ホグワーツでカンテレをかき鳴らしながら   作:零崎妖識

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レイブンクロー談話室

皿のデザートが消えて、ダンブルドアが再び立ち上がる。

 

「エヘン──全員よく食べ、よく飲んだことじゃろうから、また二言、三言、お知らせをしておこうかの。まずは、構内にある森に入らぬように注意しておきますぞ。特に、一年生と何人かの上級生は。

管理人のフィルチさんからじゃが、授業の合間に廊下で魔法を使わないようにと注意がありました。

今学期は、二週目にクィディッチ選手の選抜があるので、寮のチームに参加したい人はマダム・フーチに連絡するように。

最後にじゃが、とても痛い死に方をしたくない者は、今年いっぱい四階右側の廊下に入らぬことじゃ」

 

最後の言葉に何人かの生徒──主に一年生──から笑いが漏れる。けれど、他の生徒たちは大真面目に聞いていた。

四階右側の廊下には賢者の石を隠した部屋があり、その前には幾つもの罠がある。どれも死ぬ危険があるから、ダンブルドアは生徒を立ち入らせたくないんだろう。クィレル──ヴォルデモートをおびき出すために言った可能性もあるね。

 

「では、寝る前に校歌を歌いましょうぞ!」

 

あ、来たね。他の先生たちの笑顔がこわばり、スネイプのしかめっ面はさらに眉間の皺が増える。

ダンブルドアが節くれだった杖を動かし、金色のリボンを出した。そのリボンは文字を書き、キラキラと光っている。

 

「みんな自分の好きなメロディで。もちろん、誰か伴奏をしてくださっても構いませんぞ?」

 

彼のキラキラとした目が私に向けられる──よりも前に、私はカンテレを弾く準備をしていた。

 

「では、さん、し、はい!」

 

弦を思いっきり弾く。生徒たちの歌声に負けないぐらいに。最初は全員がバラバラに歌っていたけど、半分も歌わないうちにピッタリと揃った。そして、ダンブルドアは指揮を始めていた。

曲が終わると、ダンブルドアは誰にも負けないほどの大きな拍手をした。

 

「ああ、音楽とは何にもまさる魔法じゃ!この余韻をいつまでも味わっていたいのじゃが、残念なことに就寝時間じゃ。それぞれの寮の監督生たちは寮生をつれて談話室に戻り、部屋割りを発表するように。それ、駆け足!」

 

四つのテーブルに座っていた人たちが立ち上がり、スリザリン、ハッフルパフ、レイブンクロー、グリフィンドールの順で大広間を出て行く。

名も知らぬレイブンクローの監督生について行き、到着したのは西塔のてっぺん。

 

「レイブンクローの談話室に入るにはドアノッカーの出す謎を解かなければならない。さて、挑戦したい一年生はいるか?」

 

意気揚々と手を挙げたのはミッコ。おずおずとアキも手を挙げた。

 

「じゃあ、そこの元気そうな女の子だ。やってみて」

 

ミッコが鷲のドアノッカーを叩く。

 

「あなたという存在を証明できますか?」

 

我思う、故に我あり(コギト・エルゴ・スム)でいいかな?」

 

「模範的な回答ですね」

 

ミッコの答えを聞いて、ドアが開く。その先には、青を基調としたインテリアと星座の意匠の天井があった。

 

「ようこそ、レイブンクロー談話室へ。ここからはホグワーツの敷地が一望できる。『高みより全てを学ぶ』、『計り知れぬ英知こそ、我らが最大の宝なり』。学べ、知識を蓄えろ。他のどの寮よりも──ハッフルパフよりも、スリザリンよりも、グリフィンドールよりも!掲示板に部屋割りを貼っておくから確認しておいてくれ。部屋は七年間ずっと変わらないから、最も大切な友達を得ることだろう──知識が友達で恋人なんて奴もいるけどね」

 

男子監督生はそう締めくくり、表を貼った。さて、私のルームメイトは──

 

『ミカ・クリスティ

アキーナ・クリスト

ミコスール・クリスティア』

 

やっぱりだったか。


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