ホグワーツでカンテレをかき鳴らしながら   作:零崎妖識

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九と四分の三番線にて

九月一日、キングズ・クロス駅にて。

目の前でハリーが右往左往してる。九と四分の三番線がやっぱりわからないみたいだね。ウィーズリー一家には気づいているみたいだけど、話しかける勇気が無いってところかな?

私は彼に近づき、すれ違いざまに囁く。

 

「時には、誰かを頼る勇気を出した方が良い。そうすれば、君に足りないものがわかるかもね」

 

「えっ──?」

 

ハリーが振り向くけど、すでに私はそこには居ない。風で運ばれて、九と四分の三番線に入っていた。

さて、どこに座るかな。ハリーやロン、ハーマイオニーとかに会うんだったら最後尾の方のコンパートメントだけど、私が原作主要キャラに不用意に接触したら、原作通りに立ちいかなくなるかもだし、無難にラベンダー・ブラウンとかでも捜して、その隣にでも座ろうかな?と言っても、七年次のホグワーツ決戦に戦車持って行こうとか考えてるし、この心配には意味は無いかもね。

 

 

◇◇◇◇

 

 

結局、最後尾の方のコンパートメント──ハリーが乗り込んでくるであろう場所に座ることにした。ちなみに、今の私の服装は継続ジャージだ。何着か持ってるし、継続高校の制服と合わせて普段着として使ってる。マダム・マルキンには感謝してもしきれないね。

ガラッと、コンパートメントのドアが開いた。ハリーとウィーズリーの双子が覗いている。

 

「あの、相席いいかな」

 

「ああ、いいよ。これも何かの縁だろう。こんな言葉もあるからね。『旅は道連れ』って」

 

「それ、本来の意味は違うような気がするけどな。俺はジョージ・ウィーズリーだ」

 

「僕はフレッド。ジョージとは双子なんだ」

 

「よろしくね、二人とも。ところで、二人の荷物はどうしたんだい?その子の荷物しか見当たらないけど」

 

「「俺たちは別の席で悪戯研究さ!」」

 

うん、やっぱりフレッジョは二代目悪戯仕掛け人としての道を歩んでるみたいだ。窓の外ではウィーズリー一家の掛け合いが始まっている。ハリーは窓際──私の目の前に座った。

 

「──ねぇ、確か、オリバンダー杖店の前で会ったよね?」

 

「……よく覚えてるね、ハリー。私はミカ。ミカ・クリスティだよ。よろしくね」

 

ポロン♪とカンテレを鳴らす。ハリーはこれをじーっと見つめている。

 

「その楽器、あの時も持ってたよね?」

 

「カンテレのことかい?私のお気に入りなんだよ。後で一曲弾いてあげようか?演奏代は頂くけどね」

 

「うん、お願い。前払いでいいかい?」

 

ハリーがポケットから金貨を何枚か出してくる。私は、その中に一枚だけ紛れ込んでいたシックル銀貨を受け取った。

 

「普段は一曲につき一シックル貰ってるけど、今日は特別だ。ホグワーツに着くまでの間で一シックルにしよう」

 

外で汽笛が鳴り響き、汽車がプラットホームから走り出す。最初のカーブを曲がったところで、ロンが入って来た。

 

「ここ、空いてる?」

 

指差したのはハリーの隣。原作ではハリーの向かい側だったはずだけど、今は私が座っちゃってるしね。

 

「僕はいいけど……ミカは?」

 

「私もいいよ。けど、挨拶は大事だから座る前にしておこうか。ミカ・クリスティだ。よろしく」

 

「僕はロン・ウィーズリーだよ」

 

ロンが席に座り、すぐに私が抱えている楽器(カンテレ)に興味を示した。

 

「それ、なんだい?パパが持ってるギターに似てる気がするけど……」

 

「これはカンテレって言ってね、フィンランドの楽器なんだ。さて、まずは……『Säkkijärven polkka(サッキヤルヴィン・ポルッカ)』でも弾こうか。フィンランドの民謡で、彼の国の国歌と言われることもある」

 

窓の外が田園地帯になったのを見て、思いっきり弦を(はじ)く。心地よい音がコンパートメントの中を満たしていった。


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