クリスマス狂想曲   作:神納 一哉

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過去にしたらばに投下したものを加筆・修正しています。


12 12月23日 独占欲

――――――――――

 

「…なあ」

 

「なーに?」

 

「今日、上条さん的にはクリスマスプレゼントとして髪飾りでも贈ろうかと思っていたのですが」

 

「そ、そうなんだ」

 

「その、名前で呼び合える仲になったことだし、…上条さんって実は独占欲が強いわけでして」ギュッ

 

(独占欲って)///

 

「ペアリング、なんてどうだ?あまり高いのは買えないけど」

 

「うん!嬉しい!」ギュッ【注:この話では、新約3巻のアレはありません】

 

「じゃ、じゃあ、どの店がいいかな?」

 

「そうね。友達がよくネックレスとか見ているお店があるから、そこに行ってみよっか?」ニコッ

 

「お、おう」

 

必然的に少女が少年を引っ張っていく格好となる。少女はとても嬉しそうな笑みを浮かべていた。

 

――――――――――

 

「あ、これなんて佐天さんに似合いそうですよ」

 

「さっすが初春。あたしの好みを良くわかっているわね」

 

「あ、これなんか御坂さんに似合いそう」

 

「どれどれー?おー、確かに」

 

「あー、可愛いわねー」ヒョイ

 

「あ、御坂さん」

 

「ちょうど御坂さんに似合いそうなヘアピンの話をしていたんですよーって、ぬっふぇ!?」

 

「なに変な声出しているんです…か」///

 

二人の少女は声をかけられたので友人の方へ顔を向ける。するとそこには友人と男性が仲良く手を繋いで立っていた。

 

「あははー。邪魔しちゃってゴメンね。姿が見えたから声かけなきゃって思って」(ついでにコイツの紹介なんかしちゃったりして)///

 

「いや、それはわざわざ恐れ入ります御坂さん。で!そちらの方は、つまり、その、御坂さんの、…彼氏さんでよろしいですか?」

 

「あー、うん」///

 

「はっ、はじめまして。私、柵川中一年の初春飾利です」(あっさりと認めた!?)

 

「あたしは柵川中一年の佐天涙子でーす。はじめまして」

 

「あ、はじめまして。…なあ美琴?いきなりお友達紹介はハードル高いんじゃないか」ボソ

 

「うっはっ!聞いた初春!?御坂さんを名前呼びだよ、名前呼び!」

 

「!」///

 

「さ、さ、さ佐天さーん!失礼ですよー」アワアワ

 

「んでんで、御坂さんは彼氏さんのことなんて呼んでいるんですか?やっぱり名前呼びだったりします?」

 

「う、うん」///

 

「いや、最初だけでさっきから呼んでくれないじゃないか」

 

「ア、アンタは余計なこと言わない!」///

 

「御坂さーん、彼氏さんもこう言ってるんですから、呼んであげたらどうですか?」ニヤニヤ

 

(しまったー。佐天さんのスイッチ入っちゃった!!)///

 

「さ、佐天さん!御坂さんすみません」アセアセ

 

「彼氏さんも名前で呼んで欲しいですよね?」

 

「そ、そうだな…」ボソッ

 

「!」

 

(そこで肯定しちゃうの!?カミジョーさん!!ああ、御坂さんが真っ赤になって…)

 

「…と、当麻」ウワメヅカイ

 

(み、御坂さん~!?そこで名前呼んじゃうの~!?)

 

「ぬっふぇ!熱い、熱いですねー」ニヨニヨ

 

「…まー、相思相愛ってやつだったからな」ボソッ

 

「ひゅふっ!?」///

 

「なっ!?な!?何を言っちゃってるのアンタ!!」カァッ

 

「また呼び方戻ってるぞ。美琴」

 

「う、あ、と、当麻」///

 

「ど、ど、ど、どうしよう初春。ラブラブカップルが目の前にいる!!」

 

予想外の展開に慌てている少女を見て、頭に花飾りをつけた少女はすばやくその腕を掴む。

 

「じゃ、じゃあ御坂さん!私たちこれで失礼しますっ!お邪魔しました!!」

 

「え?あ、うん」

 

「え?初春?なに言って…てか危ないから引っ張らないで!!ねえ、うーいーはーるー…」ジタバタ

 

「行っちゃった」(ちゃんと紹介したかったんだけどな)

 

「いやーテンション高かったなー」

 

「あはは。佐天さん、スイッチ入っちゃうと止まらないから」

 

「まあでも、あの子のおかげで、また名前で呼んでもらえたからよしとするか」

 

「あ、そういえば…さ」///

 

「ん?」

 

「さっき『相思相愛』って…」///

 

「ま、まーな。ま、間違ってないだろ?」///

 

「…うん」///

 

なんとも形容し難い空気が二人を包み込む。それはそれで心地いいのだが、先に雰囲気に負けたのは少年の方だった。

 

「…あー、指輪ってあっちの方か?」

 

「うん。いこっか」

 

「ああ」

 

―――ショーケースを覗きながらコイツ―当麻―と手を繋いで歩く。たったそれだけのことなのに、凄く楽しくて、嬉しい。

 

昨日までのわたしだったら、手を繋いだまま佐天さんや初春さんに声をかけようなんて夢にも思わなかっただろう。

 

でも、今はコイツと一緒にいるのを隠そうとは思わない。

 

「んー。結構ゴツイのが多いな」

 

「基本的にファッションリングだからね」

 

「俺は普段着けていても邪魔にならないようなシンプルなのがいいと思っているんですけど」

 

「え?ずっと着けているつもりなの?」

 

「ペアリングってそういうものじゃないの?」

 

「ゴメン、常盤台ってそういうの厳しいから、普段着けるのは難しいと思う」

 

「…なあ、その、正当な理由があれば着けることは可能か?」

 

「指輪を着ける正当な理由なんて…」

 

どくん。と胸が高鳴った。

 

「…婚約指輪とか」///

 

「ア、アンタ、なに言ってるの!?」カァッ

 

「さっき言っただろ?独占欲強いって」

 

「…まあ、正式なものならいいかもしれないけど、中学生でそんなものしてる子いないわよ」///

 

「そうか。…じゃあ、ペアネックレスとかにする?ネックレスなら隠れるだろ?」

 

「…やだ」

 

「へ?」

 

「ペアなら指輪がいい」

 

「でも、いつも着けてられないんだろ?」

 

「…当麻とお揃いなら指輪がいい」

 

言いながら、わたしも彼に負けず劣らず独占欲が強いことを自覚した。

 

同時に携帯を取り出して、ある番号に電話をかける。

 

「わたしも独占欲強いからね。…覚悟して」

 

「へ?」

 

コール音が途切れ、相手が電話に出る。わたしは大きく息を吸って話し始めた。

 

「あ、ママ。ちょっといい?」

 

(なぜ美鈴さん!?)

 

『いきなりなーに?美琴ちゃん。ママ、昨日飲みすぎちゃって眠いんだけど』フアー

 

「典型的な馬鹿大学生ね。…まあいいわ。あのさ、大覇星祭のときに会った人、覚えてる?」

 

『美琴ちゃんがいじめる。っていうか、大覇星祭のときに会った人って白い修道服の女の子かなー?』

 

「違う、男の方」

 

『あー、詩菜さんの旦那様』

 

「わざとか?わざとね!わざとなのねこのヤロー!!」

 

『うふふ。美琴ちゃんってからかいがいがあるから。で、上条当麻君がどうしたの?』

 

少女は少年に視線を向ける。

 

―――さあ、覚悟しなさい。

 

「彼に、プロポーズされた」

 

「んなっ!?」///

 

『え?美琴ちゃん?今なんて?』

 

「だーかーらー、プロポーズされたの。それで、ママの了解を貰おうと思って」

 

『りょ、了解って?どういうことなの?』

 

「婚約したい。――当麻と」///

 

『うっわー。ママの予想をはるかに超えていたわー。やるわね、美琴ちゃん。ママ、すっかり目が覚めちゃった♪』

 

「茶化さないで!真剣なんだから」

 

『…上条君はそこにいるの?』

 

「うん」

 

『代わりなさい』

 

「…代わってって」ケイタイ サシダス

 

「わかった。…代わりました上条です」

 

『いやーん!!上条君!美琴ちゃんになにしたの?ナニしちゃったの?奪っちゃったの!?』

 

「まだ何もしてねええええ!!いきなりなんなんですか!そのノリは!?」

 

「!」ビクッ

 

『やだなあ、婚約したいなんて美琴ちゃんが言ってるから、全部済ませちゃったのかなーって。で、で、…避妊はちゃんとしたの?』

 

「まだ何もしてませんってば!!」

 

『それなのに婚約って、気が早すぎない?もし相性悪かったらどうするのよ』

 

「あ、いや、その。なんて言いましょうか、その、そういうのって美琴さんとしか考えられないので、約束手形が欲しいといいますかなんといいましょうか…」

 

(わたしとしか考えられないってなに言ってるのよ)///

 

『うーん。弱いわね。一時の気の迷いじゃないの』

 

「それはないです。俺は、…美琴を俺のすべてをかけて守りたい。…決して一時の気の迷いなんかではないです」

 

「…」///

 

『美琴ちゃんを、愛してる?』

 

「…はい」///

 

『じゃあ、美琴ちゃんにわかるように言葉にして』

 

「…上条当麻は、御坂美琴を、愛しています」///

 

「ふぇっ!!」(あ、あ、あ、あい、あい、あい、あい…)///

 

『…また清清しいまでに言い切ったわね。上条君。美鈴さんの負けだわ。…美琴ちゃんをよろしく。代わってくれる?』

 

「…」ケイタイ サシダス

 

「あい、あい、あい…」ニヘラー

 

「美琴!電話」///

 

「ひゃいっ!?も、もしもし」///

 

『美琴ちゃんはどうなの?上条君を、愛してる?』

 

「…うん」///

 

『じゃあ、上条君にわかるように言ってみなさい』

 

「御坂美琴は、上条当麻を、世界中の誰よりも、一番愛してる!!」///

 

「!!」///

 

『見事に言い切ったわねー。美琴ちゃん。いいわ。認めてあげる』

 

「ありがとう、ママ」

 

『いきなり婚約なんて言って、いかにもどこかの店内から電話してくるってことは、指輪でも買ってもらうのかしら?若いっていいわねー』

 

「へ?なんでわかったの?」

 

『落ち着いた音楽と喧騒が聞こえてくるし、学校で指輪をつけていても咎められない理由が欲しいんでしょ?』

 

「う、うん」///

 

『じゃ、学校には連絡しておくわ。美鈴さん公認の許婚ができたってね』

 

「…」///

 

『とりあえず、結婚できる歳まではエッチしちゃ駄目よー』

 

「なっ!なに言ってるのよ!!」///

 

『まあ、若いふたりは耐えるのは難しいかもしれないわね。じゃあ避妊だけはしっかりすること!ゴムよりも学園都市製経口避妊薬の方が確実よ』

 

「アンタ中学生の娘になに吹き込んどるんじゃあああ!!」///

 

『あはは。じゃあ、近いうちにみんなで会いましょうねー。バイバーイ』

 

通話を終えて携帯電話をポケットに入れる。それから辺りを見回して胸を撫で下ろした。

 

「ママが電話で『人の喧騒が聞こえる』とか言うから焦っちゃったわ。悪目立ちしてなかったみたいね」

 

「あんまり人いなくて助かったな」

 

少女はもう一度辺りを見回してから、頭を少年の肩に預ける。

 

「み、美琴?」///

 

「嬉しかった。ちゃんとママに言ってくれて」

 

「俺も、嬉しかった」

 

「…」ギュッ

 

「…」ギュッ

 

(なんか、幸せ…)

 

「…なあ、あれなんて、どうだ?」

 

そう言って少年はシンプルなメタルリングを指差した。光の加減でうっすらと青みがかって見えるプレーンリング。

 

「あ、すみません。そこのペアリング、見せてもらってもいいですか?」

 

店員を呼び、ショーケース内の指輪を出してもらい、それぞれ左手の薬指に嵌めてみる。

 

「あ…」

 

「うそ…」

 

その指輪は、まるであつらえたかのように、お互いの指にぴったりと納まった。

 

「ヤバイ、なんか運命的なものを感じる」

 

「うん、凄い馴染んでる感じ」

 

「じゃあ、これください。あ、このまま着けてってもいいですか?」

 

「ええ、構いませんよ。タグの紐を切らせていただきますね」ニコッ

 

「ありがとうございます」

 

「いえいえ。彼女さんも…はい、これでいいですよ」ニコッ

 

「あ、ありがとうございます」

 

「いえいえ。はい、じゃあ確かに頂きます。ありがとうございました」

 

手を繋いで店を出る。少女は自分の左手を広げて指輪を眺めながら微笑を浮かべていた。

 

「許婚、か」ニヘラー

 

「俺も親に電話しないといけないなあ」

 

「…今、かけちゃう?」

 

「…そうだな。じゃ、階段のところまで行こうか」

 

「うん」

 

―――引っ張ってくれる手に、さっきまでは無かった硬いものの感触があって、それが心地良かった。

 

階段のベンチに並んで腰を下ろすと、彼が携帯電話の通話ボタンを押した。

 

「もしもし」

 

『あら、当麻さん。珍しいわね?どうしたの?』

 

「いや、えーっと、なんといいましょうか…。母上様、驚かずに聞いていただきたいのですけれども」

 

『当麻さん…まさか女の子を孕ませてしまったとかじゃないでしょうね?』

 

「…アンタ自分の息子をどんな目で見てるんだコラ!」

 

『だって当麻さん、刀夜さんと同じでいつの間にか女の子と一緒にいることが多いんじゃないのかしら?うふふ』

 

「最後の笑い怖いよ!それにそんなことないですから!」

 

『自覚しないと、そのうち酷い目に会うわよ』

 

「だーかーらー、何でそういう話になってるんですか!?じゃなくって、俺は真面目な話があるんだ」

 

『なにかしら?』

 

「大覇星祭で会った人、覚えてる?」

 

『美鈴さん?』

 

「の娘さん。御坂美琴」

 

『ええ、覚えていますよ。彼女が何か?』

 

「事後承諾で悪いけど、…御坂美琴と婚約しました。美鈴さんには了解貰ってます」///

 

『え?当麻さん、もう一回言ってもらえるかしら?』

 

「御坂美鈴さんの了解を頂いて、御坂美琴と婚約しました」///

 

『…当麻さん。中学生を手篭めにしたの?』

 

「してねえよ!まだ指一本触れてねえよ!」///

 

「ふぇ!?」///

 

『え?それで婚約って気が早くない?』

 

「なんで女親って揃いも揃って同じこと言うんだ。上条当麻は御坂美琴を愛してる!それが理由だ文句があるか!」

 

(ま、また言ってくれた!)///

 

『あらあら、若いっていいわねー。ところで、美琴さんは傍にいるの?』

 

「ああ」

 

『代わって』

 

「…代わってくれって」ケイタイ サシダス

 

「か、代わりました。御坂美琴です」///

 

『当麻さんとしちゃったの?』

 

「ぶふぉっ!?いきなりなに言ってるのアンタ!!」///

 

『お母さま公認で当麻さんと婚約っていうから、てっきりそういうことかなと思ったのだけど』

 

「そういうことしなくっても、お互い愛してるんだから約束してもいいじゃないですか!」///

 

「!!」///

 

『ねえ、美琴さん。当麻さんはね、疫病神、不幸の使者と呼ばれていた子ですよ?…本当にそんな子と一緒にいたいのかしら?』

 

「そんなの!!そんなの関係ない!!アイツは、当麻はわたしにとって、かけがえの無い人だもの!!いくら親でもそんな風に当麻のこと言うのは許せない!」

 

(美琴…)///

 

『…ありがとう』

 

「え?」

 

『当麻さんのために怒ってくれて。あの子のことお願いします』

 

「あ、いえ、こちらこそお願いします」ペコリ

 

『あ、美琴さん。避妊だけはしっかりしなさいね。スキンよりも経口避妊薬の方が確実よ』

 

「お、女親ってそれしか言えないのかあああ!!」///

 

『うふふ。美琴さんだって、まだ母親にはなりたくないでしょう?』

 

「そ、それはそうですけど…でも、当麻との…なら…」ゴニョゴニョ

 

『まあまあ。当麻さんも幸せ者ね。こんなに可愛い彼女が傍にいてくれて』

 

「…」///

 

『当麻さんと代わってくれる?』

 

「あ、はい…」ケイタイ サシダス

 

「…変なこと吹き込まなかっただろうな?」

 

『当麻さんの悪口言ったら、怒ってくれたわよ。それだけで当麻さんの嫁として合格です』

 

「なっ!?」///

 

『当麻さん。一度守ると決めたのなら、最後まで貫きなさい』

 

「…ああ。約束する」

 

『じゃあ、近いうちに美琴さんを連れて家にいらっしゃい。刀夜さんと一緒に嫁いじりして楽しむから』

 

「そんな危険なところには連れて行かない!」

 

『あらあら。可愛い嫁を連れてこないなんて親不孝者ね。当麻さん』

 

「だー!もー!!以上!連絡終わり!」

 

通話を終えて、少女を見る。少女が小さく微笑んでくれるだけで、少年にも自然と笑みがこぼれた。

 

「どうしたの?」

 

「散々からかわれた。…けど認めてくれた」

 

「そ、そっか」///

 

「ああ。美琴は上条家の嫁ってお墨付きをいただきました」

 

「よっ、よ、よ、よ、よ、よ、よめっ!?」カァッ

 

「ま、まあアレ、ほら、許婚だからな!」///

 

「そ、そ、そ、そうよね!!許婚だもんね!」///

 

「ははははは」///

 

「うふふふふ」///


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