それからしばらくは必要の部屋を探す隙を見つけられず、十月に入ってしまったよ。その間には飛行訓練でネビルが落ちたり、ハリーがクィディッチ選手に選ばれたり、ハリーが決闘しようとしてマルフォイに嵌められたり、アキとミッコに継続制服とジャージをプレゼントしたりとかがあったね。
そして、十月三十一日、ハロウィーン。最後の授業が終わってすぐに、私は大広間に向かってカンテレを弾き始めた。曲名は『終曲』。とあるハロウィーンにまつわる映画のエンディングだね。コウモリにスケルトン、
「楽しいね!」
「楽しむ事に意味はないかもしれないけれど、今は楽しまなければ損をしているだろうね」
アキと話しながら曲を紡ぐ。ミッコは食べる事に集中している。ハーマイオニーがグリフィンドールのテーブルに居ないことは確認済みだし、さて、あとどのくらいでクィレルが来るのか……来た。ちょうど、曲が終わったタイミングだ。
「トロールが……地下室に……お知らせ、しなくてはと……」
駆け込んで来たクィレルが倒れこむ。そして、大広間は大混乱に陥った。
「あわわっ!ど、どうしようミカ!トロールが侵入したって!」
「落ち着けよアキ。ミカがどれくらい落ち着いてると思ってるの?」
「だってミッコ、このままこっちに来たらどうするのー!?」
「その考えに意味はないね。だってトロールがまっすぐ大広間に向かって来たり、レイブンクロー寮に来る確率はとても低いんだから」
ダンブルドアの指示を聞いて、監督生たちが動き出す。私はレイブンクローの列の最後の方を歩く。
「そうだ……ハーマイオニーがトロールが入って来てることを知らないよ!」
「でも、僕たちじゃ危険だよ……」
「何言ってるんだハリー!危険でも行かなくちゃ!」
おや、原作とは違ってハリーが臆病だね。私はハリーにそっと近づいて、耳元で囁いた。
「やる事に意味はないかもしれない。でも、やらなかったら後悔するだけだよ」
「えっ……ミカ!?」
「どうするかは君次第だ。君がどちらを選んだとしても、私はそれを応援しよう。それじゃ、また明日にでも結果を聞かせてくれ」
呆けているハリーに背を向けて、人波の中に入っていく。少し進んだところで、アキとミッコに追いついた。
「ちょっと、どこに行ってたのよミカー。非常事態なんだからちゃんと一緒に行動しないと」
「ふふ、アキは私のことを心配していてくれたのかな。なら、遭難するかいもあるかもね」
「いや、その前にアキが心配しないような行動を取れよ」
「ミッコの言う通りだよ!」
「アキ曰く、私は捻くれてるからね。ついついアキに心配してもらいたくなるのさ」
二人と談笑しながら階段を上っていく。ハリーとロンの姿はもう見えなくなっていた。
「……どうするんだい、ハリー」
「……決めた。僕、行くよ。たとえマクゴナガルに何を言われても、きっとハーマイオニーのところに行くよりかは後悔しないはずだ」
「そうこなくっちゃ。パーシーに見つからないようにしなきゃだけどさ」
パンツァー・リート…ドイツの行進歌。ガールズ&パンツァーでは黒森峰のテーマとして知られる。
終曲…諸事情により詳しく書くことはできないが、ハロウィーン関係の映画のエンディング。