頑張って、ハリーにチャーリー・ウィーズリーのことを思い出させることに成功した。しばらくして、グリフィンドールとスリザリンの点数が減っていたから、ちゃんと原作通りに進んだんだろう。
数ヶ月後、期末試験が終わって、とうとうハリーたちが賢者の石を守るために行動する日だ。午前中はすることがない。行動するのは午後。日が落ちてからだ。できれば、アキとミッコが眠ってから。問い詰められるのは面倒だしね。
……一つだけ、午前中にやっておくことがあった。
私はこっそりとカンテレを持って四階へと向かう。目指す場所は、悪魔の罠の先の部屋。
即興曲でフラッフィーを眠らせて、仕掛け扉の下へ滑り込む。悪魔の罠に着地して、すぐに魔法火をつける。これで、先部屋にたどり着いた。
部屋の空気や状態を慎重に確認、記憶していく。これで準備は整った。あとは、時間を見計らってここに〈姿現し〉するだけだ。
私は一度カンテレを鳴らし、寮の部屋へ〈姿くらまし〉した。
◇◇◇◇
夜、みんなが寝静まったころ。私はベッドからこっそり抜け出して、談話室に降りた。ここなら、誰にも見つからずに〈姿くらまし〉が使える。一息ついたその時、後ろから声が聞こえてきた。
「なーにしてんの、ミカ」
「なにかするんだったら、私たちにも教えてよ」
ミッコとアキだった。ミッコはニヤリと笑い、アキは眠そうに目をこすっている。
「一年近く一緒に暮らしてたんだからさ、ミカの考えなんてあたしたちには丸わかりなんだよね。隠れてコソコソと、あたしたちにはわからないことをやってるってことは」
「確かに、私たち二人でもミカには勝てないけどさ……少しは信用して、教えてほしいなーってね」
「……ふふ、ははは」
思わず笑いが溢れる。ああ、私はこの二人に信頼されてたんだね。嬉しいよ、すごく嬉しい。
「キングズ・クロスで私の家の住所を教えるよ。夏休み中に来るといい。そこで、私の秘密を教えてあげるよ。正直、アキとミッコに知られるのは怖い。でも、二人が私を信頼して、信用してくれてるなら、私も二人を信頼して、信用しないわけがないだろう?」
いってきます、と、私は〈姿くらまし〉をして悪魔の罠の場所へ向かった。その瞬間に見えた二人の顔は、綺麗な笑顔だった。
◇◇◇◇
木の椅子に腰をかけ、『Säkkijärven Polkka』を弾く。一度弾き終えて、もう一度弾こうとしたところで、悪魔の罠の方からハリーたちがやってきた。
「やあ、待ちわびたよ」
「あれ……ミカ?どうしてこんなところに?」
ハーマイオニーがハリーの後ろから、私に向けて杖を構えた。警戒してるんだろうね。
「私は、君たちがしようとしていることには興味はないよ。そもそも、なんで私がここにいるかなんて、考えても意味のないことだ」
「いいえ、それは違うわね。あなたがここにいるってことは、可能性は二つに一つ。あなたが賢者の石を盗もうとしている人の仲間か、もしくは先生方が仕掛けた罠の一つか」
「それを答える意味はあるのかな」
「あるわね。少なくとも、わたしたちにとっては」
ハーマイオニーが前に出てくる。ふふ、なら、答えようか。
私はもう一度カンテレを弾き始める。
「私がここにいる理由はね、君たちに言葉を伝えるためさ。自らの得意なことを活かすといい。それが、この先の部屋で助けになる。ハリー、恐れるのは当然で、そして大切なことだ。恐怖を忘れてはいけない。その感情を持ってるからこそ、君は大切なものを守れるんだ」
ひときわ大きな音を鳴らす。同時に、私は談話室へと〈姿現し〉した。
あれからどうするかは彼ら次第。結果は、もう数日でわかるだろう。
ミカがホグワーツ内で姿現しを使える理由→転生特典の一つが『妖精の姿現し』のため。人間の姿現しとは違い、妖精の姿現しはホグワーツでも使える。