あの子のために私は戦う。
そのためならば、この身など―――
梨子ちゃんを諭したときは、本当に千歌ちゃんはすごいなってただただ感心した。
もし私が同じ立場なら、何も言わずベルトを破壊していただろう。
梨子ちゃんがそうしたように。
けれど、梨子ちゃんは仲間となった。
千歌ちゃんのサポートができる人が現れたことは本当にありがたかった。
私は戦えないから。まだ、その時ではなかったから。
梨子ちゃんに、このデッキについて言われたことがあるんだ。
見せてはいないんだけど、気付いてたみたい。
「あなたのそれは私たちとは違う」って。
梨子ちゃんもさすがだなって。
でも、私は言った。
「何も変わらないよ。みんなと同じ、ごく普通の女の子の願い事だから。」
千歌ちゃんたちが善子ちゃんたちと出会っていた頃、私は情報を集めるために動こうとしていた。
『あの時のダイヤの言葉、鞠莉の参戦、果南のこと、そして(このデッキのこと)。』EP11
そこへ鞠莉さんがやってきた。
内容はこの間千歌ちゃんに話したこと。
そしてもう一つ。
ダイヤさんのこと。
「ダイヤさんは何を知っているんですか。」
鞠莉の表情が曇る。
「ダイヤ・・・昔からおカタいヤツだとは思っていたけれど、まさかここまでとは思っていなかった。」
「何か、あったんですか。」
「私はもともとダイヤからこの戦いについて教えられた。果南のことに気付いたのはそのすぐあと。それで私は願いをかけたの。果南を止めたいって。」
「私も、ダイヤさんから。」
「そんな気がしていたわ。変身しないあなたがここまで知っているのは変だものね。
・・・だけど、ダイヤは龍騎の力を投げた。そして言ったの。『この戦いを終わらせる』って。そんなことしたら、果南はどうなるっていうのよ!!」
鞠莉さんが机をたたく音が部屋中に広がった。
直後、私の顔を見て言った。
「あなた、オーディンについては?」
「オー、ディン?」
「ダイヤ、これは話していないのね。私がリークするとでも思っていたのかしら。いいわ、教えてあげる。」
私は、オーディンについての話を聞いた。
不死鳥、時間渡航、タイムベント・・・。
「それがオーディン、戦いの果てで待ち受けるライダー。」
その時、ミラーワールドから剣同士の交じり合う音が聞こえた。
見れば、龍騎とアビスが戦っていた。
「千歌ちゃん・・・!果南ちゃんと・・・!」
「あら、でもかなり押されているわね。あのままだとあの子はもう駄目ね。」
このまま千歌ちゃんを脱落させるわけにはいかなかった。
だから私は一つ、鞠莉さんに提案をした。
「鞠莉さん、果南ちゃんを止めたいんですよね?」
「何度も言っているでしょう?それが私の・・・」
「きっとですが、私はオーディンの居場所を知っています。」
はなしを聞いていて、私は居場所の見当がついていた。
「どういうこと?それ」
「最後の一人にならずとも、鞠莉さんがタイムベントのカードを手に入れられるかもしれない、ということです。それさえ手に入れば最後の一人にならなくてもいいんじゃないですか?」
鞠莉さんは不敵な笑みを見せて言った。
「つまり、何が言いたいのかしら。」
「千歌ちゃんを助けてください。千歌ちゃんが脱落してしまったらだめなんです。助けてくれたら、オーディンの居場所を、といっても確実ではないですが、教えます。それに、今果南さんと戦って止められるのであれば、それに越したことはないですよね?」
「あなた、意外とクールなのね。」
「普段使わない頭使っているせいでもうパンクしそうですけどね。」
千歌ちゃんと合流した後、私は千歌ちゃんにひとつ提案をした。
ルビィちゃんを仲間にして一緒に戦おう、と。
普段の千歌ちゃんであれば、間違いなく断るであろう提案だった。
けれど、千歌ちゃんはそれを受け入れた。
誰よりも自分以外が戦うことを嫌う千歌ちゃんがそれを受け入れてしまった時、私は察した。
その時が近づいている、と。
それから私はわざと嫌なことを言った。
ルビィちゃんたちには本当に申し訳ないと思ってる。
それを乗り越えたあなたたちは、私以上に立派な仮面ライダーだ。
それからは千歌ちゃんたちが知っていることとほとんど変わらない。
元々、龍騎のデッキにダイヤさんはサバイブのカードを仕込んでいたんだ。
ドラグブラッカーが現れた時、千歌ちゃん自身がそれに対抗するための切り札としてね。
いくら、契約する私がいたとしても、龍騎から追い出さないことには勝ち目なんてなかったし。
見事、千歌ちゃんはサバイブを引いてくれた。
千歌ちゃんは生き残る力を、私は牙を手にした。
「ってわけ。これが私の今までの戦い。ずっとだまっていて、ごめんなさい。」
深々と頭を下げる曜に千歌が慌てる。
「そんな、頭を上げて。曜ちゃん。曜ちゃんは私のため、いや、みんなのために一人戦ってくれていたんだよね。ありがとう。」
「千歌ちゃん・・・。」
「曜ちゃんがルビィちゃんたちの話をしたときに、どうして二人のことを知っているんだろうってずっと疑問だったんだけど、そういうことだったんだね。」
「ルビィも不思議でした。戦えないって言ってるのに、どうして鏡の向こうが見えているんだろうって。」
「あれ、私隠すの下手だったかな・・・。」
「・・・曜ちゃんらしいね。」
三人は笑いあった。
普通の少女と何ら変わりなく。
しばらくして、曜が言った。
「ドラグブラッカーを呼び出すためとはいえ、ルビィちゃんを戦いに巻き込んだこと、本当に申し訳なく思ってる。ごめんなさい。」
「へ?いやいやいやいや!あああ謝らないでください!私が、決めたことですから。」
大げさに手を振るルビィに曜はくすりと笑った。
「で、曜ちゃん。それだけ?」千歌が言った。
特別厳しいわけではない、いつもと変わらない口調。
曜はやられたという表情を見せた。
「ほんと、千歌ちゃんに隠し事はするもんじゃないなあ。一度明かしたら、とことん来る。」
「えへへ、まあ、幼馴染だからね。ライダーなのはわからなかったけど・・・。」
「あと一つ、言わなくちゃいけないことがあるんだけど、それは私より別の人の口から言ってほしいことでもある。」
「別の人?」
「ルビィちゃん。」
「ピギィ!?ル、ルビィは何も知りません・・・!」
「あ、いや、違う違う。ルビィちゃんはどうであれ変身しなければいけなかったんだ。」
「ルビィが、変身しなければいけなかった・・・?」
「そう、その理由でもあるんだ、これは・・・」
曜が言いかけた時、遠くから声がした。
誰だかはっきりとわかる距離まで近づいてきて、その人が涙を流していたことも分かった。
「善子ちゃん・・・!」
ルビィが駆け寄る。
トレードマークのシニヨンはほどけ、服はところどころ破れ、汚れていた。
顔にも傷と泥がついており、それでも手の中にある一枚のカードだけは離さないでいた。
一緒にいたはずの梨子がいないことも、誰もが気付いていた。
切れる息を整えることもなく、善子は助けを求めた。
「リリーが・・・。助けて・・・。」
「落ち着いて善子ちゃん。梨子ちゃんがどうしたの?何があったの?」
千歌がそっと背中をさすってなだめる。
呼吸が整いかけてきたところで、善子が再び口を開いた。
「リリー、梨子は、鞠莉さんの相手をするって、これを持って立ち去れって、立ち向かう体力なんて残っているわけないのに、逃げる途中で聞こえたの。デッキが壊れる音、誰たが倒れる音を!」
曜は善子が持つカードを見た。
「サバイブのカード。それがあれば鞠莉さんにも・・・待って、鞠莉さんはどんな仮面ライダーに変身した?」
「どんな・・・確かリリーは王蛇って・・・。」
「王蛇・・・。」
「どうしたの?曜ちゃん。」
「千歌ちゃん、みんなも。急ごう。みんなに真実を知ってもらう必要がある。」
「リリーはどうするのよ!?」
「梨子ちゃんはあなたにサバイブ、生き残れって託したんだよ。それを無駄にするの?」
「・・・言ってたから。絶対負けないって。」
「だったら、きっと梨子ちゃんは負けない。」
「・・・教えて、私にもその、真実ってやつ。」
千歌は一人呟く。
戦わなければ、生き残れない。
いつもありがとうございます。
また一週遅れ・・・。申し訳ないです。
どこかで遅れを取り戻します。
それでは内容のお話から。
CYaRon!編の終わりと曜ちゃん編の終わり。
曜ちゃん、梨子ちゃんと千歌ちゃん戦闘時(二年生編)二人が互いに専念できるように周りに集まる敵をブランク体ながら倒したりしていました。鏡の前でただ見守っていることがどうしようもなく歯がゆくて、でも千歌に姿は見せられない。そこで取った行動です。あれだけ時間あってなんで敵来ないんだよ!って疑問があるとすれば答えはこれです。
和解した二人が現実世界に戻ったときすぐ曜ちゃんが駆け寄ることができたのも、二人の戦闘が終わったところで戻る場所を曜ちゃんが予想して、そこから現実世界に戻っていたからです。
近況です。
ついに2ndの埼玉公演まで1か月きりましたね・・・。
ずっとわくわくです。
それではまた。