扉が開き、エメラルド色のローブを着た背の高い魔女──ミネルバ・マクゴナガル先生が現れる。
「マクゴナガル教授、イッチ年生のみなさんです」
「ご苦労様、ハグリッド。ここからは私が預かりましょう」
彼女は扉を大きく開けて、私たちを中に招き入れる。玄関ホールを横切って、小さな空き部屋へと案内される。うん、この世界は映画版の『ハリー・ポッター』と、小説版の『ハリー・ポッター』が少しばかり入り混じってるみたいだね。基本的には小説の方みたいだけど。
「ホグワーツ入学おめでとう」
マクゴナガル先生が挨拶をして、ホグワーツについての説明を始める。
「新入生の歓迎会が間も無く始まりますが、大広間の席に着く前に、みなさんが入る寮を決めなくてはなりません。ホグワーツに居る間、寮生がみなさんの家族のようなものですから、寮の組分けはとても大事な儀式です。教室でも寮生と一緒に勉強し、寝るのも寮、自由時間は寮の談話室で過ごすことになります。
寮は四つ。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリン。それぞれが輝かしい歴史を持ち、偉大な魔女や魔法使いが卒業していきました。ホグワーツに居る間、みなさんの良い
間も無く全校生こ前で組分けの儀式が始まります。待って居る間、できるだけ身なりを整えておくように」
マクゴナガル先生は出て行き、みんなが自分の格好は大丈夫かどうかを確認しだす。私は帽子の位置を整えて、カンテレの音程を調節する。
「いや、それは今必要ないと思うわよ」
「なんだい、ハーマイオニー」
呪文をぶつぶつと呟いていたハーマイオニーに話しかけられた。
「そもそも、なんで楽器をここに持ってきてるのかしら?帽子はともかく、楽器は規則違反じゃない?」
「『楽器を持ち歩いてはいけない』って規則は無かったと思うよ。それに、規則違反ならバレなければいいだけさ」
「そういう問題じゃないわよ!」
ハーマイオニーと不毛な議論を交わしていると、後ろの方から驚きの声が聞こえてきた。ああ、ゴーストか。太った修道士とほとんど首無しニックがピーブズに関する話をしている。
そういえば、イギリスでは幽霊付き物件は人気があると聞いた覚えがある。喫茶店には幽霊専用席もあるとかないとか。
「さあ、行きますよ」
おや、マクゴナガル先生が戻ってきたね。準備が整ったらしい。
「一列になって。ついてきてください」
私はロンの後ろに並び、列に続いて歩く。二重扉を通って大広間に入ると、幻想的な光景が広がっていた。
何千もの蝋燭が宙に浮かび、そのさらに上──天井には空が映し出されている。四つの長テーブルに座る生徒たちと、その向こう側の教師陣。教師用のテーブルの真ん中にはダンブルドアが座ってニコニコ笑っている。彼の目はキラキラと輝いていた。
この後は確か、組分け帽子による歌の披露だったはずだね。よろしい、即興で伴奏するとしようかな。