また、同所。
「ななな、なによアレ・・・。」
いけないとわかっていてもつい声が漏れてしまう。
白銀の鎧と紅色の鎧の戦い。
「戦いとか、聞いてないんだけど・・・。」
逃げるようにミラーワールドから脱出する白のライダー。
津島善子はその変身を解いて空を見上げた。
ふう、と一息。
「無理に決まってるでしょ!!あんなものーーー!!」
通りかかった人が振り返るも気にせず叫んだ。
戦いから一夜が明けた。
昨日の雨によって散った桜が進む道を暖かな色で染め上げている。
もうすぐすれば、今度はこの桜の木が緑で埋め尽くされるだろう。
どこにいようが、多くの場合それは変わらない。
日常だって、きっとそうだろう。
でも、今までと違うことが一つ。
梨子は桜の木から視線を移した。
「梨子ちゃーん、おはよー!」
二人が手を振っている。
「千歌ちゃん、曜ちゃん!おはよう!」
少しでも早くその元へ。
逸る気持ちに身を任せ、駆け出した。
昼休み。
隣同士の千歌と曜が机をくっつけ、そこに梨子が自分の椅子を持ってきた。
それぞれが家から持ってきた弁当に手をつける。
三人の会話は、千歌の一言から始まった。
「午前中ずっと考えてたんだけどさ、仮面ライダーって全部で何人いるの?」
それを聞いて、他の二人が驚いた表情を見せる。
「千歌ちゃん、寝てるだけじゃなかったんだ・・・。」
梨子と曜の目には、一限目の国語も二限目の数学も、三限目も四限目も千歌が机に突っ伏して寝ているようにしか映っていなかった。
「ひどいよ梨子ちゃん!そりゃ確かにほとんど内容覚えてないけど・・・。昨日の疲れがまだ残ってるっていうか・・・。って、そんなことはいいの!」
良くはないよ、とため息をついてから梨子が話し始めた。
「あまり学校でこういう話はしないようにしようと思っていたけど、いまなら周りも騒がしいし大丈夫そうね。」
曜はすかさず自分の机から紙とペンを梨子に渡した。
それを受け取ると、紙に11個の円を描いていく。
「ライダーは全部で11人。ただ、千歌ちゃんみたいに二つのライダーへと変身できることが分かった今、参加者も11人だとは限らないみたいだけど。」
次に、描いた円の中に文字を書いていった。
「ライダーの名はそれぞれ 龍騎、ナイト、シザース、ゾルダ、ライア、ガイ、王蛇、タイガ、インペラー、ファム、ベルデ。内タイガは・・・私が壊してしまったから脱落・・・。」
気にしないでという千歌の言葉に頷き、タイガの円の上からバツ印を書く。
横から、曜もそれに書き込み始めた。
「龍騎が千歌ちゃんで、ライアが梨子ちゃん、っと。えぇ!?わかってるのこれだけ!?」
「デッキをくれたダイヤさんが他のライダーって可能性は?」
「うーん、確かなことは言えないわ。ただ・・・。」
「「ただ?」」
その続きが気になり千歌と曜の声が被る。
「落ち着いて聞いてね。千歌ちゃんがダイヤさんのお家にいる頃、私を訪ねてきた人がいたの。その人は、自分もライダーだって言ってたわ。」
「その人って?」
千歌が真剣な顔をして梨子を見つめる。
「この学校の理事長、小原鞠莉さん。あなたたちもよく知ってるでしょ?」
そのあと梨子が「ところであの年でしかも先輩が理事長っておかしくない?」と言ったが二人には届いていなかった。
意外な名前に言葉を失う。
二人の様子に梨子が思わず質問する。
「そりゃあ驚くことだろうけど、何も言えなくなるほどなの?」
先に口を開いたのは曜だった。
「私と千歌ちゃんが幼馴染だってことはこの間話したけど、もう一人私たちより一つ上の果南ちゃんって子と三人でよく遊んでいたんだ。
その果南ちゃんが、よく私たちに話していた子が二人いて。一人はダイヤさんで、もう一人が鞠莉さんなんだよ。」
千歌もそれに続いた。
「ダイヤさんと鞠莉さんが関わってるってことはもしかして果南ちゃんも・・・?」
二人が不安を募らせる。
「なるほどね・・・。」
「梨子ちゃん、ライダーはみんな沼津に集まっているって言ってたけど、もしかしてライダーってみんなこの学校の生徒なんじゃ・・・。」
これ以上踏み込むと、取り返しがつかなくなる。そんな予感をさせる曜の言葉。そんなことない、と言い切れない現状が拍車をかける。
突然、千歌が立ち上がった。
「よし、わかった。ダイヤさんにもう一度話を聞こう。この戦いが何なのか。他に誰がいるのか。」
話を終わらせるかのように予鈴が鳴り響く。
続きは放課後に話そうと決めて、梨子は自分の席へと戻っていた。
机を戻した曜に、そっと聞いた。
「果南ちゃんにも聞いてみた方がいいのかな。」
小さく首を横に振る。
「まだ決まったわけじゃないし、もう少し調べてからにしよう。」
それぞれの胸に疑念が残るまま、本鈴が午後の授業開始を知らせた。
授業後の三人を待っていたのは下校のチャイムではなく敵を知らせる甲高いあの音だった。
校舎裏で変身した龍騎とライアがミラーワールドへと消える。
見送った曜は別の場所へ向かうため振り返った。
二人が戦っているうちに少しでも情報が欲しかった。
あの時のダイヤの言葉、鞠莉の参戦、果南のこと、そして・・・。
目の前の少女に気付いたのはその独特な挨拶を聞いてからだった。
「シャイニー☆って、今のあなたにとっては招かれざる客かもしれないわね、曜。」
目の前の少女に動揺する曜。
しかしその口には少しの笑み。
「そんなことないですよ、ちょうど私も会いたかったところです。」
着いた二人が最初に聞いたのは女性の悲鳴、そして最初に見たのは腰が抜けたのか尻もちをついて後ずさる白い鎧をまとった戦士。
視線を移すと10-20体ぐらいのミラーモンスター。
予想しなかった光景を目の当たりにしてあっけにとられる二人の意識を戻したのは、その白い戦士の叫びだった。
「助けてーーー!!!なんかどんどん来ちゃったんだけど!!!おーねーがーいー!」
いつもありがとうございます。
1年生編、スタートです。
楽しみにしてもらえると嬉しいです。
内容のお話。
なんか可哀そうな登場のよし、、、ヨハネちゃん。
見せ場はありますので・・・。
変身するライダーはなんとなくわかっていただけてるかもですね。
そして1年生と言えば残るあの子。
次回初登場です。まってて欲しいずら。
それではまた。