Aqours☆HEROES   作:ルイボス茶

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そして繋がる みんな繋がる

千歌が目を開ける。

視界に広がるのはまたも知らない天井。

自分の身体が敷布団に横たわっていることを確認する。

い草の香りが心地良く感じる。

 

腹部に痛み。直に蹴りを入れられたことを思い出す。

「デジャブかな・・・あはは。」

一人、力なく笑った。

 

「目が覚めたずら?」

 

声の主が花丸だということに千歌はすぐ気が付いた。

「もしかしてここ花丸ちゃんの・・・?」

「そうずら。ここはおらの実家のお寺。ここなら一先ずは安全です。」

「あれから、どうなったの?」

「おらも梨子さんもやられました。とはいえ、千歌さんに比べればダメージはひどくなかったのであの場で何とか動けるようにはなって。善子ちゃんは難を逃れたみたいで、手伝ってもらって今に至る、という感じです。」

「そっか。迷惑かけてごめんね。その、梨子ちゃんと善子ちゃんは?」

「梨子さんは一人になりたいって外へ。善子ちゃんも、戻ってくるからとは言ってましたけど、どこかにか・・・。」

「そうなんだ・・・。」

 

少しの沈黙。

ふと、曜がいないことに気付きスマホを確認すると、メールが1件届いていた。

 

『気になることがあるから、少し動きます。戦いを見届けられなくてごめんね。』

 

突然消えたわけではないことに安心して、再び花丸と話し始めた。

 

「あの敵、強かったね。」

花丸の顔がゆがむ。

「はい。すごく。今までいろんな敵と戦ってきましたけど、あれだけ戦闘能力の高い個体は初めてで・・・。」

よみがえる記憶。

攻撃能力の高いモンスター。

そして、隣にいた青のライダー。

「あの青の仮面ライダーって、敵なのかな。」

「はっきりとしたことは言えません。けれど、あのようなライダーが参戦している事実はありません。例外と呼ぶしかないずら・・・。」

「例外・・・。」

 

青の鎧。サメのような、シャチのような・・・。

 

サメ・・・シャチ・・・イルカ?

 

千歌の頭に一瞬、嫌なイメージが広がった。

 

「もっと調べてみます。千歌さんは痛みが治まるまでもう少し休んでいてください。」

そう言って、花丸が部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・見つけた!」

善子の視線の先で、梨子が一人砂浜から海を眺めていた。

「もうすっかり暗くなったし、何も見えないんじゃない?」

話しかけられて初めて梨子は善子に気が付いた。

「善子ちゃん、どうして?」

「だからヨハネだってば。って、あんな顔して出ていくんだもん、追いかけないわけにはいかないでしょ。」

「・・・ふふっ。堕天使だってあれだけ言ってたのに、意外と優しいのね。」

「なっ・・・!!!別に堕天使だって心配ぐらいするし・・・!」

 

「全然・・・敵わなかった。」

「え・・・?」

それが何についての話題なのか善子はわかっていた。

「わたしね、千歌ちゃんに救われたの。ライダーとして戦う道以外に、助けてくれる誰かの力で願いが叶えられるんだって教えてくれた。だから、私も助けたかった。なのに目に映るのはあの子が倒れている姿。勝てなかった、勝てなかった・・・。」

涙が頬を伝う。

 

聞いていた善子は必死に言葉を探していた。

今言うべき言葉は何が正しいのだろう。

何を言えば、目の前の涙は晴れるだろう。

見つからない、わからない、追ってきたくせに、何も言えない。

 

いや。

 

考えるな。

さっきだって、さんざん考えた結果がこれだ。

考えなくていい。

今思うことをそのまま、伝えればそれこそ。

 

「変身よ。」

「変身・・・?」

「そう、変身。なりたい自分に、いつか思い描いていた自分に変身するの。仮面ライダーとかじゃなくて、きもちで。あこがれていた姿への変身。きっと大切なのは、変わろうとすることだと思う。リリーはさ、前の自分から変わろうとした。たぶん、あと少しなんだよ。」

自分に言い聞かせるように。先への不安にためらった自分じゃない、強い自分へ変身するんだと。強く、胸に。

 

何も言わない梨子に、だんだん恥ずかしくなった善子が顔を伏せる。

その様子がおかしくなり、梨子から笑みがこぼれた。

「なにそれ、励ましのつもり?」

「なによ!私だってこれでも・・・」

「でも、ありがとう。少し救われたかも。って、また私誰かに救われたのね。」

「あ・・・えっと・・・そ、そうよ!大切なリトルデーモンが困っているんですもの、たまにはこのヨハネが・・・」

「リトルデーモンじゃないし。っていうかリリーって何よ。私そんな呼び方認めてなんかないわ。」

 

取り留めのない会話が続いた。

その中で一つ、梨子は決めたことがあった。

 

「善子ちゃん。千歌ちゃんたちに伝えておいてもらっていいかな。行くところがあるって。」

「行くところ・・・。わかった。伝えておく。」

 

決心が伝わるそのまなざしを善子は信じることができた。

自分も、覚悟を決めたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 「戻ったわよ、ずら丸。」

少ない灯りを頼りに寺に着いた善子は、まず花丸を探した。

「善子ちゃん!お帰りなさい。」

「ヨハネ!・・・千歌さんは?」

「少し前に目を覚ましたずら。もう少し、様子をみなきゃって感じだけど。」

「そう、はやく回復することを願うしかないわね。・・ねえ、少し話でもしない?」

 

 

寺の縁側。

外を見れば夜空が広がっている。

ちょうど月が雲から顔を出したところで、花丸がお茶を運んできた。

「お待たせずら。こうやってお話しするのもひさしぶりずらね。」

「そうねー。別に同じ市内に住んでるっていうのに案外会わないものね。」

「びっくりした?」

「ええ、それはもういろいろと。いくらこの私が堕天使だからって、キャパオーバーすぎるわ。」

「だよね・・・。」

「でも、変わってないところもあった。あんたのその口癖とか。それは、安心したかな。あの頃のままのこともあるんだって。」

「なんかあまりうれしく無いずら・・・。でも、それはおらも同じずら。」

「どういうこと?」

「おらね、ミラーワールドで善子ちゃんと再会したとき、本当は嫌だったんだ。大事な友達がこんな戦いに巻き込まれてるなんて、こんな再開したくなかったって。でも、善子ちゃんは善子ちゃんだった。それはどんな状況でも変わらないんだって。変わっちゃいけないんだって。」

姿を見せた月の明かりが二人を照らす。

慣れてきた目に、多くの星のきらめきが飛び込んでくる。

 

「・・・もう一つ。秘密にしてることがあるの。」

「ルビィのことでしょ?」

「・・・!?知ってるの!?」

「ううん、何にも。あんたと同じぐらいご無沙汰。でも、鏡の世界でその名前を呼んだあんたの顔、少し寂しそうだったから。」

「そっか・・・。これを見て欲しいの。」

 

花丸が風呂敷を取り出すとその結び目をほどく。

包まれていたのは、一つのカードデッキだった。

 

「さっきの話と同じ。こんな戦いに巻き込みたくなかった。おらにこれが何か尋ねられた時、咄嗟に嘘をついてこれを預かったの。使わないように。」

「それってつまり、ルビィも仮面ライダーってこと・・・?」

「そう、その資格をライダーバトルから与えられた一人。」

「どうするの?」

「本当のことを、話そうと思う。」

「そう、あの子ならわかってくれるわよ。」

 

用意されたお茶はぬるくなり、月が再び雲に隠れる。

この先どんな未来が待っているかなどわからない。

それでも、この日の夜空を、二人は忘れない。

今度は、三人でお茶をすすりながら。




いつもありがとうございます。

まずは内容のお話から。
今回はすべて1対1で会話が行われるため、自分的思い切りで会話多めにしました。
千歌ちゃんが寝てるときに他メンバーの話をするからそれ目的で千歌ちゃん寝かせてんじゃないの?って書きながらおもったんですけど、そうではないです。ないんです。
知らない天井~のくだりをずっと考えていたので、その都合で他メンバーの話もここにきた、って感じなだけです。
さて、ルビィちゃんがライダーの資格があることがわかりました。
どのライダーなのか、お楽しみにしていてもらえればうれしいです。

近況です。
パピコのストック切れないように注意しています。

それではまた。

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