大きく原作からかけ離れた出来事もなく、十一月のとある日。ハリーのクィディッチ初参加の日だね。緊張してるようだし、どれ、一言助言にでも行こうか。
「やあ、元気かい?」
「あ、ミカ!あの時はありがとう」
「君が助言しなかったら、僕らはハーマイオニーのところに向かわなかったかもね」
「あら、ならミカが私の恩人ってことになるのかしら?ありがとう。ところで、グリフィンドールのテーブルに何の用かしら?」
上から順に、私、ハリー、ロン、ハーマイオニーのセリフだよ。フライドポテトを一本もらって、カンテレを鳴らしながら私はハリーに言う。
「君が緊張してることに意味はないよ。それに、君がどれだけ頑張ろうと意味はないんだろうね」
「──ちょっと、何てこと言うんだよ、ミカ。ハリーがどれだけ緊張してると──」
「だって、君の活躍を評価するのは君じゃなくてそれを見たみんななんだから。君は君ができることをやるだけ、そうだろう?」
「──うん、そうだね。ありがとう、ロン。僕のために怒ってくれて。ありがとう、ミカ。頑張ってみるよ」
「言ったろう?頑張りには意味はない。けれど、頑張らなければ何も始まらないよ」
私はレイバンクローのテーブルに戻る。そして、ミッコとアキに質問責めにあった。何でグリフィンドールのテーブルに行ったのか、だとか、ハリーとはどういう関係だ、とか。どれもはぐらかしておいたけどね。
◇◇◇◇
十一時、ほとんどの生徒や教師はクィディッチ競技場へと向かった。けれど、私だけは城に残った。今日が一番、必要の部屋を探しやすいからね。
場所は確か、八階の、『バカのバーナバス』の絵の向かい側。まずは、そこまで辿りつけるかどうかが心配だね──
「おや、君は競技場へは行かんのかね?」
「──ダンブルドア校長ですか。私はクィディッチにはあまり興味がありませんから。それよりも、城の探検をカンテレ片手に行ってる方がよっぽど楽しいです」
「そうかね、ミス・クリスティ。しかし、たまには陽の光を浴びることも大切じゃよ。お友達の二人は競技場に居るのじゃろう?」
ダンブルドアと周り合わせることはしない。開心術を使われると厄介だからね。しばらく黙って居ると、ダンブルドアは私を競技場へ向かわせることを諦めたようだった。
「やれやれ。あんなにも面白いスポーツは無いと言うのに。変なところに入り込まぬよう注意して、冒険するのじゃぞ。もちろん、例の部屋には入ってはならんし、森にも立ち入り禁止じゃ。図書館の禁書棚にものう。それと、図書館の本にイタズラ書きなどをしないように。前に、『超物質的変身術理論』の本に何気なくイタズラ書きしたら、その本に頭を激しく打たれてしもうたからの」
笑いながら、ダンブルドアは歩いて行った。なるほど、私が『石』を隠した部屋に入らないようにと思って忠告に来たんだろう。あ、そうだ。
「ところで、八階の『バカのバーナバス』のタペストリーって、どこにどうやって行けば見れるんですか?」
「それなら、君の寮のゴースト──『灰色のレディ』に聞くのが一番早いじゃろうな。わしですら、この城の全貌はわからんからのう」
「ありがとうございます」
さて、レディを捜そうか。