探していた場所。守るべき場所。
花丸の周りを奴らが囲む。
「最後ぐらい、ルールテラーらしい仕事をするずら!!!」
「あの三人がこうして思いをぶつけながら戦うのは、これが初めてなんだよ。」
千歌は二人にそう言った。
「じゃあ、この世界は果南さんが探していた世界なの?」
梨子は落ち着いた声で返した。
千歌はトンネルから聞こえる音を気にしながらそれに答えた。
「どうだろうね、もしかしたら果南ちゃんはそう思っているのかもしれない。でも・・・」
トンネルから聞こえる音は止むことなく、それが戦いの激しさを伝えていた。
「でも、今の果南ちゃんは壊れている。」
それが間違いでないと確信した声で曜は言った。
千歌もそれに頷く。
戦う三人の雄叫びが外まではっきりと聞こえていた。
「一度戦ったんだ、もう負けない!」
果南はダイヤの攻撃をかわしながら隙を伺っていた。
果南は以前の戦いでオルタナティブへの対策を整えていた。
明らかに負担のある超スピードや攻撃の数々。
それらをこなせるのは時間制限があるからだと気づいていた。
鞠莉が参戦していても果南の優位は変わらない。
これまでの世界で王蛇の動きは何通りも見てきた。
想定外が来ない限り、対策できないことなどなかった。
「前から思ってたけど・・・何なのこの馬鹿力・・・!」
的確に襲い掛かる果南の剣はすさまじい威力を帯びていた。
追い打ちをかけるように果南はカードを引いた。
『ストライクベント』
右手にサメの頭を模した武器が現れる。
果南はそれを二人に向けた。
「くらえ」
右手に装備された頭から水流が発射される。
サメの形をして放たれた高圧水流が二人に襲い掛かる。
攻撃を受け、二人がひるむ。
果南はその隙を逃さなかった。
脚に力を込め、勢いよくダイヤに飛び掛かる。
空中で剣を振りかざし、降下の勢いそのままに剣を下ろした。
剣はオルタナティブの鎧を越え身体を斬る。
果南は勢いそのままにオルタナティブのデッキを破壊した。
声も出せないままダイヤは倒れた。
ぽたぽたと流れるものが鞠莉の視界に入った。
「・・・やめて。」
『アドベント』
カードを引き、読み込ませるその右手は震えていた。
ただ一つの単純な感情、怒りで。
「許さない・・・!!!!」
召喚したのはベノスネーカー。
鞠莉が指示を出すと、ベノスネーカーは果南に巻き付き身動きを封じた。
慌てる様子のない果南は鞠莉に言った。
「許さない?鞠莉だって似たようなものだよ。鞠莉だけじゃない、みんなそう。誰も許されない。」
「違う!!私はただ、果南とダイヤを・・・!!」
「だから、一緒だって。」
鞠莉がそれに気付いた時にはすでに遅れていた。
果南は笑いをこらえるような声で言った。
サメが海から来るとは限らない、と。
言葉通りそれは鞠莉の背後、地面の中から現れた。
それは手に巨大な刀を持っていた。
サメ歯状の刃が鞠莉の背中を襲った。
鞠莉が倒れたのを確認した果南は軽々とベノスネーカーの縛りをほどき地面に降り立った。
「またダメだったね。」
倒れる二人に向って言う。
返事など期待していなかった。
背を向け、トンネルの出口に向かう。
「待ちなさい。」
足を止める。
声がすると思っていなかった果南は反射的に振り向いた。
それは果南にとって予想外の出来事だった。
口から、身体から、全身から流れ続ける血を無視してダイヤが立っていた。
「勝負は、まだ終わっていません。」
それが何を意味するのか果南はすぐに察した。
普通の人間であれば命はないほどの傷を負いながら立っている。
果南が知らなかったオルタナティブのデッキは確かに壊れている。
「イレギュラーが多すぎるね、この世界は!!!」
言葉を吐き捨て、剣を持ち直してダイヤの元へ勢いよく駆け出す。
ダイヤはゆっくり目を閉じた。
呼吸をすれば肺が痛む。
視界を動かせば目が痛む。
何をしなくても、全身が痛む。
一番痛いのは、心。
「変身!!!」
果南が振りかざした剣をダイヤは右の腕のみで受けた。
ダイヤにダメージはない。
右腕は黒と金色の鎧で覆われた。
剣を右で抑えたまま、左の腕を果南の腹部に打ち込む。
左腕も同様に鎧で覆われた。
攻撃にひるみ体制を崩した果南に向って今度は右足がキックを入れた。
右の足が鎧で覆われた。
その勢いを生かして左も打ち込み、鎧が覆った。
やがてダイヤの全身が黒と金色の鎧に包まれた。
距離を取り、体制を整えながらその姿を見る。
龍騎と同じ姿、けれど違う。
果南は舌打ちをして言った。
「また私の知らないライダー?」
「えぇ、確か曜さんは”リュウガ”と名付けていましたっけ。」
良い名だと思った。
右手ではなく、牙となる。
守りたい者に近寄るすべてをかみ砕く牙に。
「ならば私はこう名付けましょう。”リュウガサバイブ”と。」
「サバイブ・・・オーディンの力。」
「正解ですわ。でも、私だけではありません。そうですよね、鞠莉さん。」
呼びかけに答えるように、鞠莉が立ち上がる。
「えぇ・・・。正直ホントに死ぬと思ったけど。」
「まだやられてなかったの。」
果南が不機嫌そうに言う。
「あなたを倒すまで、くたばれないわよ。」
言葉と共に、鞠莉の召喚機の形が変化した。
『サバイブ』
「サバイブ、渡したんだね。」
千歌は二人に言った。
「ええ、決着の手助けになればと思って。」
梨子が言う決着は二つ。
あの三人の戦いと、この戦いすべて。
千歌も曜もそれをわかっていた。
わかったうえで、千歌は聞いた。
「決着ってことは、梨子ちゃんも曜ちゃんもその覚悟はあるってことだよね。」
戦いの決着。
ライダーバトルの勝者を決めること。
龍騎とナイトをそれぞれ所持する二人は正規のライダーバトル参加者であるといえる。
最後の一人になるということはすなわち、今隣にいる人をも討たねばならない。
梨子と曜は仮面越しに見合った。
それぞれ、想いは決まっていた。
「心はもう決まってるよ。千歌ちゃん。あなたを討つ覚悟もね。」
梨子も頷いた。
「そう、それなら問題はないね。オーディンと戦う条件はただ一つ。それもわかるね?」
二人は頷いた。
「決まるまでここから姿を消すよ。それが合図。」
二人は頷いた。
「戦わなければ生き残れないなんて、残酷すぎるよね。」
二人の反応を見るより先に千歌は続けた。
「戦え。」
オーディンは二人の前から姿を消した。
いた場所に金色の羽が舞い散っている。
最後の1枚が地に落ちる。
龍騎とナイトは戦闘を開始した。
いつもありがとうございます。
更新、かなり遅れてしまってすいません。
私生活がてんやわんやでパソコンに迎えない日が続いております・・・。
不定期にはなると思いますが、残り数話、しっかり終えていきますのでどうかよろしくお願いします。
それでは内容のお話から。
残酷な世界・・・。
決戦の前、梨子と曜はダイヤにあるものを渡していました。
それが二枚のサバイブ。
二人なりの決意の証です。
そしてそれより少し前。
果南の元へ向かうより前に、千歌はダイヤにあるものを渡しています。
それがリュウガのデッキ。
曜から預かったものです。
これについては触れるかもしれないし触れないかもしれません。
ただ一つ言えることは、ダイヤは最初それを使って戦っていた、ということです。
あ、タイトルは「最後の3日間」のもじりです。
近況です。
ホントにもう、生活がやばいです。
いや、言ったところでどうなるものでもないんですが。
具体的には就活です。
ああああああああああ嫌あああああ。
それではまた。