Aqours☆HEROES   作:ルイボス茶

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夢で夜空を照らしたい

力の限り戦う。

召喚した剣で、敵を斬り付ける。

それでも、そのモンスターに決定的なダメージは与えられずにいた。

 

千歌が相手の攻撃をかわしながら、善子に呼びかける。

「前よりは戦いになってるけど・・・やっぱり強すぎるよ!」

「遊ばれてるって感じするわね、って千歌さん危ない!」

「うわっ、と、ありがとう善子ちゃん。あの火の玉とか面倒だよね。」

「飛ぶとかズル過ぎない?チートよあれ!レギュ違反!」

空を見れば、鳥のように姿を変えた怪物が飛んでいる。

「なんかよくわかんないんだけど、善子ちゃんのそれ、白鳥でしょ?乗れたりしないの?」

「なるほど、リトルデーモンに乗るのね。やってみる!」

千歌の提案に賛成して、善子がデッキからカードを取り出す。

 

『アドベント』

 

「来なさい!リトルデーモン!」

現れたのは、先に千歌と花丸の争いを止めた白鳥のモンスター。

それを自分の元に呼び寄せると、またがるように背中に乗った。

「飛んで!」

号令に従い、高らかに鳴き、白鳥が空中へと舞い上がる。

「ととと飛んだ!やるじゃないリトルデーモン!」

「リトルデーモンって呼んでるんだそれ・・・。とにかく、空は任せたよ!」

「出来る限り、やってみるわ!」

 

『アドベント』

 

千歌も同様に、赤き龍を召喚した。

「ドラグレッダー、援護をお願い。」

指示を受けたドラグレッダーは、咆哮を上げ善子の元へ上昇した。

 

その後すぐ、梨子が千歌と合流した。

 

「梨子ちゃん、どうして?」

「それはまた後で。それより、劣勢って感じね。」

「うん・・・善子ちゃんとドラグレッダーが上で頑張ってくれてる。」

「そう、ならもう少しだけ、私たちで踏ん張らなきゃね。助っ人が来るはずだから。」

「助っ人?」

それがだれか聞き返そうとしたとき、空から人が降ってきた。

それがファムであると理解するのに時間はいらなかった。

「なんなのよあいつ!マントなかったら死んでたじゃない!」

「善子ちゃん大丈夫!?」

「あんまり大丈夫じゃないわね、こうやって振り落とされちゃったし。って、リリー?」

「リリーって?」

「今は触れなくていいわ・・・。それで、今はどうし・・・」

どうしているのか、そう聞こうとした時だった。

 

「善子ちゃん!!」

 

いつ現れたのか、あいつが善子のすぐ背後にまで距離を縮めていた。

千歌の叫びも間に合わず。

 

モンスターの拳が、善子の背中を捕らえた。

拳は鎧に食い込むように容赦なく振るわれる。

 

声を漏らす余裕などないまま、身体が地面に倒れ込む。

起き上がる為に力を込めるが、まるで入らない。

ただ、されるがままに善子の身体が蹴られ、殴られていく。

 

「やめろおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

喉が裂けそうになるほどの叫び。

それとともに、千歌は握りしめた拳を怪物にぶつける。

 

モンスターが退避した隙に、梨子が善子の身体を救出する。

 

「大丈夫!?返事をして!」

善子の口から聞き取れるのは、嗚咽のような声。

「善子ちゃん!」

「生きてるってば・・・。しんどいんだから返事させないでよ・・・。」

「よかった・・・。」

何とか意識があることを確認し、千歌に視線を向ける。

 

 

睨み合う龍騎とモンスター。

緊迫した空気に包まれる。

 

 

 

千歌がもう一度、拳を握りしめたとき。

砲弾が一発、モンスターを直撃した。

 

 

急いで砲弾の発射元を確認する。

 

 

「花丸ちゃん・・・!」

 

 

緑と銀。二人のライダーがいた。

 

 

「そっちはもしかして、ルビィちゃん?」

銀色のライダーは黙って頷く。

「ずら丸~ルビィ~おそいわよ・・・。」

せき込みながら、善子が二人を歓迎する。

花丸はそれを聞きながら、千歌の正面に立った。

「花丸ちゃん。ごめん、無理やり巻き込んで。」

「千歌さん、おら、自分が言ったことが間違ってたとか、そう思うつもりはないずら。」

「うん。」

「でも、人の気持ちも、もっともっと知るべきだった。」

「きっとそれは私も同じだよ。」

「そうかもしれないずら。だから、もう一度、立ち上がりたい。」

「戦ってくれる?」

「はい!それに、ルビィちゃんも。」

「うん、ルビィ頑張るよ。怖い怪獣さんたちやっつけるから!」

「・・・!ありがとう!」

 

戦いから逃げず立ち向かう、確固たる信念を持った5人の少女が、そこにいた。

 

「長期戦は無理ね。」

「どうする?梨子ちゃん。」

「私と千歌ちゃんで戦おう。二人はそれを狙って。」

「わかりました。」

「行くよ、千歌ちゃん。」

「うん!」

 

『ストライクベント』

『スイングベント』

 

「「はあああああああああああ!!!」」

 

今までよりもはるかに大きな力を込めて。

多く、人を傷つけたこの怪物を倒すため。

 

「あと少し攻撃があれば、おらとルビィちゃんで・・・。」

「じゃあ、任せたわよ。」

「え?」

 

『ファイナルベント』

 

それを発動したのは、重傷を負い回復に努めていたファムだった。

 

「善子ちゃん!そんなことしたら身体が持たない!」

「善子ちゃん!」

「ぶっちゃけしんどいわよ!!!でも、やっと回ってきたチャンスでしょ!なら、つかまなきゃ!」

 

白鳥が翼で風を起こし、龍騎たちの攻撃を受けていたモンスターを吹き飛ばす。

「おりゃあああああ!!!!」

吹き飛ばされてきたモンスターを、同じくファムが召喚した薙刀で切り刻んでいく。

「ずら丸!ルビィ!頼んだわよ!」

そう言い残し、ファムは地面に倒れた。

「任せて、善子ちゃん。」

 

『ファイナルベント』

 

「エンドオブワールド。」

花丸の掛け声とともに、一帯が火力の渦に包まれる。

必殺レベルの攻撃を食らい続けたモンスターには致命的なダメージが蓄積されていた。

 

「「「「ルビィちゃん!」」」」

 

「やるんだ、ルビィも、戦うんだから!!!!!」

 

四人の思いを受け取り、デッキから引いたカードを召喚機に挿入する。

 

『ファイナルベント』

 

現れたサイのミラーモンスターと角を模した武器を右腕に装備する。

 

「これが、1年生パワーだあああああ!!!!!!!!!!」

 

サイのモンスターの肩に乗り、高速でモンスターへと突進していく。

 

「いけええええええええええええええ!!!!」

 

 

 

 

 

確かにその角は、モンスターを捕らえた。

 

 

 

 

 

奇妙なうめき声。

大きな爆発とともに、モンスターの身体が粉々に乱れ飛ぶ。

 

 

 

 

 

5人のライダーの荒い息づかいだけがそこに響く。

 

 

 

 

「倒した・・・?」

千歌が言葉にして、それを確認する。

 

 

 

「花丸ちゃん・・・。」

ルビィが変身を解き、花丸の元へ駆け寄る。

「よかったよぉ・・・倒したよぉ・・・。」

「ありがとう、ルビィちゃん・・・。戦ってくれて。」

そっと、ルビィを抱き寄せた。

 

「善子ちゃんは!?」

「はーい・・・いきてますよー・・・何度倒れるんだろ・・・私・・・。堕天使関係ないわよねさすがに・・・。」

善子の変わらない調子に一同が安堵する。

 

 

 

 

 

長く続いた強大な敵との戦いが終わった。

 

 

 

 

 

 

五人は見合い、それぞれを目で確認する。

「長かったしつらかったね・・・。ありがとう、みんな。一緒に戦ってくれて。」

千歌の感謝に全員が頷く。

善子が続いて千歌に尋ねる。

「でも、これで終わりじゃないんでしょ?」

「そう、ここからなんだよね・・・。」

 

あのモンスターを倒した。

曜の言っていたこと通りに事が運べば、果南はきっとこれを無視できないだろう。

ここからが、正念場だ。

 

「とりあえず今日はもう帰りましょう。善子ちゃんだってボロボロだし。」

「だからヨハネよ!って、リリーもなかなかにボロボロよ。みんなもだけどね。

「リリー?」

「ルビィちゃん、それには触れなくていいから。」

「なんでよ!」

 

取り留めのない会話。

戦いが終わればそこにいるのは他と変わらない少女。

ただ、願ってしまい、ただ、力を手に入れてしまっただけの。

 

 

 

 

「さて、ここから出よ・・・何?地震?」

 

その揺れを全員が感じた。

思わずその場でしゃがみ込む。

 

「止まった・・・大きかったね。」

「えぇ、って、ルビィ大丈夫よ、止まったから。」

ルビィはまだ、しゃがみ込み小さくなっている。

「うん・・・。」

「梨子ちゃんと花丸ちゃんも大丈夫?」

「・・・」

二人から返事はない。

「二人とも・・・?おーい?」

「変わってない。」

梨子の言った言葉が、千歌には理解できなかった。

「変わってないって、そりゃ何も・・・。」

「違うずら。」

梨子と花丸の声が微かに震えていることがわかる。

千歌は恐る恐る聞き返す。

「どういうこと?」

 

梨子の口から放たれた言葉に、千歌は絶句した。

 

「変わってない、反転してないの。ミラーワールドから出ていないのに・・・。現実世界と変わってない。」

 

 

願い、力を手にした少女たちの、最後の戦いが始まる。




いつもありがとうございます。
まずは内容のお話から。
一年生編完結です。ありがとうございました。
一年生三人のファイナルベントはずっと決めていたので、楽しかったです。
ちなみに、文中で特に話はしませんでしたが、戦っていたモンスターはガルドサンダーでした。
そしてそのまま次のお話へ。
物語を終盤へと向かわせます。
よろしくお願いします。

近況です。
セミが容赦ない。

それではまた!

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