Aqours☆HEROES   作:ルイボス茶

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王蛇の秘密

手に杖状の召喚機を持ち、けだるそうにライアとファムを見ていた。

「王蛇、最悪のライダー。」梨子が厳しい声で言う。

「あら、知ってるのね。」

「最悪と言われるその所以までは知りませんけどね。」

「それは、すぐにわかるわ。」言いながら、鞠莉は笑みを向けた。

 

一瞬、沈黙が流れた。

 

「鞠莉さん、こんな状況でもあなたが戦う理由って何ですか。」

「私はね、果南を救いたいの。」鞠莉はすぐに返答した。

「果南さんを倒してでも?」

「・・・そう。でも私は負けたわ。果南には勝てないって、また負けてやっと思い知った。千歌っちから横取りしたってのに、恥ずかしいったらないわ。でも、最後に戦って区切りがついた。私が定めたこの2週間の期限、その間に私は最後の一人となるの。」

「最後の一人って、果南さん?って人と結局は戦うわけでしょ?なら今と変わらないんじゃないの?」端から流れを見ていた善子が口をはさむ。

「あら、あなたはアビスの話を聞いていないのね。梨子、あなたはきっと聞いているでしょう?」

「ええ、ダイヤさんから。アビスという、戦いには含まれないイレギュラーが存在するって。」

「!?なんで教えてくれなかったのよ!」

「タイミングなかったじゃない・・・。でも、よっちゃんの言う通り戦いに勝ち進んでも結局アビス、果南さんを救うことはできないですよね。」

「ええ、そうね。だからね、私はやり直すの。」

「やり直す?何を?」意味が分からず善子が言葉そのままを返す。

「そのままの意味よ。やり直すの。私たちの楽しかったと思う時間に、戻るの。タイムベントのカードを使ってね。」

「タイムベント・・・。」聞きなれない単語を梨子は復唱した。

「願いを叶えるために他のライダーすべてを倒したとして、その後私たちはどうなると思う?」

「そりゃあ、願いが叶うんじゃないの?」

「ううん、ラストバトルが待っているの。仮面ライダーオーディン、不死鳥の戦士とのね。」

「仮面ライダーオーディン・・・。」

「それに勝ってはじめて戦いが終わり、願いを叶えることができる。私は、そのオーディンが持っている時間逆流のカード『タイムベント』を手に入れて、果南がアビスになる前の時間に戻ってすべてをやり直すの。それが、私の本当の目的よ。」

 

戦いの先にあるものを知った梨子は情報を必死に整理した。

不死鳥のライダー、オーディン。時をつかさどるカードを持つ、最後の戦士。

そっと、バックルに触れる。

もしそれが、金色のライダーであるとしたら。

 

「オーディンが誰かはわかっているんですか?」梨子が聞いた。

「オーディンは私たちと違って無作為に選出されるわ。だから、名もなき誰か、と答えるのが適切なのかもね。」

 

名もなき誰か。きっとそれは、時間渡航によって選ばれたこの時間の人間ではない誰かのことなのだろう。

この時間の人間ではない誰かなどあり得ない、想像できない。

 

「もう一つ。果南さんがどうして戦うのか、考えたことはありますか?」

「何度も、何度も、何度も何度も何度も考えたわ。訊きもした。でも答えてくれなかった。ダイヤだって最初と話が違う。戦いを終わらせたら果南はどうなるの?そんなのだめに決まってる。だから、私が救うのよ!」

 

『ソードベント』

 

尻尾を模した剣を召喚し、それを梨子に向けた。

静かに向けられた剣先を見据えながら、梨子は召喚機からサバイブのカードを抜いた。

ライアの鎧が元の姿に戻っていく。

 

「あなたが王蛇の力を求めたように、私はこの力を求めた。」

 

言い終わると、梨子はカードを善子に投げ飛ばした。

いきなりで慌てながらも、善子は投げられたカードを受け取った。

「ちょ、これサバイブ・・・。」震える声で善子が言う。

「それを持ってここから離れなさい。大丈夫、私は負けないから。」

「でも、これがなきゃ・・・。」

「行って。そのカードの通り、私は生き残るわ。」

仮面の中で流れる涙を払うこともできないまま、善子は梨子に聞いた。

「大丈夫、なのね?信じていいのね?」

「だから言ってるじゃない。私を誰だと思っているの、リリーよ。」

「うん、わかった。預かっておくから。」

 

善子は梨子たちに背を向けてその場から去っていった。

「二度もかっこつけるなんて、どうかしてるわ。」

かすれた声で呟きながら、大切に受け取ったカードを握って。

 

「さあ、始めましょうか。」

「ずいぶんと余裕なのね、あのカード強かったじゃない。」

「貰い物に傷つけるわけにはいかないもの。ダイヤさんに怒られちゃう。」

「そう、あれもダイヤが。何から何まで私の邪魔するかのように・・・。」

「ダイヤさんの気持ちも、わかろうとは?」

「人の気持ちなんて、もう何もわからないのよ!!!」

 

王蛇の剣が近づいてくる。

先の睨み合いの中で、梨子は考えていた。

サバイブ体であったとはいえ、大きな敵との連戦続きで体力は限界間近だった。

仮面ライダーの力があれど、室内でピアノ弾いてばかりだったその体力はカバーしきれない。

サバイブ体を解除した今を考えると尚更。

デッキに残るカードはあと一枚。

最後の悪あがきでもしてみようか、そう思い、ファイナルベントのカードを召喚機に入れようとしたところで、その勝負はあっけなく終わった。

 

バックルを貫通するように、王蛇の剣が身体を貫いていた。

 

剣が抜き取られると、ライアの変身は解け、梨子が静かに倒れた。

 

痛みは感じ無かった。本当に痛いときは痛くないんだなとのんきに考えた。

 

貫かれた腹部を触ると、血が流れたことがわかる。

それでも、そこに傷はなかった。

ここまでの傷を負ったのに死ぬことがないとは。

ライダーの治癒システムは致死量になるとここまでなのかと、またのんきに考えていた。

 

視界は擦れ、身体に力は入らず、腹部に回した手も力がなくなって地面に垂れた。

 

何とか意識だけは保とうと、目に残る全部の力を集中させ、視界を開かせる。

 

紫の鎧が血の垂れる剣を下ろして梨子を見ていた。

 

「あれだけ言っていた割に、何もしなかったのね。梨子、サヨナラ。」

 

梨子の目に映る紫は背を向けた。

 

「そして、ハロー。エビルダイバー。」

 

王蛇の手にあるのは何も書かれていないカード。

やがてそれは、つい先まで梨子が所持していたエビルダイバーのカードに変わった。

 

「なるほど・・・最悪のライダー、ね・・・。」

 

それを目の当たりにして、梨子は静かに目を閉じた。




いつもありがとうございます。

まずは内容のお話から。
今回の話について、嫌だやめろなどと思う方がいると思います。
そういう方々に対しては、申し訳ないです。

亡くなってはないです。それだけは決して。

自身、書こうかどうか悩みました。
この時のために本来は無い治癒システムを導入して、でも痛々しいと思いながら。
だからと言って、きっとこういうことがなかったとすれば、納得いくようにはならないなと思い、書きました。
ただ、これだけは。
きっと梨子は善子に嘘をつかないです。


近況です。
セブンイレブンの梨子ちゃんかわいい・・・。
魔法少女マジカル☆リリー
・・・なるほど。

それではまた。

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