形式番号:なし
建造:勇者特急隊
全高:24メートル
全備重量:85.6トン
武装:レスキューナイフ、ボンバーブレイク、ボンバーストリーマー、ボンバーミサイル
主なパイロット:なし(超AI)
勇者特急隊が所有する超AI搭載ロボットのダイノボンバー、バードボンバー、ライオボンバーの3機が合体したもの。
レスキューナイフ以外の手持ち武装はなく、力任せな格闘戦を得意としている。
しかし、彼の超AIは血の気が多い性格をしていることから救助そのものは不向きであり、武装ロボットの攻撃から民間人を守る盾としての役割を果たすことが多いことから、フェイズシフト装甲を採用している。
今回登場するドラゴンについて、ゲームで出てきたピンクと緑ともう1つの種類のは分かるのですが、それ以外のドラゴンについては攻撃手段を含め、よくわからない部分があります。どなたか、教えていただける方がいらっしゃったら、メッセージか感想で教えてください!
なお、Vでは登場していないあるキャラが今回登場します。
-トゥアハー・デ・ダナン 発令室-
3機のアーム・スレイヴと1機のモビルスーツを発進させたダナンは再び水中へもぐった。
「艦長、上空の白い戦艦から通信が入ってきております」
「繋げてください」
「アイ・アイ・マム!」
通信兵がパネルを操作すると、正面のモニターにルリの姿が映し出される。
その姿を見たクルー達が驚きを隠せずにいる中、ルリが口を開く。
「初めまして、地球連合軍所属、独立ナデシコ部隊のナデシコB艦長の星野ルリ少佐です」
「マジかよ…本当に艦長なのか?」
「ウチの艦長よりも年齢が低いんじゃ…」
ルリの言葉を半信半疑で聞き、騒然とするが、マデューカスとカリーニンの目線を感じ、すぐに兵士たちは口を閉じる。
地球連合軍という聞いたことのない組織の名前を聞き、テレサは自分が別の平行世界に来てしまったことを実感する。
どうしてこの世界に来てしまったのか、そしてどうやって元の世界へ帰ればいいのか。
その答えを知っているかはわからないが、今はあのドラゴン達を対処しなければならない。
そのためにも、今はルリを信じるしかない。
「こちらはミスリル西太平洋戦隊、強襲揚陸潜水艦、トゥアハー・デ・ダナン艦長、テレサ・テスタロッサ大佐です。状況の説明を願います」
-ナデシコB ブリッジ-
「説明…と言われても…」
テレサからの通信を聞いたハーリーはどう説明すればいいのかわからず、通信を行うルリに目を向ける。
(どうやら…向こうもあのドラゴンを含めて、現在の状況がわかっていないみたい…)
もしかしたら、ほぼ同時に転移してきた彼女たちがドラゴンについて少しでも情報を握っているかもしれないと思った。
しかし、彼女の話をわずかに聞いただけで、彼女たちも今の状況が把握しきれていないことが分かった。
当てが外れたものの、オモイカネが教えてくれた情報では、ドラゴンの種類は現在確認できるだけでもおよそ2種類。
15メートルから20メートルくらいの大きさのピンク色のドラゴンと100メートル近い大きさで深い緑色の上に複眼となっているドラゴン。
数は合計で20体以上で、能力は未知数。
となると、自分たちの戦力だけでは対処できない恐れがある。
ルリは今取るべき最善の手を打つ。
「テスタロッサ艦長。あの巨大生物は無差別に攻撃を仕掛けてくるそうです。まずはこの場を切り抜けます、力を貸してください」
「何の説明もなしにそんなことを…」
「それはできない状況、ということでしょう。了解しました、星野艦長。発進させたSRTチームと協力者のモビルスーツにそちらの援護をさせます。ダナンは水中から巡航ミサイルで援護します」
「分かりました。ありがとうございます」
ダナンとの通信を切り、ルリはすぐに近くにあるトレミーのスメラギと通信をつなげる。
テレサ達がドラゴンについてわからないとなると、一番情報をつかんでいる可能性が高いのは、言い出しっぺである彼女だ。
「何か、知っているようですね。スメラギさん」
ルリからの問いにスメラギは沈黙する。
表情を変えず、ただじっとルリの眼を見ていた。
それで何かを理解したのか、ルリは目を閉じ、フゥとため息をつく。
「分かりました。話は後程」
-インド洋 エリアD-
「クッソ!数が多いぜ…!」
ピンク色のドラゴン達が発射するビームを避けつつ、ソウジは照準も定めないままレールガンを連射する。
出鱈目に、とにかく撃っているだけの状態だが、それでも2,3匹のドラゴンを撃ち落とすことに成功する。
「ソウジさん、左!!」
「何!?うおおお!?」
チトセの声が響くと同時にヴァングレイの左腕あたりに衝撃が走り、機体が若干右に流れる。
とっさに装備しているシールドで受け止めはしたものの、そのシールドには刃物で切られたかのように痕がついていた。
「嘘だろ!?あんなちっちゃいのでこの衝撃かよ!?」
スラスターを吹かせ、姿勢制御をするソウジはナインが表示してくれた、先ほどの攻撃直前のドラゴンの姿を確認する。
攻撃してきたのはピンク色のドラゴンで、攻撃の瞬間、右の翼が大きくなっていて、先端部分が鋭利になっていた。
「まさかこいつら…自分の姿かたちをある程度変えられるってことじゃあねえよな!?」
「それって、あのゲッター1と同じってこと?」
「かもな…厄介だぜ、こいつは!!」
「久々に…狙い撃つぜ!」
GNライフルビットⅡを手にし、GNホルスタービットを盾替わりにしてトレミーと自機をドラゴンのビームから守りながら、次々とドラゴンを狙撃する。
ビームで頭や翼をもぎ取られたドラゴン達が海に落ちるのを見たロックオンは生理的な嫌悪感を覚えた。
ロックオン、本名ライル・ディランディは元々、AEUの商社で営業職を勤めながらも、裏では反地球連合政府を掲げる地下組織カタロンの構成員、ジーン1として活動していた。
3年前までロックオン・ストラトスを名乗っていた男、ニール・ディランディの双子の弟で、その縁があってか、刹那に誘われたこと、そしてソレスタルビーイングの情報をカタロンへ送るという自身の目的のために2代目ロックオンとなり、ソレスタルビーイングに入った。
なお、カタロンと言ってもロックオンが加わっていたのは現在では地球連合政府の議員となっているクラウス・グラードとシーリン・グラード夫人(旧姓はパフティヤールで、元アザディスタン王国の政治アドバイザー)が中心の穏健派だ。
クラウスは元AEUのモビルスーツパイロットで、1年前の戦争では中東第3支部のリーダーを務めていた人物だ。
彼は戦争によって身寄りを亡くした子供を保護し、ナチュラルやコーディネイターが混合する組織をまとめ上げた。
しかし、穏健派もいれば過激派も存在する。
カタロンは反地球連合を掲げるだけで、ネットワーク型の緩やかな繋がりの組織であることから、思想も方針も一致していないという問題をはらんでいた。
実際、過激派の起こしたテロによって民間人が犠牲になっている。
ロックオンはその活動の中で、自らの手でアロウズの兵士を射殺したことがある。
そして、アロウズが起こした虐殺の現場を目にし、多くの死体を見てきた。
モビルスーツ同士の戦闘であれば、相手の顔を見ることがないため、あまり実感がわかないのだが、今回相手をしているのは正体不明ではあるが、生物であり、ドラゴンだ。
もし、戦い慣れしていなかったら、今頃恐怖で頭がどうにかしていたかもしれない。
「ロックオン!デカイの来た!」
「ロックオン、デッカイ、デッカイ!!」
「でかいやつだと!?」
だが、そんな感情を抱くことは今の戦場では許されない。
仲間を次々と狙撃したサバーニャを倒すため、緑色のドラゴンが正面から迫ってくる。
GNライフルビットⅡで攻撃しても、展開される魔法陣によって阻まれ、GNホルスタービットの防御も体当たりで突破してくる。
「ロックオン!!」
危機を感じた刹那はロックオンに迫る緑色のドラゴンの頭上に立ち、GNソードⅤを突き立てようとする。
そこにも魔法陣が展開され、それがGNソードⅤの刃を阻む。
しかし、攻撃が阻まれているにもかかわらず、刹那は冷静だった。
刹那は初代ロックオンの言葉を思い出す。
それは3年前、エクシアに乗って武力介入を行う少し前のことだ。
(刹那、何故エクシアに実体剣が装備されているか、わかるか?GNフィールドに対抗する為だ。計画の中には対ガンダム戦も入っているそうだ。もしもの時には、お前が切り札になる。任せたぜ、刹那)
その言葉は3年前の地球連合軍によるソレスタルビーイング殲滅戦で現れた裏切者、アレハンドロ・コーナーが乗るアルヴァアロンと戦う時に思い出し、GNソードでGNフィールドを突破・勝利することができた。
最初に聞いた時は何を言っているのかよくわからなかった。
しかし、今は彼が自分のことを信頼してくれたから、言ってくれたのだということがわかる。
「その程度のバリアで…!!」
操縦桿を握る手に力をこめ、GNソードVが魔法陣を砕き、深々と緑色のドラゴンの頭に突き刺さる。
しかし、それと同時に刹那の脳裏に叫びのようなものが響いた。
しかも距離が近いせいなのか、より強く、頭痛を感じるくらいに。
(何だ…?何を、言って…??)
「刹那!そのドラゴンから離れて!!」
フェルトの声がコックピットに響き、正気を取り戻した刹那はGNソードⅤを抜かせ、ドラゴンから離れる。
落下予測コースすれすれに位置していたトレミーは高度を上げて回避していた。
致命傷を負った緑色のドラゴンは動きを止め、徐々に高度を落としていく。
そして、海に沈むと同時に大量の水が宙を舞い、周囲に降り注いだ。
「サンキュー、刹那。助かったぜ」
「あ、ああ…」
サバーニャの接触回線による通信が聞こえ、礼を言われた刹那はあの頭痛に関する疑問のせいか、戸惑いながらも返事をした。
「近づきすぎたか…!?」
脚部のミサイルランチャーでピンク色のドラゴンを撃墜したハサウェイはビームサーベルを抜き、更に側面のドラゴンを両断する。
ハサウェイはこれまで実戦で戦ったことがあるのがモビルスーツだけで、ドラゴンとまともに戦えるかどうか不安を覚えていた。
戦闘経験は宗介と比較すると少なく、Ξガンダムの性能に頼っているところもある。
しかし、Ξガンダムはミノフスキー・クラフトの恩恵により、サブフライトシステムなしで空を高速で飛ぶことができる。
大型化と引き換えに手に入れた多数のミサイルと出力もまた、ハサウェイにとって大きな助けとなっている。
何体かドラゴンを倒したことで、少し安心感を覚えたハサウェイだが、それを吹き飛ばす警告音が響く。
「後ろから…うわあ!?」
衝撃と共にΞガンダムが体勢を崩す。
バックパックあたりにピンク色のドラゴンがとりついており、至近距離からビームを発射しようとしている。
「させるかぁーーーー!!!」
しかし、発射直前に救援に現れたX3に尻尾をつかまれる。
そして、そのままドラゴンをハンマー投げと同じ要領で投擲し、他のピンク色のドラゴンと激突させ、2匹まとめてバルカンで撃ち落とした。
「気を付けろ!敵の数は多い!」
「すまない、助かったよ。君のガンダム…ちょっと変わったデザインをしてるね。ん…?」
モニターに映る、なぜか驚いた表情を浮かべるトビアにハサウェイは首をかしげる。
一方、トビアはハサウェイの姿を見て、かつて歴史の授業で聞いたとあるテロリストのことを思い出した。
およそ100年前、地球連邦政府の官僚や議員はジオン共和国の自治権放棄によって戦乱終結を宣言したのをいいことに、世襲制の様相を呈するようになり、彼らが生み出す差別政策によって自然発生的に増えた地球居住者は排除し自分達だけは好きに地球へ移住できる状況を作り出していった。
そして、地球から出ていかない一般の住民を不法地球居住者というレッテルをつけることで、マンハンターによる虐殺などの非道な手段で追い出していった。
そんな時に、とあるテロリスト集団が地球をクリーンにするために、人類全てが地球から出なければならない政策の実施を要求し、特権階級の人々をターゲットにモビルスーツを使ったテロ攻撃を行った。
その際に使用されたモビルスーツがシャアの反乱の時代にネオ・ジオンが使用していたギラ・ドーガの流れを汲んだメッサー、そして今トビアが守ったΞガンダムだ。
度重なるテロ攻撃によって特権階級の大半が殺される結果となったが、アデレート攻撃の際に連邦軍によってついにΞガンダムとそのパイロットであり、テロリスト集団のリーダーを捉えることに成功し、後日に彼を銃殺刑に処した。
その後、各地で起こった反地球連邦運動が急激に減少することとなった。
彼らのテロ攻撃は民間人などの無関係な人々を巻き込むことを極力避け、そうできるように配慮していたこともあり、今でも賛否が分かれているうえ、彼らをテロリストと認定すべきでないという声もある。
しかし、彼らの行動によって特権階級の力が衰え、後にそのテロリストを捉えた部隊の司令官だった男、ケネス・スレッグ大統領主導による改革が行われることとなった。
そのテロリストの名は…。
「マフティー…」
「ん?」
「ううん、なんでもない!後ろは任せてくれ!小回りならこっちが上だ!」
「あ、ああ…!」
よくわからず、困惑するハサウェイだが、ひとまず肯定するようにうなずき、通信を切る。
(Ξガンダムを見たとき、まさかと思ったけど、まさか本当に…)
持っている新しい武器、バタフライバスター2丁をサーベルモードからガンモードに変形させ、緑色のドラゴンの周囲を飛び回りながら連射する。
これは旋風寺重工でクロスボーン・ガンダムの共通装備であるザンバスターのデータをもとに、この世界で調達できる資材を利用して作ってもらったものだ。
前に装備したGNアクセルブレードとは異なり、X3のエネルギーを直接供給して使うことができるため、使用可能時間はそれよりも長いうえに、小型で取り回しが良い。
攻撃する中、トビアは決して出会うことのない人物との出会い、そしてモニターの映ったハサウェイに対する疑問を必死に消そうとしていた。
Ξガンダムはマフティーがテロ活動をしていたときに使用していた機体だ。
しかし、映像に映っていたハサウェイは資料集で見たマフティーと比較するとあどけなさがあり、トビアと年齢が近い。
更に彼が乗っていた潜水艦、トゥアハー・デ・ダナンとアーバレストなどのアーム・スレイヴというモビルスーツに似ているものの、大きさが10メートル未満の人型機動兵器は見たことも聞いたこともない。
それが何を意味するのか、分からないまま攻撃を続ける。
しかし、緑色のドラゴンが周囲に次々と生み出す魔法陣がIフィールドのようにビームを弾いていく。
ビームだけではなく、マイトウィングが発射するミサイルも防いでいた。
しかし、刹那がGNソードⅤで魔法陣を突き破り、頭部に致命傷を与えたように、それも無敵ではない。
「バリア付の相手は俺に任せろ!!」
リョーコのエステバリスカスタムがディストーションフィールドを展開し、真上から緑色のドラゴンめがけて突撃を仕掛ける。
彼女の存在に気付いた緑色のドラゴンが叫ぶと、上空のほかのピンク色のドラゴンが彼女を攻撃し始める。
しかし、ディストーションフィールドがドラゴンのビームをかき消し、それでは意味がないと判断したのか、接近しようとする。
「うちの隊長に近づくなっての!」
ナデシコBの直掩を行う三郎太のスーパーエステバリスがレールガンでリョーコに接近するドラゴン達を狙撃し始める。
更に別方向からも実弾による狙撃が始まる。
「なんだぁ?俺やロックオン以外にスナイパーだと?」
ガンダムサバーニャが行うのはビームでの狙撃であるため、実弾でそれを行うことができない。
まさかと思い、メインカメラで確認すると、狙撃予測地点にはドダイ改の上からアーム・スレイヴ用狙撃銃を握るガーンズバックの姿があった。
「ヒュゥー、やるなぁ、あいつ」
サブフライトシステムの上での狙撃は地上と比較すると不安定になりがちで、おまけに無人の場合は上に載っている機体から制御しないといけない。
クルツのガーンズバックが乗っているドダイ改にパイロットがいるかはわからないものの、それでも彼の狙撃に驚きを感じていた。
そして、エステバリスカスタムが突撃し、魔法陣を突き破るとそのまま弾丸のように緑色のドラゴンの背中から腹を貫いた。
「おっしゃあ!!これで…ってうわわわ!?」
倒した、と安心しかけたリョーコだが、ドラゴンの尻尾が襲ってきて、慌てて回避するが、左肩にかする。
コックピットの振動が襲い、おまけに左肩関節がダメージで動かなくなった。
更にエステバリスカスタムの攻撃でできた傷が徐々に消えていくのが見えた。
「くっそぉー!痛みを感じねえどころか、回復するのかよ!?」
倒し切れなかったことを悔しく思いながら、リョーコはデッドウェイトとなった左腕を強制排除する。
「昴リョーコ、あのドラゴンは頭部を狙え。それさえ破壊すれば、倒せる!」
「刹那…だったら!」
「そこの機動兵器は下がれ、あとは俺がやる!」
「んだとぉ、俺を誰だと思って…ってちょっと待て!!」
一方的に通信を行ったアーバレストがドダイ改に乗ったままエステバリスカスタムを横切るように通過していき、自分より年下のくせに命令口調で言ってきたことに腹を立てるものの、緑色のドラゴンの下部にいたピンク色のドラゴンがリョーコを襲う。
フィールドの冷却が始まっており、すぐに展開ができないことから、やむなくラピッドライフルで応戦する。
しかし、謎の無人モビルスーツ部隊との戦闘で弾薬を消耗させていたことから、弾切れになってしまう。
「マジ…かよ…」
身を守る手立てを失ったエステバリスカスタムにドラゴン達が容赦なくビームを放とうとする。
しかし、ビーム発射の前に側面から飛んできたミサイルとビームの雨を受け、次々とドラゴン達が撃破されていく。
味方に当たるかもと思ってしまうほどの高密度のビームとミサイルであるにもかかわらず、エステバリスカスタムには一度も命中していない。
「大丈夫ですか!?」
「マリーの嬢ちゃんか!?ってことは…」
通信でマリーの声が聞こえ、すぐにハルートが近くまで来た事でリョーコはあのような滅茶苦茶な攻撃ができた理由が少しだけわかった。
「リョーコさん、ハルートに捕まってください。一度ナデシコまで送ります」
「ああ…急いでくれよ」
「あのデカブツ…どう始末するか…」
アーバレストを乗せたドダイ改を飛ばし、魔法陣から発射される電撃やビームを回避しながら、宗介は緑色のドラゴンの頭部を破壊する方法を考える。
不用意に近づけば、ドラゴンの攻撃でドダイ改を失うことになりかねない。
近くには着地できる場所がなく、アーバレストなどの多くのアーム・スレイヴには水中戦闘用の装備がない。
コックピットへの浸水は防ぐことができるものの、自力で海上に出ることができず、トゥアハー・デ・ダナンに拾ってもらえるのを祈らなければならなくなる。
「どうやら、あのドラゴンは攻撃の際、顔を攻撃対象に向けるそうです」
「顔を向けなければ攻撃できない…ならば、何かで気をそらすことができれば…ウルズ6、奴を引き付けることはできるか!?」
「悪いが、その前にちょっとやりすぎたみてえだ…」
「どうした?クルツ!」
「ドラゴン達が邪魔で狙撃できねえんだ!おまけにライフルをぶっ壊された!」
クルツのガーンズバックの周囲には仲間を狙撃されたことで腹を立てたのか、複数のドラゴンが近づいており、既にビームで銃身が破壊され、狙撃銃が使い物にならなくなっている。
「やってくれたなぁ…気に入ってたんだぜ、こいつはぁ!」
ドダイ改に搭載していたアサルトライフルを手に取り、更に頭部のチェーンガンと一緒にドラゴン達に攻撃する。
「ウェーバー!!」
クルツの危機を知ったクルーゾーのファルケが腕部のワイヤーガンを発射し、ドラゴンの1匹の腹部に着弾させる。
そして、アサルトライフルを連射しながらドダイ改からジャンプする。
アサルトライフルの弾幕を受けたドラゴンが海へ落ちていく中、仲間についたワイヤーを取ろうと別のドラゴンがビームを放つ。
しかし、つなげたドラゴンをハンマーのように振り下ろして2匹同時に撃破すると同時にワイヤーが切れた。
姿勢制御用以外のスラスターを内蔵していないファルケはそのまま落下するが、下のドダイ改に無事に乗ることができたため、無事だった。
更に接近してくるドラゴンを左手に持った大型のアーム・ズレイヴ用ククリナイフ、クリムゾン・エッジで切り裂いた。
「いやー、助かったぜ。だが、これじゃあ宗介の頼みに応えられねえな…。悪い、ウルズ2。宗介がひきつける役がほしいそうだ、代わりに頼むぜ」
「はぁ?ライフルを破壊されたから代わりにやれ、だって!?ったく、スナイパーが居場所を知られた上にライフルを破壊されたらおしまいだろう!?」
ドラゴン達の位置データをほかのアーム・スレイヴとダナン、そしてΞガンダムに送りつつ、弾切れになったアサルトライフルを投げ捨てたマオはクルツの通信に腹を立てる。
隠れる場所が無きに等しいこのエリアDでは、見つかってしまうのは仕方ないことだが、それでもライフルが破壊されないように何か手段をとることができたはずだ。
ただ、ドラゴンという機動兵器とは異なる未知なる存在との戦いで、数が多い。
こうなる可能性も視野に入れておくべきだったかもしれないと思いつつ、マオはドダイ改の側面に搭載されているミサイルランチャーを手にし、海面すれすれに飛行させる。
そして、緑色のドラゴンの背後に回り、ミサイルを全弾発射する。
ミサイルは魔法陣によってすべて防がれてしまうものの、大きな爆発が連続して怒ったことから、注意が後ろに向く。
「アル、ラムダ・ドライバだ!!」
「了解」
宗介の命令に応え、アーバレストに搭載されているシステム、ラムダ・ドライバが起動する。
背部の放熱板が展開され、そこを中心に青い光が発生する。
「この感覚…だんだん慣れてきたな」
アーバレストをドダイ改からジャンプさせながら、宗介はこれまで不愉快に思っていたラムダ・ドライバを使いこなせるようになったことを不思議に感じていた。
宗介は信頼性の高い兵器にこそ価値があると考えており、必要な時に確実に動作させることが難しいものを毛嫌いする傾向にあった。
ラムダ・ドライバはまさに後者に値する存在であり、強い集中力とイメージをTAROSと呼ばれる装置を介することで物理的な斥力に変換する魔法のようなシステムだ。
故あって自分以外に起動させることすらできない専用機となってしまったアーバレストを使用するようになり、当初は自分にとってはわけのわからない存在であるラムダ・ドライバを搭載しており、おまけにハロなどに搭載されているのと根本的に構造が異なり、人間のように自由に話すようになったAIアルの存在もあり、信用していなかった。
しかし、戦いの中で徐々にアルとラムダ・ドライバの存在を認めていき、今ではこうして使いこなせるようになってきた。
最も、そのためにはかなりの集中力が必要で、今でも長時間の使用が難しいが。
アーバレストは手に持っている57mm散弾砲、ボクサーを手にする。
宗介がアーム・スレイヴに乗っているときからずっと愛用している銃で、相手に接近し確実に当たる距離から確実に当てるインファイター向きの銃だ。
ボクサーの場合は粘着榴弾や対モビルスーツ榴弾、装弾筒付翼安定徹甲弾などの弾丸を装填することができ、様々な状況に対応しやすい。
そのうちの装弾筒付翼安定徹甲弾を装填し、落下しながら緑色のドラゴンの頭部に銃口を向ける。
銃口に青い光が宿り、発射された弾丸は緑色のドラゴンがとっさに生み出した魔法陣を突き破り、鼻のあたりに着弾する。
致命傷にはならないものの、魔法陣を突き破るほどの破壊力の弾丸に動揺したのか、ドラゴンが体勢を崩す。
駄目押しに脇下の武装ラックに装備されている炸裂弾頭付きダガーを手にし、大きく口の開いたドラゴンに向けて投げつける。
舌に刺さると同時にダガーが爆発し、緑色のドラゴンの頭部が吹き飛ぶ。
そして、残った体はラムダ・ドライバの力で増した爆発で周囲のドラゴン達を巻き込んで海へ吹き飛んでしまった。
「お見事です、軍曹殿。ですが…」
「問題ない。海上を走る!」
今度は足元に斥力を生み出し、アーバレストを会場に着地させると同時にそのまま全力疾走で走らせる。
そして、降下してきたマオのガーンズバックが乗ったドダイ改の下についているグリップを手にし、離陸した。
「ふうう…アル、ラムダ・ドライバ終了だ」
「了解」
青い光が消え、放熱板が収納される。
強いイメージと集中力を持続させる必要のあるラムダ・ドライバであるため、パイロットである宗介にかかる負担は大きい。
感覚には慣れてきてものの、ラムダ・ドライバを長時間使えるようになるまでにはまだまだ時間がかかる。
「すげえ…あんな小型機で緑のドラゴンを倒しやがった…」
ソウジはアーバレストのまさかの活躍に驚きを隠せなかった。
魔法陣を突き破る弾頭や巨体を吹き飛ばすほどの爆発、更に海上を走るなど、あの機体が生み出す青い光の力のおかげという個所もある物の、パイロットの力量も相当なものに感じられた。
もしかしたら、トビアに匹敵するレベルかもしれない。
「ラムダ・ドライバ…」
「ん?」
「あの白い小型機動兵器に搭載されているシステムの名前です。原理は不明ですが、強いイメージによって斥力を作ることができるそうです」
「早い解析と解説、ありがとな」
「ソースケ、これでドラゴン達は全部倒した。ダナンへ戻るよ」
「ああ…」
「3時方向より正体不明機を確認」
「何!?」
マオのガーンズバックに搭載されているAI、フライデーの声を聞いたマオは即座に単分子カッターを持たせ、チェーンガンをいつでも発射できるように引き金に指をかける。
接触回線でマオの声が聞こえた宗介もいざというときに備え、もう1本の炸裂弾頭付きダガーを手にする。
その方向から飛んできたのはドラゴンではなく、8メートル足らずの大きさで、ピンク色で重量のある機動兵器だった。
塗装はピンクである程度統一されているものの、ところどころにつぎはぎがあるように見え、左腕に装備されている楕円形のシールドにはパイルバンカーが装備されている。
「あの機体は…」
残ったドラゴンがいないか、トレミーのそばでセンサーを使って周囲を確かめていたティエリアはその機体を見て、スメラギと一緒に見ていた資料に出てきた機動兵器のことを思い出す。
その機体がここに現れたこと、そしてドラゴンの存在。
この世界のタブーが実在する大きな証拠だ。
「まさかとは思うが…敵機か!?」
「全員、あの機体に攻撃しないで!?」
「スメラギさん…?」
オープンチャンネルで全機にスメラギの声が響き、その機体はトレミーのブリッジの前まで来る。
そして、右腕に搭載されているワイヤーガンを発射し、ブリッジの上の装甲にそれを取り付け、接触回線を開いた。
「ソレスタルビーイングのプトレマイオス2改、そして一緒にいる戦艦はナデシコBでよろしいでしょうか?」
トレミーのモニターにピンクのトリプルテールでピンク色のバイザーをつけた少女の姿が映し出される。
胸の谷間や腹部など、露出個所の多いスーツを着用しているが、幸いなことにトレミーのブリッジには男性がおらず、イアンは格納庫、ラッセは砲撃席にいるため、それを見ることができない。
「ええ…。あなたは?」
「私はアルゼナルのナオミです。あなた方をアルゼナルへ案内する任務を受け、ここまで来ました」
「アルゼナル…あなた方の基地の名前ね?」
「はい。私についてきてください。みなさんが接触予定と思われる方は既にアルゼナルでお待ちしています」
「そう…。だったら安心だわ」
「スメラギさん…」
フェルトがスメラギに目を向ける。
このエリアDについて、黙っていたことはこのことだったのかと確認するように。
スメラギは彼女に目を向け、何も言わずに首を縦に振る。
このエリアDとドラゴン、そしてアルゼナルなど、始祖連合国関連の情報はヴェーダでも部分的にしか情報を入手できていないうえに、信憑性が欠けている恐れがある。
そのため、この情報はスメラギとティエリアだけの秘密になっていた。
「分かったわ。ところで、今近くにいる潜水艦なのだけど、同行してもかまわないかしら?」
「潜水艦…ですか。司令に確認しますので、少々お待ちください」
司令と通信するためか、一度トレミーとの通信が切れた。
数分すると、再びナオミと通信がつながった。
「司令から返事が来ました。許可するとのことです」
「分かったわ。すぐに出発の準備をするわ。ミレイナ、ナデシコとトゥアハー・デ・ダナンに連絡して。これからあの機動兵器の案内でアルゼナルへ向かうって。それから、機動部隊は全員帰投させて」
「了解です!」
-トゥアハー・デ・ダナン 発令室-
(謎の磁気嵐、ドラゴン…そして謎の部隊…)
機動部隊を収容するため、ダナンを海上へ出した後、テレサはこのありえない出来事で混乱しかけた頭の中を整理し、これからすべきことを冷静に判断していた。
「艦長…」
「まずは情報収集が最優先です。ナデシコBとプトレマイオス2改と通信を…」
「艦長、プトレマイオス2改から通信です。これより、迎えに現れた機動兵器の案内の元、アルゼナルへ向かう。同行願うと」
「分かりました。彼らの指示に従いましょう。返事を送ってください。トゥアハー・デ・ダナンはそちらの指示に従う、と」
「イエス・マム!」
通信兵は急いでトレミーとナデシコBと通信を始める。
その中で、テレサは目の前に広がる青い海をじっと見つめていた。
(青い海…写真でしか見たことのないあの海をこうしてみることができるなんて…)
「艦長、ナデシコB艦長の星野ルリ少佐が直接艦長と通信で話をしたいとのことです。ここの…いえ、この世界について…説明する、とか…」
ルリからの通信を聞いた通信兵はどういう意味かまるで分からない様子で、自信なさげにテレサに言う。
テレサもその言葉の意味がいまいちわからないものの、情報不足のまま判断することは危険だということを理解していた。
「分かりました。つなげてください」
「了解…」
通信兵が席につき、操作を始めると、正面モニターにルリの姿が映し出される。
「テスタロッサ艦長、ならびにトゥアハー・デ・ダナンのみなさん。危険なところを助けていただき、ありがとうございました」
「いえ、それは私たちも同じです。それで…」
「はい。まずはこの世界について、私たちの知る限りのことをお話しします」
ルリは今の世界についてのことを一つ一つ、丁寧に説明し始める。
同時に、テレサも自分たちがここに来るまでの状況を説明し始めた。
20分近く時間を使い、話し終えると、ルリはまず結論を口にする。
「共有した情報を統合した結果、あなた方は別の世界の地球からこの世界の地球へ来たと考えるのが妥当でしょう」
「そんな…」
「信じられませんか」
「いえ、私もあなたと同じ結論に達するしかありません」
どう冷静に情報を整理し、仮説を立てようとも、この結論から逃れることができない。
第一、この世界で起こっている出来事は自分たちがいた世界での出来事とまるでかけ離れているうえ、太陽炉やエステバリス、超AIなどは自分たちのいた世界には存在しないものだ。
「より詳しいことは落ち着いてからお話しします。すぐ出発することになるかもしれませんから…」
「わかりました、まずはこちらの乗員の安全を保証してくださった事、感謝します」
「助けられたお礼です。それで…つかぬ事をお聞きしますが、あなたのいた世界では、あなたのような年齢の方が艦の責任者であるのは、普通のことなのでしょうか?」
ルリにとって、別世界のことの中で気になったのはそれだ。
テレサはルリより年上ではあるが、それでも17歳くらいで世間でいえばまだまだ子供だ。
しかし、世界が違えば価値観などに違いが出てもおかしくない。
もしかしたら、彼女のような年齢の人物が艦長であることが普通の世界があってもおかしくないだろう。
そんな個人的な興味から、そんな質問を口にした。
「いいえ、特殊な例です。こちらの世界では?」
「私も特例だと言えます」
「そうだったんですか…」
他愛もない話だが、共通点を見つけることができた嬉しさから、テレサの表情が和らぎ、ルリも口角を上げる。
もっといろいろと話をしたいところだが、今はどちらにも他にやらなければならないことがある。
「では、テスタロッサ艦長。落ち着いたら、今度は直接お話ししましょう」
「ありがとうございます、星野艦長。その時をお待ちしております」
「では、失礼します」
ナデシコBとの通信が切れ、これまでの両者の会話を聞いた兵士たちはショックで動揺し始める。
おそらく、この話を聞いていないほかの兵士たちにも同じことを聞かせたら、同じことになってしまうだろう。
出発前に、まずは彼らに現状を認識させ、そのうえで落ち着きを取り戻させる必要がある。
「想像を超えた事態が起こっているとは思っていましたが、事実を突きつけられると、さすがにショックですね…」
「艦長…」
「あの青い海を見てしまった以上、いつまでも隠し通せることではありませんね。カリーニンさん、格納庫にみなさんを集めてください。現時点で知る限りの情報を公開しましょう」
「了解です。すぐに全員に伝えろ、格納庫に集まれと」
「ハッ!」
カリーニンは通信の届かない箇所で作業している兵士たちにも口頭で伝えるため、発令室を後にする。
通信兵がダナン全体に格納庫へ集合するように命令し、発令室から最低限の兵士を除いて、すべての兵士が格納庫へ向かっていく。
「よろしいのですか…?艦長」
「不安にさいなまれたままの時を過ごすより、建設的だと思います。問題は…」
「はい、我々が元の世界へ戻れるか…です」
元の世界のことを考えながら、マデューカスは答える。
その世界にはまっている人々がいる上、やらなければならないことが数多くある。
それをなすためには、わずかな戦力低下も許されない。
そうなると、今はナデシコBとソレスタルビーイングを信じるしかない。
(私たちが戻らなければ、地球は…)
自分たちのいる世界の地球に思いをはせながら、テレサは格納庫へ向かった。
-トゥアハー・デ・ダナン 格納庫-
「ソースケ!!」
アーバレストを乗せたドダイ改が格納庫に収容され、水色の長髪で赤と来い青がベースのTシャツと茶色いチノパン姿の少女が下りてきた宗介に駆け寄る。
「千鳥!」
走ってきた彼女に目を向けた宗介はその名を呼ぶ。
彼女は千鳥かなめで、宗介の護衛対象となっている少女だ。
本来は高校に通っているのだが、今は故あってトゥアハー・デ・ダナンで彼らと行動を共にしている。
「ソースケ、いったいどうなってるの!?なんで海が青くなってるの!?しかもあのトカゲは!?」
「待て、一つずつゆっくりと説明する。そんなに立て続けに質問しないでくれ」
「軍曹殿、あまりにも奇想天外な事態であるにもかかわらず、冷静ですね」
アーバレストのメインカメラを宗介とかなめに向けたアルは冷静な宗介を意外に思っていた。
現実主義で、ラムダ・ドライバをペテンだと言い張っていたことのある宗介なら、かなりの動揺があっても当然だ。
「この機体に乗ってから、理不尽なことや不可解なことの連続だったからな。いちいち驚くのも馬鹿らしくなった」
アーバレストに乗ってから、宗介は現実とは思えないような様々な出来事とかかわるようになった。
最初は非現実的と否定し続けていたが、今ではもうすっかり慣れてしまっていた。
人間の適応力がなすのか、それともただ単に感覚がマヒしただけなのか。
「初めて、軍曹のことを頼もしく思いました」
「つまらんお世辞を言う暇があったら、今収集したデータを整理しろ。これからもあれと戦う可能性があるからな」
そういいながら、宗介はかなめからカプセル薬を受け取り、それを口に含む。
「ねえ、ソースケ。風邪でも何でもないのに、どうして薬なんて飲むの?」
「分からん。少佐から定期的に服用するようにと言われたが…」
ペットボトルの水を口にしつつ、宗介はかなめの質問に答える。
その間にもクルツ達が戻ってきて、ダナンの兵士たちも集まってくる。
そして、テレサとカリーニン、マデューカスによる説明が始まった。
武装名:バタフライバスター
使用ロボット:クロスボーン・ガンダムX3パッチワーク
旋風寺重工で新たに開発されたX3の武器。
ザンバスターと同様、ビームライフルとビームサーベルの2つの機能を兼ねている。
ザンバスターのデータとトビアのこれまでの戦闘データ、そしてGNアクセルブレードの構造から、短時間で、そして片手のみで変形することが可能になるように構造が折り畳みナイフのように簡略化されている。
そのため、整備性が高いうえにGN粒子を使わないことからGNアクセルブレードと比較すると長時間の戦闘で使用しやすい。
今後、遭遇する相手に会わせて両者の武器を使い分けるとのこと。
なお、スカルハートなどの別のクロスボーン・ガンダムでもそれを装備することが可能。