クリスマス狂想曲   作:神納 一哉

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過去にしたらばに投下したものを加筆・修正しています。


11 12月23日 買い物

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セブンスミスト2階。紳士服売り場

 

 

「お、これはぬくいな」

 

「わたしのお勧めはこれ。着てみて」

 

「軽っ!?なにこれ?」

 

「カシミアよ。わたしのマフラーやコートと同じ」

 

「へー。いいな。これ」

 

ボタンを留めて体を動かしてみる。軽くて動きやすい。

 

「…じゃ、それにする?」

 

「…へ?」

 

「クリスマスのプレゼント」

 

「いやいや、美琴センセー。これ、上条さん家の一ヶ月の食費並のお値段ですよ!?」

 

「わたしとお揃いって、嫌?」クビカシゲ(お揃いって言っても素材だけなんだけど)

 

「嫌ってことは無いけど、貰うには高すぎるって言うかなんていうか…」

 

「わたしは、お揃いにしたいんだけど」

 

「うーん。でもなあ」

 

「だいたい、この時期になってコートも着ていないなんておかしいわよ」

 

「いや、だから見に来たわけで」

 

「それ、気に入ったんでしょ?」

 

「まあ、そうなんだけど」

 

「じゃあ、わたしが選んだんだし、プレゼントさせて」

 

「だからお値段がですね…」

 

「あのねえ、わたしとしては今朝みたいに震えてるアンタを見たくないの。…わたしの我侭なの。聞いてくれない?」

 

「美琴…」

 

「駄目、かな?」ウワメヅカイ

 

「…貧乏学生の上条さんがこんな凄いコート着てたらおかしくない?」(その上目遣いは反則だって)

 

「デザイン的にはよくある普通のロングコートだし、大丈夫だと思うけど?似合ってるし」

 

「そ、そっか」

 

「うん。いいと思う」

 

「あーもー。負けた負けた。でも本当にいいのか?」

 

「うん」ニコッ

 

「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」ペコッ

 

「じゃ、行きましょ」

 

「え?おい、脱がなくていいのか?」

 

「いいのよ。そのまま着ていけば」

 

戸惑う少年の手を引き、少女は慣れた感じでカウンターにいた店員に声をかけ、カードを出して会計を済ます。その間に別の店員が少年の着ていたコートのタグや留め紐(コートのスリットを×で縫ってあるやつ)を取り除いてくれた。

 

「お待たせ。準備できた?」

 

「ああ。全部取ってもらった」

 

「じゃ、今度は下に行くわよ」

 

そう言うと、少女は少年の左腕を掴む。

 

「腕、組んでいい?」

 

「しがみついたりしなければ、むしろ組みたい」

 

「じゃ、組もっと」ギュ

 

(柔らかいものが当たってるんですけど、気のせい気のせい)「…なんか、店の商品を着たまま出て行くのって緊張するなあ」

 

「ふふ。その気持ち、わかる気がする」

 

「で、何を見るんだ?」

 

「んー。ダウンジャケットがいいかな」

 

「そのコート、よく似合ってるけどな」

 

「ん?あ、わたしじゃなくってあの子にね。あの子も持ってないでしょ?防寒具」

 

「え?インデックスか?」

 

「うん。アンタがコート着てるのを見て、あの子の分が無かったら噛みつかれるんじゃないの?」

 

「う…。ひ、否定できない」

 

「だからあの子にもクリスマスプレゼントってことで。あ、わたしが贈りたいだけだから、アンタは気にしないで」

 

「悪いな。ありがとう」

 

「だーかーらー。アンタに感謝される筋合いは無いっての」

 

「でも、ありがとう」

 

「はいはい」

 

――――――――――

 

「さーて、これで完成ですよ」

 

「なんだか楽しみなんだよ」

 

「ちょっと点けてみましょうか」

 

「じゃあ。スイッチを入れる」カチ

 

小さいながらも細々と飾り付けられたクリスマスツリー。その電飾がキラキラと光を放つ。

 

「綺麗なんだよ!」

 

「うん。綺麗ですねー」

 

「…なんか、こういうのも悪くないわね」

 

「ふふ。そうですね」

 

「綺麗」

 

インデックス「小さいけど、ヤドリギには使えそうなんだよ」ボソッ

 

「シスターちゃんはロマンチストですねー」

 

「そ、そんなんじゃないんだよ!?」カァッ

 

「…」

 

小萌に冷やかされてぱっと頬を染めるシスター。上条君。罪な人。

 

「ヤドリギって、なんだっけ?」

 

「ふふふ。北欧にはクリスマスのヤドリギの下でキスをしたカップルは永遠に幸せになれるという言い伝えがあるのですよ」

 

「あー、私には関係ないわね」

 

「わ、わ、私にも関係ないんだよ!シスターとしてこもえやあいさやあわきがそういう風にしたくっても大丈夫だって思っただけなんだよ!」カァッ

 

「シスターちゃーん?どこにそんなヤローがいるのか先生に教えてくれるかな?」

 

「だから私は関係ないって言ってるじゃない。それに、ヤドリギの下って言うくらいなんだから、こんなツリーじゃなくってショッピングモールのツリーの方がいいんじゃない?」

 

ショッピングモール。上条君と女の子が一緒にいたところ。

 

「あいさ。どうしたのかな?」

 

「…上条君は。明日はここに来ないかも」

 

「とうまが?なんで?」

 

「えっと。ごめん。正直に言う。上条君。さっき女の子とショッピングモールでデートしてた」

 

「…そっか。たぶんみことだよね」

 

「みこと?」

 

「うん。たまにご飯作ってくれたり、服とか買ってくれたりするの」

 

「上条ちゃんも隅に置けないですねー。超能力者と付き合っちゃうなんて」【注:新約2巻での砂場に落とした磁石に付いた砂鉄的な遭遇後、門前払い後に電気を纏いながら暴れているのは第三位の御坂美琴だと結標に説明されている】

 

「あれ、姫神さんも会っているはずだけど?常盤台の女の子に」

 

「うーん。覚えていない」【注:新約2巻での砂場に落とした磁石に付いた砂鉄的な遭遇時、暴れる吹寄を抑えていたため】

 

「とうまが幸せなら私はそれでいいんだよ」ポロッ

 

「シスターちゃん、泣かないで」

 

「あれ?おかしいな。なんで…ふぇ、ふぇぇぇぇん」ポロポロ

 

「よしよし、上条ちゃんは悪い子ですねー。シスターちゃんを泣かせるなんて」ナデナデ

 

「とうまのせいじゃないんだよ。みことのせいでもないんだよ。でも、涙が出ちゃうんだよ」ポロポロ

 

「はいはい。思いっきり泣いてすっきりしちゃいましょうねー。夕御飯は豪華絢爛焼肉セットですよー」ナデナデ

 

「ふぇぇぇぇぇんっ」ポロポロ


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