Aqours☆HEROES   作:ルイボス茶

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元気全開DAY!DAY!DAY!

梨子と善子へ一時の別れを告げたそのすぐ後。

花丸もまた、千歌とルビィへ別行動する旨を伝えていた。

 

「おらはもう一度黒澤家へ向かいます。」

「花丸ちゃん、ルビィも・・・。」

「ルビィちゃんは千歌さんのことを助けてあげて。」

「でも、お姉ちゃんが・・・。」

「万が一の時、あなたに見せたくはないから・・・。」

 

ルビィは別れる直前の花丸との会話を思い出していた。

 

無数に現れるモンスターを撃破しながら、逃げ惑う人々を守る。

やがて行き場がなくなるであろうことは考えないでいた。

 

「千歌さん!こっちはもう誰もいません!」

「おっけー!ありがとう!これでしばらくの安全は確保できたかな・・・。」

 

モンスターが密集していた場所で個体を倒し逃げ道を作っていた二人は、あたりを確認して武器を下ろした。

 

「花丸ちゃんに善子ちゃん、梨子さんも・・・。みんな大丈夫ですかね・・・。」

「大丈夫だよ、みんなまた戻ってくるって言ってたし。私たちも頑張らないと!」

「そう、ですよね。がんばルビィ!」

「なにそれかわいい!がんばルビィ!」

 

異変が起こってから初めて休息を取る。

変身を解除して、デッキの枚数をリセットする。

そうしなければ、カード切れで戦う手段が限られてしまう。

 

数分の休息を取った後、遠くの空からモンスターの群れが来るのが見えた。

 

「また、来ましたね。」

「うん、でももう大丈夫。さあ、まだまだ行くよ!」

「はい!」

「「変身!」」

 

鎧に身を包んだ二人は、再び戦いを始めた。

 

『ソードベント』

 

『ストライクベント』

 

各々が召喚した武器で敵を倒していく。

このままならば押し切れる、そう思った時だった。

 

敵の群れの中に、小さな少女がいることに気付いた。

 

「まずい!助けなきゃ!」

 

急いで少女のもとへ駆け寄る。

 

「後・・・少し・・・。」

 

あと5m、手を伸ばせば届きそうな距離。

あと少し、そう思ったところで一体のモンスターが少女の頭を掴み持ち上げた。

千歌の足が止まる。

すぐに少女から全身の力が抜け、腕がだらんとぶら下がっている。

まるで楽しむかのように、モンスターはその体を遠くへ放り投げた。

 

千歌の頭は真っ白になった。

それはだんだんと塗り替えられていく。

それに対する、憎悪へと。

 

「許さない。」

そのモンスターめがけ、歩き出す。

「許さない。」

力強く握った拳は爪が食い込み、鎧の下で赤くにじんでいた。

「許さない。」

噛み締めた唇からも血が垂れる。

「許さない許さない許さない許さない!!!!!!ああああああああああああああ!!!!!!」

やがて言葉では無くなり、同時に何度もモンスターを殴りつけた。

バランスを崩し倒れたモンスターの上から馬乗りになって殴ることを続けた。

「ああああああああああああああ!!!!!」

それが爆発とともに散ると、今度はその周囲のモンスターを片っ端から殴りつけていく。

喉が痛み、血の味がしても叫び続けた。

 

やがてそれはルビィの耳にも届いた。

「千歌さん・・・?」

 

明らかに様子がおかしい千歌の姿をみて、近づこうとするが周りの敵がそれを阻む。

「千歌さん!どうしたんですか!千歌さん!」

 

千歌の耳にルビィの声は届かない。

そこに確かにあるのは、殲滅する意思のみだった。

手の骨が折れる音がしても殴ることをやめなかった。

やがて周りのモンスターすべてが消滅しても、それに気づかず何かに向かって拳を振るい続けた。

 

 

 

 

「ストップ、千歌ちゃん。」

 

 

 

 

 

空に振るわれる拳を一つの手が止めた。

「もうまわりにモンスターはいないよ。だからもうおしまい。」

 

道を開けたルビィが、拳を止めた者の姿を確認する。

 

「・・・え?」

 

戦いで疲れているのだろうか。

けれど確かに、ルビィの目に映っているのは、ふたりの龍騎だった。

片方は、色が抜けているように感じる。

 

「あ、ああ、だれ・・・。」

「私だよ。あなたの頑張りは誰よりも知ってる。だから、この時のために、ずっと黙ってたんだ。ごめんね。」

 

もうひとりの龍騎は、威勢を失った千歌に語りかけた。

 

「千歌ちゃん、もう少しだけ頑張って。あなたがここで終わるはずはない。影に打ち勝つの。」

「私は・・・千歌は・・・。」

「そう、あなたは何?むやみに攻撃するようなモンスター?違うでしょ?千歌ちゃん、あなたは誰?」

「私は・・・私はヒーロー・・・。そう、私は、みんなを守るヒーローなんだ!」

 

その声に呼応するように、千歌の召喚機が赤い炎に包まれた。

やがて炎が消えると、銃型の召喚機が現れた。

 

「ヨーソロー!さあ、そのカードを引いて!生き残りを願う決意のカードを!」

 

それに頷いて、デッキからカードを引く。

召喚機の口を開き、炎渦巻くそのカードをセットして閉じる。

召喚機がカード名を宣言した。

 

 

 

『サバイブ』

 

 

 

 

今度は千歌の身体が炎に包まれる。

その中で、龍騎の鎧は変化した。

炎が消えるとそこにいたのは、基本カラーに金が加わり、全体的に大きくなった鎧を身にまとった龍騎だった。

 

「この姿は・・・?」

千歌はもうひとりの龍騎に尋ねた。

「それはサバイブ体。簡単に言うとね、パワーアップかな?」

もうひとりの龍騎はそう言うと、千歌の後ろを指した。

「まずは、あれを何とかしなきゃね。」

振り返ると、黒色に変色したドラグレッダーがこちらを見ていた。

「黒い・・・ドラグレッダー?」

「千歌ちゃん、ちょっと待っててね。」

もうひとりの龍騎は黒色のドラグレッダーへと近づいていった。

「千歌さん!」

様子を見ていたルビィが千歌に近づく。

「ルビィちゃん、大丈夫?」

「千歌さんの方こそ・・・。あの、あれは誰なんですか?」

「うん、声ですぐにわかった。曜ちゃんだよ。ほら、私の隣にいた。」

「え?でも、変身できないって・・・。」

「私も、曜ちゃんは仮面ライダーじゃないってずっと思ってたんだけど・・・今はまず、さっきの女の子と曜ちゃんを助けなきゃ!」

「えぇと・・・はい!」

 

 

 

 

 

「ドラグブラッカー、ダイヤさんはそう呼んでたっけ。」

ドラグブラッカーと呼ばれたモンスターは奇声を発した。

「さて、あなたのその力、曜ちゃんに貸しなさい!」

 

『ソードベント』

 

勢いを乗せた高い跳躍でドラグブラッカーの身体に乗り、剣をひと振りした。

しかし、シャーペンの芯が如く剣は2つに折れてしまった。

「えぇ!?弱!やっぱりブランク体じゃダメなのかなぁ。」

しがみつく曜を振り落とそうと、ドラグブラッカーは身体をくねらせる。

「うわわわわわわ。下が水ならきれいな着水を見せられるけど、地面だしなぁ・・・。」

「曜ちゃーん!」

声のする方へ向くと、変化したドラグレッダーに乗る千歌がいた。

「曜ちゃん!何をすればいい?」

「千歌ちゃん!なるほど、ドラグランザーの上に・・・。分かった、私もそっちに乗る!」

言い切るより早く身体を空に投げ出し、向かってきたドラグランザーに着地した。

「ナイスキャッチ!ありがとう千歌ちゃん!」

「ううん、なんかもう色々聞きたいけど、まずはアレだよね?」

「さすが!さっきまでの様子が嘘みたい!」

「そちらに向かう他のモンスターはルビィが引き受けますー!」

下からルビィが二人に呼びかける。

「ルビィちゃんも!ありがとうー!よし、じゃあ千歌ちゃん。今から私がすることを言うね。」

千歌が目を見て頷いた。

「アレと契約する。千歌ちゃんのドラグレッダーやルビィちゃんのメタルゲラスみたいに、アレを私の契約モンスターにする。」

「へ?」

「そのために私をギリギリまで近づけて!そこでファイナルベントを放つから!」

「え、ちょ、契約って。」予想外の回答に整理がつかなかった。

「よしじゃあよろしく!」

「なんかもうわかんないけど、曜ちゃんがそう言うなら!ドラグレッダー、じゃなかった。ドラグランザー!行くよ!」

ドラグランザーは咆哮を上げ応じるようにドラグブラッカーに向かって上昇した。

やがて、同じ高さに近づくと、曜が呼びかけた。

「このままもっと高く!」

「え?でも通り過ぎちゃうよ?」

「いいの!いっけー!」

言われるがままドラグランザーを上昇させ、ドラグブラッカーとの高さが出たところで、曜がまた叫んだ。

「よし!ありがとう!じゃあ千歌ちゃん、キャッチお願いね!」

「へ?」

きっと曜は千歌の抜けた返事を聞いていないだろう。

聞くより先に、ドラグブラッカーに向かって飛び込んでいったから。

「これだけ勢いがあれば!」

 

 

『ファイナルベント』

 

 

 

「ライダーキック!!!!!!!」

 

 

力を右足に込め、一直線にドラグブラッカーに向かっていく。

 

「はああああああああああああ!!!!」

 

足がドラグブラッカーに触れた瞬間、衝撃波が起こった。

自身もそれに耐えられず、身体が落ちていく。

ドラグブラッカーも無傷ではなく、身体がよろめきバランスを崩した。

「曜ちゃーーーーん!!!」

上から曜よりも早く急降下してきたドラグランザーと千歌が、落下する曜を拾い上げた。

「曜ちゃん!大丈夫!?何やってんの?!」

「おー、ナイスキャッチ!信じてたよ〜!」

急いで体勢を整え、もう一度ドラグブラッカーを見る。

「よし。契約だ、ドラグブラッカー。お前は私としか契約できないだろう?その力を貸しなさい!」

先までとは違う、真剣な声色でドラグブラッカーに呼びかける。

「それ!」

と思えば、いつもの明るい口調で、また身体を空に投げ出した。

「ちょ、また!?!?!?」

千歌が慌てて追おうとする。

「今度は大丈夫!」

曜が千歌に向かってそう言うと同時に、ドラグブラッカーが曜の元へ向かった。

 

やられる、千歌もルビィもそれを覚悟していたが曜は違った。

 

「よし、聞き分けのいい龍だ。」

気付けば、ドラグブラッカーの上に乗る曜の姿があった。

 

もうひとりの龍騎の色は黒色に変色し、バックルと仮面に龍の紋章が刻まれた。

 

「契約完了。あぁ、名前、そうだなぁ。龍騎、とは違うし。うーん。」

 

 

ちらりと千歌の方を見ると、口を開けて目が点になったまま曜を見てるのがわかった。

その間抜けな顔を見てくすりと笑い、

 

 

「よし、私はあの子の牙となる者。邪魔者がいれば噛み付こう。名前はそう、龍牙!」




いつもありがとうございます。
先週はちょっとお休みを・・・。
申し訳なかったです。

それでは内容のお話。
龍騎サバイブとリュウガ、曜ちゃん変身、CYaRon!集合!
てんこ盛り!
今回と次回は流れ的にCYaRon!回なんですが、その中でも特に最後の変身者曜ちゃんを中心にお話が進みます。
曜ちゃんにばら撒いた伏線をまとめて回収するぞー!
そして龍騎サバイブ。千歌は最初からサバイブを持っていたって話です。気づかなかった理由はまた次回。

近況です。
夏休み!更新たくさんするぞーって意気込んでいたのに早速お休みは申し訳ないです。
なんかめちゃ忙しくなってるんですけど、頑張ります!それでは!

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