「なんでもって・・・。オーケストラで踊るダンスパーティーとか?」
「あ!そういえば船の上で・・・
手を開いて閉じる。
足首を軽く回してみる。
前を見て、天井を見て。
鎧で覆われた自分の掌を見て、そしてたどり着く答えはやはりこれが自分だということ。
「何がどうなっていますの・・・?」
とにかく状況の整理をと先までのことを思い返してみる。
「そうですわ、確か窓から・・・・。」
すべて入り口のガラスから事は起こった。
鎧姿の自分が映るガラスにそっと手を触れた。
「っつ・・・!?」
突如、身体が光に包まれた。
何かに飲み込まれるような感覚。
やがてその感覚は消え、視界を取り戻すとそこには私たちの部室があった。
けれどそれは・・・。
「逆ですわ・・・。」
すべてが逆だった。
部屋の配置も、外の景色もすべて。
信じがたいことではある。
けれど私は認めるしかなかった。
鏡の中の世界に来てしまった、と。
私は詮索をしながら、音の聞こえる方へと向かった。
あまりにも静かなこの場所で、その音はひどく目立っていた。
音が近くなる。
この音の正体は何か。
それは、すぐに分かった。
「はあああああああああああああああああああ!!!」
「や、いや、やめて、いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
私と同じような鎧を着た人間が二人いた。
鋭くて長い、そう、子供の頃テレビで見たような勇者の剣。
二人ともそれを持っていた。
片方はそれを下におろしていた。
けれどもう片方は。
「ごめんなさい、でも、仕方ないの。」
もう片方は、相手の腹部に突き刺さっていた。
剣はすぐに抜かれ、勢いよく赤い液体が噴き出す。
刺された側はその場に倒れ、やがて声も出さなくなった。
赤い水たまりはその場で範囲を広げ続けていた。
私は胃から戻るものを必死に堪えた。
口の中が酸で埋め尽くされる。
何がどうなっているか整理がつかなくても、これだけはわかる。
目の前で人が人を殺し、そして一人が死んだ。
その人はやがてこちらに気付いた。
「あなたも、仮面ライダーなのね。」
黒く濁った剣を持ってこちらに寄って来る。
私も殺される・・・?
『アドベント』
相手はベルトからカードのようなものを取り出して、機械に差し込んだ。
機械は声を発し、知らない単語を読み上げる。
私は、動けなかった。
「あなた、もしかして何も知らないの?」
相手は私に問うた。
私は上がってくるものを抑え、何とか言葉を絞り出す。
「これは何ですの・・・?」
相手は笑い交じりの声で答えた。
「そうね、知らないまま終わるのもかわいそうだし教えてあげる。これはライダーバトル。願いをかけた戦いよ。」
「ライダーバトル・・・。」
気付けば、相手の後ろに大きな白鳥が羽ばたいていた。
「ライダー同士が最後の一人になるまで戦うの。そうして生き残った一人が、自分の持つ願いを叶えられる。」
それは、鏡の中にいた、オーディンと名乗った人物が言っていたことと同じだった。
「そんな話あるわけが・・・!」
「私もそう思ってた。でも見たでしょう?これは本気。大体、こんな世界にいるんだからもう何も不思議なことなんてないのよ。」
相手はもう一枚ベルトからカードを取り出した。
「じゃ、そういうわけだから。さよなら。」
『ファイナルベント』
機械が音声を発した。
このままでは死ぬ。
全身がそう叫ぶ。
逃げたい、でも逃げられない。
何かしなければここで終わる。
何もわからないまま終わってしまう。
果南さんや鞠莉さんを残したまま終わるなんて。
日常に癌を残したまま終わるなんて。
そんなの良いわけがない。
脳裏にオーディンの言葉が過った。
「戦え。」
私はバックルからカードを取り出した。
左肩に取り付けられている機械にそれを投げ入れる。
『コンファインベント』
「何・・・?カードの効果が・・・!」
相手が何をしているのか気にもしないまま、私はもう一枚のカードを取り出した。
『ファイナルベント』
私はただ叫んだ。
耳には今でも相手の悲鳴が残って離れない。
バックルを抜き取ると、変身を解除することができた。
仮面越しでなく、直にあたりを見渡す。
黒く変色した小さな池が二つ目の前に広がっていた。
私は、この人を・・・。
またこみ上げてきそうになる。
いっそ我慢しない方が楽になれるかもしれない。
そう思ったとき。
「・・・え?」
二つの遺体が消えようとしていた。
さらさらと、その世界に変えるかのように。
気付けば、そのすべてはなくなってしまった。
元の世界へは入ってきたガラス面から戻ることができた。
私は、あの人が言っていたことを思い出す。
「最後の一人になるまで・・・か。」
命を奪った。
この手か、それともこの力か。
どちらでも構わない。
もう元には戻れない。
ならばせめて、これが何であるかは知らなければいけない。
きっとこれは罰だ。
楽しかった時間はもうとっくに終わった。
その時ため込んだ、私へのツケ。
鞠莉さんを悲しませて、果南さんを悩ませた。
逃げることなんて許されない。
ならば戦い抜こう。
戦いにかける願いは「二人の救済」。
鏡面から音が聞こえれば戦いの合図だった。
何度も瀕死の重傷を負った。
それでもある程度はこの力のおかげですぐに回復した。
逆に、とどめを刺すのに必要なのは致死量のダメージだった。
日に日に増えていく傷を隠しとおすことはできず、ルビィにひどく心配された。
精神はすり減り、でも私はこう答えた。
「大丈夫だから。」
だってこれは罰なのだから。
私のデッキは初戦が肝心だった。
逃げられてしまえば、コンファインベントを警戒されてしまう。
だから私は、すべての戦いを初戦で終わらせた。
そして、私は最後の一人となった。
私の目の前に現れたのはオーディンだった。
私はそこで察した。
オーディンを倒せば、願いを叶える権利が手に入る。
『ストライクベント』
武器を召喚して、いつもと同じように攻撃の体制に入る。
けれど、私は聞こえてきたその声にすべてを奪われた。
「ダイヤ・・・。なんでダイヤがいるのさ。」
オーディンのそばに現れたのは長いポニーテールが特長の少女。
幼い時から聞いてきたその声を、その姿を間違えるはずがない。
この少女のために、私は戦ってきたのだから。
「果南さん・・・?」
いつもありがとうございます。
定時更新です。
それでは内容のお話から。
未熟DREAMER編第二話です。
以前から、このお話でAqoursはだれも死なないということを言っていました。それに至るまでの話その1です。ここで登場して脱落した「相手」は特に誰というわけでもありません。この時点でAqoursライダーはダイヤだけです。「相手」はオーディンに選ばれるかもしれないその一人、みたいな感じです。もちろんそこにはダイヤも含まれはするのですが、またそれは追々。
未熟編、続きます・・・。
近況です。
ダイヤちゃん・・・。ここでひどい事させてすまん・・・って4話見て思いました。ダイヤさんと呼べない。
それではまた。