この小説ではサラッと流していますが、今でも疑問です。
何か知っている人がいたら、教えてください!
なお、ヤマトの世界と同じく、例のとある国々はボロボロです。
今回登場するある機械にはまたまたオリジナルな要素が若干含まれていますが、お付き合いください…!
-とある民家 居間-
「うまい…うまいぜ、こいつは!!タツさん、おかわりいいっすか!?」
「あ、私も私も!!」
「ハッハッハ!!そう思ってたくさん用意した甲斐があったってものさ。若いもんはやっぱり、たっぷり食べてたっぷり働かんとなぁ」
ちゃぶ台の上に置かれた空っぽのお茶碗2つに青いシャツと茶色いズボンを着た、恰幅の良い体つきの老人がごうかいに笑い、そばにある炊飯器のご飯を入れる。
彼はこの家の主人の神宮司辰ノ進と呼ばれる男性で、1週間前に趣味の釣りに行っていたときにちょうどそこにいたソウジとチトセを見つけ、2人はこうして居候させても立っている。
2人が財布や荷物らしいものを何一つ持っていなかったことから、人生に絶望して心中しようとした若夫婦に見えたのだろう。
それを裏付けるように、ソウジとチトセはご飯の食べに大騒ぎだ。
「うんまい!!特にこの納豆!!サイコーだぜ!!」
「スーパーで買った安物なんじゃがなぁ…」
「私はこの味噌汁が素敵だと思います!あ…ついでにこれのお代わりもお願いします!」
スーパーで買った、彼が住んでいる国が所有している食糧生産コロニー産の食材で作った料理で生まれて初めてこんなおいしいものを食べたようなリアクション。
これだと、そんな若夫婦だと本気で信じてしまう。
そんなてんわわんやな食事の時間は1時間で終わる。
「けど…ありがとうございます、タツさん。私たちを居候させてくれただけじゃなくて、こんなごちそうまで…」
「気にせんでくれ。40年近く連れ添ったカカァは一昨年おっ死んで、息子たちはみんな独立…。俺は定年退職して、気ままな一人暮らしのじじぃだ。何なら、ずっとここにいてもいいぞ?」
「そういうわけには…」
「っと、年寄りのたわごとは聞き流してくれ」
この家は元々、4人か5人の家族が暮らすことを前提としたつくりとなっていて、辰ノ進一人が暮らすにはあまりにも広すぎる場所だ。
それに、『ずっとここにいてもいい』という言葉はどうしてもたわごとのようには聞こえなかった。
「ただな…俺が心配なのはお前さんらのこれから先のことじゃ…」
これから先のこと、それはソウジもチトセも分からなかった。
次元震に巻き込まれ、ヤマトや仲間たちと離れ離れになり、気がついた時にはこのような平和な地球のような環境の場所。
仲間やヤマトの行方が分からず、これからどうすればよいのか、2人とも戸惑っている。
「ま…やりたいことが見つかるまで、ここにおればいい!あそこで会ったのは何かの縁じゃ!最後まで面倒を見させてくれよ!」
「ありがとうございます、タツさん。だったら、そのやりたいことを見つけねえと!」
立ち上がったソウジは壁にかけてある愛用のジャケットを着る。
「あ、ソウジさん!タツさんの手伝いを…!」
「片づけは俺1人でもできる。お前さんも、やりたいことを探しに行け。俺が保証人になってやるから…」
「タツさん…ありがとうございます!」
頭を下げたチトセは出ていったソウジを追いかけるように家を出ていく。
2人が出ていくと同時に、家からは頑張れよー!という辰ノ進の声が響き、ソウジ達の耳に届いた。
-ヌーベルトキオシティ 中央公園-
「…この1週間、図書館に通い詰めていろいろ調べたが…やっぱりここは地球みたいだな…」
ベンチに座ったソウジは1週間で集めた情報の整理をする。
少なくともここは地球であることは確かであり、辰ノ進と話せたこと、そして図書館にあった本や新聞の文字から言語はソウジ達の住んでいる地球と同じだ。
そのため、自分たちは刹那やティエリア、竜馬、鉄也と同じように別世界へ飛ばされたということになる。
そして、ここは東京のヌーベルトキオシティで、お台場を埋め立て工事などで増築し、更に再開発プロジェクトによって大きく発展した新興都市だ。
旋風寺コンツェルンという巨大複合企業のお膝元で、2代前の社長である旋風寺裕次郎が作った旋風寺鉄道が企業の母体となっている。
「知れば知るほど、俺たちの地球とは別物だってことを感じるな…」
「うん…」
ソウジの隣に座るチトセは何か思いつめた様子で、すっかりうつむいている。
彼が近くの自動販売機で買ってきた(お金は辰ノ進から当面の資金として少しだけもらっている)サイダーにも口をつけていない。
「竜馬や刹那達には同情したが、まさか俺たちも同じようなことになるなんてな…」
「ヤマトも、この世界に来てるのかしら…?」
「あれだけの大物だ。あんなのが急に現れたら、ビッグニュースだ」
ヤマトの戦艦としての性能と、そして何よりも波動エンジンの存在は、仮に大和が発見された場合、この世界では大きな衝撃を生むことになる。
しかし、図書館や辰ノ進のテレビのニュースを見ても、新聞や雑誌などで情報を集めても、ヤマトのヤの字も出てこなかった。
そうなると、ヤマトは自分たちとは別の世界に飛ばされた可能性が高い。
「情報が出ないとなると…飛ばされたのは俺たちだけ、なんてことも…」
「それにしても、この世界は平和ね」
公園で遊んでいる子供たちと彼らを見守る夫婦を見て、チトセは話題を変える。
ガミラスの攻撃のせいで、地球で暮らしている人々は地下都市に逃げ込むこととなり、このように青空の下で遊ぶなんてあたりまえの光景はなくなっていた。
チトセにとっては数年前まで当たり前だった光景であり、そのため今見ている光景があまりにも幸せそうに感じられた。
だが、この光景と平和がリンクするかと言えば、そうとも言えない面がある。
「数年前まで、大きな戦争があったみたいだがな。遺伝子を改造したコロニーの住民と地球連合との戦争、そのあとは暴走した軍部、アロウズとその反対勢力との戦い…。その合間には木星に移住した人間との戦争があった…」
ソウジの言う通り、数年前までは大きな戦争が続発した暗黒時代と言える頃であり、その影響が現在でも続いている。
3年前に地球連合軍が遺伝子改造によって強い肉体と高い頭脳を持った人類、コーディネイターが生み出した砂時計型次世代コロニーの集合体であるプラントの1つであり、農業用コロニーであるユニウスセブンに核ミサイル攻撃を行われ、多くの民間人が犠牲となったことがきっかけで、地球連合とプラントの義勇軍であるザフトによる全面戦争が始まった。
のちにこの攻撃が反プラント、反コーディネイター思想主義を掲げる環境保護団体であり、キリスト教やイスラム教の原理主義者が組み込まれたことで武装団体へと変貌を遂げたブルーコスモスの一員の暴走によって招いた結果であることが明らかになっている。
そのころの地球はロシア・中国を中心とした旧社会主義国家らの集合体である人類革新連盟とアメリカ、南米各国、オセアニアが中心となったユニオン、欧州・東欧・北欧といった旧EUを発展させた新ヨーロッパ共同体のAEU、そして日本と台湾、東南アジアと南アジア、西アジア諸国が加わった大規模なアジア共同体であるASAに永世中立国のスイスやオーブ首長国連合に南北に分かれたアフリカと言った数多くの共同体によってバラバラに分裂していた。
なお、ユニオン、AEU、人革連、ASAは宇宙で行われている太陽光発電で生まれた電力を地上へ送る軌道エレベーターを所持しており、タワー、ラ・トゥール、天柱、イザナギがそれらの名前だ。
特にユニオンや人革連、AEUは反目しあい、火種を抱えていることから中々連携することができず、おまけにザフトに関しては木星に移住した人々と同盟を結んだことで、戦局は圧倒的にザフト側に傾いていた。
なお、木星の人々は過去に地球から独立しようとしていた月の住民であり、それに激怒した当時の地球の政権によって火星へ、更に木星へと追放された人々の末裔であり、公式には全滅したとされていたが、木星で見つかった異星人のプラントで独立国家を作り、生き延びていた。
そして、自分たちを追い出した地球への憎しみから、異星人プラントにあった技術を元に大量の無人兵器や有人兵器を作り、利害が一致したプラントと同盟を結んで参戦した。
しかし、200年以上前に軌道エレベーターと宇宙太陽光発電システム、モビルスーツの母体となる人型マシンを発明した科学者であるイオリア・シュヘンベルグが作った私設武装組織であるソレスタルビーイングが武力介入を行い、その結果、各戦線の統合が始まった。
戦争そのものは地球連合軍の当時の実質的指導者であったアレハンドロ・コーナーがソレスタルビーイングによる攻撃で、そしてプラント指導者であるパトリック・ザラが第2次ヤキン・ドゥーエ攻防戦での第三勢力として参戦したオーブ軍による攻撃で死亡し、更に木連では月臣源一郎中佐による熱血クーデターによって当時の指導者である草壁春樹中将が失踪したことによって痛み分けの結果に終わった。
その直後に地球連合はソレスタルビーイングを壊滅させ、後顧の憂いを絶った。
だが、その後地球と和解した木連はともかくとして、プラントの地球への憎しみは根強く残り、今から1年前に再び戦争が勃発した。
だが、その戦争のさなかに当時のプラントの実質的指導者であるギルバート・デュランダル議長によって地球連合の主力であり、独立治安維持部隊であるアロウズがブルーコスモスの母体であり、戦争を生み出す死の商人であるロゴスの傀儡であることが暴露されたことで状況が一変した。
同時に、アロウズが独立治安維持部隊であることを名目として、反連邦組織や連邦非加盟国などに対して行った弾圧や虐殺を行い、その事実を隠ぺいしていたことまで暴露されたことで、地球連合では内乱が続発し、混乱状態となった。
更に地球連合との戦争終結後に人々の遺伝子を解析し、それぞれに適した役割を与えるという社会主義をさらに進めたような社会システムであるデスティニープランがデュランダルによって提唱され、さらに混乱の輪が広がった。
結果的にオーブと復活したソレスタルビーイングなどの活躍によって収束した。
デスティニープランを提唱したデュランダルも死亡し、そのプランも白紙に帰った。
だが、戦後は多くの国が経済・政治が混乱状態に陥った。
現在は戦後すぐに生まれたヴィグディス・ロビンソン地球連合大統領(先代であるジョセフ・コープランド大統領は戦時中、アルザッヘル基地でデスティニープラン反対表明をした直後、ザフトが奪取した反射衛星砲『レクイエム』による攻撃で死亡)が混乱の収束に手を尽くしている。
その原因はロゴスがデュランダルの言う『死の商人』があくまでその一部の側面に過ぎず、地球圏に存在するほぼ全ての国家と企業と関係を持っている、地球における資本主義社会を成り立たせる巨大な資本を持った、人類有史よりも前から存在したと思われる業界団体が実態だったからだ。
日本やオーブなど、ロゴスと関係を持っていない一部の国では大した混乱は怒らなかったが、関係を持っていた指導者や企業が民衆による魔女狩りまがいな暴動によってバタバラと倒れていき、それがその混乱につながっている。
日本の隣国である中国ではロゴスとウィンウィンな関係を作りすぎたために政権が崩壊し、軍閥による内戦が続発したことで総人口の6割以上が死亡したという恐ろしい報告まである。
おまけにその中のとある軍閥がその所領の住民を逃がさないために何をとち狂ったのか、海上に大量の機雷と潜水艦を設置し、更に逃げ出そうとする航空機や車両を撃ち落とすために部隊まで作ったという話まである。
あれほどの混乱の中で、日本に入ってくる中国人や朝鮮人が少ないことから、もしかしたらその話は真実かもしれないとささやかれている。
そのため、中国本土を出ることができるのはワイロを送ることのできる金持ちくらいだろう。
「それに、異星人の襲来まであった…」
1年前の戦争と同じ時期に、異星人ガイゾックが地球に襲来した。
人間爆弾作戦のような非人道的な、かつてのイスラム原理主義のテロリストがかわいく見えてしまうほどのおぞましい作戦を展開し、更に地球とプラントでの戦争もあって軍も対応しきれないこともあって、日本を中心に多くに人的被害をもたらした。
150年前に母星を滅ぼされ、地球に流れ着いたビアル星人が生み出した兵器、ザンボット3を所有するその異星人の末裔である神ファミリーと一部の地球連合の有志の協力によって現在は壊滅している。
「そして始祖連合国。社会構造まで違うときやがる…」
ソウジの言う特権階級とは始祖連合国という500年前に突然生まれた国々の共同体で、国交を全く結ばず、鎖国体制を築いており、これらの戦争ともロゴスとも無関係だ。
彼らはマナという特別な力を使うことができ、その力を巨大な軍事力としても転用可能であるということから、地球連合も手出しができない。
なお、始祖連合国については人口や位置などの情報をつかむことが今でもできておらず、宇宙からもその姿を確認できないことから、現在の世界地図には載っていない。
混乱や戦争があることから、この世界も必ずしも平和であるとは限らない。
「でも、地球は青いし、食べ物は自然素材。おまけに街には笑顔があふれてる…。1年後の滅亡を待つだけの地球とは全然違う…」
「おいおい、それをどうにかするために俺たちはヤマトに乗って旅だったんだろう?」
しかし、滅亡の危機に瀕した地球に住んでいたチトセにとって、この地球はそれでも平和そのもののように感じられた。
この光景は数年前に失ったものにチトセの目には映っている。
しかし、ソウジの目にはそれがこれから取り戻すべき光景とも映っていた。
「でも、それはもう…別の世界の話よ…」
「チトセちゃん…?」
「ヤマトからはぐれてしまった私たちにできることはない…。ヴァングレイもない…」
人類の希望であるヤマトがそばにあれば、チトセも奮い立つことができたかもしれない。
しかし、そのヤマトが今どこにあるのかわからず、更に愛機であるヴァングレイもない。
こうして図書館をあさることしかできない自分自身の無力さをこの1週間で嫌というほど感じていた。
それが彼女に1つの結論を与える。
「ねえ、ソウジさん…。この世界で生きていくことを考えましょう?」
チトセの言葉にソウジは沈黙する。
確かに、これからハローワークへ行けば、何かしらの職業に就くことができる。
図書館へ行く前に通りかかった際、瓜畑工場のアルバイトのや警察の警備用ロボットのパイロット、介護スタッフに会社の営業など、様々な募集がある。
辰ノ進が保証人になってくれるため、身分についてはたいして問題にならない。
どこか職を得て、このまま静かに暮らすこともできる。
きっとそれは、ヤマトを探すよりも簡単な話だろう。
「ソウジさんもそう思ってるから、タツさんに事実を話してないんでしょう?」
「それは…無用な混乱を防ぐためだ」
たとえ、事実を話したとしても、平行世界なんてものはこの世界ではおとぎ話のようなもので、信じてもらえないのが関の山だ。
仮に信じてもらえたとしても、それを証明する証拠がどこにもないし、助けてもらえることは何一つない。
それに、無関係である彼を巻き込んでしまう恐れもあった。
「職業は探せばどうにかなるし、タツさんも手伝ってくれる。頑張れば、この世界できっと…」
「じゃあ、ヤマトが見つかり、元の世界へ返れる可能性があるとしたら、チトセちゃんはどうするつもりだ?」
「それは…」
ソウジの質問に沈黙する。
その選択は自分たちのいた世界の地球を見捨てることを意味する。
そして、これまで地球を救うために共に戦った仲間たちを裏切ることになる。
そんな大きな選択をする覚悟が今のチトセにはあるのか。
チトセは迷う。
その迷いをあざ笑うかのように、近くで爆発が発生し、公園に揺れが発生する。
「な、なに!?」
「むこうだ、チトセちゃん!!」
「あれは…!!」
ソウジが指さした方向にある背中に扇状に6つ取り付けられた太鼓のようなパーツのある、赤い20メートルクラスの大きさの人型兵器が6機あった。
-ヌーベルトキオシティ-
6機の赤い人型兵器が胸部の装甲を展開し、ミサイルを前方にある大型の工場に向けて発射する。
ミサイルが工場やその付近の建物、路上などに着弾し、人々は逃げ惑う。
「何なんだ、あの兵器は!?街中でそんなものを…!!」
襲撃された工場である青戸工場の長である大阪次郎が従業員の避難誘導をしつつ、あの赤い人型兵器に悪態をつく。
「目標は前方の旋風寺重工の青戸工場!」
ロボットのパイロットが攻撃目標を再設定する。
旋風寺コンツェルンに入っている旋風寺重工に属している青戸工場は電車やロボット生産のための数多くの資材が備蓄されており、彼らの狙いはそれだった。
「あの工場の資材を奪って、ウォルフガング様のロボット開発の資金にしてやる!」
「あの野郎…街中でそんなもんを使いやがって…!!」
「町の人たちを殺す気なの!?」
まるで一般市民への被害お構いなしのテロリストのような暴挙に2人は怒りを見せる。
しかし、前述のとおり2人にはヴァングレイがなく、彼らに対抗できるロボットもない。
彼らを止めることができない。
しかし、ソウジはすぐに自分にできることを思い出す。
「チトセちゃん!市民の避難を誘導するぞ!」
「え…?」
「急げ!奴らはところかまわずぶっ放すぞ!」
あのミサイルによる攻撃が工場以外の物を巻き込むのは明白で、既に攻撃に巻き込まれてけがをする人が出ている。
まだ死者が出ていないだけでも奇跡に等しいあの攻撃をミサイルを装填した赤いロボットが再び行おうとしていた。
「…待って、ソウジさん!!何かが来る!!」
「何!?」
北から続く巨大な大通りを通って、青い電車が2台やってくる。
1台はソウジ達が知っている電車のように地上を走っているが、もう1台のそれはなんと飛行している。
そして、地上を走っていた電車が変形し、クロスボーン・ガンダムとほぼ同じくらいの大きさの人型兵器に変形し、その右手にはピストルを、左手にはナイフが握られている。
「電車がロボットに変形しちゃった…」
「こっちの世界には鉄道網が発達してるって聞いたが、こんなのもあるのかよ…」
この世界では石油などの化石燃料から軌道エレベーターによる太陽光発電によるエネルギーに主要エネルギーがシフトしている。
ただし、石油などが完全に使われなくなったわけではなく、タイヤやプラスチック製品などの商品に使われている。
その主要エネルギーのシフトは石油の生産・販売に経済を依存している中東諸国の反感を買い、10数年前の太陽光発電紛争へとつながっている。
「いくぞ、ガイン!!」
電車を模した航空機、マイトウィングに乗った、赤いジャケットとヘルメットを装備し、顔をフルフェイスの青いバイザーで隠したパイロットがボイスチェンジャーで男性であるのは分かるものの、少年とも成人ともとれる混ざり合った声で隣の人型兵器であるガインに話す。
「了解!」
ガインのツインアイのカメラが点滅し、マイトウィングのパイロットに人間に近い声で答える。
「人型ロボットに変形する電車だって!?」
「見たか、悪党!これが勇者特急隊のガインだ!」
「勇者特急隊だと…!?」
その名前を聞いたウォルフガングの部下たちに動揺が走る。
身元不明の得体のしれない部隊であるものの、 犯罪組織やテロ集団の活動阻止や、人命救助などを行う、まさに正義のヒーローチームだ。
「その通り!さあ、おとなしく武装解除をして、裁きを受けるんだ!」
「ロボットがしゃべった!?」
「ガインは超AIが搭載されている!その正義の心はだれにも負けない!」
「ぐうう…もしや、あれが噂の…」
彼が思いだした噂、それは正義の心を持つ、人格を持ったロボットだ。
そのロボットの性能は高く、ソレスタルビーイングが所有しているガンダムに匹敵するという。
現にそのロボットによって多くの悪党のロボットが倒され、警察に捕まっている。
「これは何としてもウォルフガング様に報告しなければ…!そして、このティーゲル5656こそが…ウォルフガング様が作るロボットこそが世界最強であることを証明しなければ!!」
ティーゲル5656がガインとマイトウィングに向きを変え、ミサイル攻撃を仕掛ける。
「外にいる人たちは屋内へ逃げろ!!ガイン!!」
「了解!ガインショット!!」
ガインが右手に持つ電車を模したピストルを発射し、マイトウィングが上空でバルカンを発射する。
ビームと実弾が2機に向けて放たれたミサイルを次々と撃ち抜き、破壊していく。
「こちらの勧告を無視するとは…!」
「やむを得ない、ガイン!目には目を、だ!」
「了解だ、舞人!世界の平和を乱す者は我々が相手になる!」
舞人と呼ばれたパイロットが乗るマイトウィングとガインはティーゲル5656に向けて突っ込んでいった。
機体名:ガイン
形式番号:なし
建造:不明
全高:15.0メートル
全備重量:26.2トン
武装:ガインショット、レスキューナイフ、ガインバスター×2、ガインアンカー
主なパイロット:なし(超AIにより自律行動)
勇者特急隊に所属するロボットの1機。
超AIによって人間と同じく考え判断することができ、更に会話も可能となっている。
また、電車形態「トレインモード」への変形が可能で、その場合の走行速度は時速160キロ以上。
武装としてはビーム兵器であるガインショットやガインバスターがあるが、街中では建物などの被害を避けるためにレスキューナイフによる接近戦が主体となることが多い。
なお、勇者特急隊という名前から、ほかにも同じタイプの超AIを搭載したロボットが存在する可能性がある。