの動輪剣がブラックマイトガインの首筋を斬りつけ、すれ違っていく。

外から見たら武装ロボットに対しては大した一撃ではないように見える。

だが、ブラックパイルダーに乗るホイとチンジャはその一撃で受けた異常を感じ始めていた。

「う、動け!!ブラック!?どうした、なぜ動かん!?」

「ホイ様!伝達回路が破壊されました!!これでは…ブラックマイトガインを操れません!!」

動かなくなった今のブラックマイトガインとブラックパイルダーは舞人達にとってはいい的だ。

このままではこちらが攻撃を受けることになってしまう。

「に、逃げるネ!!」

ブラックパイルダーがブラックマイトガインから分離し、戦場から逃げ出そうとする。

「ソウジさん、小型飛行機が…!」

「放っておけ!今はブラックが先だ!」

「ブラック、ブラック!!大丈夫か!?」

マイトガインが動かなくなったブラックマイトガインに触れ、様子を確かめる。

まさか、暴走による負荷に耐え切れなくて動けなくなってしまったのか、返事が返ってこない、

暴走が収まり、バッテリー稼働も通常に戻っているにもかかわらず。

「お前の声を聴かせてくれ、ブラック!!ブラック!!」

「…きょ、する…」

「ブラック…」

「特許…許可、する…東京特許…許可局…私の…私の超AIは正常に機能している…」

「ブラック…よかった…!」

ブラックコントローラーの機能も停止しており、ブラックマイトガインが分離する。

そして、ヴァングレイの手でブラックガインの顔についていたブラックコントローラーが取り外された。

「よかった…ブラックさん」

「すまない。みんなには迷惑をかけてしまった。それに…」

ブラックガインのカメラには戦闘の影響で崩れたビルやボロボロになった道路などが映っている。

ホイに操られたとはいえ、自分の手で守るべき町をめちゃくちゃにしてしまった。

そのことに深い罪悪感を抱いている。

「ブラック、これはお前のせいではない。お前の無念は私たち勇者特急対全員で晴らそう」

「ガイン…」

「帰ろう、ブラック。俺たちの基地へ。お前も、勇者特急隊の一員なんだから…」

「舞人…ああ、ああ!」

マイトガインの差し出す手をブラックガインは握りしめる。

「ああ…よかったぜ、舞人の兄ちゃんも、ブラックも…」

「一件落着だな」

ブラックの無事な姿を見た勝平と鉄也は安どの表情を浮かべる。

大将の戦線離脱を知ったアジアマフィアの機動兵器も相次いで撤退を始め、ヌーベルトキオシティの戦火は収まった。

 

-青戸工場 地下格納庫-

「うーん、残念だが、ブラックの修理には相当の時間がかかるな…」

「そうですか…」

無理な動きと出力のせいで、内部の電子機器にダメージがあるうえ、機体内部にホイの仕掛けがまだないとは限らない。

鹵獲したブラックロコモライザーとブラックマイトウィングを含め、修理と内部のセキュリティチェック及び洗浄を考えると、これから行う火星の後継者との戦いに参加させることは不可能という結論が出された。

同時に、マイトガインとの規格統一も行われることになるため、戦線復帰後のメンテナンスも難しくなくなるだろう。

「大丈夫だよ、舞人。一番大事な超AIが無傷だったんだ。それはすごい奇跡さ」

「そうだな…おかげで今もこうして皆と話をすることができる」

「早く良くなってくださいね、ブラック」

「みんな、あなたのことを待っていますから」

「もちろんだとも。一日も早く治して、人々のために働かなければ…」

それがせっかく生きて戻ってくることができたブラックガインの願う道。

たとえ生まれがどんなものだとしても、使い方次第で正義にも悪にもなる。

(だとしたら私は…証明したい。私の中にある正義を…。人々を守ることによって…)

 

-メガロステーション 地下格納庫-

「万丈様、お疲れ様です」

「ありがとう、ギャリゾン。それで、ロケットの準備はできているかな?」

メガロステーションに戻ったばかりの万丈はギャリゾンが整備を行っている目の前のロケットを見る。

大型のアンテナ塔を横倒ししたような形のロケットで、破嵐邸の地下に保存されているマサァロケットと形は似ている。

2600メートル以上の大きさを誇っていたそれよりも大幅にダウンサイジングされているものの、それでも400メートルくらいの大きさだ。

「マサァロケットマイルド…」

「はい。できれば、このような形で使われることがないことを願っておりましたが…」

これは元々、地球からコロニーや月、火星への民間による大型貨物輸送を目的に開発したものだった。

時折、火星と行き来するために万丈が使っており、将来は輸送業者に売却するつもりでいた。

そのため、形こそマサァロケットに似ているが、内部の技術はすべて地球やプラント、木連のものを使っており、メガノイド由来の技術はすべて排除されている。

操縦の大半はAIで行うため、少人数での運用が可能となっている。

機動兵器の増加によるベイロード不足の可能性から万丈がギャリゾン達に頼んでここへ持ってこさせていた。

「だけど、これは必要なことだ。残念なことだけどね…」

「ええ。せめて、早い段階で戦いが終わることを願うばかりです」

「そうだ…。そして、北辰…」

北辰が万丈が勇者特急隊やナデシコとともに火星の後継者と戦う大きな理由となっている。

彼の正体、そして火星でのメガノイドとの最終決戦の中で聞いた存在。

(ドン・ザウサーの遺産…コロスは確かにそのことを言っていた…)

メガノイドの最初期型であり、彼らを統率していたドン・ザウサーと彼の副官としてメガノイドの指揮を執っていた女性型メガノイドのコロス。

火星で2人を討ち取った万丈だが、彼女は死に際にドン・ザウサーの遺産のことを口にしていた。

彼は万丈の手で討たれる可能性があると見越して、その遺産を世界のどこかに隠したという。

その場所を唯一コロスが知っていたが、それを聞くことはできなかった。

万丈が火星や地球を行き来している理由がそれで、彼はメガノイドと関連のある場所を中心にその遺産を探し続けていた。

北辰について知ったのはその途上だ。

「おそらく、遺産はメガノイドに関連する技術だ。それを誰かの目に触れさせるわけにはいかない…」

もし、誰かが発見して、何かの悪意で再び第2、第3のメガノイドを生み出したなら、3年前のメガノイドの反乱が再び繰り返されることになる。

万丈はメガノイドとその技術が再び世界を荒らすことを恐れていた。

(ドン・サウザーの遺産…それをこの世から消すことで、ようやく僕の心に区切りをつけることができる。そして、その時には…)

 

 




機体名:パオズー
建造:アジアマフィア
武装:職種
主なパイロット:自動操作

アジアマフィアが開発した無人兵器。
もともとはアタッシュケース型の小型機だが、開いて放置することで周囲の金属を取り込み、巨大化していく。
機体そのものの武装や職種のみだが、コアそのものに高度な自己学習・再現型コンピューターや取り込んだ兵器をそのまま使用することも可能になるうえ、仮にフェイズシフト装甲を取り込むことに成功すれば、それを使うことも可能となっている。
そのため、敵基地にかくして起動することでその真価を発揮することのできる機体といえる。
ただし、コアを破壊されると機能が停止する上にそのコアそのものがそうしたコンピュータの回路が大半となっていることから脆弱という欠点を抱えている。
コアの弱点を見抜かれたことで、勇者特急隊との戦いでは敗北したものの、性能やコンセプトそのものは良好であったことから完全量産が行われ、今後中国を中心とした紛争地帯で売り出されることになるという。

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