スーパーロボット大戦V-希望を繋ぐ者   作:ナタタク

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機体名:スーパーエステバリス
建造:ネルガル重工
武装:ミサイルポッド、連装キャノン×2、大型レールカノン、重力波ビームライフル、イミディエット・ナイフ、ディストーションフィールド、
主なパイロット:高杉三郎太

ナデシコBに配備されているエステバリスの1機。
エステバリスカスタムとは異なり、重力波コントロールが1つしかないものの、兵装が強化されており、基本的にグラビティブラストとミサイル以外の武装が不足しているナデシコBを補助する役回りになることが多い。
元々、設計自体は3年前に完成しており、そこからの変化はないものの、度重なるアップデートの結果、兵装の強制排除に伴う姿勢制御などのバランス調整はOSが自動的にできるようになった。


第22話 再出発

-ナデシコB ブリッジ-

「艦長、言われた通りに暗号通信を送りました。けど…」

暗号通信を終え、再びナデシコBの制御を行うハーリーだが、彼にはあの暗号の意味がまるで分からなかった。

地球連合、プラント、木連の1年前までの暗号データがすべて頭に入っている彼にも、今回ルリが渡した暗号が解読できず、どういう意味の物なのかを全く教えてもらえなかったからだ。

「意味は分からなくて結構です、問題はこの暗号が無事に送信できたか、ただそれだけですから」

ルリの言っていることを理解できないハーリーは首をかしげるが、攻撃が来る場合に備え、ディストーションフィールドの調整を始めた。

 

-ヌーベルトキオシティ メガロステーション周辺-

「くそ…何なんだこいつは!?弾丸を飲み込んでやがる!!」

ボンバースクリーマーやボンバーミサイルでパオズーに攻撃するトライボンバーだが、いずれもパオズーから伸びてくる触手にからめとられ、そのまま飲み込まれていく。

更に、取り込んだ金属で自己改造を行い、大型化していく。

「くっそー!この武装ロボット!ミサイルもバルカンも飲み込みやがった!!」

「トライボンバー!あの武装ロボットは俺とソウジさんでやる!お前はアリクイ型を倒せ!」

「…了解!!」

実弾しか武器がないトライボンバーでは、パオズーを倒すどころか強化の手伝いしかできない。

彼はやむなくパオズーの相手をこちらへ向かうマイトガインとヴァングレイに任せ、フロマーシュ軍団の元へ向かった。

「うげえ…ひどい形のシュウマイだぜ」

パオズーを見たソウジはヤマトの食堂で食べたシュウマイを思い出す。

あの時のシュウマイはほくほくしていて旨かったが、今目の前にいるシュウマイは旨みの欠片もない。

「ナイン、こいつはどうやって倒しゃあいいんだ?」

「解析しましたが、あの武装ロボットは武装非武装問わず、金属を取り込むことで自己強化することのできるタイプです。ですので、コアを破壊するかビームによる破壊が有効だと考えられます」

「この前のマジンとか六連の逆パターンってわけか!」

「いいな、舞人!」

「はい。ビームなら、マイトガインでも使えます!」

ヴァングレイが両腕のビーム砲を連射し、パオズーを攻撃していく。

ナインの予想通り、ビームに対しては吸収することができず、命中するたびに装甲が削られて行っている。

そして、ビームがパオズーの体内にあるボンバーミサイルの火薬に当たったことで、そのパオズーが爆発し、同時にコアも大破した。

「よっしゃあ!!トライボンバーのミサイル、無駄じゃなかったな!」

「AIなら動きが読みやすいぞ、ガイン!」

「了解、シグナルビーム!!」

マイトガインに向けて一直線に進むパオズー達をシグナルビームで照射する。

ビームで貫かれ、コアを失ったパオズーは機能停止し、その場でバラバラになった。

 

-ホイ・コウ・ロウ邸-

「ぐぬぬ…やはり、ビームに対する防御力に課題があるネェ…。だが、これほど早くに対策されてしまうとは…」

ヴァングレイとマイトガインに次々とパオズーが破壊されるのを見たホイは短時間で弱点を見抜かれたことに腹を立てる。

パオズーはコアさえ破壊されなければ、金属を取り込むことで再生・強化できる武装ロボット。

しかし、ビームに対しては対ビームコーティングが施された金属を取り込まなければ無力であり、それは重々に承知していた。

せめてビームシールドを使うことのできるモビルスーツを取り込むことができれば、と思っていると、テーブルの上の通信機にある暗号が表示される。

「ふむ…そろそろネ。チンジャ、出るネ」

「出る…?一体、どこへ…?」

立ち上がり、使用人に車の用意をさせるホイを見て、チンジャは首をかしげる。

「スポンサーからのご依頼ネ」

 

-ヌーベルトキオシティ メガロステーション周辺-

「舞人さんとソウジさんから連絡!シュウマイ型武装ロボット…?をすべて撃破したとのことです!」

「よっしゃあ!残るはアリクイだけだな!!って…おい、なんだこいつら!?」

残るフロマーシュを撃破し、さっさと戦いを終わらせようと意気込んだリョーコ。

だが、フロマーシュのコックピットが次々と空に向けて撃ちあげられ、パイロットのいなくなったフロマーシュ達がズンズンと前進し始める。

前進しながら、無差別にビームを発射してくる。

「こいつら!?街中で無差別にビームを撃つたぁ、どんな神経をしてやがる!?」

ビームをディストーションフィールドでかき消しながら、三郎太が叫び、トライボンバーがボンバーガントレットでフロマーシュの首を貫き、撃破する。

「おかしい…どうして急にこんなことをしやがんだ?」

小隊長を務めるくらいの経験と実力を手にしたリョーコはラピッドライフルを撃ち、ディストーション・アタックでオートパイロットのフロマーシュを倒しながら、敵の急な動きの変化に疑念を抱く。

パイロットとしての経験が不足しているピンク・キャットのメンバーが勝ち目がないから脱出するところまでは理解できる。

しかし、なぜフロマーシュを自爆させず、このような凶行をさせるのかがわからない。

「まさか…これは!!」

リョーコが何かに気付くコンマ一秒前に、コックピットにボース粒子の反応キャッチを伝える警告画面が表示される。

そして、反応をキャッチした位置を見たリョーコは急いでナデシコBとほかの味方機に通信をつなげる。

「ルリ、みんな!ボソンジャンプだ!奴らが来たぞ!!ナデシコを囲みやがる!!」

「俺がすぐに向か…ゲッ、俺のところにまで!?」

パオズーを撃破し、一安心しているソウジの周囲を灰色の夜天光とも言うべき複数の機体がボソンジャンプで現れる。

急いで前方の2機をディストーションフィールド展開前にビーム砲で仕留めるが、側面や後方の機体がフリーになってしまう。

「やべえ!」

「ソウジさん、2番サブアームを後ろへまっすぐ伸ばして!!」

「何!?」

聞き覚えのある少女の声にびっくりするソウジだが、その声に従ってサブアームを伸ばす。

サブアームと対艦ミサイルが接触し、そこを中心に爆発する。

同時に、その爆発に巻き込まれたミサイルも誘爆していく。

「うおらぁぁぁ!!」

突然の爆発で相手パイロットの眼がくらんでいると判断したソウジはヴァングレイを急旋回し、両肩のミサイルランチャーを発射する。

反撃のミサイルは対艦ミサイルを撃ってきた機体たちに着弾し、元々小型の機動兵器であり、耐久性がマジンなどのジンシリーズと比較すると難があるためか、あっさりと撃破することができた。

「はふう…ヤバかったぜ…。だが、さっきの声は…」

「ソウジさん!!」

通信用モニターに突然、通信機を持ったチトセの姿が表示される。

背景として映る空やコンクリートの床を判断すると、彼女はここの近くのビルの屋上にいることがわかる。

必死に走ってそこまで来たのか、汗でびっしょり濡れており、息も荒くなっている。

「チトセちゃん!?なんで通信が…??」

「私が念のため、姉さんに通信機を渡しておきました」

「ナイン…」

「ちなみに、チトセさんがいる場所はこちらです。このままでは危ないので、さっさとサブパイロットシートに…」

「ああ…」

なぜ、辰ノ進の家に置いてきたチトセがここにいるのかわからないものの、先ほどボソンジャンプしてきたあの機体がもう現れないとは限らないし、ナデシコBの周辺にも現れていることをリョーコの通信で知っている。

ソウジは表示された座標にヴァングレイを向かわせ、チトセの目の前に来ると、彼女と同じ高さになるように機体の高度を調整し、コックピットを開いた。

「よぉ、チトセちゃん…」

「ソウジさん…」

ぎゅっと拳に力を入れたチトセはうつむいく。

自分は先ごろ戦うことを放棄し、この世界に残ることを選んだ。

そんな自分を、戦うことから逃げた臆病な自分をソウジは受け入れてくれるのか?

一緒に戦うことを許してくれるのか?

そんな不安が心に宿る。

ガタンと音が鳴り、足音が近づいてくる。

「ソウジさ…!?」

何故こちらに来るのかわからず、顔を上げると同時にソウジの手がチトセの頭に上に乗る。

ゆさりゆさりと手が動き、ソウジが自分の頭を撫でているのだということが分かった。

笑った顔で、まるで子供をあやすかのように。

子ども扱いされた悔しさと自分を何も言わずに受け入れてくれることへのうれしさがごちゃ混ぜになり、涙が出てくる。

「泣くなよ、チトセちゃん」

「グス…泣いで…まぜん!!」

せめてもの強がりを口にし、無理やり左腕で涙を拭きとる。

目の周りは赤くなり、彼女の眼はじっとヴァングレイのコックピットに向けられていた。

「キャップ、姉さん。さっさとナデシコの救援へ行ってください」

「あのなー、ナイン。こういう感動的なところではキスしてから…」

「分かったわ、ナイン!」

パッとソウジから離れたチトセはヴァングレイのサブパイロットシートに座り、OSなどのチェックを始める。

「サブパイロット側からの操作は…。うん、それで、サブアームは…あとは体で覚える!ソウジさん、いつでもいけます!」

「ふぅ…まだまだ攻略には時間がかかるか。わかったぜ、チトセちゃん!」

メインパイロットシートにソウジが座ると同時に、コックピットが閉じる。

ヴァングレイは上昇し、上空にいるナデシコBの元へ向かった。

 

-ナデシコB ブリッジ-

「うわあ!!火星の後継者って、ここまでボソンジャンプの制御を…!!」

ディストーションフィールドの制御を攻撃による振動に耐えながら行うハーリーは敵のボソンジャンプ制御の高さに舌を巻く。

この前の戦闘でも、北辰と北辰衆はボソンジャンプを有効的に活用してアキトやソウジの隙を突いたり、離脱したりしていた。

そのことを考えると、草壁の言っていたボソンジャンプを制御する手段を持っているという言葉が真実だと確信できてしまう。

「艦長!このままだと、こちらがパクンと…!」

「大丈夫です。そろそろ、彼らが来ます」

ブリッジの前にロボットがボソンジャンプし、対艦ミサイルを発射しようとする。

ハーリーはそのロボットの出現に驚くが、ルリは表情を変えることなく、ただそれを見つめていた。

しかし、そのロボットは頭上から降ってきた一筋のビームでドーナッツのように貫かれ、爆発した。

周囲にいたほかの機体は真上からの攻撃に驚き、ディストーションフィールドを展開するが、今度は上から落下してきたモビルスーツが持つ2本のGNソードⅡに近い構造で、柄の部分がバイクの持ち手に近い形となっている実体剣2本で切り裂かれる。

「来ました…彼らです。ですが…1機だけ、ちょっと違いますね」

ルリはナデシコBの周囲のロボットを斬り続けるガンダムを見る。

そのガンダムの口元の装甲は展開されており、X字のスラスターがついていた。

 

-??? ブリッジ-

「さすがはナデシコね。自らおとりになることで、火星の後継者を引き付けるなんて」

茶色い癖のある髪をした、紫と白がベースの制服を着用した、ヤマトやナデシコBと比較すると6畳半の部屋のような狭さのブリッジの艦長席に座っている女性がモニターに表示されるナデシコBを見る。

「スメラギさん、ナデシコとの通信がつながりました!」

ピンクの制服とそれよりも濃いピンクのショートヘアの少女、フェルト・グレイスが言うと同時に、正面モニターにルリが表示される。

「よく来てくださいました、ソレスタルビーイング。みなさんが接近してくれたおかげで、危機を脱することができました」

「ええ。その接近については、あなたたちには織り込み済みだったみたいだけれど」

「ボース反応、確認したです!!」

フェルトとは背中合わせでオペレーター席に座る、茶色いウェーブがかったセミロングで、黄色い制服と緑のミニスカート姿の少女、ミレイナ・ヴァスティが反応があった座標を表示する。

再びナデシコBの周囲に現れており、今度もあの夜天光そっくりなロボットばかりだ。

「積尸気…量産に成功したみたいね」

「スメラギさんよぉ、あいつらはディストーションフィールドを展開している。このまま狙撃援護はきついぜ」

先ほどビームで狙撃を行った、緑と白が基調のガンダムに乗っている、茶色い髪で緑色のノーマルスーツとヘルメットを着けたパイロット、ロックオン・ストラトスがぼやく。

狙撃担当であるとはいえ、相手である積尸気のサイズはエステバリスレベルであり、狙いがつけづらいうえにドクロのガンダムがナデシコBの直掩に回っている。

下手して彼に誤射してしまう可能性がある上に、ディストーションフィールドで防がれる可能性も高い。

一応、彼が乗っているガンダム、ガンダムサバーニャはミサイルがあるとはいえ、この距離から撃っても当たる保証がないうえ、大気圏内での戦闘であることから、軽量化のために追加武装を取り外している。

「刹那に出撃させるわ。ロックオンはアレルヤとトレミーの直掩を」

「了解だ!」

 

-ヌーベルトキオシティ メガロステーション上空-

青を基調とした、ナデシコBに似た形をしているものの、その戦艦と比較するとシャープな印象の強い形となっている戦艦、プトレマイオス2改の2つのハッチが開き、左側のハッチにはオレンジ色でモビルスーツレベルの大きさの戦闘機のようなモビルアーマーが発進準備を整えていた。

「まさか、大気圏内でハルートを使うことになるなんて…」

コックピットの前に設置されているサブパイロットシートに座る、若干赤掛かっているオレンジのノーマルスーツを着ている、白いロングヘアーの女性、マリー・パーファシーは事態の変化を静かに感じていた。

1年前の戦争後、地球連合政府はロゴス崩壊によって地球で起こった大規模な政治的、経済的混乱の収束のために奔走しつつ、ナチュラルとコーディネイターが2回にわたって地球やコロニーを滅ぼすような愚かな戦争をした反省と、それが二度と繰り返されないための融和政策を行っている。

しかし、それによって既得権益を奪われたり、元アロウズ兵に対する降格人事、ロゴスの残党をはじめとした反コーディネイター勢力によるテロや反乱がおこっているのは事実で、それに対し、ソレスタルビーイングは武力介入を続けていた。

ソレスタルビーイングはその政策を支持しているが、自らは私設武装組織、いうなれば反政府組織のような存在であり、可能な限り表立って行動することは避けなければならない。

また、軌道エレベーターや大気圏突入・離脱やコロニーの出入りに対する警備が厳重になったことから、ガンダムやプトレマイオス2改を大っぴらに動かすことができない。

そのため、武力介入に関してはガンダムの使用を極力避けており、ユニオンフラッグや市場に流出したGN-Xといった旧型モビルスーツを使用することが多く、ガンダムを使うにしても粒子貯蔵タンクを搭載したものに改修した旧型のものを使っているのが現状だ。

だからこそ、地球で最近完成したばかりの新型のガンダムであるサバーニャやハルートを使うことは異常なことだ。

おまけに、その時はこれらの機体のテストととある事件を解決するため、ソレスタルビーイングの基地がある木星にいて、事件解決後、すぐに木星から地球へ直行する格好になった。

「これだけ世界はまだ混乱してるってことだよ」

メインパイロットシートに座る、オレンジのノーマルスーツ姿で黒い髪で黒と金のオッドアイをした青年、アレルヤ・ハプティズムが静かにつぶやくが、彼の眼にはあきらめの色がない。

まだ、世界は平和と革新のために歩くことのできる可能性が残されている。

その可能性を守るために、何が何でも戦い続けなければならない。

「君の力を貸してほしい、マリー…ピーリス」

ピーリス、という別の女性の名前を聞いた瞬間、マリーの穏やかだった目つきが、生真面目で鋭いものへと変わっていく。

そして、操縦桿に力が入った。

「ああ、言われるまでもない」

「ハプティズムさん、ピーリスさん、発進準備OKです!」

「了解、ガンダムハルート。アレルヤ・ハプティズム、ソーマ・ピーリス、目標へ飛翔する!」

ガンダムハルートが発進し、プトレマイオス2改の背後を立つと、モビルスーツ形態に変形する。

サバーニャと同じく、重力下戦闘のために一部の武装が取り外されていて、両手に握るGNソードライフルを構える。

「ちっ、宇宙じゃあごちゃごちゃと武器をコイツにつけやがって…。おかげで操縦がめちゃくちゃ複雑になってんじゃねえか」

急にアレルヤの口調が代わり、木星でのテスト中のことを愚痴にし始める。

サバーニャとハルートは1年前のアロウズ、そしてイノベイドとの戦いで損傷したケルディム、アリオスという2機のガンダムのフレームと太陽炉を流用しつつ、追加武装によって特に火力を増大させることに成功している。

このような形となったのはソレスタルビーイングの資金難が原因だ。

2度の大戦の中でスポンサーやエージェントら支援者が裏切りや暗殺、懐柔などによって姿を消してしまったからだ。

オーブやネルガルなどの数少ない賛同者からの支援を受けているものの、それだけで失った支援を埋め合わせは難しい。

そのため、大量の武装を追加するという重苦しいうえにいびつな形での後継機開発が余儀なくされた。

当然、そうなると火器管制や機体操作が複雑化するのは明確であり、サバーニャにはサポートとしてオレンジと青のハロが同乗(なお、オレンジハロはサバーニャの前身といえるケルディムとそのまた前身であるデュナメスにも同乗している)し、ハルートに関してはピーリスがサブパイロットとして登場しなければ、満足に動かすことすらできない代物となってしまった。

「そういうな、それだけ私たちのことを信頼して設計した。そう考えればいい」

「ちっ…」

「大丈夫さ、ハレルヤ。僕たちの出番はそんなにないみたいだから」

急にアレルヤの口調が元に戻り、もう1つのハッチから青いガンダムが出撃した。

「当たり前だ!迷惑をかけた分、しっかり働いてもらおうぜ!」

 

「…!この感覚は」

ナデシコBの元へ向かっていたチトセは覚えのある感覚に驚きと共に、うれしさも感じていた。

「どうした、チトセちゃん!」

「ソウジさん…トビア君と刹那君が!!」

「何!?あいつら…やっぱりこの世界に来てたのか…!」

ヴァングレイのモニターにも、青いガンダムであるダブルオークアンタとX字のスラスターを持つガンダムであるクロスボーン・ガンダムX3パッチワークの姿が表示される。

レールガンで積尸気の1機を背後から撃ち抜いた後で、ナデシコBのブリッジ周辺で二刀流となって大立ち回りを披露するX3と通信をつなげる。

「トビア、お前…トビアか!?」

「ソウジさん、それにチトセさんですね!?よかった…ご無事で!!」

ソウジとチトセの姿がモニターに映り、カメラに映るヴァングレイを見たトビアは安堵の表情を浮かべながらも、積尸気のマシンガンを実体剣で受け止める。

そして、X3に気を取られていた積尸気は現れたダブルオークアンタのGNソードⅤで両断された。

「再会を喜ぶのは早い。まずは火星の後継者を叩くぞ」

「了解です!」

「くそっ、ソレスタルビーイングがなぜここにいる!?」

積尸気のパイロットの1人が突然の乱入者に動揺する。

ヌーベルトキオシティ付近の基地の生き残りのメンバーの話によると、日本にいるのは勇者特急隊とナデシコ隊だけで、ソレスタルビーイングのソの字も出てこなかった。

おまけに彼らは木星にいるという情報をつかんでおり、短時間で、しかもピンポイントでここにたどり着くなんて想定すらされていない。

「連絡手段はありましたから」

「連絡手段って…もしかして!?」

ルリの言葉でようやくハーリーはあの暗号通信の意味を理解する。

あれはソレスタルビーイングに場所を伝えるためのものだった。

「はい、正確に言えば、その前に1回通信して、彼らに地球圏まで来てもらってますけどね。ちなみに、オモイカネをヴェーダに接触させたことがあったので、コードはそれを使っています」

「ナデシコのオモイカネとそれを操る星野ルリ…。あなたからのメッセージだってことはすぐにわかったわ」

「あなた方の目を引くためにわざとハッキングのような方法を使ったことをお詫びします」

「手段を論じている余裕がお互いにないものね。問題ないわ。それに、むしろ感謝してるわ。日本にいる仲間の様子がわかったから…」

逆に言うと、そうした手段を使わなければ、ソレスタルビーイングは新型のガンダムと共にここへ急行することはできなかっただろう。

1度目に受け取った通信は地球圏へ戻れ、というシンプルな内容のもので、それにはルリが総信用ボックスに入れていた写真も入っていた。

そして、2度目に受け取った暗号文は全く法則性のないデタラメなものだった。

それよりも重要だったのは送られた座標で、その位置はヌーベルトキオシティのメガロステーション周辺だ。

地球圏に戻っているプトレマイオス2改なら、あとはトランザムを使うことで短時間で大気圏に突入し、そこへ向かうことができる。

「オモイカネが新型機の分析を終えました。どうやら、あの機体は外部ユニットでボソンジャンプを制御していたみたいです」

「要するに来るときはジャンプできても、帰りは自力の片道切符ってやつか!」

上昇しながらレールガンで積尸気を攻撃する三郎太は叫ぶ。

ボソンジャンプ終了後に積尸気が強制排除したバックパック型のユニットと積尸気そのものを解析したデータが表示される。

構造そのものは意外なことに、マジンをはじめとするジンシリーズと同じで、制御機能を内部構造に入れたこれまでのそれらとは異なり、外部ユニット化することで機体そのものの小型化に成功している。

しかし、火星の後継者側の技術不足が原因か、外部ユニットはボソンジャンプ終了と同時に破損してしまうため、実質1度の戦闘で使用できるのは1度きり。

奇襲はできるが、そのあとで敵をせん滅しなければ生きて帰れないという背水の陣を体現した機動兵器と言える。

「だったら、地獄への片道切符をくれてやるぜ!!」

ディストーションフィールドを展開し、ナデシコBに体当たりしようとしている積尸気をディストーションフィールドを展開したリョーコのエステバリスカスタムが横から突撃し、撃破する。

プトレマイオス2改の近くに現れた積尸気についてはサバーニャとハルートによって各個撃破されていった。

 

「敵部隊の全滅、確認したです!」

プトレマイオス2改の登場から十数分でボース反応が消え、敵機動兵器の全滅を確認したミレイナがスメラギに伝える。

戦いが終わり、操縦席でほっと一息ついた紫色のセミロングで赤い瞳をした女性、アニュー・リターナーがカメラに映るナデシコBを見る。

彼女がスメラギらと同行したのが1年前であり、記録としてナデシコを見たことは何度もあるが、本物をこうして間近に見るのは初めてだ。

「あれが、みなさんが言っていたナデシコBなんですね」

「久々の共同作戦だったが、あんまり喜ばしい状況ではないみたいだな」

砲撃席からブリッジへ戻ってきた、右眉毛の端と顎に傷跡の有る、黒い制服で筋肉質な肉体をした大柄な男、ラッセ・アイオンはナデシコと共に戦った時のことを思い出す。

3年前の蜉蝣戦争で、ナデシコ隊はそれを終わらせるためにASA軍を脱走していた。

戦争を終わらせるという点では認識が共通していたことから、演算ユニットをボソンジャンプで飛ばすまでの間、何度か彼らと共闘した。

当時の艦長であるユリカをはじめとした、軍とは思えないようなほのぼのとした雰囲気を当時のナデシコ隊を知るスメラギ達は今でも覚えている。

しかし、今回共闘するということは逆に言うと、そうでもしなければ収束できないくらい、事態が悪化しているということになる。

「でも、私たちは戦わなければならない。ましてや、相手が木連であるのなら…」

スメラギがぎゅっと手すりを握る。

一方、ヴァングレイはダブルオークアンタと通信を繋げていた。

「ありがとう、刹那君!今回は立場が逆になってしまったわね」

「如月千歳。叢雲総司。元気そうで何よりだ」

「そういやぁ、ティエリアはどうしたんだ?ラファエルの姿が見えねえんだが…」

今回、プトレマイオス2改から出撃したガンダムは3機。

ダブルオークアンタ、サバーニャ、ハルートで、同じソレスタルビーイング所属のガンダムであるラファエルの姿が見えない。

「僕は青い戦艦、プトレマイオス2改にいる」

ブリッジでミレイナの通信席を借りたティエリアがヴァングレイ、そしてダブルオークアンタと通信をつなげてきた。

「ティエリア!よかったぜ…お前らちゃんと仲間の元へ帰れたんだな」

「でも、ティエリアさん。ラファエルガンダムは…?」

「あれは疑似太陽炉から太陽炉の搭載と調整をしていた都合で出撃できなかった。急いで調整を終えて、共闘しようと思ったが、その前に終わってしまった。君たちは変わらないで何よりだ」

「お前らと同じだよ。お前らは別の世界の地球を助けるためにヤマトに同行してくれた。俺も同じさ。ここがどこだろうと平和を踏みにじるクソ野郎許す気がさらさらないってことさ」

「そうか…」

「ソウジさん…」

(そっか…私、気負いすぎちゃったのかも…)

ソウジの話を聞いたチトセは胸の中にある重いものが取れたような、そんな感じがした。

ヤマトを見つけ、あの地球を救うためにイスカンダルへ向かうのは自分やソウジだけの問題ではない。

いまだ行方の知らない仲間たちもヤマトを取り戻すために動いているかもしれない。

そんな彼らのためにも、まずは一歩前へ進む。

それがチトセが自分なりにつかんだ答えだった。

「それでは、スメラギ艦長。まずは情報交換を行いましょう」

「了解よ。全機は直ちに帰還して!(ヴェーダの推論と私の勘も、世界の新たな動きを感じている…。ソレスタルビーイングのもう1つの目的…。それを果たすためにも、私たちは協力者を集めないといけない…)」

スメラギは1年前の戦いの後でのヴェーダからの情報を思い出す。

月の裏側にある、地球連合軍が現在管理しているコロニー型外宇宙航行艦に保管されている量子型演算処理システムがヴェーダで、データはレベル1から7まで分けられている。

表向きにはその艦は地球連合軍が将来、外宇宙を探索する際に使用するために開発しているものとしているが、この艦の正式名称はソレスタルビーイング。

つまりはソレスタルビーイングがヴェーダと共に所有していたもので、アロウズの黒幕であるイノベイド達に奪われていた。

アロウズによる情報隠蔽ができたのは、そのヴェーダの恩恵が大きいとのこと。

なお、アロウズとイノベイドが壊滅した後は地球連合軍が接収し、現在は地球連合軍宇宙局技術研究所の宇宙物理学者であるミーナ・カーマインと同研究所のMS開発主任であるビリー・カタギリらが『開発』という名前の内部調査を行っているが、いまだに全容を解明できていない。

ちなみに、ソレスタルビーイングは表向きにはヴェーダと一切関与していないことにはなっている。

しかし、地球連合軍のカティ・マネキン准将の黙認の元、ヴェーダからデータを持ち出した。

そして、プトレマイオス2改のメインシステムに小型化したヴェーダと言えるシステムを組み込んだことで、いつでもそれを媒介してヴェーダにアクセスすることができるようになっている。

それの開発にはアニューやティエリアがかかわっている。

それへのアクセスを行う中で、人類の革新以外のイオリア・シュヘンベルグがソレスタルビーイングを結成した目的を見つけることができた。

今まで存在しなかったはずのレベル8のデータの中にそれがあった。

 

-プトレマイオス2改 格納庫-

「よーし、ハッチを閉めるぞーー!!」

縁なしの眼鏡をかけた、黒い制服姿の整備士である男性、イアン・ヴァスティの誘導によって、ヴァングレイが収容される。

ハッチが閉じると、コックピットが開き、ソウジとチトセが出てきた。

「ソウジさん!!」

さっそく、格納庫にトビアが入ってきて、再会した2人の仲間の前に立つ。

「トビア!そういやぁ、キンケドゥの旦那や鉄也、竜馬は…?」

「分かりません…。でも、僕やソウジさん、チトセさんや刹那さんたちがいるのなら、きっとこの世界に飛ばされているのかも…」

いまだ行方の分からない仲間たちの身を案じ、トビアは表情を曇らせる。

「僕と刹那、そしてトビアはあの後、この世界の木星宙域に飛ばされていて、そこでトレミーに救出された」

刹那と一緒にティエリアが入ってきて、自分たちの状況を説明する。

ソウジとチトセとは異なり、彼らは自らの愛機と離れることはなかったとのこと。

「刹那さん達と一緒にソレスタルビーイングと合流してからはこの人達と一緒に戦っていたんです」

「あ…でも、トビア君。その…今更なんだけど、ここの人たちと一緒に戦うの…ためらわなかったの?」

現在では好意的な雰囲気が世論の中で強まっているものの、あくまでソレスタルビーイングは私設武装組織で、悪い言い方をすれば犯罪集団だ。

それに、イノベイドやアロウズを生む原因の一端を背負っている。

宇宙海賊のトビアとはいえ、そんな彼らと共に戦うのに抵抗感がないとは思えなかった。

頭をかき、少し考えたトビアはニコリと笑みを浮かべる。

「スメラギさんに会ったとき、ソレスタルビーイングについて話す前に選択肢をくれたんです。すべてを忘れて、この世界で暮らすか、それとも、共に真実に立ち向かうか…と」

(すべてを忘れて…か…)

チトセの胸に前者の選択肢がチクリと刺さる。

仮にそれができたら幸せなことだったかもしれないし、辰ノ進の家を飛び出さずに静かに暮らしたら、そんなことができたかもしれない。

だが、チトセも遅くなりながらもトビアと同じ選択をした。

この先に何があるのかはわからないが、自分で選んだ以上は進むしかない。

「その言葉を聞いた時、俺…この人は信用できると思ったんです」

「トビア…お前、ニュータイプか?」

「そんなんじゃないですよ。初めてキンケドゥさんと会った時に同じことを言われましたから…」

トビアは初めてキンケドゥ等と出会った時のことを思い出す。

その時は木星への交換留学生として、ほかの学生たちと共に木星帝国の輸送艦に乗っていた。

そこでキンケドゥらクロスボーン・バンガードに遭遇し、生き残るためにと、その艦になぜか積まれていたバタラに乗り込み、応戦するもあっさりと撃破された。

その自機を撃破したモビルスーツがX1で、パイロットはキンケドゥ。

彼に促される形で脱出し、スメラギに言われたようなセリフを聞いた。

トビアはその時の真実に立ち向かうこと、そして宇宙海賊クロスボーン・バンガードに入るという選択をしたことを今でも後悔していない。

「なるほどな…。ま、俺もソレスタルビーイングの存在についてはうさん臭さを感じるが、刹那やティエリアがいるんなら、そこらは呑める。それから、ナデシコの連中は信用できる」

「ソウジさん…ニュータイプですか?」

「ただの勘だ。そしてニュータイプはチトセちゃんの方さ」

「話は済んだみたいね、トビア君」

格納庫のドアが開き、ロックオンをはじめとしたパイロットやプトレマイオス2改のクルー達がやってくる。

(うお…あのお嬢さん、すっげー美人)

(ソウジさん!!)

アニューを見て、鼻の下を伸ばそうとしたソウジの足をチトセは踏みつける。

(痛たた、チトセちゃん痛いだろう!?いくらなんでもそこまでは…)

(ちゃんと見てくださいよ!!)

チトセの言葉を受け、ソウジはアニューの立っている場所を見る。

彼女はロックオンの隣に降り、よく見ると手を握っていることがわかる。

それを見たソウジは若干ショックを受けたのか、ポケーッとし始める。

「あの…話をしていいかしら?」

スメラギが前に出て、確認するように尋ねる。

ソウジのことが若干気になったものの、チトセとトビアが首を縦に振ったため、話を始めることにした。

「君たちもヤマトの乗員だったんだね。刹那とティエリアが世話になったよ」

「いえ、助けられたのは私たちの方ですから」

「あんたらのことはトビアから聞いている。トビア達と同じく、これからしばらくは一緒に行動することになるだろうからご挨拶だ。俺はロックオン・ストラトス。名前の通り、狙撃手だ。もっとも、最近は狙い撃ちよりも乱れ撃ちの方が得意だけどな」

「僕はアレルヤ・ハプティズム、彼女はマリー・パーファシーだ」

「よろしくお願いします」

アレルヤに自分の名前を紹介されたマリーがニコリと笑って挨拶する。

そんな彼女の笑顔のせいか、ソウジが正気に戻った。

「叢雲総司だ。ところで、素敵な笑顔のお嬢さん、よろしければ今度の休みにお茶でも…」

「軽薄な口調で誘うな!!」

「ひぃ!!」

急に鋭い目つきになったマリー、いやピーリスが叫び、ソウジは思わずひるんでしまう。

先ほどの柔らかな笑顔を見せた彼女とは到底思えないような変貌っぷりだ。

「ええっと、彼女と僕はちょっとした理由で二重人格みたいな感じになってるんだ。だから、今みたいになっても驚かないでね」

(二重人格…?本当なのかしら?)

チトセはマリーがピーリスになった瞬間、刹那達とは違う感覚を感じた。

今は再びマリーに戻っているためか、その感覚がなくなっている。

そんな不思議な違和感を感じている中、今度はクルーの紹介に入る。

「私はスメラギ・李・ノリエガ。戦術予報士として、プトレマイオス2改、トレミーに乗っているわ」

「俺はイアン・ヴァスティ。整備士だ。あとであんたのヴァングレイってモビルスーツモドキを詳しく見せてくれ」

「アニュー・リターナーです。トレミーの操舵手を担当しています」

「オペレーターのミレイナ・ヴァスティですぅ!名字で分かる通り、イアン・ヴァスティの娘ですので、親子ともども、よろしくです!」

「え…子供!?」

「孫じゃなく…??」

ミレイナの自己紹介を聞いたチトセとソウジはびっくりしながら2人を見る。

見た目から判断すると、イアンは50代後半で、おそらくミレイナは15歳前後。

もしかしたら…と考えるが、いくらなんでもそれはないだろうとその考えを無理やりもみ消した。

「ところで、つかぬ事をお聞きしますが…叢雲さんと如月さんは恋人なのですか!?」

「ふぇえええ!?」

無邪気なミレイナの質問にチトセは顔を赤くし、やはりその質問をしたかとイアンとスメラギ、ラッセは頭を抱える。

彼女はこうしたカップルらしき男女を見るとそんな質問をする癖がある。

乙女の勘、が理由らしく、本人には悪気はない。

「半分正解だな、ミレイナちゃん。これから俺がチトセちゃんを…」

「ソ・ウ・ジ・さん!!」

満面の笑みを浮かべるチトセがソウジに目を向ける。

明らかに目が笑っておらず、恐怖でソウジの顔が青くなる。

「は…はい、すみません。ちょっと空気を和まそうと思っただけですので…」

あまりにも怖かったのか、言葉が敬語に変化し、落ち着いたチトセは元の様子に戻った。

「すみません、自己紹介を中断させてしまって」

「い、いえ…。私はフェルト・グレイス。ミレイナと同じく、オペレーターを務めています」

「俺はラッセ・アイオン。トレミーで砲撃手と予備のパイロットを務めてる。後方支援は任せてくれ」

自己紹介を終えたスメラギらをソウジ達は見る。

かつて世界を敵に回し、大戦の原因を作り、大戦を終わらせた人間であることから、もっと血の気が濃い、もしくは気難しいような集団なのだろうと考えていた。

実際、刹那やティエリアがそんな感じがなくもない。

だが、穏やかな印象のあるフェルトや無邪気なミレイナ、頼れる兄貴分のようなラッセのような、個性的な面々が集まっている。

トビアがここになじんだのは、ここが宇宙海賊と似た空気があったからだろうとソウジは思った。

「あんたらの地球のことはトビアと刹那から聞いた。ひどい状況らしいな…」

「それと比べるのはよくないけれど、この世界の地球も平和とは言えなくなってきているわ」

「可能な限り早く火星の後継者を止めないと、また大きな戦争になるかもしれない」

アレルヤの言う通り、火星の後継者はもはやテロリストの一派とは言い切れないような大きな存在になっている。

現行の政権に不満を持つ人々が火星の後継者に可能性を求め、彼らの支援をしている。

地球連合軍の中にもそういう人間がいることは致命的なことで、動けるのはナデシコ隊と勇者特急隊、そしてソレスタルビーイングだけだ。

「分かっている。ヤマトを取り戻すためにも、連中を叩くさ」

「ヤマト…?火星の後継者のところにいるんですか!?」

「詳しくは分からんがな。だが、火星の後継者を叩くのとヤマトの奪還はイコールだ」

(ヤマトが火星の後継者に…)

ソレスタルビーイングは火星の後継者についてのデータを集めようと、ヴェーダにアクセスしたことがある。

しかし、彼らに関するデータは何一つ得られなかった。

ヴェーダは世界中のコンピュータを監視することで情報を集めており、それ故に世界中の電子機器のハッキングができる。

しかし、ネットワークにつながっていることが前提であるため、それにつながっていない端末に対しては何もできないという欠点を抱えている。

その欠点を埋め合わせるのが情報収集型イノベイドだ。

イノベイドは戦闘型と情報収集型に分かれており、情報収集型については自身がイノベイドだと知らぬまま人類社会に潜入し、現在でも収集を続けている。

余談だが、トレミーのクルーとパイロットの中でイノベイドなのはティエリアとアニューで、前者は戦闘型であり、後者は情報収集型の枠組みに入る。

木連にも、当然のことながらイノベイドがいる。

そのことを考えると、火星の後継者はヴェーダにリンクしない別のネットワークを新たに構築していて、更にイノベイドを排除していると考えるのが理論的だ。

どちらについても現実的な選択肢とは思えないが、そう考えるしかない。

(きっと、ヤマトにベルナデットがいる…。だったら、俺のやるべきことは一つだ。俺は必ず生き抜く。ベルナデットを迎えに行くために…)

 




武装名:GNアクセルブレード
クロスボーン・ガンダムX3パッチワークの新たな武装。
別世界の技術の産物でありクロスボーン・ガンダムはソレスタルビーイングでは技術などが根本的に異なることから、装甲以外の修理が難しいものだった。
特にムラマサブラスターはビームライフルと14基のビームサーベルが複合した兵器であり、整備性に課題があった。
そのため、ソレスタルビーイングの現行技術で開発でき、X3でも使える武器の開発が急がれた結果、完成したのがこの武装だ。
GNソードⅡがベースとなっているものの、柄の部分がバイクの持ち手とそっくりな形となっており、刀身に粒子貯蔵タンクが内蔵されている。
戦闘を行う際はトリガーを引くことでタンク内部のGN粒子を放出、刀身に付着させることで高い切断能力を発揮する。
当然、ビームライフルとしての転用が可能となっており、タイムラグも短いことから基本的には二刀流で扱っている。
ただし、あくまで急造品であり、タンクが小型であることから、1度の出撃で使用できる時間は限られており、トビアもそれについては不満を感じている。
しかし、実体剣としての特性があることから、GNフィールドやディストーションフィールドといった、ビームに対して高い防御力を発揮する相手に対抗できる点では意義があると言える。

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