音がする。
コンクリートが崩れる音、ガラスの割れる音。
金属同士が接触する音。
ルビィはそれをじっと聞いていた。
何かが起こっている、そんなことは容易く理解できた。
今いる場所から音のする方へはすぐたどり着く。
向かわなければ。
急いで加勢しなければ。
必死で脳に命令する。
けれど脳はこう返す。
何のために?
私は何のために戦うのだろう。
脳がエラーを起こす。
「わからないよ・・・。」
呟いたところで何も変わりはしない。
花丸の想い、強く受け取っている。
ルビィも花丸の笑う顔が見たいと思っている。
花丸と善子と、三人で。
けれど、それとは別に姉妹の絆もまた知りたい。
もう自身がそれを知る術を持たないから。
私は何のために戦えばいいのだろう。
一瞬だけ見せた姉の寂しそうな顔を忘れない。
きっとあの人は私の何倍も辛く、苦しい思いをしている。
音はだんだん激しくなっていく。
デッキを渡すときの花丸の表情だって忘れられない。
ひどく、寂しげな顔。
誰のために、戦わなければいけない?
どうして、ルビィはライダーに選ばれたの?
肌に雨粒を感じ空を見上げる。
休むことなく飛び続けるモンスターが変わらず視界の半分を占拠する。
誰かの想いのその一片。
一歩、音のする方へ進む。
そうだ、その時に決めればいい。
戦って、勝って、答えを見つけよう。
オーディンに会おう。
雨脚が強くなっていく。
ルビィは千歌たちの元へ駆け出した。
サバイブ体へと姿を変えたナイトが王蛇を睨む。
鞠莉は千歌との戦闘を切り上げ、ナイトに近づく。
「そうね、まずはあなたから。今度こそゲームオーバーにしてあげるわ。」
『スイングベント』
かつて梨子が使用していたものと同じそれを左手に、剣を右に構える。
「言われなくても、本気ですよ。」
梨子はカードを引き、静かに召喚機へ読み込ませた。
『アドベント』
疾風の翼を身に纏う、ダークレイダーを召喚する。
「千歌ちゃん、善子ちゃんをお願い。あなただってあまり体力残ってないでしょう?」
言われて千歌は足がガタついていることを自覚した。
返事をし、善子の元へ。
残りの体力を絞り出し、善子を支えながらダイヤの元へと向かった。
「あら、前と同じ光景じゃない。まさか結末まで一緒じゃないわよね。」
「まさか。言いましたよね?負けないって。」
「生意気な・・・!!!」
降り始めた雨は次第に強くなっていった。
「はぁ・・・はぁ・・・。」
降り続く雨の中、たどり着いたルビィが見たのは二人の戦士だった。
一人は剣を突き付け、一人は剣を突き付けられ。
騎士のごとき戦士の声で、それが梨子だとルビィは初めて気付いた。
「じゃあ、あれはもしかして・・・。」
もう一方の人物を推測したとき、梨子は剣を上げた。
「終わりです、鞠莉さん。」
剣が下ろされる。
ルビィは鞠莉と呼ばれた戦士の終わりを予期した。
黒い影が現れるまでは。
それは即座に現れ、梨子の右腕をしっかり掴んでいた。
剣は触れる寸前で止められた。
「そこまでやらなくて、いいんじゃないかな。」
「・・・!」
声でそれがだれか梨子は理解した。
掴まれた腕と剣を下におろす。
「本当にデジャブみたい。あの時は手を指し伸ばそうとして、今はとどめを刺そうとしてたって違いはあるけどね。」
「それだって、本気じゃないでしょ?」
「・・・さすがね。っていうかあの時のことも見てたんだ。」
「そりゃあ、心配だったからね。」
鞠莉の変身が解ける。
憤りが自身を埋め尽くす。
「曜・・・。なんで止めたの!!!」
曜が変身を解く。
それに合わせて梨子もその変身を解いた。
「そもそも梨子ちゃんにその気がないから止めなくてもよかったんだけど・・・。ほら、鞠莉さんと約束したじゃないですか。」
「約束・・・?」梨子が問う。
「そう、果南ちゃんと戦ってる千歌ちゃんを助けてもらう代わりに約束したの。オーディンについてね。」
「オーディンについて、知っているんですか。」
ルビィも三人の前に姿を現し、問いかける。
「ルビィちゃん。あなたもまさか・・・。」
梨子が言いかけたところで鞠莉が叫んだ。
「もういいのよ!!!果南に負け、ナイトに負け、もう私の願いは叶わない、届かないってわかったから!!!!」
「鞠莉さんは、どうして戦っていたんですか。」曜が問う。
「果南を止めるため。そのためならなんだってしてきた。なんだって・・・!!!」
曜はそれを聞いてルビィを見た。
何のために戦うのか、その答えを探していたルビィは、曜に気持ちを見透かされたような気がした。
鞠莉に視線を戻し、曜が言う。
「果南ちゃんも、ダイヤさんも、自分と同じだって考えたこと、ありますか?」
どういう意味、と鞠莉が問い返そうとしたとき。
屋内から声がした。
「何をしているんですの。」
ダイヤが鞠莉を見ながら、縁側に立っていた。
ダイヤを呼びに離脱した千歌と善子、また、花丸もそこに来ていた。
「っていうかなんですのこれは。人の家になにしてくれてるんです?」
落ちている木片を拾い上げ、千歌たちの方を見る。
「あー・・・えっと・・・。でも最初は鞠莉さんが・・・。」
「他でやるとかあったでしょう。どうしてこうも・・・はぁ。まあいいですわ。」
「いいんだ・・・。」曜がぼそりと声を漏らす。
「ダイヤ。さっき曜が言っていたことはどういうことなの。」
「・・・。私たちは同じことを考える、こればっかりは仕方のないことですわ。」
言うことをためらう様子を見せているダイヤをみて、曜が話し始めた。
「梨子ちゃん。そのサバイブのカード、誰から受け取ったの?」
突然の曜の問いに戸惑いつつ、梨子は答えた。
「え・・・?ダイヤさんからだけど。」
それに反応したのは千歌だった。
「そういえば、梨子ちゃんもサバイブ持ってたんだよね。」
「ええ、それがどうかしたの?」
曜の表情が真剣なものに変わっていく。
「千歌ちゃんも持ってるよね。サバイブ。」
梨子が目を見開く。
「どうして千歌ちゃんが・・・?」
「千歌ちゃん、そのデッキ、だれから受け取ったんだっけ。」
千歌はその人を横目で見つつ答える。
「ダイヤさんから・・・。」
曜が静かにうなずく。
「サバイブのカードは全部で三枚。疾風、烈火、そして無限。疾風と烈火のカードにはそれぞれ羽が描かれているんだ。」
二人はそれぞれカードを取り出した。
曜の言った通り、それぞれ左右別々の羽が描かれていることが確認できた。
「無限のカードにはゴルトフェニックスっていう不死鳥の絵が描かれていてね、その羽もその一部なんだ。」
鞠莉がその単語に反応した。
「待ってよ・・・。そのモンスターって・・・。」
曜が頷く。
「そう、オーディンの契約モンスターだよ。」
その場のすべての人間が結末に気付いた。
花丸には追い打ちだった。
ルビィには理解しがたかった。
善子には信じられなかった。
梨子はただ黙っていた。
千歌はデッキを握りしめた。
鞠莉は嘘だと叫んだ。
曜は再び変身した。
「あの時からずっとこの日を待っていました。鞠莉さん、これが答えです。オルタナティブのデッキを開発していたことは予想外だったけれど、隠し通すつもりであったなら別の力も必要ですもんね。」
黒髪の少女は問う。
「最初からわかっていたのですか。」
リュウガは答える。
「いいえ、でも、このデッキの秘密がわかればおのずと。」
黒髪の少女は問う。
「あなたの望みは。」
リュウガは答える。
「最初から、変わってませんよ。」
黒髪の少女は問う。
「私と戦ってどうするのです、リュウガ。」
リュウガは答える。
「あなたがしてきたことと同じです。ダイヤさん。いえ、仮面ライダーオーディン。」
いつもありがとうございます。
間に合わなかった・・・。ごめんなさい・・・。
なるべく金曜に上げることができるように・・・。
あと、前回の分めちゃくちゃ誤字ありました・・・重ねてすいません。
それでは内容のお話から。
結果的に果南を除く8人が屋敷に集まったわけです。
王蛇とナイトサバイブ、結果的に言えばナイトが圧勝でした。
鞠莉に少なからず動揺があったのと、サバイブの違いです。
けれど王蛇には何かが足りない・・・。ユナイトベントです。
ここで分岐です。
もし善子の世話役がルビィだったら。
ルビィ自身も葛藤が生じているため、隙が割と多い状態です。
そのため、まず王蛇はルビィ(ガイ)を破ります。
そして梨子は来るけれどユナイトベント使用可能で・・・。
ちなみに今後ユナイトベントはちゃんと登場します、待っててください。
もう一つ。
曜ちゃんが梨子ちゃんを止めたシーン、4話でダイヤが梨子を止めたあれです。
今回も結局梨子ちゃんはデッキの破壊にとどめようとしていたんですけど。
曜ちゃん的おかえりだったわけです。鞠莉さんそれどこじゃないのに。
近況です。
最近近況話してなったです!!
えっと、埼玉公演最高でした!!!
あと、今日発表されたツアーパックえげつねえ。
でも行きたいのがオタク心。
それではまた!