Aqours☆HEROES   作:ルイボス茶

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空も心も晴れるから

「だから、あなたのことも助けてみせる!」

 

梨子が変身を解く。

「どうして・・・。龍騎に変身していたのは生徒会長でしょ?どうしてあなたが変身しているの・・・どうして、あなたがここにいるの・・・?」

声は、震えていた。

「ダイヤさんが、与えてくれたんだ。」

その言葉に、梨子の表情は強張る。

「あの人が・・・!あの人がまた高海さんを戦いに・・・!」

「違う!!望んだのは私だよ!」

思わず目を見開いて千歌の顔を見る。

「やっぱり、私をこの戦いから離そうとしてくれていたんだね。」

「なんで戻ってきたの!どうして望んだの!戻ってこなければこのまま・・・。」

「このまま私だけ戦いからサヨナラなんて出来ないよ。だって、梨子ちゃんが戦っているんだもん。」

「どうして!!私は、関係ない!!!」

身体が鎧に覆われ、ライアに変身する。

「梨子ちゃん!!!」

攻撃を防ぐため、千歌もやむなく龍騎へと変身した。

「あなたはもう関係ないの!私とも関係ないの!もう、やめてよ!!!」

『スイングベント』

召喚された鞭が千歌を襲う。

「関係あるよ!!!」

『ガードベント』

現れた盾-ドラグシールド-で攻撃を受け止める。

「あなたには関係ない!!あなたは関係ない!!」

「あるよ!」

「ない!!!」

「ある!!!」

「ない!!!!」

「あるよ!!だって、梨子ちゃんは私の友達だから。」

「え・・・。」

梨子の攻撃が止まる。

鞭と盾の攻防により出来ていた水しぶきが消える。

振り続ける雨が、二つを打ちつけていた。

 

 

 

 曜は気が気ではなかった。

聞こえるのは戦闘音のみ。

二人の会話までは聞こえない。

ただ、鏡の前で待つことしか出来ないことが歯がゆかった。

「昨日の今日でこうなるとは、あの方の行動力は見習うところがあるかもしれませんね。」

突然の声に驚きながらもその声の主を見る。

そこには、ダイヤが立っていた。

「どうして、私たちにここまでしてくれるんですか?」

少し考えた後、曜の目を見て答える。

「これは想いの戦い。誰かを想う気持ちは言葉だけじゃ足りない、故に起きたすれ違いの戦い。

だから、私自身のためなのです。今は、そう答えておきます。」

そう言って、ダイヤは去ってしまった。

「想いの戦い・・・。誰かのための戦いってこと?」

ならば私は・・・。

想いを胸に、今は戦う二人を見守ることにした。

 

 

 

「友達、私とあなたが?」

「もちろん。初めて会った時からずっと。」

「どうして?わたしなんかが・・・。」

「理由なんて、いらないんじゃないかな。私が友達と思えばあなたは友達なんだよ。それとも・・・嫌だった?」

「そ、そんなこと・・・。」

思いがけない言葉に思考が追いつかない。

ふとよぎったのはベルトを破壊した時の記憶。

そうだ、私は・・・。

「私は、あなたを傷つけた。痛い思いもさせた。今更私にそんな資格ないの!!!」

 

『アドベント』

 

その叫びと同時に召喚されたエビルダイバーが辺りを無作為に攻撃する。

 

攻撃をかわしながら、右手に拳を作る。

 

「それでも!!!」

 

固く握った拳を、視界が捉えたライアの左頬に振りぬく。

咄嗟に、エビルダイバーを呼び戻す。

 

しかし、龍騎の拳が速かった。

 

ライアの全身に衝撃が走った。

言葉にならない声を漏らし、倒れこむ。

このままでは、と立ち上がろうとした。

 

直後、ライアの身体が温もりで包まれた。

 

「それでも、私はあなたの友達だから。それは変わらない。」

 

変身を解いた千歌が、力強く、優しく、抱きしめていた。

 

「どうしても叶えたいことがあるなら、私が助けになるよ。」

 

変身が解ける。

 

暖かかった。

降り続く雨に凍えていたわけじゃない。

その言葉が、想いが、痛みが、暖かかった。

頬を伝うのも、雨でなく自分の涙だとわかった。

 

気付くのが遅すぎたと思う。

 

 

あぁ、私の願い事なんてもう、叶っていたんだ。

 

 

雲の切れ間から光が差す。

この雨が上がるより先に、これだけは言おう。

震える声で、それでも確かに伝わるように伝えた。

 

 

「ありがとう。」

 

 

 

 

 

 

 

「千歌ちゃん!梨子ちゃん!」

二人の元へ曜が駆け寄る。

「ただいま、曜ちゃん。なんか全然違う場所に出ちゃったけどね、あはは。」

ミラーワールドから戻った場所は、学校の下にあるカーブミラー付近だった。

千歌の言葉に、曜が笑顔で答える。

梨子の方を見れば、その右頬は大きく腫れていた。

「うわあ・・・。これまた派手に・・・。」

「申し訳ない!!私も高まっちゃって・・・。痛いよね、ごめんね梨子ちゃん。」

何度も頭を下げる姿を見て、梨子が申し訳なさそうに返す。

「私の方こそごめんなさい。あなたたちにたくさん迷惑かけてしまって・・・。

それから、ありがとう。こんな私を最後まで引き止めてくれて。」

深々と頭を下げる。

それを見た二人は顔を見合い笑った。

「これからもよろしくね、梨子ちゃん!」

「ヨーソロー!梨子ちゃんも一緒に、楽しい内浦イフ(ウチウライフ)を送るであります!」

涙をこらえながら、精一杯言葉にした。

 

「うん!千歌ちゃん!曜ちゃん!」

 

 

「っていうか、もう夕方じゃん!!!学校終わっちゃったよ!!!どうしよう!!!」

「あぁ、そのことなんだけど、ダイヤさんが話をつけておいてくれるって。二人がミラーワールドにいる間にそう言いに来たよ。」

「ダイヤさんが・・・?嫌な予感がする・・・。」

「嫌な予感?」

「あのね、梨子ちゃんと戦った時・・・。」

学校へ戻る途中、3人は絶え間なく話し続けた。

 

 

教室に戻る。

他の生徒は皆下校しており、3人だけの空間だった。

梨子が、制服のポケットからライアのデッキを取り出して机に置く。

その元へ、千歌が寄る。

「どうするの?」

「そうね。壊して降りちゃおうかなって考えたんだけど、もったいない気がして。」

「もしかして、まだ?」

曜が怪訝な顔を向ける。

「ううん、そうじゃないの。もう私の戦いは終わり。だから、これからは千歌ちゃん、あなたのために変身するわ。戦いを終わらせるために戦うヒーローのために。」

「梨子ちゃん・・・!!!ありがとう!!!」

梨子の手を取り、その場で子供のように無邪気に跳ねた。

「想いの戦い・・・か。」

「どうしたの、曜ちゃん?」

「千歌ちゃん!ううん何でもないであります!」

その様子を、不思議そうに梨子は見つめた。

 

「あ、ところで、梨子ちゃんの叶えたいことって何だったの?」

 

その質問に対して、以前までの梨子であれば「あなたには関係ない」の一点張りだっただろう。

しかし、今は違う。

千歌と、曜がいるから。

今は満面の笑みでこう答えよう。

 

 

「そうね、もう叶っちゃったかな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【side梨子】

 我ながら、小さな願いだと思う。

それでも、助けてほしかった。

続けていたピアノの音が聞こえない。

始まりは、確かそうだったと思う。

誰かのための料理が他より美味しいように。

誰かのための音でなければ、音色は聞こえなかった。

 

 

誰かに聞いてほしかった。

別に友達がいなかったわけじゃない。

ただ、この音を届けられる相手を見つけられなかった。

この小さな悩みは、いつからか変わっていた。

 

「どんな私も受け入れてくれる人が欲しい。」

 

だから、こちらに来た時驚いた。

この力を、誰かのために使う人がいることに。

 

少し、意地悪をした。

あの子が本当に自分以外のために戦っているのか確かめるために。

やっぱり、優しい子だった。

 

だから、この戦いにいてはだめだと思った。

デッキを破壊した後、残るカードも完全に消そうとした。

とどめを刺すのだと思われ、防がれたけど。

当たり前か。悪いのは私だと諦めた。

手を差し伸ばそうとしていたことは、誰にも言わないでおこう。

 

あと、隣にいる女の子。

あの子も、きっと優しい子だ。

だからこそ、関わってはだめだと思っていたのに。

 

それでも、もし許されるのであれば、一つだけ、こう呼びたい。

 

「千歌ちゃん、曜ちゃん」と。

 

 




いつもありがとうございます。
梨子編、完結です。
必殺千歌ちゃんのライダーパンチ。
2話分の文章量です。それでも3000字ですが。
めっちゃ悩みました。ぎりぎりまで粘らせてもらいました。すんません。

ちなみに、梨子に東京でカードデッキを渡したのは
巫女姿の育ちの良い身体をした占いのできるスピリチュアルな女性です。
それ以上でもそれ以下でもありません。
物語にもその人物はまったく関係ないですが、きっと彼女は得体のしれないカードデッキを見てスピリチュアルパワーは感じ取っていたことでしょう。
物語には関係ないですが。

「悩みごとがあるん?それならウチがとっておきのおまじないとお守りをあげる。これ、なんかはわからないんやけど、とてつもないスピリチュアルパワーを感じるんよ。きっとあなたのことを助けてくれるよ。」

さて、次からは1年生編です。
まだ名前すら出てない子いるのでは?リトリトリットル―デーエーモーン。

関係ないのですが、あとがきで「~でした。」とか固そうな雰囲気出してる僕ですが、実際は「やたーーー!!見てくれる人いるーー!!うれしーーー!!」ぐらいのテンションです。仲良くしてください。

それでは。

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