クリスマス狂想曲   作:神納 一哉

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過去にしたらばに投下したものを加筆・修正しています。


8 12月23日 クラスメイト

――――――――――

 

「…」

 

たまには。喫茶店でモーニングセットを食べてみよう。

 

そう思って。ショッピングモールまで来てみたら。上条君が。常盤台中学の女の子とデートをしていた。

 

途中で青ピ君や。女の子の知り合いと思われる子が乱入してきたけど。

 

そのたびに上条君や女の子が。『デートの邪魔』って言って追い払っていた。

 

それからすぐに上条君たちは出て行った。

 

真っ赤な顔の二人は。とても幸せそうに見えた。

 

私に気づかなかったのは不幸中の幸い?かな。

 

小萌の家のクリスマスパーティ。上条君はこないよね。

 

だって。可愛い中学生の彼女がいるんだから。

 

「…」ハァ

 

上条君の家の居候のシスターは。あの子のことを知っているのだろうか?

 

…たぶん。知らない。

 

『クリスマスパーティー楽しみなんだよ!スフィンクスも、とうまも!』

 

あんなに嬉しそうに言っていたのだから。

 

二人が店を出て少ししてから。私も喫茶店を後にした。

 

小萌の家のツリーを彩るクリスマスオーナメントや。小物を見るために雑貨屋へと足を向ける。

 

「…味。わからなかったな」

 

なんでだろう?

 

…上条君たちにあてられたかも。

 

今までに見たことのない表情。

 

真っ赤になって。それでいて相手を気遣っている優しい表情。

 

「…」ハァ

 

「溜息なんてついてると、幸せが逃げちゃうんやで?」

 

「え?」

 

振り返ると。クラスメイトの青ピ君が片手を挙げて立っていた。

 

「やっほー。姫神ちゃん。なんか嫌なことでもあったん?」

 

「ううん。別に」

 

「あれ?もしかして落胆の溜息じゃなくて、感嘆の溜息やった?」

 

「え?」

 

「いや。それ、綺麗やと思わん?」

 

そう言って青ピ君が指差したところには。クリスタルガラスでできた小さな天使像が。下からのライトに照らされてキラキラと輝いていた。

 

「うん。綺麗」

 

「綺麗やなぁ」(姫神ちゃんも綺麗やで)

 

「…青ピ君は。どうしてここに?」

 

「ボク?下宿先のクリスマスオーナメントの買出しとかやな」

 

「下宿?寮じゃなくて?」

 

「うん。ボク、パン屋さんの二階に下宿させてもらってるんや」

 

「そうなんだ」

 

「姫神ちゃん、もしよかったら、一緒にクリスマスオーナメント選んでくれへん?」

 

「え?」

 

「ボクよりセンス良さそうやし」

 

「そうかなあ?」

 

「ボクみたいなむっさい大男が選ぶよりも、姫神ちゃんが選んだ方が百万倍マシに決まってるやん」

 

「私。そんなセンス良くないと思うけど?」

 

「姫神ちゃん。自分を過小評価するのはアカンよ」

 

「でも。着てる服も地味だし」

 

「そういうのは、地味やのうて、スタンダードとかオーソドックスって言うんや。よく似合ってると思うで」

 

「ありがとう。でも。褒められている感じがしないのはなぜ?」

 

「そこは深く考えちゃアカン」

 

「そう」

 

取り留めのないことを話しながら。私は。気になっていたことを切り出してみた。

 

「裏切り者って。どういうこと?」

 

「え?仲間を裏切ること?」

 

「そうだけど。私が聞いているのは。…上条君にそう言ったこと」

 

「なんや、姫神ちゃん。見てたん?」

 

「うん。モーニング食べてた」

 

「あちゃー。恥ずかしいとこ見られたわー」

 

「恥ずかしい?」

 

「うん。まるっきりボクのひがみやもん。ホンマは友達としてカミやんのこと祝福せなアカンのに」

 

「そっか」

 

「でも、カミやんもひどいんやで?あの子、さんざんカミやんにアプローチしてたのに気づいてへんかったし。だけど、今日会うたら『デートの邪魔するな』やって。ひどいと思わへん?」

 

「どのへんが?」

 

「カミやん、気づいてへんかったから、昨日買い物にでも誘ってみ?って言ったんよ。案の定、あの子、二つ返事で了承したみたいやし」

 

「…」

 

「でも、デートに誘ったわけやないのに、デートになっていたってことは、あの子、カミやんに告白したんか!?いや、でもそれはありえへんで」

 

「どうして?」

 

「あの子、超電磁砲やで?常盤台のエースが自分から告白なんて、普通せえへんよね?」

 

「そう?上条君の傍だと普通の女の子にしか見えなかったけど」

 

「さすがカミやんやで。超能力者も関係あらへんなんて」

 

「上条君。誰にでも優しいから。きっとそんなところに惹かれたんだと思う」

 

「…姫神ちゃんも?」

 

「私は。…別にそんなんじゃないよ」

 

「ホンマに?」

 

「うん」

 

「そっか。…っと、そんなことよりもクリスマスオーナメントや。姫神ちゃん。ひとつよろしく頼むで」

 

「んー。どうしようかな」

 

「後でクレープでも奢るさかい。助けると思って!」

 

そう言うと青ピ君は大げさに両手を合わせて拝んできた。特に急いでいるわけではないし。まあ。いいかな?

 

「クレープ。スペシャル頼んでもいい?」

 

「ええよ。飲み物も付けちゃうで。ま、飲み物は自販機やけど。…交渉成立でええ?」

 

「うん」


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