Aqours☆HEROES   作:ルイボス茶

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SKY JOURNEY

 千歌が黒澤邸で目を覚ましたのと同じ頃、梨子は淡島にいた。

桟橋から、富士を望む。

昨晩の戦いを思い返していた。

 

 

 タイガのベルトを破壊した。

 

一つ、私の願いに近づいた。

けれど、胸に残るのは理想に近づいた達成感ではない。

次は自分なのでは、という恐怖でもない。

 

あの子を戦いから切り離すことができた、その安堵だ。

 

あの子は、高海さんは、優しすぎる。

このまま戦えば、あの子はさらに辛い思いをすることになるだろう。

だから、これで良かった。

痛い思いをさせた。ひどい言葉も投げかけた。

でも、きっとあの子のさらに奥に秘める正義は、それにも勝るだろう。

 

ひとつ、心残りがあるとすれば、それは・・・。

 

「千歌ちゃん、か。」

 

 だめだ。私はもう人を傷つけた。

切り替えなければ。もう、戻れないのだから。

 

 

 一つ、深く深呼吸をし、帰ろうと振り返った。

 

 

 梨子の視線の先に、金髪の少女が一人、こちらを見ていた。

いつ現れたのかわからず、梨子は後ずさる。

金髪の少女が笑顔を見せながら先に口を開いた。

「Hi!驚かせちゃってごめんなさい~!」

明るく陽気な声に、張り詰めていた梨子の調子が狂う。

「あ、あなたは・・・?」

気持ちを持ち直し、質問する。

「あら、相手がだれか尋ねるときはまずは自分から、っていろんなジャパニーズコミックで読んだことあるけれど?」

ひとつ、間をおいて続く。

「ねえ、ライア?」

梨子の思考が一瞬止まった。

 

 

この人も、仮面ライダー。

 

 

 金髪の少女は梨子の表情を見て、話を続けた。

「私は小原鞠莉。あなたが通う浦の星の理事長をしているわ。と言っても、歳はあなたの一つ上。三年生よ。普通ならこれが一番驚くことなのだろうけれど、あなたの関心は他にあるのよね。イエス。私もマスクドライダーよ。願いをかけた戦いに参加する、ね。」

 

 梨子は忍ばせたカードデッキに手を伸ばす。

それを見た鞠莉はふふっと笑った。

「今は戦わないわ。あなた、昨日の戦いの疲れが残っているでしょう。そんな人と戦うなんて悪趣味なこと、マリーは好きじゃないわ。ブシドー?が日本にはあるでしょう?」

「じゃあ、なぜ私の前に・・・?」

「そうね。顔合わせなのもあるけれど。言われたのよ。高海さんは引き受けるから、桜内さんの様子を、って。」

「言われた?だれに・・・あっ。」

鞠莉がにやりと笑う。

「そう、あなたが高海千歌ちゃん、ちかっちと戦った後現れたライダー、龍騎よ。私がライダーになったときいろいろ教えてくれたのがあの人だったから、今回はそのお返しとして動いているのよ。だから私も、次からは自分の思うように動くわ。」

「どうして、龍騎がそんなことを?」

鞠莉の表情が変わった。

真剣な顔で、それを告げる。

「龍騎の変身者はね・・・。」

 

梨子は浦の星を始めて訪れた時、案内をしてくれた少女を思い出していた。

長く伸ばした黒髪が綺麗なその人は、自分はこの学校の生徒会長だ、と言った。

なりゆきでなったとはいえ、なったからには生徒皆さんが、楽しく過ごせるようにしたい、そう話していた。

その声は、凛としていて、それでいて優しかった。

龍騎が発したあの声。そうだ、思い出した。

龍騎の変身者は・・・。

 

「龍騎の変身者はね、生徒会長、黒澤ダイヤよ。」

 

梨子の浮かべた人に間違いはなかった。

「その顔は、納得という表情ね。」

鞠莉が続ける。

「でも、ダイヤもこれからどうするか決めたみたい。だからあなたももう一度、考えてみなさい。それじゃ、言いたいことは言ったから帰るわね、チャオ~!」

言いながら手を振りながら、その場から去ってしまった。

 

「考えろって、答えなんて、もう・・・。」

 

梨子はしばらく、桟橋で立ち尽くしていた。




 いつもありがとうございます。
梨子ちゃん側はどうなってるの?って話でした。
鞠莉さん登場です、シャイニー。
上級生らしく問いかけを残していくマリー。
そのマリー自身も、願いのために戦わねばなりません。年上って大変ですね。

ここで一つ、先に言っておきたいなってことが。
このお話のライダーバトルでは、変身者は死なない、ということです。
この先物語の中で話そうと思っていたことで、そのシーンもいつか登場するのですが、先に言っておかなきゃなあ、と。
理由としては、ライダーバトルが生まれた理由に関係があるのですが、それよりも

Aqoursちゃんが死ぬとこなんて見たくないし考えたくない。

って思いがあるからです。戦わせといてなんなん。
なので、ライダーバトルからの脱落=カードデッキの破壊
となります。

また詳しいことはぼちぼちと。

それではまた。

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