クリスマス狂想曲   作:神納 一哉

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過去にしたらばに投下したものを加筆・修正しています。


2 12月22日 約束

――――――――――

 

制服のままベッドに寝転んで雑誌を読んでいると、ポケットの中の携帯電話が振動した。

 

(また黒子ね)ハァ

 

小さく溜息をついてから携帯電話を取り出し、画面に表示された名前を見て、美琴は慌てて身体を起こす。

 

画面には『上条当麻』と表示されていた。

 

(!!え、えええええええ!?ア、アイツから!!見間違いじゃないよね?間違いないよね!!うん、アイツの名前だし!)ンー、ゴホン

 

何度も画面を見直し、軽く咳払いをして喉の調子を確かめてから通話ボタンを押す。

 

「もしもし…」ドキドキ

 

『…あー、御坂か?』

 

「そりゃ、わたしの番号にかけてるんだからわたしが出るわよ」(なんでこんな言い方しかできなくなるのかなー)

 

『ん、まあ、そりゃそうだな』

 

「それで、何の用?」(ああっ!もう!わたしの馬鹿!)

 

『あー、明日なんだけどさ、買い物に付き合ってくれないか?無理ならいいんだけど』

 

その言葉に鼓動が早くなるのを自覚しながら、美琴は平静を装って言葉を続けた。

 

「!!べ、別に無理じゃないわよ」(も、もしかしてデート!?)

 

『…やっぱりそうだよな。悪い。変なこと言って』

 

『無理じゃない』を聞き間違えたのだろうか、断られたと思った上条が会話を終わらせようとする。

 

「ちょっと待てゴラアアアア!!わたしはいいって言ってるでしょうが!OKよ!OK!」(なに勘違いしてるのよ、馬鹿っ!)

 

『へ?御坂さん!?』

 

「だーかーらー、買い物でしょ?付き合ってあげるわよ。どこで待ち合わせ?」(アイツのことだから特売とかかもしれないけど)

 

『じゃ、じゃあ、とりあえずあの公園の自販機前で10時ごろ、いいか?』

 

「りょーかい。じゃあ、明日ね」ピッ

 

通話終了と同時に美琴はベッドの上で思わずガッツポーズを決めていた。

 

(アイツから誘われちゃった!!)ニヘラー

 

――――――――――

 

「どうや?ボクの言ったとおりやったろ?」ニヤニヤ

 

「…ああ」(御坂が俺を?いやいや、そんなそんな…)

 

「セブンスミストとかでアクセサリーでも買ってあげれば完璧やで、カミやん」

 

「あ、相手はまだ中学生だぞ!」

 

「ん?なにか問題あるんか?あー、そうかそうか。…カミやん。意外とエッチなんやなあ」ニヤニヤ

 

「んなっ!?」///

 

「せやろ?エッチなこと考えたから中学生ってのを持ち出してきて誤魔化そうとしたんやろ?ボクはただ、プレゼントしてあげたら?って言っただけなんだけどなー」ニヤニヤ

 

「くっ!」///

 

「いいっていいって、健全な男子高校生なら好きな女の子との行為を妄想するもんや。ボクも姫神ちゃんとなんて考えたりしてな…」グフフフフフ

 

「お、俺は別に…」(な、なんで御坂の顔が浮かんでくるんだ!!)

 

「…そ、そんなことあかんで、姫神ちゃん…。ああ、ボク、耐えられへん」ハアハア

 

「この変態!!こんなところで妄想して悶えるなぁ!!」

 

いきなり身体をくねらせながら身悶える大男(青髪ピアス)を目の当たりにして、上条当麻はぶん殴りたい衝動を懸命に抑え、両手で肩を掴んで強く揺さぶった。

 

「はっ!!ボクと姫神ちゃんの情事を邪魔するなんて、カミやん、貴様という奴は…」

 

「妄想は自分の部屋でしろ!あまつさえ逆恨みするな!」

 

「それもこれも姫神ちゃんが魅力的過ぎるのがいけないんや!!」

 

「そ、そうか。まあでも、時と場所を考えた方がいいと思うぞ?」

 

「ボクの心は姫神ちゃんへの愛で溢れているんや…」ハァ

 

「…」

 

臆面もなく姫神秋沙への愛を口にする青髪ピアスを見て、上条当麻は『あ、コイツ、結構マジだな』と認識を新たにしたのであった。もっとも、本人にはそんなこと言わないが。

 

妄想世界から帰ってきた青髪ピアスは、ストローを咥えて飲み物を一口飲んでから、ボソッと呟く。

 

「なあ、カミやん。ボク、姫神ちゃんにクリスマスプレゼント贈ろうと思ってるんやけど、なに贈ればええと思う?」

 

「クリスマスプレゼント?」

 

「明後日はクリスマスやしな。それをきっかけに姫神ちゃんと仲良くなれるようなもん、なんかない?」

 

「姫神が好きそうなもの…」ウーム

 

「やっぱり、女の子ってアクセサリーとかがええんかな?ネックレスとか」

 

ネックレスと聞いて、姫神秋沙が『吸血殺し』であることを隠すため、イギリス清教から渡された十字架を身に着けていることを思い出してフォローを入れる。

 

「あー、姫神はお守りを着けているから、ネックレスは止めといた方がいいぞ」

 

「お守り?」

 

「お守りの十字架を着けているそうだ」(さすがに魔術系のこと言えないけど、こう言っておけば自然だよな。うん)

 

「巫女さんなのにクリスチャン!?」

 

「巫女姿はバイトみたいなものだったらしいぞ」(実際は祭り上げられてただけなんだが)

 

「姫神ちゃんの巫女さん姿、理想通りやったのに残念やわ~」

 

「…確かに、長い黒髪の巫女さんはぐっと来るものがあるのは、上条さんも否定しない」

 

「せやろ?わかってるなぁ、カミやん」

 

「…姫神は、着物も似合いそうだよな」

 

「せやなー。姫神ちゃんは和服美人やなあ。…ところでカミやん、常盤台のコって超電磁砲?」

 

「!!な、なんでいきなりその話に戻る!?」

 

「まあまあ、カミやん。さっき『御坂』って呼んでたやん。超電磁砲の名前って、御坂美琴ちゃんやろ?」

 

「テメエ、人の電話聞いてたのかよ!」

 

「人聞きが悪いこと言わんといてや。カミやんの声が大きかっただけやで」

 

「ぐっ、こういう店の中って結構騒がしいから、どうしても声が大きくなっちまうんだよ」

 

「で、どうなん?カミやん的に超電磁砲は?」

 

「な、なんでそれをテメエに話さなきゃいけないんだ!?」カァッ

 

「ええやんか。ボクとカミやんの仲やないか。ボクがこんだけ姫神ちゃんへの想いをあけっぴろげにしてるんやから、カミやんも教えてくれても罰は当たらんと思うんやけど?」

 

「なんでそうなるんだ!?」

 

「…姫神ちゃんがカミやんのこと好きかもしれへんし…」

 

「姫神が俺を?それは無いと思うけどな」

 

「姫神ちゃん。カミやんと話すとき、微笑むんやで?」ハァ

 

「吹寄たちと話してるときも普通に笑ってるだろ?」

 

「男で、話しかけて微笑んでくれるのはカミやんだけなんや」

 

「そんなことないだろ?」

 

「ボクや土御門君が話しかけても普通やで」ハァ

 

「話しかけるタイミングが悪いんじゃないか?」

 

「カミやんが吹寄に突っ込まれるのを見ても微笑んでるんやで」(カミやんを見て優しく微笑んでるんや)

 

「…それは間違いなく哀れみの微笑だ」

 

(鈍感で助かるわホンマ)「ま、そういうことにしとくわ。…で、超電磁砲のことは、どうなん?」

 

「だからなんでそうなるんですか!!」

 

「女の子への熱い想いを語り合いたいんや!あ、別にちびっこシスターへの想いでもええで?」

 

「黙秘権を行使する!」

 

「他に好きな子がいるんか?まさか姫神ちゃんじゃないやろうな?」(な~んて、さり気なくリサーチ)

 

「姫神は…いい友達ってことだ」

 

「ホンマ?」

 

「うん。まあ美人だと思うけどな」

 

「やっぱ、超電磁砲がええの?」

 

「御坂は…、アイツといると楽なんだよな…。なんていうか色々…」

 

「それ、本人に言ってやれば喜ぶんちゃう?」

 

「言えるか!恥ずかしい」カァッ

 

「女は好きな男には甘えて欲しいって思うもんやで?」

 

「だ、だいたいだな、御坂が俺なんかのこと…」ゴニョゴニョ

 

「傍から見ればあの子、完全にカミやんにホの字やったけどな~」

 

「テメエの言うことには騙されない、騙されないぞ!」

 

「ま、カミやんは明日、あの子のことよう見てみるんやな」

 

「…」(意識しちまうだろうが)


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