クリスマス狂想曲   作:神納 一哉

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26 12月26日 それぞれの朝

12月26日

 

07:00 学舎の園・常盤台中学学生寮 食堂

 

「おはようございます。婚后さん、泡浮さん」

 

「おはようございます。婚后さん、湾内さん」

 

「おはようございます。湾内さん、泡浮さん」

 

三人の常盤台中学生はごく自然に挨拶を交わし、同じテーブルの席に着いた。

 

「おはようございます。お飲み物はなにになさいますか?」

 

「わたくしはカフェオレでお願いします」

 

「わたくしもカフェオレで」

 

「わたくしも、カフェオレの気分ですわ」

 

「あら、婚后さん。珍しいですわね」

 

「お二人と同じものを嗜んでみようと思いましたのですけど…、いけませんでした?」

 

「そんなことありませんわ。その、上手くいえないのですけれども…」アセアセ

 

「同じものを飲んでみたいって言っていただけて、婚后さんともっと仲良くなれた気がして嬉しいですわ」ニコ

 

「泡浮さんの言うとおりですわ」ニコ

 

二人の笑顔に、婚后も小さな微笑みを返す。

 

「その、実はわたくし、先日、名前を呼び合える友人ができましたの」

 

嬉しそうに言いながら、婚后は上目づかいで二人を見る。

 

「それでですね、その、もしよろしければなんですけど、お二人のことも名前で呼ばせてもらえて、わたくしのことも名前で呼んでいただけると嬉しいなんて思ったのですけれども…」///

 

「婚后さんがそうしたいのであればわたくしは構いませんですわ」

 

「それはとても素敵なことですけれども、わたくしたちは年下ですから、その、光子さんと呼ばせていただきますわ」

 

「わたくしは絹保、万彬と呼ばせていただいてもよろしいかしら?」

 

「ええ、構いませんわ。光子さん」

 

「改めてよろしくお願いいたします。光子さん」

 

気恥ずかしそうな二人に、婚后は昨日インデックスに言われたことを思い出して提案する。

 

「お二人も、この際、名前で呼び合うようにするのはどうかしら?」

 

「そうですね。じゃあ、これからは万彬さんでいいかしら?」

 

「うふふ。よろしくお願いいたします。絹保さん」

 

「その、よろしければ光子さんがお名前で呼ぶお友達はどのような方なのか教えていただけますか?」

 

「一人は貴女方もよく知っている御坂美琴ですわ。もう一人はシスターのインデックスですの」

 

「御坂様と。さすがは光子さん、凄いですわ」

 

「シスターのインデックスさん?ずいぶん珍しいお名前ですわ」

 

「インデックスはとても可愛らしい子ですわ。よろしければお二人にも紹介したいのだけれども」

 

「部活のない日でしたら、ぜひご一緒させていただきますわ。ね?絹保さん」

 

「ええ、もちろんですわ。それにしても、なんて言いましょうか…」

 

湾内が指を唇に当てて少し言いよどむ。

 

「名前で呼んだり呼ばれたりするのって、なんだか恥ずかしいけれど、親密さが増した感じがして、良いですわね」

 

「うふふ。そうですわね」

 

「呼び捨てにするともっとそう感じますわよ」

 

「わたくしは、その、もう少しこのままで」///

 

「今までもさん付けで呼んでいたので、急に呼び捨てにはできないですわ。…でも、御坂様と光子さんは呼び捨てなのですよね?同じ歳ならば呼び捨ても有りですの?」ウーン

 

小首を傾げて泡浮を見つめたまま、湾内はぼそっと呟く。

 

「ちょっと試してみますわ。…万彬」

 

「…」///

 

「なんだかすごく親密になった気がしますわ」

 

「ではわたくしも…き、絹保と呼ばせていただきますわ」///

 

「ふふ。ではわたくしも万彬と呼ばせていただきますわ」ニコ

 

――――――――――

 

9:20 常盤台中学学生寮 208号室

 

「ではお姉様。わたくし、風紀委員の仕事に行って参りますの」

 

「あ、うん。いってらっしゃい」

 

「お姉様は今日どうなさいますの?」

 

「うーん、とりあえずお昼に当麻と待ち合わせ。まあ門限までには帰ってくるわよ」

 

「そ、そうですの。くれぐれも常盤台生としての節度をお守りになってくださいまし」

 

「はいはい、許婚として健全なお付き合いをしてきます」

 

「いやあああああっっ!!お姉様が穢されてしまいましたのぉぉぉぉぉっっ!!」シュンッ

 

「まだそういうことはしてないわよっ!!って、あの子、寮内で能力使って、寮監に見つからなければいいけど」ハァ

 

――――――――――

 

9:21 常盤台中学学生寮 エントランスホール

 

「白井、何か言い残すことはあるか?」

 

「寮監様。わたくしこれから風紀委員の仕事がございますの…」

 

「安心しろ。第一七七支部には遅れると連絡しておいてやる」

 

「…ご恩情、感謝いたしますの」

 

「では、安らかに眠れ」ゴキッ

 

一瞬で白井の意識を刈り取ると、寮監はそのままエントランスホールのソファーに白井を横たわらせ、その首に『寮則違反:エントランスホールの清掃を命ず』と書かれたプラカードをかけた。

 

「さてと、風紀委員に電話をしてから御坂に話を聞きに行くとするか」ニヤリ

 

――――――――――

 

11:30 風紀委員第一七七支部

 

「白井さん、なんで遅刻してきたんですか」

 

パソコンの画面から目を離さずに、初春は遅れてきた同僚に声をかけた。

 

「…野暮用ですの」

 

「罰掃除よね?」

 

「なぜそれを知っておりますのおおおおっっ!?」

 

「だって、寮監さんから電話をいただいたもの」

 

「罰掃除って…。白井さん、いったい何をしたんですか」

 

「お姉様の惚気を聞くわけにはいかず、空間移動で部屋を出たところを運悪く寮監に捕まりましたの」ハァ

 

「御坂さんの惚気?」

 

「上条さんとの話ですか!?」

 

「なぜその名前を知っておりますのおおおおおっっ!?」

 

「メールで御坂さんに教えてもらいました」エヘ

 

「つまり、上条さんというのが御坂さんの彼氏、噂を信じれば許婚なのかしら?」

 

「ええ、誠に不本意ながら、上条さんはお姉様の許婚ですわ。さすがは常盤台中学のエース、超能力者第三位のことは広まるのが早いですわね」ハァ

 

「えっ?えっ?許婚って、うわあ。御坂さんって大人~」

 

「初春、その言い方はやめなさい。地味にダメージがきますの」グスン

 

「でも、許婚ってことは………ですよね」///

 

「想像させないでくださいまし!!」シクシク

 

「ああ、ほら、白井さん。泣かない、泣かない」

 

「お姉様ぁ……」シクシク


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